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豊穣な友人関係は何ものにも代えがたい価値があるが、作ることはむずかしい。

 前の記事の続きというわけでもないんですけれど、『ロケットマン』の話をもう少し。この漫画にはすごく好きな話があります。  クライマックス近く、主人公の属する組織が敵側の圧力によって銀行口座を使えなくされてしまう窮地の場面です。そこに、それまで役立たずとしてのけ者にされていた形のヒロインの女の子がやって来るんですね。  彼女は基本的には「普通で平凡なただの女の子」で、特別な能力は何もありません。しかし、主人公を初めとしてたくさんの有能な人々がどうしようもない事態にあって、彼女は一本の電話をかけるのです。  その電話の先は以前の事件で知り合いになった経済学の天才少女。その事件のときに携帯電話の番号を交換していたのです。で、その少女がまた知り合いのアメリカ経済の守護神グリンストーン議長(笑)に電話をかけて、何と、その事態を解決してしまうんですね。  そしてそのヒロインは主人公に向かって云うのです。「どう? 私がいてありがたいと思うでしょ!」。主人公は唖然とするばかり。この話がもう、最高だと思うんですよ。  いろいろな難事件を経ていまやロケットを飛ばすまでになって、ある意味ではこの「平凡な女の子」を甘く見ていた主人公がしっぺ返しを食う展開がもうね、すばらしい。  と、同時に、「権力ってこういうものだよなあ」とつくづく思わせられるんですよね。何度も云いますが、このヒロイン自身は何の力もないのです。  でも、偶然に力を持った存在と知りあったときに、携帯番号を交換しておいたというだけで、居並ぶ天才たちですら解決できない事態を何とかしてしまう。たった一本、電話をかけただけで、です。これを権力と呼ばずして何と云おう、と思いますね。  つまり、才能ある人間を押さえておくということはこれほどまでに重要なことなのだということですね。『パスポートブルー』でも、最後に信じられるのは同じ夢をみた仲間たちです。才能ある人物と友達になっておくと、こんなにも良いことがある。  ただし、そこでは当然、「それでは、お前は何を差し出せるのか?」と問われることになります。才能ある人物は、大抵、利用されることにうんざりしてるわけで、かれらと友達になったりするためには、多くの場合、同等の能力を持っている必要があるわけです。  このヒロインの場合は、うまく事件を通して恩を着せることに成功しているのだけれど、現実にはなかなかそういうわけには行かないでしょう。  だから、才能や能力を持った友達を作ることは自分自身の人生にとってすごく大きいことだけれど、自分自身が空っぽだと、なかなかそういうこともできないのです。「一方的に利用するだけ、利用されるだけの関係」は友達とは云わないのですから。  で、こういうふうに考えていくと、 

豊穣な友人関係は何ものにも代えがたい価値があるが、作ることはむずかしい。

最後のパスを打つのはだれか? 宇宙開発という至上の夢。

 ひさしぶりに何となくブロマガ著名人枠ランキングを見てみたら、有料部門の17位に入っていました。おおー。嬉しいな。まあ、あしたには落ちているかもしれないけれど、いいじゃないですか、一時の栄華?でも。  現在、著名人枠のブロマガがおそらく数百か、1000を超えるかな?くらいあるはずで、そのなかで17位というのはそれなりに偉いんじゃないかしらん。  そういうわけで、ブロマガ購読者数は少しずつ少しずつ増えていっています。というか、毎日マジメに書けば増えるんだよね。もうずっと前からわかっているシンプルな法則なんだけれど、これがなかなか実践しつづけられないんだよな。  まあでも、平均して1日1記事以上は書きたいところです。何といってもお金をもらって書いているわけですからね。もう少しマジメに運営しなければ……。  さて、ぼくはといえばあい変わらず『ソードアート・オンライン』をプレイしているのですが、長大な物語に疲れ果てて、合間に漫画を読んだりしています。  石渡治『パスポートブルー』。このあいだペトロニウスさんが絶賛していた作品ですね。いやー、なるほど、これは面白い。あと、やっぱりロケットが出て来る『ロケットマン』も全巻買ってちょっと読み返してみた。うん、これもすばらしいですね。  『パスポートブルー』も『ロケットマン』も、いうなれば「宇宙開発もの」に属する作品です。『MOONLIGHT MILE』とか、『プラネテス』とか、あと、ぼくはなんと未読だったりする『宇宙兄弟』とかもこのジャンルに入ることでしょう。  宇宙開発。それは人類の見果てぬ夢であり、最高のフロンティア・スピリットの現れです。『パスポートブルー』はひさしぶりにその興奮を味わわせてくれました。  いま、ぼくたちはおそらくは長い停滞の時代に入ろうとしている社会の一員として生きていて、そしてぼく個人は普段はミクロの関係性の戯れの物語を楽しむことが多くなっています。  すべてが狭い範囲で展開するラブコメとか、いわゆる無菌系、つまり「女の子だけの仲良し空間」ものとかですね。でも、時にはやっぱり「人類とは?」、「ひとが見ることができる最大の夢とは何か?」みたいな物語にふれたくなってしまう。  ぼくらがじっさいに生きているミクロ空間を充実させようとする努力もたしかに大切だし、気高いものだとは思うんだけれど、でも、人類全体を駆動させる最大の夢、経済も社会も巻き込んでそれに向かって突き進んでいく人々、みたいなヴィジョンを見たくなるんですよね。  ペトロニウスさんは書いています。  僕は思うんですよ、教育の、そして進路を決めるときの基準の、あるべき姿ってのは、こういうものなんだろうって。もちろん、これは、僕が言うようなオリジナルな生き方なので、参考になるかは微妙です。子供時代に宇宙飛行士を目指す仲間がいて、それにふさわしい原風景があるなんて、どんなに悲惨な現実であったとしても、生きる上で凄いオリジナルです。けれどもそこを除けば、この作品の通底に流れるのは、日本のローカルな基準をそもそも超えた、人類の最前線の課題に対する挑戦へ、どうチャレンジするか?そのためには、世界中に、それをするための同志があり、可能な教育機関があり、縁やつながりがあるという確信です。宇宙での巨大なトラブルを回避するのに協力した主人公のもとに、一通の電話が来ます。中国の国家主席からの感謝の電話でした。彼の親友は防衛大学校を卒業した戦闘機乗りで、もう一人はアメリカ空軍の少尉です。みんな、子供のころごみ溜めのような街で、宇宙に行きたいと誓った仲間たちです。こういうのって、いいなって思うんですよ。ボーダーを超えて、人類の挑戦を信じている、その課題へのチャレンジに加わりたいと、願う気持ち。 http://d.hatena.ne.jp/Gaius_Petronius/20140513/p1  ゴミだめのような街から、はるかな宇宙へ。夢だけが少年を連れてゆく。  ぼくたちが生きる人類社会には、たくさんの未解決の課題があって、国家同士の争いも、差別も貧困も一向に改善してはいないかもしれない。  しかし、それでも、そういったボーダーを超えて、ただひとつの「夢」が人々を駆り立てる。そんな物語を見てみたいと思うことがあります。  ぼくは時々思うのですが、世の中にはワールドカップの決勝ゴールを決める選手というものがいるわけです。そういう人は、 

最後のパスを打つのはだれか? 宇宙開発という至上の夢。
弱いなら弱いままで。

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海燕

1978年新潟生まれ。男性。プロライター。記事執筆のお仕事依頼はkenseimaxi@mail.goo.ne.jpまで。

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