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『艦これ』最終回を見て『真月譚月姫』を思い出す。

 アニメ『艦これ』の最終回の評価、さんざんだったようですね。  ぼくも見ましたけれど、たしかに「……」な出来。  とくべつ作画が崩壊したとかそういうことじゃないんだけれど、シナリオの脈絡がなさすぎる。  いや、脚本家としてはすべての描写に意味があると主張したいかもしれないけれど、ファンが一生懸命「解釈」しないと意味が通らない時点でやはり失敗でしょう。  シリアスをやりたいのかコメディをやりたいのかよくわからないですしね。シリアスな場面でむやみと萌えカットを挟むのはやめてほしいところ。  ただ、今回、このアニメ版が不評なのは、単純に出来が悪いという以上に、原作の設定を大きく改変しているという一点に問題があるらしい。  意味もなく原作を改変すると熱心なファンが沸騰するといういいサンプルですね。  その話を聞いてすぐに思い出したのがアニメ『真月譚月姫』であるキャラクターがスパゲッティを食べている描写があったこと。  本来ならまったくどうということはない一シーンなのですが、そのキャラクターは原作では根っからのカレー好きという設定なので、ファンは強烈な違和感を抱き、大きな話題になったのでした。  ことほどさように視聴者は作品のディティールに愛着を抱き、大切にするものだということです。  製作スタッフにしてみれば「そんなの、どうでもいいじゃん」と思うかもしれませんが、むしろそういう細部こそが作品に命がこもるかどうか決する決定的なポイントなのです。  『真月譚月姫』にせよ、『艦これ』にせよ、そこまでクオリティが低いアニメというわけでもない。  むしろそれなりにはよくできているからこそ、原作ファンは「何か違う」と感じてしまうのだと思います。  で、面白いのは、同じ『真月譚月姫』であっても、佐々木少年による漫画版の評判は非常に高いんですね。  ぼくも全巻読みましたが、たしかに傑作だったと思う。  ただ、漫画は漫画でオリジナル展開を付け加えたりしているんですよ。  それなのに、そのことに対して文句をつけるファンはほとんどいない。いったいどこが違うのか?  それについて、ぼくは昔、「わかってる度」という尺度を考えたことがありました。  「原作に忠実」と評されている作品でも、じっさいにはメディアが違うわけだからそこまで忠実に映像化しているはずはない。  やはり、原作の描写や設定を何かしら解釈して描き出していることには違いないわけです。  しかし、それらの作品では原作に対する理解とリスペクト、つまり「わかってる度」が高いから、ファンがそうしてほしいように解釈している。  結果、あたかも何もかも原作に忠実であるかのような印象を与える作品ができあがることになる――そういうことなのではないかと。  つまり、『月姫』の漫画とアニメでは「わかってる度」に差があるわけです。  「わかってる度」が高いとは、 

『艦これ』最終回を見て『真月譚月姫』を思い出す。

安西先生、TYPE-MOONの完全新作をプレイしたいです。

 電撃文庫から『Fate』の新作が出ていますね。成田良悟『Fate/strange Fake』。未読なので内容はわかりませんが、ほんとに『Fate』の世界は果てしないなあ、と感嘆しきり。  正直、もう『Fate』はいいから他のシリーズを始めてよ、という気もなくはないのですが、発表される新作を読んでみるとじっさい面白いからあまり文句もいえない。むずかしいところです。  それにしても、『Fate』って過去11年間で何作くらい出ているんだろ? まずはシリーズの「正典」ともいうべき『Fate/stay night』、そのファンディスクの『Fate/hollow ataraxia』がありますよね。  それから虚淵玄が圧倒的迫力と完成度で『Fate』の前日譚を描いた『Fate/Zero』。それにプレイステーション・ポータブルのゲーム『Fate/EXTRA』、その続編『Fate/EXTRA CCC』。  『Fate』の原型を小説化した『Fate/Prototype 蒼銀のフラグメンツ』、さらにパラレルワールドを描いた小説『Fate/Apocrypha』、何だかよくわからん漫画『Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ』があります。  さらにさらに、この春から『Fate/Grand Order』と題する何やらやたら面白そうなRPG(?)が始まるとか。もちろん、これらの作品群はそれぞれがアニメ化したり漫画化したりしているわけで、全部で何シリーズになるのかはちょっと数えきれない感じ。20作くらいは行っているのではないでしょうか。  いや、もうほとんど『ガンダム』とかに匹敵する、日本のオタク業界を代表する一大エンターテインメントシリーズに成りおおせた印象ですが、でも、これでいいのか?という一抹の疑問が残ることもたしか。  何といってもいまに至るも『Fate』のなかでいちばん面白いのはオリジンの『Fate/stay night』であって、その後の『Fate』はいわば「番外編」に過ぎません。  だから、ひたすら「番外編」を増やすのはこれくらいにして「新作」をこそ描いてほしい、そう思っても無理はないところではないでしょうか。  じっさい、『Fate/stay night』以降、『Fate』の実質的な「作者」である奈須きのこは、それらの「番外編」の展開に関わりながら、ほとんど「新作」を発表していないわけで、もういいかげんにしてくれないかな、と思ってしまう気持ちも正直あります(『DDD』とかあるけれどね)。  たしかに『Fate』の二次展開はどれもそれなりには面白い。なかには、『Zero』のようなオリジンをも超えたのではないか?と思わせられる破格の作品もある。  しかし、それでもなお、それらはどこまで行っても「外伝」、「外典」、「番外編」、「前日譚」、「パラレルワールド」の類であるに過ぎず、純粋に『Fate』を乗り越えたとはいえない。  そうだとすれば、いまこそ純然たる新しいイマジネーションを以って、『Fate』よりもさらに面白いエンターテインメントを志してほしい。そう願っているのはぼくだけではないでしょう。  いやまあ、永野護が『ファイブスター物語』を描きつづけているように、荒木飛呂彦が『ジョジョの奇妙な冒険』を更新しつづけているように、奈須きのこはひたすら『Fate』を書いていればいい、そういう考え方もあるとは思う。  しかし――やっぱりもったいないよなあ。本来、奈須さんの作品世界は『Fate』をも超えてもっとはるかに壮大に広がっているはずで、「それ」をこそ見せてほしいわけですよ。  たしかに『Fate』は面白い。単なる「番外編」であってなお、どれも十分以上に面白いのだけれど、でもね、ぼくは「最高」しか求めていない。  奈須きのこには「超一流」であってほしい。「最高」、「至上」の作品をこそ生み出してほしい。それだけの桁外れの才能を持ったクリエイターなのだから――そういうふうに思う。  初めて奈須きのこの名前を知ったのは15年前、血まみれの20世紀がようやく終わろうとしていた頃。『月姫』という同人ゲームのタイトルが耳に入って来たときでした。 

安西先生、TYPE-MOONの完全新作をプレイしたいです。

TYPE-MOONは『Fate』を乗り越えられるのか?(2128文字)

 TYPE-MOONの『Fate/stay night』がみたびアニメ化するようだ。制作は2006年放送のテレビシリーズ、及び2010年に公開された劇場版アニメ『UNLIMITED BLADE WORKS』を手がけたスタジオディーンに代わり、劇場版『空の境界』などを扱ったufotableが引きうける。  ネットではいままで映像化されていない『Fate』第三のルート、『Heaven's Feel(桜ルート)』が取り上げられるのではないかともっぱらの噂だ。いままた同じ物語を繰り返すとも思われないから、妥当な推測と思われる。  いままで『Fate』シリーズは上記の二作品のほか、『Fate/stay night』の前日譚にあたる『Fate/Zero』がアニメ化されている。  また、番外編(というかなんというか)の『Fate/kaleid liner プリズマ・イリヤ』も現在、アニメ版が放送中である。出せばあたる人気シリーズとしかいいようがない。  しかし、『Fate/stay night』が発売されたのはすでに2004年のこと。すでに9年も前なのである。おそらく新アニメは2014年の放映になるだろうから、そこから考えると10年前ということになる。  そして、この9年間、TYPE-MOONはひたすら『Fate』の派生系を出しつづけることに終始していた印象がある。  もちろん、高い評価を得た『魔法使いの夜』はある。しかし、ボリューム的に見ても、あの作品を『Fate』に匹敵するものとみなすことはむずかしい。  過去9年の間、TYPE-MOONは結局、『Fate』と同等か、それ以上の質と量の作品を発表することができなかったといっていいと思う。  たしかにそのあいだ『Fate』の枝葉は豊かに茂っていった。なかでも『Zero』は、質的に『Fate』を上回る力作だったかもしれない。  どこまでが虚淵玄個人の才腕で、どこからがTYPE-MOOMの助言によるものなのか、それはわからない。しかし、とにかくあの作品は広い意味での「二次創作」の最高峰を見せてくれた。  闇黒の大河のような壮絶無比な物語は、『Fate』を補完し、その世界をさらにひろげるという意味でも、重要な成果だといえるだろう。少なくとも並大抵の二次創作とはあまりに次元が違う出来であることはたしかである。  あるいは、「魔法少女もの」という色物的設定で発表された『プリズマ☆イリヤ』にしても、意外にそのクオリティは低くない。ぼくはまだアニメは見ていないが(録画はしてある)、漫画版は実に楽しく、面白く見ることができる安心、安定の仕上がりである。  『Fate』の世界を作った二次創作ものとしては、十分な出来といえるだろう。  しかし。やはり、多くのユーザーは『月姫』、『Fate』に量的に比肩する第三の作品を待望しているのではないだろうか。  

TYPE-MOONは『Fate』を乗り越えられるのか?(2128文字)
弱いなら弱いままで。

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海燕

1978年新潟生まれ。男性。プロライター。記事執筆のお仕事依頼はkenseimaxi@mail.goo.ne.jpまで。

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