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『少年マガジン』の読み切り「聲の形」を読んで吐き気を催す邪悪について考えた。(2198文字)

 今週号の『少年マガジン』の読み切り『聲の形』が何やら話題になっているらしい。読めといわれたので、読んでみました。うーん、ぼく的にはいまひとつ。  作者は『マルドゥック・スクランブル』の漫画版を手がけた描き手で、本来ならこの『聲の形』がデビュー作となるところを、この作品の掲載なしで連載を始めることになったらしい。  というのも、『聲の形』は編集部によって問題作と判断され、「これを載せてもいいのか?」という議論が起こり、一時はお蔵入りになりかけたのだとか。しかし、「この作品をぜひ掲載したい」という編集部の熱意が身を結び、最終的にはこうして掲載される運びとなったらしい。  その理由は、まあわかる。障害者がひたすらいじめられる話だからだ。物語はひとりの少女が主人公たちの学校に転向してくるところから始まる。彼女は耳が聴こえないという障害を抱えていた。ひとと少しだけ違う彼女が、いつしか大人と子供の共謀によっていじめの被害者になっていくさまを作者は克明に描いてゆく。  この作品のいじめの描写は、きわめてリアルというか、生々しい。そうそう、いじめってこうだよな、と思わせるだけの説得力がある。じっさいにいじめがこうであるかどうかはともかく、一本の漫画として完成された表現であるといえるだろう。  この作品は61ページの内容だが、そのうち50ページくらいはひたすら彼女がいじめられる話が続く。その陰惨きわまりない展開はたしかにイヤになる。人間の邪悪さというものを作者はきわめて優れたタッチで描けている。そう思う。問題はその後だ。  この吐き気を催すような物語を、どこに落着させるか? ネタバレになるからくわしいことは省いておくが(ぜひ自分で読んでみてほしい)、数年の時を経て主人公たちは再会する。そのとき、主人公の少年はいう。「あの時 お互いの声が聞こえてたら どんなに良かったか」。  ぼくはこの台詞になんともいえない違和を感じる。これだと、まるでディスコミュニケーションがあったからいじめが起こったようではないか、と。つまり彼女の耳が聞こえないところに問題があったように思えてしまう。  

『少年マガジン』の読み切り「聲の形」を読んで吐き気を催す邪悪について考えた。(2198文字)
弱いなら弱いままで。

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海燕

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