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とりあえずまず『アイアンマン』を見たよ。

 〈マーベル・シネマティック・ユニバース〉の嚆矢となる作品『アイアンマン』を見ました。  この作品公開の時点ではまだ映画『アベンジャーズ』の構想は示されていなかったわけですが、エンディングロールの後で秘密組織S.H.I.E.L.D.の長官ニック・フューリーが登場し、アベンジャーズ結成を匂わせます。  この映画で最強のパワードスーツをまとったスーパーヒーロー「アイアンマン」ことトニー・スタークを演じるのは演技派ロバート・ダウニー・ジュニア。  天才で、大富豪で、皮肉屋で、女たらしで、大企業を継いだ二代目という、一般的なヒーローのイメージからは程遠いむずかしい役を見事にこなしています。  このトニーはどうにも鼻持ちならない性格のもち主で、いっそかれを排除しようとしたラスボスの気持ちがわかるくらいなのですが(笑)、ダウニー・ジュニアの名演のおかげでそこまで嫌味はありません。  これがほかの役者がやっていたら耐えがたいキャラクターだったかもしれませんが……。  トニーは巨大軍事企業スターク・インダストリーの二代目社長という設定なのですが、あるとき、誘拐された現場で自分の企業の商品が横流しされて人を殺しているところを目撃したために兵器開発がいやになり、兵器ビジネスから手を引くことを決心します。  しかし、それは事件の裏で糸をひく黒幕にとってはまずいことで――と展開は進みます。  この黒幕、あまりにも怪しいため、出てきた瞬間に「あ、こいつが黒幕なんだな」とわかるんですけれど(笑)、そういう軽薄なところも含めてなかなか楽しい映画。  『ダークナイト』みたいな深刻なまでのテーマの奥深さはあまりなく、トニー・スタークがあっさり兵器開発から手をひいてしまうことも、「ほんとうにそれで正しいのか?」と思わせられるものの、なんといってもトニーのキャラが立っているため、一作のエンターテインメントとして楽しく見れることは間違いない。  トニーが「アイアンマン」を開発し、その力で正義を実行しようとする行動を『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』のジョン・ファヴロー監督はユーモアたっぷりに描いていきます。  全編、くすくす笑えるシーン多数。正直、ヒーロー映画というよりコメディ映画としてのほうが見ごたえがあるかも。このテンポのよい演出は才能だよなあ。  自社による兵器開発をやめて個人用の兵器を作り、ヒーローになろうとするという行動はどう考えても矛盾を孕んでいて、そこらへんを深堀りすれば素晴らしい傑作になったかもしれないとも思うのですが、この映画の役割はそこにはないということなのでしょう。  何しろ、このあと『アベンジャーズ』へ続いていかなければならないのだから、あまりシリアスなテーマを持ち出されても困るというのもほんとうなのかもしれません。  そういう観点から見ると、実によくできた映画ですね。スーパー傑作というわけではないにしろ、見ておいて損はない作品といえるかと。  まあ、この映画を見なくても『アベンジャーズ』を理解するために苦労はしませんが、トニー・スタークの軽薄なキャラをわかっておくとこの先がわかりやすくなるとは思います。  決して大のオススメというわけではありませんが、〈マーベル・シネマティック・ユニバース〉を続けて見てみるつもりの人はチェックしておくべき作品なのかもしれません。  でも、〈マーベル・シネマティック・ユニバース〉ってこの先も9作が予定されていて、つまり最低でも22作は公開されることが決まっているのですよね。  へたすると30作とか40作とか続いていく可能性もなくはない。それを全部追いかけていくのは大変でしょうね。  あと、 

とりあえずまず『アイアンマン』を見たよ。
弱いなら弱いままで。

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海燕

1978年新潟生まれ。男性。プロライター。記事執筆のお仕事依頼はkenseimaxi@mail.goo.ne.jpまで。

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