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『灰色猫と猟犬のダンス』第三章。
2016-12-28 01:5251pt『灰色猫と猟犬のダンス』の第三章です。
第三章「灰色猫と猟犬の舞踏」
1.
そして、〈その日〉がやって来た。暦によれば、柘榴月の三日である。王都は湧いていた。モーズ・アラハンド子爵には決して人望はなかったが、美しく心優しく聡明なアイビス姫は人々に好かれていたし、そうでなくても祝祭は人々の望むところであった。
日が昇り朝が来たそのときから、祭は始まった。大人から子供まで、男も女も、あらゆる種類の人々があらゆる場所で騒いだ。酒場はあふれ返らんばかりの人々で満たされた。多くの人が安物のシレーンワインで咽喉をうるおした。常は謹直で冷厳な妖精種族の人々ですら、陽気にワインを呑み、狂ったように踊った。〈シレーンダンス〉の名で知られる官能的な舞踏であった。男女ふたりがひと組となり、密接に躰を近づけ合ってときに回り、ときに跳ね飛びながら踊るというものである。自然、ふたりのあいだにはそれなりの関係 -
『灰色猫と猟犬のダンス』第二章。
2016-12-28 01:5051pt『灰色猫と猟犬のダンス』の続きです。
第二章「犯行計画」
1.
アラハンド侯爵家の歴史は古い。この地にシレーン国を築いた〈始まりの入植者たち〉までさかのぼるといわれる。アラハンド侯爵の祖先は、伝説の入植者たちの一員だったのだ。つまり〈大破滅〉を遂げたミトランジア帝国からの流民であり、シレーンで最も古い血筋ということになる。その後、アラハンドの祖先は〈天祖〉ハバートの覇業にくみし、爵位を与えられる。それが侯爵家の直接の始まりである。そこから八百年をかけアラハンド家は繁栄を続けていくことになるのだ。
そして三百年前、アラハンド家は国を二分する歴史的な戦役をひき起こす。黒旗に有翼獅子の紋章を戴いたアラハンド家と、白旗に一角獣の紋章を掲げたマールトン家が、些細な契機から対立しあい、ついに内戦にまで突入した事件である。当時のシレーン国王ですら和解に持ち込むことができなかったほど大規模な戦い -
『灰色猫と猟犬のダンス』第一章。
2016-12-27 22:3151pt小説、完成しました~。『灰色猫と猟犬のダンス』、56000文字ほどです。のちほど適宜改行を増やして「なろう」に載せるつもりですが、その前にここに置いておきます。
そのままだと読みにくいものと思われるので、エディタなどにコピペするなどして読んでいただければと。いや、すぐに「なろう」に上げるので、そちらで読んでいただいてもかまいませんが。
もしよければ感想をください! あまりきびしくいわれると泣いちゃうかもしれませんが……。いや、明確なプロット上の欠点がいくつかあるのはわかっているのですが、自分でそう思っているのと人にいわれるのはまた違いますからね。
とはいえ、欠点を直視しなければ上達しないこともまたたしかなので、どうにかしたいと思います。次は同じ過ちはくり返さないぞ! では、よろしくお願いいたします。
『灰色猫と猟犬のダンス』
第一章「ハートランの泥棒猫」
1.
王都の夜は暗か
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