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記事 208件
  • 『ベイビーステップ』と『灰と幻想のグリムガル』に共通する感性を見た。

    2017-03-17 11:57  
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     ペトロニウスさんの最新記事が面白かったので触発されてぼくも何か書いてみようと思います。
    http://d.hatena.ne.jp/Gaius_Petronius/20170316/p1

    別に書こうと思っているのですがラジオでしゃべったのですが、鶴巻和哉監督の『龍の歯医者』の男の子も女の子も、旧世代の宮崎駿や庵野秀明に比較すると、自意識の在り方が、凄い弱い。というか、「運命を受け入れている状態」であることに疑問を持たないという言い方になるんですが、それを「弱い」というかは微妙なところで、強い目的意識を持つ宮崎駿の主人公に対して、それでいいのか?と疑問を持ち悩み続けてすくんで動けなくなっていくのが、押井守、庵野秀明という後続のクリエイターの系譜なんですが、その後になると、そういった「疑問自体」を持たないで、あっけらかんと世界に対する姿勢を持つようになるんですね。僕は、『フリクリ』とかの話
  • 『フルバ』にも『カレカノ』にも罪はない。少女漫画と「真実の愛」幻想。

    2016-09-20 07:55  
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     恋愛工学に始まった「ナルシシズム/エロティシズム」の話は前回で一応完結しているのですが、今回はおまけ篇として宿題になっていた少女漫画の話を書いておこうと思います。
     まずは、「『彼氏彼女の事情』『フルーツバスケット』がアラサー女子の恋愛観にもたらした闇」という記事を引用しましょう。
    http://papuriko.hatenablog.com/entry/2016/09/13/184709
     タイトル通り、少女漫画往年の名作『彼氏彼女の事情』と『フルーツバスケット』を扱った記事です。この記事によると、両作品には以下のような共通点があるとされています。

    ・女子(主人公)が努力家、優等生、いい子
    ・男子(恋の相手)が特別な存在(人気者、特殊能力あり)
    ・でも男子は「過去のトラウマ」を抱え、心の闇を持っている
    ・男子、トラウマが爆発した時、女子を傷つけて避ける
    ・女子、そんな男子を偉大なる
  • 映画『君の名は。』のわりとどうでもいいポイントについて(ネタバレ)。

    2016-08-27 01:56  
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     新海誠監督のアニメーション映画『君の名は。』を観て来ました。
     えーと、あれですね、これは一切のネタバレなしで感想を書くと、「恋っていいよね」くらいしかいえなくなる類の映画ですね。あるいは「おっぱいっていいよね」でもいいけれど。
     しかもネタバレ厳禁タイプのシナリオ。まあひと言でいうと傑作だったんだけれど、細かいところをどう見るかで評価が変わってくる可能性はあると思う。
     いやまあ、細部をあげつらうべき映画ではないことはわかっているんだけれど、評価がわりと絶賛一色なので、ぼくはあえてそういう蛮行に踏み切ろうかと。
     くり返しますが、かなりの傑作なので、未見の方はこの記事は無視して映画館へ向かってください。なんだかやたらと「新海誠の集大成」という評価を目にするけれど、あえてシンプルにいえばそういう映画です。
     十数年前、下北沢へ『ほしのこえ』を観に行ってからずっと新海映画を追ってきたぼくと
  • 天使と欲望のパラドックス。

    2016-08-17 09:32  
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     昨日、一週間のあいだうちに滞在していた甥っ子が帰宅しました。疲れた。マジ疲れた。やはり子供は幼い頃から可愛がって育てなければならないと考える善良で親切なぼくは、全身全霊をあげて遊んであげたのです。
     それはもう、映画には連れていくわプールには連れて行くわ、博物館には遊びに行くわ、カートには乗せるわ、おもちゃは買うわ、ゲームは買うわ、本は買うわ、大盤振る舞いにして至れり尽くせりの大サービス。
     しまいに甥っ子は遊びすぎて疲れたのかじんましんを発症する始末で、何ごとも程々が大切だな、と思い至ったしだい。いや、ぼくが悪いわけではないと思うけれど。
     はしゃぎすぎなんだよな、奴は。ひとの部屋にはかってに入るし、冷蔵庫はかってに開けるし、うちに帰るときは「ただいま」というし、もう自分の家だと思っているんでしょう。ええ、それはそれは傍若無人なわがままの限りを尽くして帰っていきました。
     で、そのあい
  • 『シン・ゴジラ』が単なる愛国ポルノではありえない理由を『風立ちぬ』を通して説明する。

    2016-08-16 03:48  
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     ふと思い立って、もういちど宮崎駿監督の『風立ちぬ』を見ています。『シン・ゴジラ』を見た後だと、この作品の歴史的意義がよくわかる気がしますね。この映画に関しては、ペトロニウスさんがこう書いています。

     これが、何を表しているかといえば、宮崎駿が、
     今の時代は少年を主人公にする物語が描けなくなった
     といっていたことです。ようは、良かれと思い善意溢れる努力を突き進むと、それがどうしてもマクロ的にコントロールできなくなり、世界を全体主義や戦争へ突入させて滅びに結びついてしまう。そうした構造が見えている中で、男の子的な少年の夢を成就させる、自己実現させる方法が宮崎駿には見いだせなくなったのだと思うのです。
     そうして、少女ばかりが主人公になっていくことになります。
     未来を夢見て生きる(=少年の夢)ではなく、現在の日常を楽しむ視線に変化したことを指しているのだろうと思います。このあたりは、
  • それは「犯罪界のナポレオン」と呼ばれた男の物語。竹内良輔&三好輝『憂国のモリアーティ』が面白い!

    2016-08-08 15:50  
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     『ジャンプスクウェア』で新連載が始まった 『憂国のモリアーティ』が面白いです。
     「憂国のモリアーティ」。もう、このタイトルだけで傑作に違いないと確信できるわけなのですが、そうです、あの「犯罪界のナポレオン」モリアーティ教授を主人公にした物語なのです。
     といっても、もしかしたら知らない人もいるかもしれないので一応説明しておくと、ジェームズ・モリアーティはコナン・ドイルのシャーロック・ホームズシリーズで、シャーロックをいったん死に追い込む最大のライバル。「犯罪界のナポレオン」の異名を持ち、ロンドンの闇を支配している大物です。
     物語は、いきなり、モリアーティとホームズの対決の最終局面である「ライヘンバッハの滝」のシーンから幕を開けます。
     もう、シャーロッキアンにとっては堪らないであろうオープニングですね。この時点ですでに素晴らしいわけですが、その後、時間をさかのぼって少年時代のモリア
  • 興奮と戦慄の超濃密庵野映画『シン・ゴジラ』を見のがすな!

    2016-07-31 02:07  
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     映画『シン・ゴジラ』を見てきました。もうネットでは評判になっていますが、あまり冴えなかった前評判をくつがえす大傑作。
     ちなみにネタバレにならないように簡単に説明すると、えーと、えーと……なんもいえねえ。ちょっとした情報ですらバラせない感じの作品で、ぶっちゃけ「面白い」とか「傑作」と述べることもはばかられる感じ。まあ、大傑作なんですけれどね!
     皆さん、ぜひネタバレを踏む前に見ておいてください。凄いから。
     すでにネットでは大絶賛の嵐が巻き起こっているようで、ひとつの作品の評価がここまで圧倒的な賛辞で埋め尽くされるのを見たのは例の『ガールズ&パンツァー劇場版』のとき以来。
     あれも相当に素晴らしい作品だったけれど、『シン・ゴジラ』の場合はみんなの感想に熱狂がこもっています。
     可笑しいのは、みんながみんな褒めるとき「これは賛否両論だろうな。おれは大好きだけれど」といって褒めていること。
  • 作家は読者の奴隷ではないし、そうなってはいけない。

    2016-07-25 02:59  
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     『妹さえいればいい。』最新刊を読み終えました。
     前巻はほぼギャグ一辺倒で、面白いことは面白かったのですが、お話そのものは何も進んでいない印象がありました。
     しかし、この巻では劇的に物語が進行します。いやー、面白いですね。ぼくはこういうものをこそ読みたいのだと思う。
     物語が進むとは、ただ状況が変化することではありません。状況が「二度と元には戻らない形で」変化すること、それを物語が進むというのです。
     この巻で、主人公たちの恋愛状況はドラマティックに変わり、そしてこの先、もう決して元に戻ることはありません。
     それは幸せなことではないかもしれないけれど、しかしとても印象的なことです。
     こういうものを読むとぼくはやはり「物語」が好きなんだなあと思いますね。
     平和で幸福で、どれだけ読み進めても何ひとつ変化がないようなお話もいいけれど、でも次の瞬間何が起こるのかわからないようなサスペン
  • 竹本泉は天才だ! 猫好き必読の名作漫画『ねこめ(~わく)』を読もう。

    2016-07-20 02:49  
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     竹本泉『ねこめ(~わく)』を3冊ほど続けて読みました。
     このシリーズ、第8巻まで続いた『ねこめ~わく』の続編にあたるのですが、続編とはいっても何も違いはありません。ええ、そのまま。まさにそのままです。
     そもそもこの漫画の新作を読むの20年ぶりくらいなのだけれど、何ひとつ変わっていないなあ。
     連載はすでにあっちこっちの雑誌で25年も続いているそうで、竹本さんの漫画のなかでも最も長く続いている作品ですね。
     四半世紀経ってもまったく変化がないというのがすごい。普通、こうやって長く続いていると経年劣化が起こるものなのだけれど、クオリティが全然下がっていない。
     いやー、こんな漫画は稀有だろうなあ。なにげに竹本さん、天才なんじゃないかと思うんですけれど、どうでしょう。
     ぼくの天才の定義は「独創の人」ということになるのですが、竹本泉みたいな漫画家ってほかにいないものね。
     最初期の『ちょ
  • 雷句誠、驚異の新作! 『VECTOR BALL』は少年漫画の新次元を切り拓く。

    2016-07-19 04:40  
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     えー、特に前置きもなくいきなり本題に入りますが、雷句誠さんの漫画『VECTOR BALL』が面白いです。
     このあいだのLDさんとのラジオでも話したんだけれど、いやー、この漫画、まだ第1巻しか出ていないいまの段階ですでにド傑作の匂いがします。
     少し前までは「この漫画、ほんとうに面白いのだろうか???」とクエスチョンマークが三つも付いている状態だったのだけれど、物語に進展に合わせてひとつ消えふたつ消え、代わりに「面白い!!!」とエクスクラメーションマークが三つ付く状態になりました。
     この先、まだ増えるかもしれません。「面白い!!!!!!!!!」くらいまで行くかも。それくらい先が楽しみな作品です。
     この作品の物語は――と、普段はここであらすじを説明するのだけれど、この漫画の場合、シナリオを開設することにそれほどの意味があるとは思われない。
     というか、ない。お話だけ取ればわりとありが