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百合漫画の至宝『やがて君になる』を読んで恋愛の必要条件を考える。

 仲谷鳰『やがて君になる』最新刊を読みあげました。  最近の百合漫画では傑出して出来がいいように思える一作です。  Amazonでは14件のレビューが付いていて、評価はすべて五つ星。非常な高評価といっていいでしょう。  あまり百合漫画らしくないシャープな線が魅力的ですね。  百合漫画は内容的にどうしても甘ったるいしろものになりがちですが、この作品は一風変わっていて、糖分控えめの内容になっています。  いや、十分甘いんですけれど、少なくとも甘いだけじゃない。独特の雰囲気の作品に仕上がっている。  この漫画の特徴は、主人公の女の子がひとを好きになれない性格であるという設定です。  彼女はべつに恋愛ごとに興味がないわけじゃない。むしろ、ちゃんと関心を抱いていて、まわりが恋に落ちるのを見て、自分もだれかを好きになってみたいと思っている。  しかし、できない。そこで、彼女はどうしても他人を好きになれない自分について悩むのですが、そこに彼女を好きだという年上の少女があらわれて、という展開になっている。い  まのところ、キスされたりしても主人公の少女は相手を好きになっていません。  さて、はたしてこの先、彼女が恋情を自覚することはあるのか? それとも最後までこのままで行くのか? なかなかにサスペンスフルなラブストーリーです。  それにしても、主人公のこの苦悩、ぼくには理解できるなあと思ってしまいますね。  まあ、ぼくみたいな非モテ(非マッチング?)男性が理解できるというのもおこがましいかもしれないけれど、でも、わかる気がするんですよ。  ぼくもやっぱり恋愛感情を抱くことがなかなかできない人だから。  もっと女性と逢う機会を増やしていけばそのうち抱くことになるのかもしれないけれど、どうなんだろうな、よくわからない。  もちろん、まったく人に好意を抱くことがないということではありません。そこまで非人情ではない。好きだといえば、好きな人はいっぱいいますよね。  家族も好きだ。友人も好きだ。でも、恋愛の「好き」はそういう「好き」とは別ものだとされている。  ほんとうか?と思うんだけれど、ほんとうだと証言している人がたくさんいる。  恋愛には何か「過剰なもの」があって、それがないと恋愛として成立しないらしい。  でも、 

百合漫画の至宝『やがて君になる』を読んで恋愛の必要条件を考える。

この頃オススメの百合漫画ですよ。

 このところ、百合漫画しか読んでいない気がする海燕です。  べつだん、狙って読んでいるわけではないのだけれど、疲れているときに心がざらつかない作品を選んでいくと百合になるんだよね。  いやまあ、心臓を貫くような先鋭的な百合作品もなかにはあるとは思いますが、あえて選ばなければそうショッキングな作品にはあたりません。  これがボーイズ・ラブだったらまた話が違うだろうけれど。  で、きょうの第一作は『もうひとつのユリトピア』。  まあ、よくできた端正な百合作品です。それ以外特にいうことがない。  原作はライアーゲームの百合ゲーなのかな? よく知りませんが、同性から告白された女の子がとまどいながらもその想いを受け止めて応えるまでの物語です。  骨格は少女漫画のラブコメですね。  相手の強い想いを受け止めきれないでいるなかにもじんわりとにじみ出る慕情とかなんとか、ほのかに甘いフレーバーがただよう雰囲気が良いなーと。  絵もうまいですよね。この人。  ちなみに『小百合さんの妹は天使』の人ですね。  これは幼い頃に生き別れになった妹がなぜか(ほんとうになぜか)天使になってやって来るという甘めの百合作品で、こちらもかなり面白い。  姉妹百合が好きな人にはオススメです。実の姉を性的な視線で見まくる妹なので、ダメな人はダメだろうけれど。  いやー、オタクでも近親相姦はダメという人は大勢いるんですよね。  まあ、それはそうだろうけれど、でも、そんなありきたりのタブーには興味がないぼくなのである。  で、二作目は『あさがおと加瀬さん』。  高嶋ひろみさんという、『未満レンアイ』の作家さんによる学園百合です。  これはね、本気でいいですよ。  ある地味で目立たない女の子が同学年の加瀬さんを好きになって親しくなろうとするという、それだけの話なのですが、百合のエッセンスが詰まりまくっています。  ジスイズザ百合漫画といってもいいくらい、スタンダードで美しい百合の形がここにある。  また、加瀬さんのほうでもあきらかに下心がある目つきで主人公を見ているところがいい(主人公は気づいていない)。  まあ、普通の学園ものといえばそれまでなのですが、いいのだ、ぼくは普通の学園もの好きだから。  なんといってもほのぼのとした雰囲気が素晴らしく、何度でも読み返して楽しめるニヤニヤ漫画となっています。  続編として『お弁当と加瀬さん』、『ショートケーキと加瀬さん』があるようなので、そちらもそのうち購入するものと思います。  ボーイッシュな空気をただよわせた加瀬さんのキャラクターがいいですね。  『未満レンアイ』はいろいろな意味で「いいのか、これ?」という内容でしたが、こちらは心の戸惑いなく楽しめて良いです。  いや、『未満レンアイ』もいい漫画ではあるのだけれど、その、あの……。気になるひとはGoogleさんに聴いてください。  で、『やがて君になる』。  先日出たばかりの新刊なのですが、これがきょうの目玉。 

この頃オススメの百合漫画ですよ。
弱いなら弱いままで。

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海燕

1978年新潟生まれ。男性。プロライター。記事執筆のお仕事依頼はkenseimaxi@mail.goo.ne.jpまで。

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