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タグ “SF” を含む記事 14件

『攻殻機動隊新劇場版』は草薙素子の血まみれの青春を描く傑作映画。

 どもです。ちゃんと起きたよ! ついさっきiPhoneのアラームで起きて、いまこの記事を書いているところです。  昨晩から今朝にかけて『攻殻機動隊新劇場版』を見たので、とりあえずその評価を書いておきましょう。  うん、面白かったですよ。この『新劇場版』は全5作のOVAシリーズ『攻殻機動隊ARISE』から直接に繋がる作品です。  個人的な意見としては『ARISE』は全体的にもうひとつの出来だったと思っています。  なんといってもわかりにくい。超複雑に入り組んだ設定はまあいいのですが、だれがどの陣営でだれの味方で敵なのか、そもそもそれぞれの陣営がどういう関係にあるのか、ほとんど説明なしで展開するため、最後まで見ても「……よくわからにゃい」という感想になってしまう。  これは「難解」というのとは違うと思う。「不親切」というべきです。  あまり説明しすぎるとダサくなるので視聴者の理解力を高く見積もるぜ!という方法論なのはわかるのですが、それにしても説明を省きすぎだったのではないでしょうか。  いったい初見でこの物語で何が起きているのかその全貌を正確に把握できる人がどれくらいいたものか。  冲方さんのシナリオなんですけれどねー。  もうひとつ、ヴィジュアル的に新鮮味がなかったこともマイナスです。  現実はそのあいだに大きく変化したというのに、作り手の想像力が『STAND ALONE COMPLEX』の時点から進歩していない。  結果として『攻殻機動隊』の世界そのものが相対的に古いものになってしまっていると感じました。  『攻殻機動隊』というコンテンツそのものは80年代末に始まったものであるわけで、いってしまえばごく古いのです。  押井守や神山健二といった才能ある作り手たちがそれをそのつどアップデートしてきたからこそいまがあるといえる。  しかし、『ARISE』はそのアップデートを行っているようには思えなかった。そこで、ぼくの『ARISE』への評価は低くなってしまうのですね。  やはり押井守や神山健二といった突出したクリエイターの作品でないとダメなのかな、と思わされました。  ところがところが、この『新劇場版』はまず傑作といっていい出来なのです。  特別に映像的な新味がないことは変わっていないのですが、ストーリーが比較的わかりやすい。  総理爆発暗殺事件から始まって、草薙素子と同じ義体を使うなぞの人物の登場、素子たちの捜査、敵陣営への進攻へと進む展開はスピーディー。サスペンスフルで面白いです。  『ARISE』を通して進化してきたロジコマが、ここに来て『STAND ALONE COMPLEX』のタチコマ並みの知性を見せているあたりもポイント。  「2902熱光学迷彩、京レ制の最新型だ」といった長年のファン向けのセリフも楽しい(『新劇場版』は原作よりも前の話なので京レの、「隠れ蓑」もまだ最新型というわけです)。  そしてついに『ARISE』から長々とひっぱってきた「攻殻機動隊」公安九課誕生秘話が語られます。  これも無理がない流れ。なぞの「ファイアスターター」との対決はスケール感もあるうえ、迫力満点です。  『ARISE』のときはいまひとつはっきりしなかったこの新シリーズ独自のオリジナリティもこの作品でははっきりしている。  『STAND ALONE COMPLEX』のとき、神山監督は「押井版の素子たちより15歳若く演じてください」と注文したそうですが、『新劇場版』の素子たちはさらに若いのです。  つまり、この『新劇場版』は「草薙素子たちの青春」ともいうべき物語に仕上がっているということ。  のちに攻殻機動隊を指揮しかずかずの難事件を解決していくことになる「超ウィザード級ハッカーにして世界有数の義体使い」である天才捜査官も、この時点ではまだ未熟。配下のバトーたちとの絆もまだ万全ではありません。  しかし、 

『攻殻機動隊新劇場版』は草薙素子の血まみれの青春を描く傑作映画。

戸田誠二のSF短編集『説得ゲーム』は切々と胸に染み入る良作ぞろい。

 SFという言葉が何の頭文字なのかご存じだろうか。  正解はもちろん「サイエンス・フィクション」であるわけだが、意外に知らない人も少なくないかもしれない。  SFとはサイエンス(科学)のフィクション(物語)なのである。  戸田誠二『説得ゲーム』は、高度に発達した科学が垣間見せるさまざまな人間模様を感動的に描き出したSF短編集。  収録作は「キオリ」、「タイムマシン」、「NOBODY」、「説得ゲーム」、「クバード・シンドローム」の五作。  意外性のあるアイディアから生まれた、切々と胸に染み入るような力作ぞろいだ。  「キオリ」は肉体を失い、脳だけで生きることになった女性と、彼女を検査する研究者の話。淡々と進む展開の果てに哀切な結末が待っている。  「タイムマシン」はタイトル通りタイムマシンネタのショートショート。わりと無茶な話なのだが、ふしぎと心に響く。  「NOBODY」は別人の肉体に脳を移植された青年の話。個人的にはこれがいちばん好きだ。自分の身体をなくしたあと、一から生きなおそうとする主人公の姿に励まされる。  「説得ゲーム」は自殺しようとする女性を説得するゲームを巡る話。生きる意味とは? 生きなければならない理由とは? 物語はしずかに問い掛けて来る。  「クバード・シンドローム」はこの本で最高の異色作だ。「クバード法」と呼ばれる方法で男性が妊娠できるようになった時代に、妊娠・出産に挑むひとりの男の変わって行く心理を描く。  これは非常に面白かった。男性の妊娠とはもちろん特別に目新しいアイディアではないが、戸田はていねいに子供をみごもることになった男性の心を追いかけていく。  心あたたまる結末も含めて、優れた作品だと感じる。  この五作を通して伝わって来るのは、人間のほのかなぬくもりのようなものだ。  全作とも、アイディアだけなら特筆するべきものではないかもしれない。  もっと突飛なことを考え出す作家はいくらでもいるだろう。  しかし、 

戸田誠二のSF短編集『説得ゲーム』は切々と胸に染み入る良作ぞろい。

神山健二監督の最新作『ひるね姫』が楽しみすぎる。

 神山健二監督の最新作『ひるね姫 ~知らないワタシの物語~』の情報が発表されました。 http://www.oricon.co.jp/news/2070289/full/  『009 Re:Cyborg』以来の劇場映画です。  前々から、「神山監督いま何しているんだろ?」とは思っていたのですが、この映画の準備をしていたのでしょう。  いちファンとしては楽しみなことこの上ありません。  2017年劇場公開ということなので、必ず見に行きたいと思います。はい。  神山監督は出世作『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』から一貫して「正義とは?」、「この社会で正義を貫くためにはどうすればいいのか?」というテーマを描いてきました。  じっさい単純ではありえない問題です。  『攻殻機動隊』ではシンプルに青くさい正義を実行しようとした青年・アオイの行動が模倣され、利用され、拡散していくさまが描かれました。  その続編『攻殻機動隊 S.A.C. 2nd GiG』では難民の英雄となった男クゼの想いが大国の都合で圧殺されるようすが語られています。  神山監督が常に注目するのは、正義をなそうと努力しつづけているにもかかわらず、まったく報われないまま孤独に戦うしかない個人の姿です。  そのテーマは『東のエデン』においてはより先鋭化し、日本を救うため行動したにもかかわらず、その救おうとした人々から裏切られ、攻撃されるに至った滝沢朗の物語が綴られました。  神山監督のこのテーマは、クリストファー・ノーランの『ダークナイト』にも一脈通じるものがあるでしょう。  純粋な正義を求めれば求めるほど、悪として糾弾されなければならないというパラドクス。  神山作品のなかでそれぞれのヒーローたちは傷つき、倒れ、また立ち上がり、しかしまた傷つき――といったことを限界までくり返します。  その悲壮感ただよう姿と、それでもこの矛盾を解決しようと努力する精神性が、神山アニメを無二のものにしているのだと思います。  この正義の矛盾は『009 Re:Cyborg』ではついには主人公・島村ジョーが「答えていただきたい! 神よ!」と神その人に問いただすまでになり、極限まで突き詰められた感があります。  もしかしたら『ひるね姫』でもそのテーマが続くのかもしれませんが、いったん仕切り直してあらたな世界を描くことには意味があると思います。  テーマを深く掘ることにかけては現役アニメ監督のなかでも出色の才腕を持つ人だけに、『攻殻機動隊』や『東のエデン』に匹敵する傑作を期待したいところです。  どうなるかな?  『ひるね姫』は 

神山健二監督の最新作『ひるね姫』が楽しみすぎる。

究極の異世界ファンタジーとは。

 山本弘さんが「現代日本の異世界ファンタジーの多く」を批判的に語って話題になっているようです。 http://togetter.com/li/952223  いきなりですが、この意見が、炎上とは行かないまでも賛否を呼ぶ背景には、わりと典型的なディスコミュニケーションの問題がある気がしてなりません。  というか、ある意見が非難を集めるときは、しばしばそこに何かしらの誤解が生じていると思うのですよ。  これは非常にむずかしい話ではあるとも考えるのですが、だれかの意見を理解しようとするときには、ただ言葉の表面だけを追っていけばいいというものではなくて、その奥底にある「その人がほんとうにいいたいこと」を慎重に探っていかなければなりません。  しかし、それと同時に、かってに憶測をたくましくして、その人がいってもいないことをわかったと思ってはいけないのです。  この一見矛盾する条件を満たそうと努力することが「読む」ということなのであって、ただあいまいな印象だけを受け取るとそこに誤解が生まれます。この場合もそのパターンだと思う。  論者である山本さんとそれを批判するほうで、認識にずれが生じている可能性が高い。  ぼくはこういうやり取りを見るたびにもう少しどうにかならないかなあと思うのです。  情報を発信する側と受け取る側のどちらに責任があるともいえないし、またどちらにも責任があるともいえるというケースだと思うのですが、責任の所在はともかく、あまりにも話が不毛すぎる。  だれもが自分だけは正しい、自分だけは正確にひとのいわんとするところをわかっていると思い込んでいて、結果として誤解が広まっている。  このパターンを、いったいどれくらい見てきたか。  ネットで「議論」とか「論争」と呼ばれているものの正体は、大抵が放置されたディスコミュニケーションに過ぎないのではないかと思うくらいです。  こういうやり取りを見ていると、簡単にひとのいわんとするところを理解したつもりになってはいけないのだなあと思いますね。  もちろん、ぼく自身、山本さんのいわんとするところをわかっていると思ってはいけなくて、誤解が生じていると思うこと自体が誤解なのかもしれませんが……。  それはともかく、「どうも現代日本の異世界ファンタジーの多くは(もちろん例外もあるが)、「異世界」じゃなく、「なじみの世界」を描いてるんじゃないか」という意見は、ある程度は正しいものだと思われます。  山本さんは作家ひとりにつきひとつの世界があってもいいという前提で考えているわけで、それに比べれば「現代日本の異世界ファンタジー」の多くはよりシンプルに規定された世界を描いているに過ぎない、これは想像力の貧困じゃないか、という指摘は、まあありえると思う。  問題は 

究極の異世界ファンタジーとは。

アニメ『ガラスの花と壊す世界』を観たが、よくわからなかったよてんてんてん。

 プレイステーションストアで『ガラスの花と壊す世界』を観ました。  先日まで劇場公開されていた作品ですね。  『コードギアス 亡国のアキト』もそうですが、この手の最新の作品をすぐにネットで落として観れることは実にありがたい。  なかなかそうはいかないのだろうけれど、ほかの作品もこういうふうになってくれると嬉しいですね。  で、作品内容の話なのですが、結論から書くと、このアニメ、見なくてもいいです(笑)。  少なくともぼくはそう思う。Amazonなんかだとわりと評価が高いのですが、それはそもそも褒めるような客層しか観ていないからではないでしょうか。  たぶん、一般の客層が見たら「ぽかーん」となるに違いありません。それくらい初見ではよくわからない感じ。  もちろん、ちゃんと細部に注目してくり返し見ればある程度は内容の推測ができるのですが、そこまでしたくなるほど魅力のある作品だとはぼくは思えませんでした。  ぼくの場合、それでも記事を書くため二回続けて観たのである程度は理解できるようになりましたが、初見ではやはり「ぽかーん」でしたから。  普通はそこで投げるよな。  よく見ていくと突然に挿入されるカットのひとつひとつに意味があることがわかるのですが、すぐにはそこまで把握できないよなあ。  ちゃんと一回観ただけで事実関係が把握できるようにしてほしかった。  いや、お前がもっと注意して観ていればいいのだといわれればそれまでですが、でも、この作品の場合、奇妙な難解さに意味があるようには思われないのですよね。  もちろん、情報量が膨大だったりすぐには意味が読み取れない映画はいくらでもあります。  でも、それらのなかで名作と呼ばれるものはわからなくてもわからないなりに面白く観れるように作ってあると思うのです。  『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』とか、細部は何がなんだかよくわからなくても映像の凄さで一定のカタルシスはあるわけで、やっぱりエンターテインメントはそうでないといけないと考えるのですよ。  「難解だからダメ」とひと言で切り捨てるつもりはないけれど、この映画の場合、視聴者に対する姿勢が不親切だったなあと思わずにはいられません。  何か壮大なSF的ヴィジョンがありそうにも思えるのだけれど、視聴者の側で想像力をたくましくしないとそれはわからない。  いわゆる「脳内補完」と呼ばれる作業が必須なのです。あまりにもよくわからないシーンが頻出するので途中で考えるのをやめたくなるのもほんとうですが。  この作品、そもそも、 

アニメ『ガラスの花と壊す世界』を観たが、よくわからなかったよてんてんてん。

ネットフリックスを利用してみました。

 一部で話題騒然のNetflix(ネットフリックス)に登録、利用開始してみました。  ご存知ない方のために一応説明しておくと、ネットフリックスはアメリカを初め世界中で6500万人の会員を持つ動画配信サイト。  各国での成功の余波を駆ってこのたび日本に上陸することになった模様。  いままで日本ではこの種のサービスというとHulu(フールー)などがあったわけだけれど、いまひとつ成功しているようには見えない。  さて、ネットフリックスがHuluとどう差別化してきているのか、ちょっと試してみることにした。  結果的にいうと、まずまず使い勝手のいいサービスだと感じた。  会員登録にクレジットカードの登録などが必要になるのはしかたないとして、その後はきわめて快適に動画を見れる。  コンテンツは思ったほど充実しているようには感じられないが、それでもけっこうな数の動画があり、しばらくの間は暇つぶしに困らないくらいには感じられる。  数千作品くらいかな? 海外/国内の映画、ドラマなど、盛りだくさんだ。  噂のネットフリックスオリジナルコンテンツはまだ目立たないが、今後、ベストセラー小説『火花』の映像化作品を流すなど果敢にチャレンジしていくつもりではあるらしい。  操作はきわめて簡単で、動画が途中で停止するなどということもない。  非常にスムーズに映像体験を楽しめる。これが700円程度で利用できるのはたしかに安いかも。  とりあえず『グランドアトラス』、『横道世之介』、『船を編む』、『フィリップ、君を愛してる!』あたりをマイリストに入れて確保しておくことに。  レンタルビデオを途中まで見て返却してしまったままになっていた『カラスの親指』があったのは収穫。  やはり、なかなかいいサービスかもしれない。  日本語と英語を簡単に切り替えられるところもいい。  ただ、Huluと比べたとき、そこまで決定的な差があるというふうには感じられない。  このままだとやはり「知る人ぞ知る」サービスのまま終わることになるのではないだろうか。  むしろAmazonが今月スタートする動画配信サービスのほうが可能性があるのではないか、とも思える。  今後、ネットフリックスがどう次の手を打ってくるのか注目だ。  このままでは、日本での成功はおぼつかないだろう。というか、どうしてアメリカで大成功したんだろ、これ。  で、そのネットフリックスを使ってさっそく動画を一本フルで見てみた。 

ネットフリックスを利用してみました。
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海燕

1978年新潟生まれ。男性。プロライター。記事執筆のお仕事依頼はkenseimaxi@mail.goo.ne.jpまで。

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