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その夏、少年は「博士」と出逢う。映画『真夏の方程式』の忘れがたい名場面。(1871文字)

 ども。海燕です。あいかわらず暑い日々が続いていますね、と書きたいところですが、嘘をつくことは良くないので、あえて申し上げましょう。  涼しい! 涼しいぞ、新潟市! 新潟市マジ勝ち組! きょうもほとんど冷房を使う必要がなかったものね。いやー、熊谷とか甲府に住んでいるひとたちは可哀想に。さぞ暑かろう。ぼくは皆さんの分まで涼やかな夏を楽しみます。楽しいサマーバケーション!  ――あまり書くと石が飛んできそうなのでこれくらいにしておきましょう。ごほん。非常に涼しいのでギラギラした陽の光が恋しくなり、ガリレオシリーズの新作『真夏の方程式』など観て来ました。  『真夏の方程式』は東野圭吾原作のミステリ映画の第二弾。天才物理学者〈ガリレオ〉を主人公にした物語です。原作はここのところの東野圭吾ブームを受けて100万部を突破している模様。すごい人気としかいいようががありません。  じっさい、この映画も原作の出来のよさをほうふつとさせるなかなかの佳作でした。まあ何しろミステリなのでネタバレ的なことはほとんど書くことができないのですが、ひとつの殺人事件を巡って、過去と現在が交錯し、ひとつの謎が暴かれ、そして事件が抱える秘密が解き明かされるという筋立て。  その事件も複雑に錯綜していながらなおかつわかりづらくならない絶妙な出来なのですが、実は今回は事件そのものに主眼はありません。  何しろだれが犯人なのかは映画中盤で湯川によって指摘されてしまうし、特に斬新なトリックも存在しないのです。「犯人あて(フーダニット)」を目あてに見に来たひとにとっては肩透かしでしょう。そういう意味では前作『容疑者Xの献身』のほうが優れている。  本作の主眼は「夏」と「少年」と「博士」の三題噺にあります。透きとおった陽ざしが美しい海をあざやかに照らしだす田舎町、少年は博士と出逢い、少しだけ大人の世界を垣間見て、成長する。  かれが覗き込んだ大人の世界とは、暗く、残酷で、悲愴でもあるが、しかし、かれがつまらないと思い込んでいたものに対し熱烈な好奇心をもって探求しつづける者もいる、そういう世界。  少年はその夏、科学が持つ無限の可能性を見、また人間が抱える無窮の残酷を見たのです、とまあ、そういうセンチメンタルなところに面白みがある映画といえると思います。  この映画にだれもが忘れがたい名場面として挙げるシーンがあるとすれば、それは事件とは直接関係ない、少年と湯川の実験のくだりでしょう。  

その夏、少年は「博士」と出逢う。映画『真夏の方程式』の忘れがたい名場面。(1871文字)
弱いなら弱いままで。

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海燕

1978年新潟生まれ。男性。プロライター。記事執筆のお仕事依頼はkenseimaxi@mail.goo.ne.jpまで。

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