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反リア充革命ラノベは『涼宮ハルヒの憂鬱』の夢を見るか。

 ども。絶賛風邪ひきちう海燕です。  先ほどクスリをキメたのでだいぶ体調はよくなったけれど、まだ完調には遠い感じ。  ほんとうなら横になって体を休めるべきなのでしょうが、暇なので記事を更新します。  ほんとにこのブログはぼくにとって仕事なのか趣味なのかわかりません。このあいだ確定申告した時には「あー、そういえば、仕事だったっけ」と思い出したけれど。  さて、きょう取り上げるのは電撃大賞銀賞受賞のライトノベル『いでおろーぐ!』。  あまりインパクトのないタイトルですが、「反恋愛主義青年同盟部」を主催するひとりの少女と、彼女の活動に共鳴して同盟に入った同級生の少年のラブコメです。  ――で、ですね。いつもだとここからいかにこの作品が面白いのか詳細に説明していくところなのですが、正直、微妙な出来なんだよなー。  8000を超えるとかいうとんでもない量の応募作のなかから受賞作に選ばれているだけあって、アイディアは悪くないんだけれど、小説としての完成度はもうひとつ。  いや、つまらないわけじゃないんですよ? キラリとしたところはありますし、もし次巻が出たら買おうかなと思うくらいなんだけれど――でも、さすがに一本の長編小説として粗が多すぎ。  まず、ところどころあきらかに日本語がおかしい。  こういうのって校閲でどうにかならないんですかね。べつにライトノベルに美文は求めないけれど、基礎的な文法くらいは守ってほしいところ。  そして次に、設定に無理がある。  ちなみにあらすじを引用するとこういう話です。 「恋愛を放棄せよ! すべての恋愛感情は幻想である!」  雪の降るクリスマスイブ、カップルだらけの渋谷。街の様子に僻易していた平凡な高校生・高砂は、雑踏に向かってそんなとんでもない演説をする少女に出会った。 「我々、反恋愛主義青年同盟部は、すべての恋愛感情を否定する! 」  彼女の正体は、同じクラスの目立たない少女、領家薫。演説に同調した高砂は「リア充爆発しろ! 」との想いを胸に、彼女が部長を務める"反恋愛主義青年同盟部"の活動に参加する。やがて集まった仲間とともに『バレンタイン粉砕闘争』への工作を着々と進めるのだが――!? 「我々は2月14日、バレンタイン・デーを、粉砕する! 」  ただ、ここで書かれていない重要な要素がひとつあって、それは作中で「女児」と呼ばれている異星人の存在。  この神に等しい力をもつ(なぜか小学生女児の姿の)異星人、唐突に出て来て主人公とヒロインをくっつけようとするのですが、その理由がヒロインの反恋愛活動が彼女の目的にとって邪魔だからというもの。  なんと人類に恋愛感情を与えたのは彼女で、その目的は人類を繁殖させて地球の全生命体を絶滅に追い込むことだというのです――って、いくらなんでも無理だろ、その設定。  放っておくとヒロインの「活動」が全人類規模にまでひろがっていって人類を衰退させ、結果として人類以外の全生命を救う?  いやいやいやいや、そんなばかな。たしかに彼女の演説はちょっと面白いけれど、人類全体を衰退させるほどとは思えないぞ。  仮に紙面では伝わらない何か超能力めいたカリスマ性があると仮定しても、それならその子を殺してしまえばいいだけじゃん。地球の滅亡を企む異星人が何をためらっているんだか。  物語の最後のほうではこの女児も無敵ではなく、なるべく直裁的な手段には出たくないことが語られているのですが、それにしても邪魔者は消してしまうほうが簡単だろうに。  この点はAmazonレビューで的確に批評されています。  女児が出るまではかなりおもしろかったです。しかし領家を「『自分の利益を損ないうる現実的な脅威』と見なし、対処しようとする強大な存在」である女児を出したせいで「馬鹿な話を大真面目に」にも「馬鹿な話をとことん馬鹿に」のどっちにも徹しきれなくなってしまった感じがします。  まさにそんな感じ。  この手の「とっぴな妄想だと思われていたものが実は真実だった」というアイディアの作品は昔からたくさんあって、パラノイアSFと呼ばれたりします。  ライトノベルでも既に過去に大きな例がある。谷川流の『涼宮ハルヒの憂鬱』ですね。 

反リア充革命ラノベは『涼宮ハルヒの憂鬱』の夢を見るか。
弱いなら弱いままで。

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海燕

1978年新潟生まれ。男性。プロライター。記事執筆のお仕事依頼はkenseimaxi@mail.goo.ne.jpまで。

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