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鬼頭莫宏の非情のリアリズムが冴える新作漫画『双子の帝國』。

 『双子の帝國』。  鬼頭莫宏さんの新作は、架空の世界を舞台にした冒険物語です。  といっても、いわゆる中世ファンタジーの世界とは一風異なっていて、日中戦争あたりの中国をモデルとしたと思しいわりに近代的な世界。  ただ、空を飛ぶ船が出てきたりするあたり、ファンタジーの要素がないわけではありません。  過酷で残酷な現実を淡々と描き出す作風で知られる鬼頭さんですが、この頃は『のりりん』とか『なにかもちがってますか』で新境地を拓いた感がありました。  しかし、この『双子の帝國』では作風がもとに戻っています。  ああ、ひとってそう簡単には変わらないものだなあ、と思わせられるくらい昔ながらの鬼頭さんのスタイル。  それも大昔の『ヴァンデミエールの翼』とかの時代の鬼頭さんが帰ってきた感じです。  非常にきびしい世界をしずかに描き出しています。  あまりにしずかなものだから、この第一巻の段階ではそれほど面白くない。  物語の主人公は皆殺しにされた部族の少年と、「魔法使い」に呪いをかけれたなぞの少女なのですが、困ったことに共感できるところが何もない。  もちろん、意図してそう設計されているわけですが、どうにも好きになれそうにない奴らだという気がします。  もっとも、これは長い物語になるという予感がするので、第一巻はまだプロローグに過ぎないのでしょう。  これから盛り上がってくることに期待したいと思います。背景には壮大な戦争の設定があるようですしね。  空戦のアクションなんかは、さすがに冴えています。これから集団戦とか描かれると面白そうですね。描くほうはたいへんだろうけれど。  まあ、そういうわけで、いつもの鬼頭さんなのですが、ぼくはこの人の作風は好きです。  正しい意味での「リアリズム」の作家さんだと思うのですよね。ただ 

鬼頭莫宏の非情のリアリズムが冴える新作漫画『双子の帝國』。
弱いなら弱いままで。

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海燕

1978年新潟生まれ。男性。プロライター。記事執筆のお仕事依頼はkenseimaxi@mail.goo.ne.jpまで。

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