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『フルバ』にも『カレカノ』にも罪はない。少女漫画と「真実の愛」幻想。
2016-09-20 07:5551pt
恋愛工学に始まった「ナルシシズム/エロティシズム」の話は前回で一応完結しているのですが、今回はおまけ篇として宿題になっていた少女漫画の話を書いておこうと思います。
まずは、「『彼氏彼女の事情』『フルーツバスケット』がアラサー女子の恋愛観にもたらした闇」という記事を引用しましょう。
http://papuriko.hatenablog.com/entry/2016/09/13/184709
タイトル通り、少女漫画往年の名作『彼氏彼女の事情』と『フルーツバスケット』を扱った記事です。この記事によると、両作品には以下のような共通点があるとされています。
・女子(主人公)が努力家、優等生、いい子
・男子(恋の相手)が特別な存在(人気者、特殊能力あり)
・でも男子は「過去のトラウマ」を抱え、心の闇を持っている
・男子、トラウマが爆発した時、女子を傷つけて避ける
・女子、そんな男子を偉大なる -
ふたりだけの地獄。ふたりだけの聖域。
2015-08-14 03:0351pt
どもです。
迷いに迷った挙句、なんとか新品パソコンを注文しました。
しかし、じっさいに商品が届くまでにはまだしばらくかかるでしょう。
しかたがないので、iPadで書いて、壊れかけのパソコンで更新する方式を採ろうと思います。
まだしばらくこのパソコンが保ってくれるといいのですが……。
さて、きょうは最近読んだ漫画の話でも。
マツモトトモ『インヘルノ』。これが、面白い。
この頃読んだ漫画のなかでは傑出した緊迫感。
画力がテーマに追い付いていないといわれればその通りなのだけれど、そこは気にしない方向で読むと、非常に楽しめます。
物語は高校生の姉と弟が再開するところから始まります。
姉は何をやらせても完璧な美少女。弟はどこか野獣の気配を残した少年。
この姉とこの弟は運命的に惹かれ合い、やがて結ばれてゆきます。禁忌を超えて。
そして、ふたりはどうなるのか?
いわゆる近親相姦ものの一類系ではありますが、物語の本質はそこにはないでしょう。
どうしようもなく愛し合ってしまった者たちの絶望、とでもいうべきものがこの作品を傑作にしています。
『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』の結末はあれはあれでとてもよく考えられたものだったと思うのだけれど、あの先にもう少し進んでいたらどうなっていたか、それを見たいと思う人はぜひこの漫画を読んでみてください。素晴らしい出来です。
なんといっても姉のキャラクター造形が秀逸。
生まれつき何もかも持ちあわせていながら、まさにそうであるために何も愛していない少女。
人並み以上の感性はある。ひとを好きになることもできる。しかし、それにもかかわらず、ちっともその対象を愛していないのです。
表面だけ完璧に仕上がった美しい人形、とも取れる。
ところが、その人形はたったひとりの弟と再会することによって、なまめかしく生まれ変わります。まるでピグマリオンの神話のように。
そして、ふたりの世界を守るため、静かな戦いを始めるのです。
そこに倫理や道徳は一切関わってきません。たくさんの人を傷つけることになるかもしれない。すべてを失う羽目になるかもしれない。
聡明な彼女にそのことがわかっていないはずもない。それでも、まさにどうしようもなく止められない想い、そして渇き。
作家はていねいにていねいにそのふたりだけの地獄(インヘルノ)を描いて行きます。
お互いにとってお互いがすべて。世界など、滅び去るがいいといわんばかりの頽廃的な関係は、はたしてどこに着地するのでしょうか?
ふたりの聖域。決して知られてはならない関係。思わず魅せられる物語が展開します。
作中、 -
至高のハイファンタジー『Landreaall』を語る。
2015-07-26 02:5051pt
王の首というものは
いつか国民全員の命と引き換えに
落ちるためにあるのさ
昨日発売だった『Landreaall』最新の26巻を読み終えました。
クレッサール編がクライマックスを迎える巻で、うん、この巻はすごく面白かった。
ひさびさに『Landreaall』の凄みであるところの「どこにつながっているかわからない伏線」の面白さが炸裂した巻だったと思います。
このままこの巻の面白さについて語っていってもいいのですが、『Landreaall』自体読んでいない人もたくさんいらっしゃると思うので(というかそういう人のほうが多数派であるはずなので)、この作品全体のことを紹介したいと思います。
まあ、ぼくは数年前から絶賛している作品なので、ぼくのブログを長い間追いかけている人は知っているでしょう。
おがきちかさんの冒険ファンタジー漫画です。
ひとことで冒険ファンタジーといってもいろい -
非モテ男、オトナガール向け少女漫画雑誌にハマる。
2015-06-23 06:2051pt
ひとが食べているラーメンはとても美味しそうに見える。ひとが読んでいる漫画はとても面白そうに思える。これ、すなわち天地(あまつち)の法則なり。
そういうわけで、このあいだてれびんが面白そうに読んでいた『AneLaLa』を読んでみることにしました。
ちなみにKindleだと第3号まで0円という太っ腹さ。さっそくそこまで落としました。
「『LaLa』のお姉さん」を意味すると思しいタイトルからもわかる通り、かつて『LaLa』や『花とゆめ』で描いていた作家さんたちを集めた『LaLa』の増刊ですね。
ということは当然ながらその作家さんたちは一世代前の白泉社少女漫画の看板作家だった人たち。森生まさみさんとか橘裕さんとか。
ちょうどぼくの世代の白泉社少女漫画のイメージは彼女たちの漫画でできているといっていい。
で、ひさしぶりにその人たちの読んでみたわけですが――う、うまい。うまーい。やだ、この人たち、漫画が上手。
いやまあ、ある意味、あたりまえなのですが、でもうまいよー。
特に津田雅美作品の完成度やばい。もともとうまい人だったけれど、なんか異様に洗練された感じ。
素晴らしくスマートな世界を楽しむことができます。
ほかにも斎藤けんさんとか筑波さくらさんとか、ぼくこの人たちの漫画読んでいたなーなつかしーという作家さんたちが目白押し。
『AneLaLa』よりさらにひと世代前の少女漫画家たちを集めた『メロディ』なんかを読んでも思うけれど、この人たち、あきらかにいまの白泉社の若手少女漫画家より実力上だよね。
いいかげん少女漫画としては賞味期限切れになっていてもおかしくないベテランぞろいのはずなんだけれど、どういうわけかいまなおみずみずしい作品を読ませてくれます。
ああまったく、36歳ハゲ(円形脱毛症)オヤジになってどうして少女漫画でときめかないといけないのか?
それもこれもみんなてれびんのせい。朝の番組でやっている星占いでてんびん座が最下位になるよう呪っておいてやろう。
いや、てれびんがてんびん座かどうかしらないけれど、ほら、音が近いから。てんびん座の皆さんごめんなさい。
しかし、面白いなー。とりあえず3号まで読んでしまったので続きの4号を買うことにします。
雑誌は紙で買い集めると邪魔になるからKindleでちょうどいい。ひさしぶりに少女漫画の甘酸っぱい世界にひたれます。
いやまあ、現実に帰ってくると36歳未婚非モテのおっさんでしかないんですけれどね……。
いいじゃないか、少女漫画を読んでいるときくらい現実を忘れても。
漫画のページをめくっているそのとき、ぼくは男でもなければ女でもないただの「観察者」。
ひたすらに物語世界を見守り、その展開に一喜一憂してはページをめくる「傍観者」なのです。
もうたぶん一生恋の機会はないだろうと思うと泣きたくなるわ。うるうるうる。ああ、何もいいことのない人生だった。漫画は面白かったからいいか。
さて、
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