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右も左も偏見だらけ。『万引き家族』はあらゆる単純解釈を拒絶する傑作だ。
2018-06-17 02:26是枝裕和監督の映画『万引き家族』が、カンヌ映画祭で最優秀賞にあたるパルムドール賞を受賞したことが世間で話題になっています。当然ながら、ネットでも話題沸騰なのですが、一部の人は上映前からこの作品に否定的な評価を下していました。
いわく、是枝監督の政治的な発言が気に入らない、また、万引きという犯罪を美化し肯定していることが嫌だ、監督は在日韓国人なのではないか、などなど。
この手の狂った理屈の異常さについてはあらためてぼくが説明するまでもないと思うので省きます。ただ、是枝監督の該当発言は重要だと感じるので、ここに引用しておきましょう。
--経済不況が日本をどのように変えたか。
「共同体文化が崩壊して家族が崩壊している。多様性を受け入れるほど成熟しておらず、ますます地域主義に傾倒していって、残ったのは国粋主義だけだった。日本が歴史を認めない根っこがここにある。アジア近隣諸国に申し訳ない気持 -
『万引き家族』とハリウッド映画的二元論。
2018-06-07 11:0551pt映画『万引き家族』を先行上映で見て来ました。カンヌ映画祭のパルムドールを取ったことで有名になった作品だけれど、なるほど、これは傑作。
万引きでつながった切ない家族の関係と、その崩壊を描いて、視聴者に思考を強います。
ちなみに、この映画、是枝監督による発言がミスリードになっているけれど、社会の告発を目的としたものではありません。
そうではなく、もっと複雑で深淵なテーマを扱った作品です。右翼的に批判するのもばかばかしいけれど、左翼的に賞賛するのもくだらないですね。
特定のイデオロギーにもとづく批評の限界を見る思いです。
映画のなかでは、善人とも悪人ともいいきれない人間たちの卑小で愛すべき姿が描かれていきます。
ここにあるものは、「善」だとか「悪」だとかいうわかりやすい善悪二元論で人間を裁かない姿勢です。
人間は、そしてこの世の出来事は単純な善悪では割り切れないという成熟した態度
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