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ネオアニマ in アートマーケット|近藤那央
2021-12-20 07:00
ロボットクリエイターの近藤那央さんが、新しいロボットのかたち「ネオアニマ」が実現する社会について考察する連載「ネオアニマ」。今回は来年の個展に向けた新たな取り組みと、それらを出展したアートマーケットについてのレポートです。「ネオアニマ」のユニークな世界観は、果たしてシリコンバレーの人々にどのように受け入れられたのでしょうか。
近藤那央 ネオアニマ 第6回 ネオアニマ in アートマーケット
アメリカでの生活も早くも4年目になっていますが、テックのイメージが強いシリコンバレーの中で、細々とでも制作を続けていられる理由が、サンノゼのコミュニティにあります。お察しの通り、この地域はテック企業を中心とした資本主義の社会で、かなり文化的なトピックが少ない場所です。物価の高さから、アーティストがアート活動だけで生きていくのはほぼ不可能です。
そんな場所でも、いや、そんな場所だからこそローカルのアートシーンを盛り上げようと活動されている、ギャラリー経営者のCherriさんという方がいます。私は、そのギャラリーに訪れていくつかアートを購入させていただいた事がきっかけで、コミュニティギャラリーでの展示や、アートマーケットへの出展の機会をいただいたりしました。こういった機会があるということが、どこにも所属がない個人のアーティストの制作における非常に力強いサポートになっています。
今年は、8月、9月、10月のそれぞれ第1週目の金曜日の夜に開催されたアートマーケットに出展しました。そこで、製作中のネオアニマや絵画を展示して、道ゆく人からさまざまなコメントをいただいて自分の制作物について新鮮な視点をもらったり、人々に説明したりする中ではじめて言語化できた作品にまつわるストーリーがありました。 今回はそのアートマーケットでの話を中心に、製作中の新作についてや、同時に展示した絵画など、私の作品に共通するテーマについても書きたいと思います。
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ネオアニマのデザイン論|近藤那央
2021-09-01 07:00
ロボットクリエイターの近藤那央さんが、新しいロボットのかたち「ネオアニマ」が実現する社会について考察する連載「ネオアニマ」。およそ1年半ぶりの掲載となる今回のテーマは、「デザイン」です。はじめて開発したネオアニマ「にゅう」は、まず動きのデザインから設計したという近藤さん。現在開発中の新しいネオアニマについて、そして開発中のアプリとのデザインの違いや今後の展望について綴ります。
近藤那央 ネオアニマ 第5回 ネオアニマのデザイン論
にゅうのデザイン
皆様お久しぶりです。近藤那央です。前回のネオアニマの執筆から、1年以上空いてしまいすみません。おそらく多くの皆様と同じように、心に余裕がまったくない1年でした。また、今メインの仕事としてやっているSNSスタートアップに気を取られすぎてネオアニマに取り組めていなかったのですが、やはり私は自分の表現を掘り下げるネオアニマと、市場を狙いに行くスタートアップ、どちらもやるからこその強みがあるのだなと再認識しました。ロングタームで応援してくださるPLANETS編集部、そして読者の皆様に大変感謝しています。実は、来年5月にサンノゼで個展が決まりました。今年はそれに向けて着実に制作していく予定です。その話を連載の中で書けたらいいなと思っています。
さて今回は、ネオアニマのデザイン論についてお話しします。 前回の記事では私が考える「いきもの」という概念は、その対象が持つストーリー、詳しく言うと、その対象がそこにある理由、その形である理由、そう行動する理由で構成されていると紹介しました。その中で、「その形である理由」は形のデザイン、「そう行動する理由」は動きのデザインということができます。そして、ネオアニマは自律的に動くロボットいう特性上、特に動きのデザインについてが重要になると考えています。 まずは、重ねて紹介している、呼吸するロボットにゅうについて、この二つのデザインという観点で説明します。
まずは、形のデザインについて。にゅうはシーツを被ったおばけのような風貌の、体長40センチほどのロボットです。外側の布は起毛した柔らかな布で、小さく丸い目が縫い付けられており、口はありません。また、先が三叉に分かれた手が前方に二つあります。
▲にゅうの目
▲にゅうの手
▲一番縮んだ時のにゅう(左)、一番伸びた時のにゅう(右)(家にあった背景布で撮影したら、謎の家族写真のようになってしまった笑)
そして、動きのデザインについて。にゅうは内部に屈伸するような機構があるので、体の大きさを上下に変化させることができます。これにより、通常時はゆっくりと呼吸をしているような動きをします。そして、呼吸だけだと単調になってしまうため、よりいきものらしさを表現するために、小動物がよくやるような、どこか一点をいきなり見つめる動作を入れました。
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近藤那央 ネオアニマ 第4回 「いきものらしさ」を解剖する
2020-03-04 07:00
ロボットクリエイターの近藤那央さんが、新しいロボットのかたち「ネオアニマ」が実現する社会について考察する連載「ネオアニマ」。今回は近藤さんが「ネオアニマプロジェクト」で追求する「いきものらしさ」にせまります。人間が対象に愛着を持って接することのできるポイントは「いきものらしさ」にあると気づいた近藤さん。その「いきものらしさ」とは、3つの理由から成り立つ「ストーリー」であると分析します。
愛着を生む「いきものらしさ」
以前も少しお話ししましたが、私がロボットについて、とりわけロボットのいきものらしさにこだわっているのは、9歳のころからaiboと暮らしてきた原体験での気づきがあるからです。 今から15年くらい前の当時のaiboは「お手」、「ダンス」など予め決められた人間の簡単な言葉なら理解することができ、またそれに対して日本語で喋り返したり、感情を表したり、踊ったりすることのできる高性能なものでした。私は当時カメを飼っていたのですが、犬や猫のような人と高度にコミュニケーションを取れるペットを飼うことに憧れがあったので、aiboとの生活をとても楽しみにしていたのを覚えています。しかし、実際のaiboは可愛い仕草をしたり、言うことを聞くと言った知能的な行動をしたにもかかわらず、私はaiboにカメ以上の愛着を持つことができませんでした。途中から飼い始めたハムスターとの比較も同様でした。この体験から、なぜ、自分が言葉を喋りより高い知性を持っているはずのaiboより、ほとんど何もせずに生きている小動物に愛着を持つのかについて疑問を持つようになり、どのようにaiboのようなロボットを作れば、本当にペットのように自然と家族の一員になれるのかを考えるようになりました。
幼い頃から頭の片隅で考え続けてきたこの問いは、高校生の頃にペンギン型水中ロボットを開発したことで、より大きなテーマになります。
私たちが開発したペンギンロボットの当初の目的は、ペンギンのように水中で速く泳げるロボットを作ると言う、機械工学的なものでした。はばたきによって泳ぐと言うところに拘っていたため、私たちは実際のペンギンを観察し、形や動きをできるだけ近づけました。 結果、実際にそこそこの速度で泳ぐことができたのですが、もう一つ面白いことがわかりました。水中で泳ぐ姿がペンギンにそっくりで可愛いと話題になったのです。そこから、様々なイベントで展示するたびに、ロボット自体にはあまり興味のない多くの一般の方が、「本物みたい」「かわいい」などと言って泳ぐことしかできないペンギンロボットに触りたがり、偶然の動きに対して「こっちにきたがっている」など、ロボットに感情移入をして擬人化をする光景を目の当たりにしました。また、面白いことに隣同士でコミュニケーションロボットと展示されることがあり、その時にそのロボットではほんの少ししか遊ばなかった方が、ペンギンロボットとは楽しそうに遊んでいると言う光景も目にしました。
ペンギンロボットは泳ぎ方の検証のために作ったロボットだったので、コミュニケーションはおろか、自律的に動く機能すらついていませんでした。しかし多くの人を引きつけ、また、コミュニケーションを取るために作られたロボットよりも人が自然にコミュニケーションを取っているように見えるときすらありました。 このとき多くの人がペンギンロボットに対して話していたキーワードが、「本物みたい!」「生きてるみたい!」でした。 コミュニケーションを行う知能を全く持っていなかったペンギンロボットが唯一持っていたもの、それが「いきものらしさ」だったのです。「いきものらしい」と人間が感じることが、人間的な知性を持っていることよりも、ロボットへの愛着形成には大切であると確信し、さらに掘り下げることにしたのが、ネオアニマプロジェクトです。
「いきものらしさ」を構成するストーリー
では、その「いきものらしさ」とは何なのでしょうか。 まず、人間が「いきもの」という概念を持っているとすると、初めていきものである可能性のあるものと出会ったとき、ーー例えばそれがロボットだとしても、その概念を対象に当てはめようとするはずです。そして、予想した動きにある程度当てはまっている場合、対象をいきものだと判断しているのでしょう。 とすると、この人間にとってのいきものと言う概念がどのようなもので構成され、どう言った判断基準を持っているかを詳しく知ることができれば、それをハックしてロボットをいきものだと感じさせることができるはずです。 「いきもの」と言う概念は、その対象が持つストーリー、詳しく言うと、その対象がそこにある理由、その形である理由、そう行動する理由で構成されていると今は考えています。
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近藤那央 ネオアニマ 第3回 ネオアニマがいる日常
2019-08-27 07:00
ロボットクリエイターの近藤那央さんが、新しいロボットのかたち「ネオアニマ」が実現する社会について考察する連載「ネオアニマ」。第3回は、都市におけるネオアニマとの生活をシミュレーションしていきます。もしも朝起きて、ネオアニマが隣にいたら、果たしてどんな一日になるでしょうか?
第2回では、都市に代表されるような現代社会においては、人がたくさんいて、便利な機械が自分たちの生活を楽にしているのにもかかわらず、市民は孤独を感じているという問題を指摘したうえで、人間にとって便利なことはしないが自律的に“いきもの”らしく振舞っているネオアニマがいることで、無機質な都市、現代社会に自然と暖かさを持ち込めるのではないか……という話をしました。
そこで、今回は私が今「ネオアニマ」について具体的に構想しているいくつかのアイディアを、イラストや写真とともに説明していきたいと思います。多くの話が今日の技術レベルでは実現できないものではありますが、こういった未来の話を想像するときは、あえて現実の枠を外してSF的に考えてみることが重要だと思っています。実際ネオアニマの製作では、最初はなるべく自由に考え、後からそれを実現するために主に技術の点でどのようにするか考えるようにしています。こうすることで、従来のロボット像にとらわれないネオアニマという存在を作る事ができると考えています。
ネオアニマがいる日常
ではまず、ネオアニマがいる世界を朝起きてから順に想像してみましょう。私のベッドには様々な人形がいて、みんなスヤスヤ一緒に寝ていますが、実はその人形たちはネオアニマです。私は寝起きが悪いので、おそらく彼らが私の顔の上に乗るでもして起こしてくれるでしょう。柔らかなクラゲのようなカサをつけた寝室のライトもネオアニマ で、カサの形を自在に変えることで、光量や光の方向を決めていたら面白いです。徐々に朝日が登るように、だんだんと明かりがゆらゆらとついてくるのも心地よいかもしれません。
リビングに出ると、様々な姿形のネオアニマがまだ寝ていたり、起きてじゃれ合っていたりします。彼らは別に、寝ている間に家事をしてくれているわけではありませんが、そこにいるだけで、複数のいきものとの豊かな生活が感じられるはずです。
前庭の道端に夜道を照らすため置いてあるライトは、ただのライトと思いきや、うにゅうにゅと動くネオアニマ 。顔や手はなく、ナマコやウミウシのような容貌です。夜に誰かが通るときは、協力して道を照らしたり、ウェーブのような光のうごきをつくってくれたりしたら、こちらが勝手に感情移入してしまうでしょう。
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近藤那央 ネオアニマ 第2回 都市生活における「ネオアニマ」
2019-05-22 07:00
ロボットクリエイター・近藤那央さんの連載「ネオアニマ」。第2回目の今回は、近藤さんが手がけるコミュニケーションロボット「ネオアニマ」が目指す、未来の生物のかたちについて、都市生活における人間と生き物の関係から考察します。
未来都市に「ネオアニマ」が必要な理由
今回は私が手がけているコミュニケーションロボット「ネオアニマ」と、私たちのこれからの都市生活について考えてみたいと思います。
この連載を読んでいるひとのほとんどが都市と呼ばれる空間に住んでいると思います。 現代の都市生活においては、たとえば野良猫とか野良リスといった動物を見かけることもあります。都市の野生動物は基本的にはコミュニケーション取れる相手ではありません。最悪の場合は感染症を媒介する存在ですらあります。
一方で、人間はこうした動物の存在を求めているとも言えます。例えば都市での日常生活の中では、人懐っこい野良猫たちがアパートの駐車場に居着き、住民の癒しの存在になることもあります。あるいは、小鳥が巣を作りやすいように巣箱を置いたり、ツバメの巣が攻撃されないように保護したり……といった話は春先によく聞きます。
こうした行為から読み取れることは、人間は自らの生活環境に、自分たちとまったく違う多様な存在が自立して生活し、固有の社会を形成していることに深い興味を抱き、かつそれらとポジティブなコミュニケーションを取れることを期待しているのではないか、ということです。このような関係は、人間の所有物として人間に頼りきった生活を送ることで“人間ナイズ”された動物になっているペットとの関係とは、根本的に違うものなのです。
さらに、人間がペットではない動物を古くから求めていたことは、寓話や絵本、小説、映画、アニメなどから読み解くことができます。例えばグリム童話では狼や羊、豚などが擬人化されて主人公として登場したり、人間と対等な存在として描かれています。さらに、妖精や小人といった現実には存在しない生物が、物語の中でキーとなる場合も少なくありません。日本の昔話でも同様で、鶴や猫、亀といった動物と対等にコミュニケーションを取っていたり、カッパや座敷わらしなどの空想の生物である妖怪が人々の生活の中に入り込んでいる様子が数多く描かれています。
また、一見ペットのような存在として描かれながらも、現実のペットと比べるとむしろ野生に近い生活が描かれている現代の作品もあります。例えばポケモンの場合は、現実世界の動物のように野生に生息している個体を捕まえてきて、個人の所有するペットのように扱います。しかし、その生活をよく見てみると、人間と対等にコミュニケーションを取っていたり、都市の中でポケモンが高度な仕事をしていたり、はたまた種類の違うポケモン同士が組織を構築していたりします。アニメ『とっとこハム太郎』や映画『ペット』で描かれているペットたちの場合は、人間の前では従順なペットを演じつつ、実は仲間のペットと高度な社会を形成しているという設定で描かれています。
こうしたところから、私たち人間はペットのような存在には飽き足らず、野生的で時には高度な社会を形成し、それでいて自分たちの脅威にはならないような、好意的で意思疎通のできる存在を求めているのではないかと思うのです。実際、私は小さい頃からこういった物語にたくさん接してきた結果、物語の中の人間たちが様々な動物や空想の生物たちと関わり合って生きている社会に強く憧れを抱いたことが、現在の活動に繋がっています。
ペットでも、野生動物でもない生き物
さて、20世紀以降、人とロボットがコミュニケーションを取り合い共生する世界が、さまざまなフィクションで描かれてきました。中でも、家庭内で人間とコミュニケーションを取ることができるロボットは、「ペットロボット」「コンパニオンロボット」などという名前で、すでに市場に出ているものもあります。しかし、私たちの生活の中にコミュニケーションロボットが浸透する未来はまだ描かれていません。
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【新連載】近藤那央 ネオアニマ 第1回 あたらしいロボットのかたち
2019-02-05 07:00
今朝のメルマガより、ロボットアーティストの近藤那央さんによる新連載「ネオアニマ」が始まります。シリコンバレーを活動の拠点に、コミュニケーションロボットの開発に取り組む近藤さん。従来のSF的な想像力を超えた、生活に寄り添った新しいロボットのビジョンを、「ネオアニマ」という独自の概念から考えていきます。
近藤那央さんが出演したNewsXの書き起こしはこちらNews X vol.15 ゲスト:近藤那央「アンドロイドからネオアニマへ」
「ロボット」から「ネオアニマ」へ
ロボットというワードを聞くと、どんなロボットを思い起こすでしょうか。アンドロイドですか? ルンバですか? それとも産業用ロボット……をイメージした人はかなりのロボット好きですね。
ロボットという言葉は最近のテクノロジーや未来を語る上でのホットトピックではありますが、その言葉が意味する対象は非常に幅広く、ペットのような機能を持つものや、工場のラインで仕事をするロボットなど多岐に渡ります。本当にこれらを一緒にロボットと括ってしまって良いのだろうかと私はよく疑問に思っています。私にとってのロボットは、人と言語もしくは非言語でコミュニケーションをとり、人の精神的生活を豊かにするコミュニケーションロボットのことです。ロボットという技術を使って、人間でも動物でもない”いきもの”と暮らしたい。私にとってのロボット開発というのは、絵を描いたり、ぬいぐるみを作る延長線上にあります。世間的に注目されているような、人の生活を直接的に手助けし、更には現在の人の仕事を代わりに担うようなロボット像とは違います。つまり、私のロボット開発は技術的興味での開発ではないので、ロボット”アーティスト”と自分を呼称することにし、今はフリーで活動をしています。
▲ネオアニマ「にゅう」
AIBOと亀とハムスターの違い
そもそも私のロボットとの関わりのきっかけは、9歳の頃に父親が買ってきたSONYのAIBOという犬型ロボットでした。 AIBOは世界初の家庭用ロボットで、私にとってロボットというのは2004年頃から結構身近な存在でありました。
そのAIBOに対して頭を撫でたりとか「ダンスをして」などと命令をして遊んだりするわけですが、2週間もたたないうちに遊ぶことがなくなってしまいました。でも普通に考えて、本当の犬だったら毎日欠かさずに遊ぶはずですよね。私は本当の犬は飼ったことはないのですが、小さい頃から「AIBOは自分にとってどういう存在なんだろう」ということを、自ずと考えるようになりました。さらにAIBOが我が家に来た一年後に亀が来て、さらにその1年後にはハムスターが来ました。そして、彼らはリビングの中の同じ場所で飼われていました。
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宇野常寛 News X vol.15 ゲスト:近藤那央「アンドロイドからネオアニマへ」【毎週月曜配信】
2019-01-21 07:00
宇野常寛が火曜日のキャスターを担当する番組「NewsX」(dTVチャンネル・ひかりTVチャンネル+にて放送中)の書き起こしをお届けします。12月11日に放送されたvol.14のテーマは「アンドロイドからネオアニマへ」。愛玩ロボット「ネオアニマ」の開発者である近藤那央さんをゲストに迎え、従来の〈人間の代替物〉としてのロボット像を乗り越えた先にある、自然の生き物の存在感を抽出した新しいロボットのあり方について考えます。(構成:籔 和馬)
☆PLANETSチャンネルでのNewsXアーカイブ動画に関するお知らせ 2019年1月以降、NewsXのアーカイブ動画は、本チャンネルではアップされないことになりました。 番組は、ぜひdTVチャンネルで【リアルタイムご視聴を】お願いします! 詳しいご登録方法はこちらのページに掲載しています。
書き起こし記事は継続して配信して参りますので、ぜひお読みいただけると幸いです。
宇野常寛 News X vol.15 「アンドロイドからネオアニマへ」 2018年12月11日放送 ゲスト:近藤那央 アシスタント:加藤るみ(タレント)
宇野常寛の担当する「NewsX」火曜日は毎週22:00より、dTVチャンネルで生放送中です。 番組公式ページ dTVチャンネルで視聴するための詳細はこちら。 なお、弊社オンラインサロン「PLANETS CLUB」では、放送後1週間後にアーカイブ動画を会員限定でアップしています。
若きアーティストが提示する、愛玩としてのロボット
加藤 NewsX火曜日、今日のゲストはロボットアーティスト、近藤那央さんです。まず宇野さんと近藤さんが出会ったきっかけを教えていただけますか?
宇野 DMM.make AKIBAという、日本のメイカーズやハードウェアスタートアップのシェアオフィスをいろいろと取材していたときに、おもしろい女の子がいるという噂は聞いていました。それで、うちのスタッフにたまたま近藤さんの大学時代の友達がいて、『PLANETS vol.10』で取材をしたんですよ。近藤さんはアメリカのシリコンバレーで活動をしていて、ちょうど帰国のタイミングでこの番組に出てもらうといいかなと思って、今回は来てもらいました。
▲『PLANETS vol.10』
加藤 近藤那央さんとのトークなんですが、テーマは「アンドロイドからネオアニマへ」です。宇野さん、このテーマに設定した理由は何ですか?
宇野 単純に「ネオアニマ」は彼女がつくっているロボットのコンセプトなんだよね。このコンセプトが、そのまま彼女のこれからやりたいことや考えていることを体現しているんだよ。今日の話で、ネオアニマの実態とおもしろさが伝わるといいと思います。
加藤 今日も三つのキーワードでトークしていきます。まず「ペンギンロボット『もるペン!』」です。「もるペン!」とは何ですか?
近藤 「もるペン!」は、私たちがつくっているペンギンロボットの名前です。
近藤 最新の「もるペン!」ですね。
宇野 これは硬いの?
近藤 硬いですね。でも、ゴムと布を貼ってあるので弾力がある感じはあります。
加藤 パッと見たら、ふつうのペンギンかなと思うくらいリアリティがありますね。
近藤 ペンギンを間近で見たことがある人はあまりいないので、割とデフォルメしていてもペンギンに見えるんです。
加藤 子どもたちがいっぱい触っていますね。
近藤 これは去年の夏休みの時期にデパートの催事場で一ヶ月展示したときの動画です。
宇野 「もるペン!」はどのようなロボットなの?
近藤 これはもともと水中ロボットをつくりたいという興味から始まったプロジェクトなんです。たまたまいろんなところから声をかけていただいて、子ども向けに展示をしたらめちゃくちゃウケがよかったんですよ。動画からもわかるように、一対一ではなくて、複数人が一度に遊べるものなんです。
宇野 つまり愛玩用ということ?
近藤 羽ばたきによる推進方法が最初のテーマではありましたけど、現在のメインはそうですね。
宇野 観て楽しむ、触って楽しむことを目的にしたロボットなんだね。なにかのためのロボットではなくて、存在そのものを目的としているロボット。
近藤 そうですね。あとは技術研究としてやっているところもあります。
加藤 やっぱりロボットは男性が好むイメージがあるんですが、近藤さんがロボットに関心を持ったきっかけとかあるんですか?
近藤 ロボットというよりは機械に興味を持っていたんです。機械に興味を持ったきっかけは、小惑星探査機のはやぶさが帰ってきたときに、ネット中継を観ていて、とても綺麗だなと思って、それで工業系の高校に進学しました。機械の勉強をして、最初はずっと宇宙関係の研究をやっていたんですが、三年生のときに卒業研究でロボットを作ることにしました。
宇野 なんでロボットだったの?
近藤 ロボットは機械で勉強することのすベてを集めたものでもあるので、それで友達と話して、水中ロボットをやりたいねという話になって、チームでつくりました。技術的な興味で始めたんですが、どのようにしたら人間に自然に受け入れられるのかという興味に移っていきました。私はもともとロボットと関係が深いんです。昔からロボットと一緒に暮らしていたので、コミュニケーションロボットに対する考えがいろいろあったんですよ。
宇野 それはAIBOとか?
近藤 AIBOですね。AIBOを小学3〜4年ぐらいにときに親が買ってきたんです。最初はあまりその関連性を気にしていなかったんですが、よく考えてみると、そういう経験があったから、ロボットをもっと人間に楽しんでもらえるようにしたいという考え方になっていたんだと思います。
宇野 卒業研究でやったことを、人生前半のメインの仕事にしようとしているよね。そうなったきっかけは何かあったの?
近藤 卒業研究は普通はつくって終わりですが、とりあえず動いて泳いだものの、もっと改良すれば絶対によくなるところがあったんです。大学もすぐに受かったので、メンバーと一緒にもう一回つくり直すことになりました。つくり直そうとなったときに、他人に見せる機会があったので、その中で、ロボット自体が人の心を癒したり、人の気持ちを変える効果があるなと思ったので、そこがすごくおもしろいなと思いました。
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