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ファンタジー男子はノーマル男子を駆逐しつくすか。

 樹なつみ『花咲ける青少年 特別編』がおもしろいです。  20年以上前に連載されて好評を博した名作の続編ですが、大抵の続編ものがそうであるような前作の焼き直しに留まってはいません。  前作の設定を踏襲しながら、より美しくなった絵柄、より力強さを増した物語で魅せます。いやあ、ほんと、素晴らしいとしかいいようがない。  なんと美しいユージィン! やっぱり少女漫画はこうだよな、と。少年漫画にはまずここまで極端な美形キャラクターは出てきませんからね。  20年前のキャラクターをいま、より美しく描けるなんてほんとうに凄い。  『ヴァムピール』を読んだときは「樹なつみも変わってしまったなあ」と思っていたんですが、まったく筋違いの意見でした。  描こうと思えばいまでもこういう絵柄を描けるんですね。おみそれしました。  いま、物語は最終エピソードの立人(リーレン)編に入っています。数々の「花咲ける青少年」たちを描くこの物語の最大のヒーローであるところの立人さんはもともと魅力的なキャラクターだったのですが、ここに来ていっそう迫力を増しています。  もうかっこいいこと、かっこいいこと。本編の連載当時には読者の大半が立人ファンだったと聞いたことがあるけれど、それもよくわかる凛々しさ、聡明さ。  長身の美青年にして名家の御曹司にして世界有数の事業家という、こんな男いるわけねえよ、なウルトラファンタジー男子ではあるわけなのですが、ここまで描かれると、もう全部赦すしかありません。  ここ10年くらいの少女漫画で見たキャラクターでいちばんかっこいいかもしれない。  ただ、まあ、『花咲ける青少年』はこれでいいとして、ちょっとノーマル男子とノーマル女子の恋愛物語も見てみたいよな、という気もします。  いつのまにかノーマル男子がほぼ駆逐され、ファンタジー男子ばかりが跳梁跋扈するようになった印象がつよい少女漫画業界なのですが、ここ最近、ノーマル男子×ノーマル女子の恋愛漫画でヒット作ってどれくらいあるのでしょうか。  『君に届け』とかそうなのかな(読んでいない)。まあぼくの知らないところでノーマル×ノーマルものも残っているのでしょう。そうだと思いたい。  ノーマル恋愛もの、好きなんですよ。いいじゃないですか、平凡な男の子と普通の 

ファンタジー男子はノーマル男子を駆逐しつくすか。
弱いなら弱いままで。

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海燕

1978年新潟生まれ。男性。プロライター。記事執筆のお仕事依頼はkenseimaxi@mail.goo.ne.jpまで。

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