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ぼくが『月マガ』を買う気になれない理由。

 先ほど、LINEで『月刊少年マガジン』は面白いけれど特に買う気がしないよねという話をしました。  そうそう、そうなんですよね、「週刊」のほうの『マガジン』はまだ毎週買っているけれど(電子書籍で)、「月刊」の『マガジン』は特に購入インセンティヴを喚起されないのです。  一作一作のクオリティは相当に高いと思うんだけれど、なぜだろう。  ――いやまあ、考えてみるべくもなく理由はあきらかで、雑誌の雰囲気が古いんですよね。  ひとつひとつの作品を見て行くと面白いんだけれど、一時代前の感性で描かれている作品が多い気がするんですよ。  それでも『四月は君の嘘』が連載されていた頃はそれ目あてで読んだりしていたけれど、いまは雑誌として相当に古びてしまっている印象です。  やっぱり「いま」の時代とシンクロしている作品を読みたいです。  何が「いま」を表現しえているかという話はもちろん微妙なんですけれど、少なくとも何十年も前に始まった連載が「いま」を表しているということは少ないでしょう。  まあ、これも一概にいえないのは、むかしむかしに始まった連載が表現のアップデートをくり返して立派に「いま」に通用する作品に仕上がっている例があること。  とはいえ、『鉄拳チンミ』とか苦しいところではありますよね。頑張っているし、面白いんですけれどね。さすがに古い。  ただ、その時代とシンクロしていることだけが唯一の価値かといえば当然そんなことはないわけで、普遍的に面白い作品というものもある。  それでも、雑誌全体が時代と切り離されてしまうと、これは苦しいですね。  やっぱり「いま最先端の、押さえておかないといけない漫画はこれだ!」といったものが一本でも載っているとそれだけで違う。  『3月のライオン』のためだけに『ヤングアニマル』を買っているぼくがいうのだから間違いない。  「いま」の時代の問題とシンクロしている漫画は、やっぱり「いま」読みたくなるわけで、雑誌の切り札となりえる。  べつだん、『月刊少年マガジン』の悪口をいうつもりはないんだけれど、『月マガ』は特に「いま」、読まないといけないと思わせる作品は載っていないと思うんだよなあ。  くり返しますが、一作一作のクオリティは悪くないんですけれどね。  でも、『なんと孫六』の読み切りを読むために雑誌を買わないよなあ、と。  まあ、やがては 

ぼくが『月マガ』を買う気になれない理由。

新作を読んでもらう場としての発表媒体の機能が低下している(と思う)。

 ぼくはしょっちゅう「何か新作を読みたいなあ」、「まったく見ず知らずの、でも面白いエンターテインメントにふれたいなあ」と呟いています。  おそらくそういう話を聞くと「じゃあ、読めばいいじゃん」と考える人もいるでしょう。  しかし、これが意外にむずかしいんですよね。  なんらかの既存の作品の延長線上にある作品はその面白さを把握しやすく、購入意欲を高めやすいけれど、そうでないまったくの新作は買うのに勇気がいる。読むのに挑戦心がいる。  どうしたってついつい既に面白いとわかっているシリーズものの続きなどを読んでしまう結果になりがちです。  つまり、面白い新規作品を探し求める読者としては、市場にまったく知らない新作が出て来たとき、何を根拠にしてその本を買うか? 読むか? という問題があると思うんです。  これを作家側の視点でいうなら、まったく世に知られていない新作を何をとっかかりにして買って読んでもらうかということでもある。  この問題を解決できない本は売れないと断言できます。なぜなら、だれもその本を買うべき理由を見いだせないから。  もうちょっと格好つけるなら購入するインセンティブがない、といういい方になるのかな。  したがって、本を売る側はなんらかの情報を本に付与して購入意欲を高める計算を働かせる必要があります。  最も基本的なところでは、「作家の名前」があります。  以前読んだ作品と同じ作者の本なら、きっと面白いだろう。読者側がそう判断して買ってくれることを期待するわけですね。  本に作家の名前を載せるなんてあまりにもあたりまえのことではありますが、それにも購入意欲向上因子としての役割があるのです。  あとは「表紙」もその因子として機能します。  ライトノベルなどでは非常にわかりやすいですが、きれいなイラストが付いている本は面白いのではないかと思いたくなる。  そしてまた、「帯」や「あらすじ」なんかも重要ですね。  帯の推薦文を読んで買うことにする人とか、あらすじを読んで面白そうだったら買う人というのは、そう多くはないにしろ一定数はいることでしょう。  さらには「レーベル」などもあります。  あるレーベルから出ている本であればそのレーベルを信頼して買うという人はいますよね。  ほかにもあるでしょうが、まあ読者はだいたいこういった要素から本の内容を予測して買うことにしている。  逆にいうと、これらの要素に買うべき理由を見いだせなかったら買わないのです。  で、いち読者として思うのですが、この頃、その「まったくの新作を買うべきだと判断する」ことがちょっとむずかしくなってきてね?という気がするのですよ。  どういうことか。 

新作を読んでもらう場としての発表媒体の機能が低下している(と思う)。
弱いなら弱いままで。

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海燕

1978年新潟生まれ。男性。プロライター。記事執筆のお仕事依頼はkenseimaxi@mail.goo.ne.jpまで。

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