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岸本千佳×宇野常寛 京都の街から〈住み方〉を考える――人と建物の新しい関係(後編)(PLANETSアーカイブス)
2020-01-31 07:00
今朝のPLANETSアーカイブスは、人と建物の関係を結び直す“建物のプロデュース業”=不動産プランナーとして、京都を拠点に活動する岸本千佳さんのインタビューの後編です。 かつて京都に住んでいた宇野常寛とともに、東京と京都、地方における「住むこと」への意識の課題、そして多様なグラデーションの町・京都の可能性について語り尽くす、これからの「住」を考える対談です。(構成:友光だんご)※本記事の前編はこちら※本記事は2017年10月1日に配信された記事の再配信です。
京都は町が拡大している
▲京都駅
宇野 後編では、岸本さんが拠点を置く「京都」についてお話を伺っていきます。東京で不動産の会社に勤めたあと、独立する土地として京都を選んだのはなぜだったんでしょう?
岸本 京都という町については、他の都市とは違うという印象があるんです。東京に比べて建物が圧倒的に魅力的ですし、それを掘り起こしているプレーヤーも少ない。そこに可能性を感じたのが理由ですね。
宇野 僕も京都に7年間ほど住んでいましたが、京都の人々の気質については、難しい人が多いなという印象があります。
岸本 確かに悪い噂が広まりやすい面はあるかもしれませんね。でも逆に、いい評判も数珠繋ぎで広がるので、きちんとした仕事は評価されやすい土地柄だと思います。 それに京都は、東京とは違った意味で、京都は世界中から一目置かれている都市なんです。でも、そのブランド力に、生粋の京都人はあまり気付いていません。京都を客観的に見ることのできる人の方が価値を付与しやすいので、その点において、私にもできることがあるのかな、と思っています。
宇野 岸本さんが京都に戻られたのはいつ頃ですか?
岸本 2014年の11月でしたね。
宇野 今起きている観光バブルが始まる直前ですね。京都が大きく変わり始めたタイミングで、不動産プランナーという新しい仕事を始めたんですね。
岸本 今思うと凄いタイミングです。あの頃からの京都の変わりようは凄いですから。以前は市バスで外国人を見ることなんてありませんでした。よく地元の人たちは適応できているなと感じます。
宇野 僕が京都に住んでいたのは1999〜2006年頃ですが、当時はこんなに海外からの観光客が町を歩いていませんでしたからね。ここ4、5年、京都精華大学で教えている関係で、頻繁に京都へ来ているんですが、「京都も変わったな」と感じながら、変な居心地の良さもあるんです。大人の男が昼間からラフな格好で歩いていても、大陸からの観光客だと思ってもらえる(笑)。いい意味で、放っておいてくれる町になりました。
岸本 仕事柄、町中でよく写真を撮るんですが、そういう行為も以前と比べて許されるようになりましたね。私が住んでいるのは西陣で、観光地エリアではなく住むための町なのですが、今では路地にたくさんの観光客が来ますし、宿のあるエリアも、どんどん外へ広がっているんです。
宇野 京都は今、町が拡大しているんですね。
岸本 この2、3年で確実に変わっています。その一方で、誰も京都のことをきちんと見ていないとも感じるんです。観光地としてのミーハーな見方ばかりで、生活の場所としての視点がない。
宇野 たとえば、僕は桂や久世橋のあたりが結構好きだったりする。京都の西側は東側と比べてるとファミレスやブックオフが点在する普通の住宅地なのだけど、その中に突然、1000年以上の歴史を持つ寺があったりする。あのハイブリット感が魅力だと思うんですよね。日常空間の中に、非日常が入り込んでいるような面白さがある。 岸本さんの著書『もし京都が東京だったらマップ』は、不動産業の経歴がある人ならではの本だと思いました。町というのは総論で語られがちなんだけど、この本では固有の建物にアプローチし、一駅一駅、建物一つ一つの個性に向き合っている。
▲出町柳
岸本 ひとつのイメージでは括れない、モザイク状で多様性のある町が京都なんです。それがこの本で一番伝えたかったことです。
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インターネットは世の中の「速度」を決定的に上げた一方、その弊害がさまざまな場面で現出しています。世界の分断、排外主義の台頭、そしてポピュリズムによる民主主義の暴走は、「速すぎるインターネット」がもたらすそれの典型例といえます。インターネットによって本来辿り着くべきだった未来を取り戻すには今何が必要なのか、提言します。
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岸本千佳×宇野常寛 京都の街から〈住み方〉を考える――人と建物の新しい関係(前編)(PLANETSアーカイブス)
2020-01-24 07:00
今日のPLANETSアーカイブスは、京都を拠点に活動する 「不動産プランナー」であり、『もし京都が東京だったらマップ 』の著者でもある岸本千佳さんと宇野常寛の対談です。人と建物の関係を結び直す彼女のプロデュース業は、建築と不動産の間の壁を超えたところに生まれました。岸本さんが大きな影響を受けた不動産的なアプローチの先駆け「東京R不動産」の衝撃とは? そして、リノベーション第一世代と第二世代の違いとは? 岸本さんと宇野常寛が「住」のこれからについて考えます。(構成:友光だんご) ※本記事は2017年9月1日に配信された記事の再配信です。
クリエイティブな発想が必要とされない不動産業界
宇野 岸本さんは「不動産プランナー」という肩書きで活動されていますが、具体的にどういったお仕事なのでしょうか?
岸本 簡単にいうと「建物をプロデュースする仕事」です。まず、不動産の持ち主から相談を受けて、建物の使い方を提案します。提案が通ったら、設計や工事担当の人たちとチームを組んでリノベーションを行い、完成後の入居者を見つけて運営していく……というのが一連の流れです。この全てを一貫して一人で行っています。
宇野 僕は岸本さんの著書『もし京都が東京だったらマップ』 で「不動産プランナー」という仕事があることを初めて知って、こういった仕事がなぜ今までなかったんだろうと思ったんですよ。世の中がもっと便利に、かつ面白くなることは間違いないのに。
▲『もし京都が東京だったらマップ』
岸本 業界全体の問題として、「不動産」と「建築」の関係があまり良くなかったということが挙げられます。これまで不動産では、クリエイティブな発想は無いものとされてきたし、必要とされてもきませんでした。その一方で、建築にはクリエイティブなイメージがありますが、一般人にとっては少し敷居の高い世界だった思うんです。家を建てる際に設計士や建築家にお願いするのは、一部の限られた層の人ですよね。こうした距離感は業界内にもあって、私が大学で建築を学んでいたときも、先生が不動産業界を見下したように言う風潮がありました。
宇野 「不動産」の人たちは坪面積あたりの収益には関心があるけど、そこから生まれる文化的なものには関心がない。かといって「建築」の人たちはその状況を軽蔑するばかりで、建てたあとの運用にはタッチしない、ということですね。
岸本 そうなんです。でも、15年くらい前に馬場正尊さんの「東京R不動産」をきっかけに、不動産と建築の間をつなごうとする動きがやっと現れ始めたんです。
「東京R不動産」の衝撃
宇野 東京R不動産が出てくる以前は、住み方のレベルで文化的な表現をしたいと思っても、賃貸では無理でしたよね。面白い建物に住んでみたくても、家を買う、あるいはオーダーするといった建築的な選択肢しかなかった。しかし、持ち家だと今度は住み替えが難しくなってしまう。「住まう」ことを楽しむためには、不動産的なアプローチが必要なんです。そこに、東京R不動産が登場した。
岸本 私は当時大学生で、太田出版の『東京R不動産』を読んで知ったんです。衝撃でしたね。それまで建築の世界では、建物が完成したあとのことは重視されていなかったんです。だからこそ、「いかに住むか」に価値を置いた東京R不動産の考え方は新鮮で、自分の目指すべき方向だと思いました。それで就職活動でも、いま世の中にある仕事では一番やりたい方向に近いと考えて、不動産業界に進みました。
▲『東京R不動産』
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