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  • 鈍感系主人公に見る萌えトレンドの推移。

    2016-01-25 14:14  
    51pt

     白鳥士郎『りゅうおうのおしごと』第2巻を読み終えました。
     将棋を題材にした異色のライトノベルです。
     主人公は十代にして竜王のタイトルを獲得した天才少年棋士。現実世界だと羽生善治さんあたりが成し遂げているだけの超偉業であるわけですが、なぜかあまり尊敬されることなく、「クズ竜王」とまで呼ばれているこの少年が、JS(女子小学生)の弟子を取ったところで前巻は終わっていました。
     この巻はその続き。ライバルがいないために伸び悩んでいる様子の弟子の前に、待望の宿敵が現れます。
     彼女と同い年のツンデレ少女。
     最強の「受け」の才能を持つこの新たなキャラクターの出現で、色々なことのバランスが揺らぎます。さて、竜王のお仕事やいかに――?
     というわけで、この巻もとても面白かったです。
     ほとんど漫画をも上回る驚異的なリーダビリティのため、あっというまに読み終えてしまいました。
     発売からしばらく経っていますが、これはKindle落ちを待っていたからなので、ぼくとしてはほぼ最速で読み終えたに等しい。
     それくらい楽しみにしていた作品だということです。
     で、今回もまさしく期待に違わぬクオリティでした。はっきりいって前巻より面白い。
     最近のライトノベルでは、とか迂闊に口にすると絶対正義のライトノベル警察に捕まるからいわないけれど、最近読んだライトノベルのなかでは非常に面白く、完成度も高い作品でした。
     あてるべきところにきっちりあてている感じ。ほぼ文句なしの出来かと。
     第1巻の時点で早くも漫画化が始まっていたりと、レーベルのほうでも相当力を入れている様子なので、順当にアニメ化まで行くといいですね。
     そうなってもまったく不思議はないレベルの作品だと思われます。
     ただ、内容的にぼくは一抹の物足りなさを感じないこともないわけで、ここらへんはほんとうにむずかしい問題だと思います。
     何もかもきれいにバランスが取れているからこその秀作なのだけれど、その上に達するためにはそのバランスを崩すほどの強烈な個性が必要になる、という気がするのです。
     「よくできました」ではどうしたって物足りなさが残る。
     これはまあ、いち読者としてのわがままに過ぎないといえばそうなのですが、殻を破るだけの存在感がないと大成しないように思うわけです。
     しかし、コメディとシリアスのバランスを維持するこの繊細なバランス感覚こそが持ち味でもあるわけで、それを崩したら作品世界全体が崩れかねないのも事実。
     だから、そこの正解はわからないのだけれど、ぼくとしては志高くもう一段上のエンターテインメントを目指してほしいな、という気持ちはあります。
     そこはほんとうに作者のさじ加減ひとつなのでしょうけれどね。
     まあ、今回も一本のライトノベルとしてはほぼ文句のつけようがないくらいきれいに仕上がった作品になっております。
     ロリコン冥府魔道へと一直線に転がり落ちていく主人公が情けない限りですが、作品の企画意図からしてしょうがないのかも。
     おかしいな、この人、現実世界の例にすれば羽生、谷川レベルの大英才であるはずなんだけれど、ちっともそんなふうに見えない。ただのロリコン棋士に見える。これは作品意図としてはどうなんだろう……。
     あと、ちょっと思ったのが、主人公の鈍感系主人公らしさがちょっと苛立たしいということ。
     鈍感系主人公は 
  • 『りゅうおうのおしごと』が見事な将棋ラノベで楽しい。

    2015-09-27 13:21  
    51pt

     白鳥士郎『りゅうおうのおしごと』読了。
     ふむ。うまい。うまいなあ。
     タイトルだけでわかる人にはわかると思うけれど、これは将棋小説。
     若年にして将棋七大タイトルのひとつ「竜王」を獲得した少年を主人公にしたライトノベルです。
     作者は農林高校を舞台にしたラノベ『のうりん!』で知られる人なので、ついつい『銀の匙』オマージュの次は『3月のライオン』リスペクトか、などと思ってしまうのですが、じっさい読んでみると将棋版『ロウきゅーぶ!』というのが近い印象。
     まだ十代の天才棋士が小学生女子の弟子を取ったことによって再びその天才を覚醒させていくお話となっています。
     いかにもライトノベルらしく漫画的に誇張された棋士たちのキャラクターといい、どれもギリギリアウトだけれど許せる範囲ではある設定といい、実にそつなく仕上がっていて、一作のラノベとしてほぼ文句のない出来。
     あえていうなら「小さくまとま