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『爽年』。しずかに優しく奏でられる生と性のムジーク。
2018-04-27 03:5751pt石田衣良の『爽年』を読んだ。前回で紹介した『娼年』の続編で、この連作の完結編だ。
主人公リョウの人間としての成長と、物語のドラマツルギーはほぼ前作までで終わってしまっているので、今回はささやかな後日譚、あるいは黄金のハッピーエンドへつづく長いエピローグといいたいような一冊にしあがっている。
何とも芳醇かつ流麗、しかもすこぶる技巧的な小説で、読み進めることの幸せを目いっぱい味わえる。
作家はだれもが、その技巧の巧拙はともかく、それぞれの文体をもっている。石田衣良のスタイルは、シャープでありながら鋭すぎることなく、古い時代の宮廷音楽さながらの柔らかさを備えていて、やたらに心地よい。美しい川のせせらぎを聴くような静穏な幸福感。
テーマはあくまでセックスだが、この巻ではついにリョウは「性の不可能性」の領域へと足を踏みいれる。
それは、たとえば幼年期に虐待を受けた拒食症の女性の姿を取って -
松坂桃李主演の映画『娼年』は清冽なエロティシズムただよう佳編だ。
2018-04-23 22:02最近、Bluetoothのワイヤレスイヤフォンを購入したので、iPhoneに繋ぎ、音楽を聴くかたわら、石田衣良のポッドキャストを聴いている。
定番の人生相談なのだけれど、回答の冴えがさすがに素晴らしく、聴いていてとても楽しい。
まったくキャラクターは違うものの、平気で「その男はクズだから、別れたほうがいいよ」などとアドバイスする突き放した距離感がふしぎとちょっとペトロニウスさんを連想させる。意外と毒舌なのである。
それにしても、ほんとうによくバランスの取れた人だ。ただクールでセンスが良いだけの人物なら他にもいるだろうが、この人は優しさと冷ややかさのバランスが絶妙である。さすがに20年もベストセラー作家を続けている人はちがうとしかいいようがない。
相談内容は多岐にわかっているものの、当然というべきか、恋愛とセックスの話が多く、他人の恋愛話を聞いたり読んだりすることが好きでならないぼ -
新しいアニメ版『銀河英雄伝説』は構成に工夫を凝らしてきている。
2018-04-23 02:4651pt新しくなったアニメ版の『銀河英雄伝説』を見ています。これが面白い。原作とも以前のアニメとも構成を変更してきていて、原作ファンの目から見ても相当に工夫が凝らされていることがわかります。
原作はぼくの読書人生でも屈指の大傑作だけに、最後までこの調子で行ってほしいものですね。
『銀英伝』の傑作たる所以はいくつもありますが、まずひとつは完結していることです。
そもそも大長編群像劇って基本的に完結できないものんですよ。一定以上に大規模な群像劇はあるキャラクターの行動がべつの行動を生み、また、登場人物が増えれば増えるほどその行動を描くために紙幅を要するため、際限なく長くのびていき、最後には未完に終わることがほとんどなのです。
だから『グイン・サーガ』も未完だし、『十二国記』も未完、海外だと『氷と炎の歌』も未完ですよね。
その意味で、600名以上もの名前のあるキャラクターを抱えた『銀英伝』が -
マッチョなセクシュアリティの陥穽。
2018-04-16 10:3251ptNetflixでドキュメンタリー動画を見るのが読書と並ぶ最近の趣味なのですが、昨日、『フリーセックス -真の自由とは?-』という作品を見ました。
現代は「LIBERATED」で、春休みにビーチへ出かけてセックスを求めるアメリカの若者たちを描いた内容となっています。
この動画を見ると、アメリカには非常にマッチョな文化と同調圧力があるのだなあ、ということがわかる気がします。
もちろん、ここにアメリカのすべてが描かれているはずはないのですが、それにしても、この作品で描写されているマッチョな価値観の若者たちの姿は衝撃的です。
「酒とセックスがすべて」。「女はみな本当は服を脱ぎたがっている」。そのような意味のことを平然と口にし、セクハラに走りつづける青年たちの姿、そしてそのような若者たちに疑問を感じながらも結局は受け入れてしまう少女たちの姿は、見ていてため息をつきたくなるようなものがありま -
幸せを見つけ人生を充実させるためにはどうすればいいの?
2018-04-16 09:2551ptどもっす。
ペトロニウスさんの『宇宙よりも遠い場所』の記事が面白いです。
この作品は前期のアニメのなかでもおそらく最も話題になったもののひとつで、文脈的にも作品的にもとても面白いので、未見の方はぜひご覧になってください。
いわゆるゆるい日常系の文脈に慣れた人ほどサプライズが大きいと思います。
ちなみに先日、石田衣良さんのポッドキャストを聴いていたら、このアニメが今期のお奨めとして取り上げられていて、ちゃんと見ているんだ!と驚きました。
さすがに、第一線を走る作家は時代の最先端をキャッチする能力に秀でていますね。そうでないと『池袋ウエストゲートパーク』みたいな小説は書けないんだろうな。いやはや、すごい。
話を戻しますと、この記事で面白かったのは、ここですね。
順番が逆だったんです。
孤独を恐れずに、好きなことを探し出して、そこで充実を得る。いってみれば、自分を内発性を探す。内
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