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記事 3件
  • 天才山田風太郎、奇跡の最高傑作を漫画化! 官能と酸鼻の『十 忍法魔界転生』を読め。(2109文字)

    2013-10-08 07:00  
    53pt




    【柳生十兵衛登場!】
     せがわまさき『十 忍法魔界転生』の最新刊が出ました。
     表紙は柳生十兵衛のさっそうたる英姿! いまどきの漫画ではあまり見かけなくなったどこまでも男くさいキャラクターですが、いや、格好いい。
     前作『Y十M』を読んでいるひとは知っている通り、最強の剣客にして義侠心あふれる風来坊、柳生家一万石の嫡男でありながら剣に生きることを選び、家を捨てて呑気な暮らしを楽しんでいる男――それが我らが柳生十兵衛三厳です。
     なんといままで長々と物語に登場してきたキャラクターたちは、すべてかれの「敵」であるに過ぎません。
     主人公が登場するより前に延々と「敵」の話が続く。この異様な構成こそが、天才山田風太郎の伝説的傑作『魔界転生』の本領です。
     果たして、ついに姿を表した十兵衛の活躍や如何に? そして宮本武蔵、天草四郎ら魔界転生衆の暗躍は? 物語は長い長い序章を終え、ようやく本筋へと入っていきます。
     『魔界転生』は、『柳生忍法帖』、『柳生十兵衛死す』と並び、俗に云う「柳生十兵衛三部作」を構成する作品です。
     この三作、主人公が柳生十兵衛であること以外に共通点はないのですが、そのおもしろさは無類。
     特に『柳生忍法帖』と『魔界転生』の二作はこの天才作家の絶頂期に書かれているだけあって、ほとんど神がかった面白さを誇っています。
     よく使われる表現だけれど、「これから読むひとがうらやましい」と心底思える作品です。
     云ってしまえばただのチャンバラ小説で、剣の天稟に恵まれた侠客柳生十兵衛が、悪漢どもをバッタバッタと斬り捨てていくという、それだけといえばそれだけの話ではあります。
     ところが、これが凄まじいテンション。一読巻を置く能わずとはこの作品のためにある言葉です。

    【忍法帖シリーズ】
     そして、この三作は山田風太郎の長い長い「忍法帖」シリーズに含まれています。
     忍法帖とは! 漫画 
  • 忍法魔界転生! 鬼才山田風太郎、伝説の最高傑作をせがわまさきが漫画化する。(1992文字)

    2013-05-25 17:04  
    53pt




     暗黒と酸鼻の地獄編はつづく。『十 忍法魔界転生』と題された長編伝奇漫画、第二巻である。
     原作『魔界転生』は〈柳生十兵衛三部作〉の第二作にあたり、天才山田風太郎の数ある名作のなかでもさらに抜きん出た珠玉の金字塔、空前絶後の歴史的大傑作だ。
     この世に怨みを遺して死んでいった剣客たちが、女体を突き破りふたたび生まれ変わるという大奇想「忍法魔界転生」を軸に、剣侠、柳生十兵衛と魔界転生衆の壮絶無比な死闘を描いている。
     山田風太郎作品の特色であるエロスとバイオレンスは、この作品において、いっそう凄絶を極める。
     天草四郎や宮本武蔵を初めとする天下の大剣客たちが、飽くなき生命への執着からこの世に蘇ってきて、だれが天下無双かと戦いつづける。その天外の着想を、凄絶かつ艶かしい展開が彩っている。
     それにsちえもせがわまさきの描く女性たちは皆、一様に美しくも艶っぽい。いったいせがわまさき以外の何者が、『魔界転生』を漫画の形で生み出すことができるだろう。
     もちろん、いままでも山田風太郎作品はたびたびメディアミックスされてきた。それというのも、山田の小説が高度に視覚的で、いかにも画像や映像にふさわしいように思われるからだ。
     しかし、駄目なのだ。山田が綴る物語は、あくまで山田の超絶の文章があって初めて成立するものであって、絵にしてみた途端、その秘密の魔法は解けてしまう。
     一見するとこの上なく漫画にふさわしいように思えながら、風太郎世界を漫画に移し替えることは決してたやすくないのである。
     だが、見よ、この『十 魔界転生』は『魔界転生』の、あの妖異変幻な世界を紙上に生み出しえているではないか。それぞれに肉感的な男たちの、女たちの姿に魅了される。
     ただ剣士として最強であるのみならず、その人品においても最高であるはずの男たちが、次々と「魔界に転生したい」と望み、生前の人徳をすべて捨て去るさまは、実に悽愴、限りない。天下の大剣士たちにしてこの未練、これが人間の本質なのだろうか。
     それにしても、わかってはいたものの、この作品の構成にはやはり一驚させられる。何しろ、物語が第2巻までたどり着いてまだ主人公が姿を見せないのだ!
     タイトルにある「十」、柳生十兵衛は話がここまで進んでなお、影も形も表さない。この破格異形の構成こそ『魔界転生』の要である。この構成なくして、『魔界転生』は成り立たないのだ。
     
  • 最強への妄執を超えるということ。『十 忍法魔界転生』の挑戦。

    2013-03-31 15:39  
    53pt




     『歴史教育とジェンダー 教科書からサブカルチャーまで』という本がある。この本のなかで、藤本由香里が「サブカルチャー」を担当する形で、少女漫画における歴史ものについて語っている。
     藤本はこの論考のなかで「女性マンガには平安時代を舞台にした作品も数多くあるが、男性マンガで平安時代が舞台の歴史ものなど見たことがない」といい、「女性たちが興味があるのは、時代の覇者によって書き残された「史実」、どういう戦いを経て誰が時代の覇者になったか、ではなく、「その時代の生活を知ること」、「その時代を生きた人々の気持ちを想像すること」なのだ」と結論づけている。
     これは慧眼だと思う。たしかに男性向けの娯楽漫画で平安時代ものを読んだ記憶なんてない。こうやって見てみると、男性向けのエンターテインメントがいかに内容的に偏っているのかわかる。
     男性向けの歴史漫画とは基本的に「バトル漫画の一種」であって、「だれがいちばん強いか」という競争原理の物語なのだ。『バガボンド』は露骨にそうだし、たとえば『蒼天航路』や『センゴク』などにしても「最高の王や武将はだれか」というテーマがあって初めて成り立つ作品だと思う。
     『バガボンド』はこのテーマを突き詰めて考えた結果、ついに農業を始めることになってしまうわけだが、少し違う形からこの原理を批判的に換骨奪胎しているのが山田風太郎原作の漫画『十 忍法魔界転生』である。
     原作は戦後娯楽小説の金字塔、歴史に燦然と屹立するエンターテインメントであるわけだが、その内容はシンプルで、孤高の剣士柳生十兵衛と「忍法魔界転生」によってよみがえった宮本武蔵、天草四郎らの剣客らが壮絶な激闘を繰り広げる、というそれだけの話。
     そこだけを見るといかにもストレートなバトル漫画的構造に見えるが、作者はそれを巧みにずらしている。まず、最強の力を得るためには一度死に、女体を通して「魔界転生」しなければならないという設定が凄まじい。