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記事 2件
  • 『消極性デザインが社会を変える。まずは、あなたの生活を変える。』第8回 みんなで話し合って決めようの消極性デザイン(西田健志・消極性研究会 SIGSHY)

    2018-12-20 07:00  
    540pt

    消極性研究会(SIGSHY)による連載『消極性デザインが社会を変える。まずは、あなたの生活を変える。』。前回に引き続いて西田健志さんの寄稿です。話し合いへの参加を最初から諦めてしまう「消極的」な人々は、どうすれば大規模な集団の議論に参加できるのか。西田さんが考案した、1対1の「小さな議論」の勝者がトーナメントを勝ち上がる「トーナメント型議論システム」を紹介します。
    消極性研究会の連載、前回に引き続き西田健志が担当させていただきます。
    前回は、P10の消極性研究会座談会や「遅いインターネット計画」に触れながら、消極的な人たちでも発言しやすく、落ち着いた言動でも注目されやすい環境をデザインすることができれば、乱暴な言動で注目を集める必要性や免罪符がなくなって建設的なコミュニケーションの場をつくることができるのではないかとの立場を表明しました。そして、そのための消極性デザインの一例として傘連判状を採り入れたチャットシステムを紹介しました。
    ▲『PLANETS vol.10』
    傘連判状は、言いたいことがあるけど言えないでいる人たちにあと一歩の勇気と少しの発言力を与える消極性デザインで、学会や企業、オンラインサロン内のコミュニケーションなどには効果的なのではないかと考えています。しかし、より大規模な国家~地球レベルの人数を相手取るにはやや心もとないところがあります。
    Twitterで何万いいね集めたとしても、Change.orgで何万もの賛同を集めたとしても、デモに何万人集まったとしても、それよりも桁違いに多いその他大勢を動かすには至らない少数派。そうして量産される消耗品のように流れていく主張の数々を眺めていても無力感に苛まれることなく真っ当に主張を続けよう、議論を続けようとするのはよほどのエネルギーの持ち主だけでしょう。正攻法を諦めてダークサイドに落ちてしまうのも無理はありません。前編でも触れましたが、大勢の人がいると他人任せになって手を抜いてしまうSocial loafingの壁はまさに圧倒的なのです。
    ここから紹介するのは、この壁に挑むことを諦めたくなかった消極的な割にわがままな私のいまだ成功を見ない長年の試行錯誤の跡です。もっとこうしたらいいのに、私ならこうするなどとじっくり考えながら読んでいただけますと幸いです。
    「二人組に分かれてください」をドライに
    「他の誰かががんばってくれるからいいでしょ」という気持ちで消極的になってしまうSocial loafingの解決に向けて私が最初に考えたのは、学校の授業などでよくやる「二人組に分かれて話し合いましょう」のパターンです。教室全体ではこっそりと発言しないでいた消極的な人も、二人組に分かれても黙っていたとしたら逆に余計に目立ってしまうので話始めることになるアレです。みなさんも経験したことがあるのではないでしょうか。
    二人組に分かれて話すというプロセスを組み込んだコミュニケーションシステムを作れば、クラスやサークルなどで文化祭の企画や旅行の行き先など様々な話し合いの場面においてあまり意見しなかったような人からも意見を出してもらうことができるでしょう。インターネット上で利用することで、もっともっと大きな集団でのコミュニケーションで何かを決めなければならない政治などの場面においても、social loafingの解決にもつながるのではないかと考えました。 授業などでの二人組に分かれてと言われた過去の経験を思い出してとても嫌な気分になった人もいるかもしれません。誰とペアになろうかと考えているうちに一人取り残されてしまうという悲劇は考えるだけで恐ろしいものです。あるいは、ペアになった人と話がかみ合わなくてがっかりするということもあるかもしれません。
    しかし、そこはコンピュータを利用して極めてドライに処理してしまうことによってかなり軽減できるものだと思います。ペアはランダムに決めてしまえばいいですし、話がかみ合わなければ相手を変えられるようにしてしまえばいいわけです。せっかく相手に歩み寄ろうしているのに相手から「チェンジ!」されたらショックだろうとは思いますが、そこは工夫次第でもっとドライにできるところです。
    話し合いをトーナメントでしよう
    分かれて話し合った後にはその結果をなんとかまとめたいところですが、その段階でやっぱり消極性が発露して他人任せになってしまうのではあまり意味がありません。
    私が注目したのはトーナメントという仕組みです。トーナメントでは二者が対決し、その勝者が勝ち上がるというのを繰り返して、優勝者を決めます。最後まで二人組で話すことになるので勝ち残った人はずっとサボれません。
    すべての参加者と対戦したわけではなくても、トーナメントの優勝者がそのとき最強だったということに異論をはさむ人はまずいません。話し合いもトーナメントにしてしまえば、何も言わないでいたくせに決まってから後で文句を言ってくるようなことはなくなるというメリットもありそうです。国家~レベルのコミュニケーションが主に結論に納得するために行われているものだとすると、決着のわかりやすさはとても大切です。
    そんなことを考えながら開発したトーナメント型議論システムがこれです。
    ▲トーナメント型議論システム
    左側には対戦トーナメント表が表示され、右側にはテキストチャット画面が表示されます。真ん中にあるのはフォロワーと全参加者のリストです。リストには名前とステータスメッセージが表示されるようになっています。
    話し合いの「勝ち」とは?
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  • 『消極性デザインが社会を変える。まずは、あなたの生活を変える。』第7回 消極性デザインは悪い積極性にも効く(西田健志・消極性研究会 SIGSHY)

    2018-11-08 16:50  
    540pt

    消極性研究会(SIGSHY)による連載『消極性デザインが社会を変える。まずは、あなたの生活を変える。』。今回は西田健志さんの寄稿です。西田さんが開発し、学会で好評を博した傘連判状システム。この仕組みは(悪い意味で)積極的な人の声ばかり目立つ昨今のウェブで、消極的な人たちの意見に力を与えるシステムになりうるのでしょうか。その可能性と課題について論じました。※本記事に一部、誤記があったため修正し再配信いたしました。著者・読者の皆様にご迷惑をおかけしたことを深くお詫び申し上げます。【11月8日16:30訂正】
    【お知らせ】 11月12日(月)にPLANETS CLUBの定例会で、消極性研究会から栗原一貴、簗瀨洋平、渡邊恵太の3名がゲスト講師として参加します(消極性研究会×宇野常寛 社会をなだめる #SHYHACK・PLANETS CLUB第9回定例会)。残念ながら私(西田健志)は参加がかないませんが、P10の座談会や本連載、そして消極性研究会の今後の活動について色々とご意見・ご感想いただけましたら幸いです。
    消極性デザインは悪い積極性にも効く
    本連載も無事1周しまして今回は西田健志が担当します。よろしくお願いします。
    みなさん、PLANETS vol.10(以下、P10) はもう読まれましたか?今回はP10と併せてお読みいただくとより楽しめる内容にしたいと思いまして、私もいま8割くらい読んだところです。おもしろすぎて執筆が遅くなってしまいました。心よりお詫び申し上げます。(これを書き終わったら残りを読むんだ…)
    P10には消極性研究会も「消極性デザインで平和を実現する―消極的な人よ、戦争を止めよ。いや、そもそも戦争しなければよい。」という座談会で登場させていただきました。宇野さんから「戦争と平和」というテーマをうかがったときには、これまで私たちが消極性デザインを試みてきたフィールドとの距離感を少なからず感じて期待と不安が半々くらいでした。でも終わってみると消極性研究会の持ち味が発揮された読み応えのあるものになったと感じています。ぜひご一読ください。
    ▲『PLANETS vol.10』
    この座談会、2つの意味でいつもの消極性研究会と違いました。1つは、何も作らないでアウトプットしているところです。私たちも普段からSlackだとか飲みの席だとかで、ちょうどこの座談会のように大いにブレストを繰り広げていますが、それがそのまま世に出るということはまずありません。アイデアを実際に体験することができる何かしらのプロトタイプを制作したうえで世に問うというのが私たちの基本スタンスです。「消極的な人が暮らしやすいようにする」という目標設定で活動していくには言葉だけではインパクト不足だと考えてきたわけです。
    しかし、今回の座談会で飛び交った突飛とも言えるアイデアの数々が思っていたよりも評判よく受け入れられているようで、今後の活動についても考えさせられるところがありました。司会や編集の腕前なのか、読者が訓練されているのか。それとも、実はいつものブレストにそれだけの価値があるのか…。
    もう1つの違いは、「(悪い意味で)積極的な人を消極的にするには?」という枠で思考を広げる展開になったところです。普段、私たちの活動では消極的な人がメインターゲットで、積極的な人については「積極的な人にも消極的になるときがありますよね?」として、やはり消極性を念頭にデザインをしてきました。座談会でも序盤はどちらかというといつもの流れに乗っていたと思うのですが、後半にかけていつもと逆の流れになっていたように感じました。これまでにも栗原さんのSpeech Jammerのように積極的な人に対して用いるアイデア事例もありますが、それもあくまで「静かにしてほしい」と言えないでいる消極的な人の方を主語としているものでした。
    しかし、流れは反転させながらも「人の性格を変えられなくても環境を変えることで行動は変えられる、ハックできる」という観点においてはいつも通りのやり口はキープされていたので、私たちにとってもちょうど次の一歩を示されたような、司会の確かな腕前を感じる時間でした。(誉めすぎ…?)
    「遅いインターネット計画」
    積極的な人こそどうにかしたいという発想になるのは、私たちよりも宇野さんは日ごろ積極的な人に目を向けることが多い(悩まされている?)からなのかなとも感じました。拙速なインターネット上のコミュニケーションから距離を置くことで良質な情報を提供することに注力しようというP10 の「遅いインターネット計画」にもそれが表れているように思います。そのつながりを感じたこともあり、遅いインターネット計画に関する議論についても大変な興味関心を持って読ませていただきました。
    私がデザインしたコミュニケーションシステム、懇親会の座席を決めてくれるシステムを導入して利用してもらってきたのは学会や大学など、ある程度は人数が多いながらも外界からは閉じていて、たとえシステム上は匿名にしたとしても度を越した悪ふざけはしづらいし、積極的に問題行動を起こす人がいたとしても少数なのでその都度個別に対応すればまあ何とかなる、そういう世界でした。その視点から観測されやすいのは大多数の消極的な人たちと行動で、取り組まなければならないと感じるのも消極性デザインということになるわけです。
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