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タグ “攻殻機動隊ARISE” を含む記事 2件

『攻殻機動隊新劇場版』は草薙素子の血まみれの青春を描く傑作映画。

 どもです。ちゃんと起きたよ! ついさっきiPhoneのアラームで起きて、いまこの記事を書いているところです。  昨晩から今朝にかけて『攻殻機動隊新劇場版』を見たので、とりあえずその評価を書いておきましょう。  うん、面白かったですよ。この『新劇場版』は全5作のOVAシリーズ『攻殻機動隊ARISE』から直接に繋がる作品です。  個人的な意見としては『ARISE』は全体的にもうひとつの出来だったと思っています。  なんといってもわかりにくい。超複雑に入り組んだ設定はまあいいのですが、だれがどの陣営でだれの味方で敵なのか、そもそもそれぞれの陣営がどういう関係にあるのか、ほとんど説明なしで展開するため、最後まで見ても「……よくわからにゃい」という感想になってしまう。  これは「難解」というのとは違うと思う。「不親切」というべきです。  あまり説明しすぎるとダサくなるので視聴者の理解力を高く見積もるぜ!という方法論なのはわかるのですが、それにしても説明を省きすぎだったのではないでしょうか。  いったい初見でこの物語で何が起きているのかその全貌を正確に把握できる人がどれくらいいたものか。  冲方さんのシナリオなんですけれどねー。  もうひとつ、ヴィジュアル的に新鮮味がなかったこともマイナスです。  現実はそのあいだに大きく変化したというのに、作り手の想像力が『STAND ALONE COMPLEX』の時点から進歩していない。  結果として『攻殻機動隊』の世界そのものが相対的に古いものになってしまっていると感じました。  『攻殻機動隊』というコンテンツそのものは80年代末に始まったものであるわけで、いってしまえばごく古いのです。  押井守や神山健二といった才能ある作り手たちがそれをそのつどアップデートしてきたからこそいまがあるといえる。  しかし、『ARISE』はそのアップデートを行っているようには思えなかった。そこで、ぼくの『ARISE』への評価は低くなってしまうのですね。  やはり押井守や神山健二といった突出したクリエイターの作品でないとダメなのかな、と思わされました。  ところがところが、この『新劇場版』はまず傑作といっていい出来なのです。  特別に映像的な新味がないことは変わっていないのですが、ストーリーが比較的わかりやすい。  総理爆発暗殺事件から始まって、草薙素子と同じ義体を使うなぞの人物の登場、素子たちの捜査、敵陣営への進攻へと進む展開はスピーディー。サスペンスフルで面白いです。  『ARISE』を通して進化してきたロジコマが、ここに来て『STAND ALONE COMPLEX』のタチコマ並みの知性を見せているあたりもポイント。  「2902熱光学迷彩、京レ制の最新型だ」といった長年のファン向けのセリフも楽しい(『新劇場版』は原作よりも前の話なので京レの、「隠れ蓑」もまだ最新型というわけです)。  そしてついに『ARISE』から長々とひっぱってきた「攻殻機動隊」公安九課誕生秘話が語られます。  これも無理がない流れ。なぞの「ファイアスターター」との対決はスケール感もあるうえ、迫力満点です。  『ARISE』のときはいまひとつはっきりしなかったこの新シリーズ独自のオリジナリティもこの作品でははっきりしている。  『STAND ALONE COMPLEX』のとき、神山監督は「押井版の素子たちより15歳若く演じてください」と注文したそうですが、『新劇場版』の素子たちはさらに若いのです。  つまり、この『新劇場版』は「草薙素子たちの青春」ともいうべき物語に仕上がっているということ。  のちに攻殻機動隊を指揮しかずかずの難事件を解決していくことになる「超ウィザード級ハッカーにして世界有数の義体使い」である天才捜査官も、この時点ではまだ未熟。配下のバトーたちとの絆もまだ万全ではありません。  しかし、 

『攻殻機動隊新劇場版』は草薙素子の血まみれの青春を描く傑作映画。

若き日の天才の肖像。「第四の攻殻機動隊」はいかに草薙素子の過去を描いたか。(1968文字)

 先日、アニメ『攻殻機動隊ARISE』の最新話を観ました。  1話およそ1時間弱のエピソード全4話から構成されるという変則的な構成の映画。第2話の上映が待ち望まれる『コードギアス 亡国のアキト』とほぼ同じ上映方法ですね。最近はこういう変わった形のアニメ映画が増えました。  当然というか、地元新潟では上映していないので、東京で観るつもりだったのですが、なんとプレイステーションストアでダウンロード可能で、自宅にいながらにして普通に観れてしまうということがわかったので、行くのをやめました。  地方在住の人間にとってはこういうシステムはありがたいけれど、劇場へ行こうという意欲は削がれるなあ。  さて、そういうわけで、『ARISE』。原作漫画、押井守監督による映画版、神山健治監督によるテレビシリーズに続く「第四の攻殻機動隊」ということになるわけですが、じっさいの出来はどうだったのか?  まあ、ぼくの評価は「それなりにそれなり」というところかなあ。今回、物語はいままでの『攻殻機動隊』よりも時間軸を過去にさかのぼり、「攻殻機動隊」公安九課設立までのエピソードを描いていく模様です。  第1話はハードボイルドミステリ風の描写になっていて、いまだ仲間ではない草薙素子、バトー、トグサらが個別に活動する様子が描かれます。  いまはある軍務機関に勤める素子は、なぞの死を遂げた軍人の秘密を巡る事件を解決に導くことができるのか? サスペンスフルな物語が展開します。  ただ、過去の『攻殻』を知っていると、どうしてもそれと比べてしまうことは否めません。そういう視点で見るとやはり画面に映像的な新味がないことが気にかかる。  この点では、やはり押井守による『GOHST IN THE SHELL』は絶品であったといえるでしょう。  神山健治による『STAND ALONE COMPLEX』はある意味では映像的に押井版を超克することはあきらめ、よりぼくたちの日常と地続きの『攻殻』世界を生み出しました。それは『攻殻』世界の間口を広くすることに成功したといえます。  そして『ARISE』はそんな『S.A.C.』の映像表現を踏襲しているように見えます。露骨に現代日本風の街並みがそこかしこに見え、『S.A.C.』以上に「地続き感」を出しています。  しかし、すでに『S.A.C.』から10年以上が経っているにもかかわらず、新しい映像的なチャレンジが特に見あたらないことはやはり残念です。  

若き日の天才の肖像。「第四の攻殻機動隊」はいかに草薙素子の過去を描いたか。(1968文字)
弱いなら弱いままで。

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海燕

1978年新潟生まれ。男性。プロライター。記事執筆のお仕事依頼はkenseimaxi@mail.goo.ne.jpまで。

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