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非モテ男、オトナガール向け少女漫画雑誌にハマる。
2015-06-23 06:2051pt
ひとが食べているラーメンはとても美味しそうに見える。ひとが読んでいる漫画はとても面白そうに思える。これ、すなわち天地(あまつち)の法則なり。
そういうわけで、このあいだてれびんが面白そうに読んでいた『AneLaLa』を読んでみることにしました。
ちなみにKindleだと第3号まで0円という太っ腹さ。さっそくそこまで落としました。
「『LaLa』のお姉さん」を意味すると思しいタイトルからもわかる通り、かつて『LaLa』や『花とゆめ』で描いていた作家さんたちを集めた『LaLa』の増刊ですね。
ということは当然ながらその作家さんたちは一世代前の白泉社少女漫画の看板作家だった人たち。森生まさみさんとか橘裕さんとか。
ちょうどぼくの世代の白泉社少女漫画のイメージは彼女たちの漫画でできているといっていい。
で、ひさしぶりにその人たちの読んでみたわけですが――う、うまい。うまーい。やだ、この人たち、漫画が上手。
いやまあ、ある意味、あたりまえなのですが、でもうまいよー。
特に津田雅美作品の完成度やばい。もともとうまい人だったけれど、なんか異様に洗練された感じ。
素晴らしくスマートな世界を楽しむことができます。
ほかにも斎藤けんさんとか筑波さくらさんとか、ぼくこの人たちの漫画読んでいたなーなつかしーという作家さんたちが目白押し。
『AneLaLa』よりさらにひと世代前の少女漫画家たちを集めた『メロディ』なんかを読んでも思うけれど、この人たち、あきらかにいまの白泉社の若手少女漫画家より実力上だよね。
いいかげん少女漫画としては賞味期限切れになっていてもおかしくないベテランぞろいのはずなんだけれど、どういうわけかいまなおみずみずしい作品を読ませてくれます。
ああまったく、36歳ハゲ(円形脱毛症)オヤジになってどうして少女漫画でときめかないといけないのか?
それもこれもみんなてれびんのせい。朝の番組でやっている星占いでてんびん座が最下位になるよう呪っておいてやろう。
いや、てれびんがてんびん座かどうかしらないけれど、ほら、音が近いから。てんびん座の皆さんごめんなさい。
しかし、面白いなー。とりあえず3号まで読んでしまったので続きの4号を買うことにします。
雑誌は紙で買い集めると邪魔になるからKindleでちょうどいい。ひさしぶりに少女漫画の甘酸っぱい世界にひたれます。
いやまあ、現実に帰ってくると36歳未婚非モテのおっさんでしかないんですけれどね……。
いいじゃないか、少女漫画を読んでいるときくらい現実を忘れても。
漫画のページをめくっているそのとき、ぼくは男でもなければ女でもないただの「観察者」。
ひたすらに物語世界を見守り、その展開に一喜一憂してはページをめくる「傍観者」なのです。
もうたぶん一生恋の機会はないだろうと思うと泣きたくなるわ。うるうるうる。ああ、何もいいことのない人生だった。漫画は面白かったからいいか。
さて、 -
このベテラン少女漫画家が凄すぎる。(2119文字)
2013-05-01 17:3453pt
雑誌『メロディ』がおもしろい。ぼくのなかでは少年漫画雑誌のベストが『月刊少年マガジン』で、少女漫画雑誌のベストがこの『メロディ』だったりする。
樹なつみ、清水玲子、よしながふみ、種村有菜、高橋しん、成田美名子、川原泉などなど、キャリア10年から30年程度のベテラン作家ばかりをそろえた雑誌で、決して少女漫画の最前線とはいえないはずなのだが、どうしてどうして、圧倒的に面白い。
今月号で圧巻だったのは清水玲子『秘密』の番外編。本編が終わったあと、主人公の隠された過去を振り返るエピソードの完結編なのだが、いやあ、凄まじい。ここまでいい話をきちんと築き上げた上でそこに繋げますか。あなたは鬼ですか鬼なんですか。さすが『竜の眠る星』の、『月の子』の、『輝夜姫』の清水玲子である。素晴らしい。
でもまあちょっと、やっぱりそうですか、結局、男同士の友情ですか、という気がしなくもない。ちょうど樹なつみの『花咲ける青少年特別編』がまたそういう話だっただけに、なおさらそんな感じがする。いや、それが悪いわけではまったくないのだが、一応は少女漫画なんだからもう少し女性キャラクターにスポットライトがあたっても、と思うのだ。
この雑誌の女性読者はそういうことを考えないのかな。みんながみんな腐女子じゃあるまいし。それともみんながみんな腐女子なのだろうか。まさかね。
清水玲子さんはともかく、樹なつみさんというひとは徹底して女性人物に興味がないように見えるひとである。ほとんど嫌悪しているのではないかと思うくらい。やはり世代的な問題があるのだと思うが、このひとの漫画で女性キャラクターを「可愛いなあ」とか思って読んでいると大抵ひどい目に遭う。それはもういつものことだ。
ぼくは繰り返し書いているのだが、『OZ』におけるエプスタイン姉妹の扱いはもう少しなんとかならなかったのだろうか。ヴィアンカはまだしも仮にもフィリシアはメインヒロインだぞ。少女漫画なんだぞ。ボーイズラブじゃないんだぞ。
あきらかに作者の愛情が主人公ムトーと、性別不詳のアンドロイド19(ナインティーン)に偏っていて、ヒロインたちにはないことがわかるだけに、何となく悔しいような思いがする。お願いですから女の子たちにももう少しいい役を与えてやってください。まあ、無理なんだろうけれど。
『花咲ける青少年』の場合、メインヒロインの花鹿・バーンズワースにはたしかに光が集中している。しかし、逆にいうと「花鹿みたいな子じゃないとダメなのか」ということがわかってしまう絶望がある。あそこまでスペック高くないと赦されないんですかねえ。いやはや。
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吉田秋生の華麗なる世界。『海街Diary』と『ラヴァーズ・キス』が見せてくれるもの。(1697文字)
2013-02-06 21:5553pt過去に何度か書いているが、吉田秋生『海街Diary』が素晴らしい。もう、読み返すたびに凄みを思い知らされる。どこがどう偉いのか、うまく言葉にできないのだが、あたりまえの日常のなかにひそむ哀しみと正面から向かい合うことの凄み、といえばいいかもしれない。
物語そのものは典型的な「日常もの」で、何ひとつ大きな事件は起こらない。美系キャラクターもほとんど出てこないし、少女漫画としてはきわめて地味な作品といえる。吉田が『BANANA FISH』、『YASHA』、『イヴの眠り』と書き連ねてきたシリーズの非日常的な空気、ドラマティックな展開とは対照的である。
しかし、それなら退屈かというと、そんなことはまったくない。吉田は繊細な気遣いでもって、鎌倉の街の空気を描き出していく。何気ない展開のひとつひとつの裏にあるものは濃密な「死」の匂いだ。
そもそも物語の端緒が、主人公たち四人姉妹の父親の死から始 -
天才作家が描く「日常系」。吉田秋生『群青』に別格の凄みを感じる。(1672文字)
2012-12-11 17:0853pt吉田秋生さんの『海街Diary(5) 群青』のレビューです。いやー、素晴らしかった。あたりまえの日常をただユーモラスに描き出しているだけのようでありながら、そこらの「日常系」が束になっても敵わないほど深い世界観を感じさせる作品となっております。いったい何が違うんだろうなあ。とにかくこういう作家がいてくれることは実にありがたいことだと思います。
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