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『甲鉄城のカバネリ』は「終末もの」の新境地を拓けるか?

 『甲鉄城のカバネリ』が面白いです。  都市が鉄道でつながれた世界を描くゾンビ・ホラー。  特に目新しいアイディアはないようなのですが、全体にクオリティが高く、サスペンスフルな展開で魅せます。  この鉄道、だれがどうやってメンテナンスしているんだろうとか思うわけですが、そこは深く考えちゃいけないんだろうな。  昔、『ゼルダの伝説』のシリーズに「大地の汽笛」という鉄道ネタの作品がありましたが、それを思い出したりします。  ただ、特に現代的な作品というわけでもなさそうなので、流行るかどうかはなんともいえないところ。面白いんですけれどね。キャラクターは美樹本晴彦だしなあ。  最新話まで見たところ、きわめてきびしい世界を描いた作品で、ぼくたちの言葉でいえば「新世界系」ということになるわけですけれど、『進撃の巨人』から数年、この種の作品も一世代前のものになったかな、という気はします。  いや、新世界系のテーマそのものはいまふうなんだけれど、そこにどういうアンサーを付けるかでこの種の作品の面白さは決まってくるんじゃないかと思う。  つまり、きびしい世界を描いて、「どうです? 世界って残酷でしょ?」とやるだけではダメで、そのきびしい世界でどうやって生きていくか、というところまで踏み込まないといけない。  「新世界系」は、必然的にサバイバルものになるわけですが、そのサバイバルの思想的な方法論を描きこめないと凡作に終わるという気がします。  『魔法少女まどか☆マギカ』がヒットし、後続の「女の子の新世界系」があまり話題にもならなかったのは、たぶんそのせい。  ただ単に「きびしいでしょ? 辛そうでしょ? 悲惨でしょ?」とやるだけでは不十分だということです。  よく虚淵玄は暗く残酷で悲劇的な作品を描く作家性だといわれるけれど、ぼくはそれだけだとは思わない。  その暗い現実に立ち向かう姿勢を描いているからこそ、虚淵作品は魅力的なのです。  これは第一作の『Phantom』からずっとそうですね。  虚淵作品はたしかに暗い話が多いけれど、決して「趣味的な残酷さ」に耽溺しない。  「どうです、ひどい話でしょ?」と示してウケを狙うだけのものにはなっていないのです。  その点がフォロワーと虚淵作品の最大の差ですね。  それでは、ひるがえって、『カバネリ』はどうか。「まだよくわからない」としかいいようがありません。  問題は、この物語にどういう結末を付けるかということだと思うのです。  一般的にいって、ゾンビ・ホラーって、世界がどんどん終末に向かっていくところに面白みがあるわけですよね。  自分たちの生きている世界がどんどん壊れていくところに「負のカタルシス」とでもいうべき快感がある。  でも、そうだからこそ結末を付けることがむずかしい。  世界そのものが崩壊に向かっているところで、ヒーローの孤軍奮闘を描いたところであまり意味がないように思われることもたしかなのです。  だから、世界レベルのゾンビ・ホラーは「そして世界は滅んでしまいました。おしまい」くらいしか結末を設けることができないジャンルでもある。  「どこかに人類の生きのこっているコミュニティがあって、そこに逃げ込む」とか、「ゾンビを壊滅する手段が発見される」とかいう結末もあるにはありますが、ゾンビ・ホラーの根本的な面白さからすると、あまり適当なアンサーとはいえない気がするのですよね。  ここにどういう答えを見つけ出すか? 『カバネリ』の今後には注目です。  この点は『進撃の巨人』もまだ答えを出していないところですよね。なんらかの解答は用意しているのではないかと思うのですが。  映画版の『バイオハザード』とか、答えを用意できないままシリーズが進むので、わりとめちゃくちゃな話になっていた気がする。  そういえば、 

『甲鉄城のカバネリ』は「終末もの」の新境地を拓けるか?
弱いなら弱いままで。

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海燕

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