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記事 25件
  • コロナ禍でも、「私の働き方改革」は進んでいない ──(意識が高くない僕たちのための)ゼロからはじめる働き方改革 第5回〈リニューアル配信〉

    2021-06-14 07:00  
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    (ほぼ)毎週月曜日は、大手文具メーカー・コクヨに勤めながら「働き方改革アドバイザー」として活躍する坂本崇博さんの好評連載「(意識が高くない僕たちのための)ゼロからはじめる働き方改革」を大幅に加筆再構成してリニューアル配信しています。2020年からのコロナ禍という危機をバネに、強制的に働き方改革が進展したようにも見える現在。たしかにICT活用が飛躍的に進み、テレワークの選択肢が当たり前になりましたが、それは本当の意味で一人ひとりの働き方を向上させることにつながっているのでしょうか? 「私の働き方改革」の観点から、改めて現状を整理します。
    (意識が高くない僕たちのための)ゼロからはじめる働き方改革〈リニューアル配信〉第5回 コロナ禍でも、「私の働き方改革」は進んでいない
    あらすじ
     コロナ禍によって世界は大きく変化したことは確実です。 個人や組織の働き方についても、ICT活用が大幅に進展し、テレワークが当たり前の選択肢になりました。 コロナ禍前に多くの企業が頭を抱えていた「ICT活用不足」「柔軟な働き方が浸透しない」といった難問たちは、これまでの働き方改革推進部署の努力をあざ笑うかのように、一気に解消されました。 果たしてコロナ禍で、働き方改革はもはや「過去のテーマ」になってしまったのでしょうか? 今回は、「私の働き方改革」の視点から、コロナ禍の変化について整理しながら、やはりまだまだ「私の働き方改革」には至っていないのではないかという投げかけをしていきたいと思います。
    コロナ禍が生み出した新たな熱狂
     最近こう聞かれることがあります。「坂本さん、コロナ禍によって強制的に働き方改革ができてしまった中で、働き方改革のコンサルティングってもういらないんじゃないの?」と。  私の答えはNOです。  2021年春、世界はCOVID-19(新型コロナウイルス)による経済社会の大混乱の最中にあります。疫病という外敵によってもたらされた社会経済活動の強制停止は、個人の生活、そして企業の生産活動に未曾有の被害をもたらしました。  通勤、登校、集会、外食など、これまで息をするように当たり前に営まれていた様々な活動が禁止や自粛に追いやられ、生活習慣の抜本的な見直しを迫られています。  そうした中で、意識が高い人たちは「ピンチはチャンス」と口を揃えわめき立て、「withコロナ時代のニューノーマルとは?」と問いを掲げ、毎日オンラインセッションを開催しながら、これからの世界を予測し合って「政府はこうすべきだ」「社会はこうなっていくべきだ」「コロナによって日本の働き方改革が強制的に実行されてしまった」と盛り上がっています。  この状況は、日本中で働き方改革がブームになった2016年前後の状況を彷彿とさせます。 当時も今と同じく、メディアの論客や経営者、コンサルタントたちがこぞって「働き方改革とはこうあるべし」と持論を展開して、政府や企業への提言を“あさっての方向”に向かって発信していました。違ったのは、その発信の仕方がオンラインセッションではなく、広い会場を貸し切りしたシンポジウムであったことくらいです。
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  • 働き方改革とは、働く制度を変えることでもない ──(意識が高くない僕たちのための)ゼロからはじめる働き方改革 第4回〈リニューアル配信〉

    2021-06-07 07:00  
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    (ほぼ)毎週月曜日は、大手文具メーカー・コクヨに勤めながら「働き方改革アドバイザー」として活躍する坂本崇博さんの好評連載「(意識が高くない僕たちのための)ゼロからはじめる働き方改革」を大幅に加筆再構成してリニューアル配信しています。「働き場所」の改革に加えて、多くの企業の働き方改革の現場で行われたのが、在宅勤務やフレックス、はたまたMBO型の評価スキームなど、制度を作ることでした。そうした「型」から入っていくやり方が機能しない場合が多いのはなぜか、改めて検証していきます。
    (意識が高くない僕たちのための)ゼロからはじめる働き方改革〈リニューアル配信〉第4回 働き方改革とは、働く制度を変えることでもない
    あらすじ
     前節では働く「場」の改革だけでは、本質的な働き方改革(私の働き方改革)は進まないことが多いと解説しましたが、この節では「型」を変えるだけでも同様に私の働き方改革は進みづらいということを、事例を示しながら解説したいと思います。 「型」とはすなわち、制度やルール、仕組みのことです。 多くの企業がコロナ禍前から在宅勤務制度やフレックス制度を導入していましたが、自ら進んで「やる事・やり方・やる力の見直し」に向けてそれらの制度を活用する人は少なかったと思います。 また、評価制度の欧米化についても、「型(外見)は変われど中身(運用)は変わらず」で、その成果を実感できている人は限られています。 こうした状況を整理しながら、なぜこうした状況に陥りがちなのか? についての考察につなげていきたいと思います。
    働く制度の改革も、働き方を変えるには至っていない
     働く場所についてと同じく、この数年新たに作られた制度たちも、「お蔵入り」状態もしくは、「特定の人だけのためのもの」となっている事例が見受けられます。フレックス制度、在宅勤務制度、副業制度などがそれに該当します。 ただし、コロナ禍によって、「在宅勤務」は当初想定していた狙いを超えて、フル活用されるようにはなりました。しかしこれは、「在宅勤務制度」を社員一人ひとりが進んで活用した結果在宅勤務が増えたわけではなく、感染拡大防止のために上からの強制によって実現したまでであり、制度改革によって働き方が変わったわけではありません。 ちなみに数年前、コロナ禍発生前のことですが、某通信会社さんから、「社員が在宅勤務制度を使ってくれない」というお悩みをいただいたことがあります。当時の私としては、「別に、在宅勤務の必要性がないなら、制度を使わなくってもいいんじゃないですか?」と疑問に思ったのですが、さすが通信会社さん、一歩先を見据えていらっしゃいました。 「もし誰もが在宅勤務を当たり前のように使える組織になっていなければ、どうしてもその制度を使わなければならないときにも、おそらく不安になり、堂々と活用できないかもしれない。これからの介護問題や震災などでの通勤困難に備えて、今のうちから家でも働けるような慣習を染みつけることが大事だ」とのことでした。今になって思えば非常に先見性のある課題提起です。コロナ禍によって多くの企業が在宅勤務を余儀なくされ、少なからず混乱が発生していましたが、もし多くの企業がこうした視点に立って、コロナ禍の前から全員で在宅勤務に慣れていることができていたら、そうした混乱は抑えることができたのかもしれません。 ではなぜコロナ禍前に、多くの社員は在宅勤務制度を活用しなかったのでしょうか。 この答えも簡単です。「現状のやり方でも仕事が回っていて、あえて働く場所を変えて在宅勤務にしなくてもただちには困らないから」です。
    評価制度やコミュニケーション改革も、型の変化だけに留まっている
     バブル崩壊以降、企業・組織における評価制度やそれに伴う上司と部下のコミュニケーションのあり方もある意味強制的に変化しています。 評価制度については、成果主義に始まり、評価の視点はますます「個別的」「短期的」になっています。個々人のスキルやキャリア意識に応じて、部署のミッションとすり合わせ、MBO(Management by Objectives:客観的に測定できる目標設定管理)に落とし込まれ、「今年は〇〇を何件やります」といった宣言が行われるようになりました。 合わせて、上司は毎期1~2回、「1on1」と称した個別面談を部下と二人きりで行うことが求められ、部下は評価面談実施後に、その面談が有意義だったかを人事部に報告しなければならなくなりました。 これらは決して悪いことではなく、従来の曖昧で不透明、画一的で横並びの評価制度を改革する大歓迎な変化であるはずでした。 しかし、ふたを開けてみると、ぱっと見では1on1がまじめに行われているものの、内容としては「上司からの指導タイム」だったり、上司に腹を割って話すことに抵抗のある部下は、当たり障りのない仕事の会話に終始したり、目標設定シートの体裁は変われど、なるべく従来の記載内容を踏襲しようというパワーが働いていたりと、形は変われど中身は変わらずといった状況の企業さんのお悩みが後を絶ちませんでした。 また、MBOや成果主義などの評価制度についても、結局運用するのは職場の上司と部下一人ひとりであり、彼らの意識・行動が変わらなければ「これまでの評価視点、これまでの評価方法」で運用することは十分に可能であり、従来の働き方に飲み込まれてしまうケースもよく見受けられました。 私は働き方改革アドバイザーとして長年直面してきたこれらの経験から、型を変えるだけでも、「私の働き方改革」を促すには至らないようだと考えるようになったわけです。
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  • 働き方改革とは、働く場を変えることでもない ──(意識が高くない僕たちのための)ゼロからはじめる働き方改革 第3回〈リニューアル配信〉

    2021-05-31 07:00  
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    (ほぼ)毎週月曜日は、大手文具メーカー・コクヨに勤めながら「働き方改革アドバイザー」として活躍する坂本崇博さんの好評連載「(意識が高くない僕たちのための)ゼロからはじめる働き方改革」を大幅に加筆再構成してリニューアル配信しています。この数年間の「働き方改革」ブームで盛り上がったのが、フリーアドレスオフィスやICT活用などの「働く環境」の改革でした。しかし、多くの現場で、必ずしもその試みが奏功したとは言えない状況があります。なぜ「働く場」を変えてもうまくいかないのか、鋭くメスを入れていきます。
    (意識が高くない僕たちのための)ゼロからはじめる働き方改革〈リニューアル配信〉第3回 働き方改革とは、働く場を変えることでもない
    あらすじ
     弊社の事業の一つは、ワークプレイスの改革によるワークスタイル改革を支援することです。 しかし、いえ、だからこそ、私はこう思います。「オフィスを変えただけで働き方は変わらない」と。 多くの企業で、「フリーアドレスを導入したけれど、使われない・成果が出ない」というお悩みを聞きます。さらに言えば、ICTツールを導入しただけでもなかなか働き方は変わらないというケースも多いようです。 本節では、「私の働き方改革」を推進する上で、物理的環境(場)の改革だけでは不足であることを事例で示していき、その理由についても考察したいと思います。
    フリーアドレスブームの到来
     長時間労働の是正とは別として、もう一つ、働き方改革ブームで熱を帯びるようになった取り組みがあります。すなわち、「フリーアドレスオフィス」の乱立です。「フリーアドレス」、つまり、デスクは個人に紐付けず、毎日自分の席を自由に選んで働けるというオフィス運用スタイルです。以前から営業部門など自席にいる時間が短い職種では、オフィススペースの効率化や賃料削減を目的として、フリーアドレスオフィスがちらほら導入されていました。 それがこの働き方改革ブームの中で、「新しい働き方」として脚光があたり、民間企業も自治体も「働き方改革といえばフリーアドレス」といった感じで、オフィスのデスクから引き出しを撤廃し、椅子の数は従業員数よりも少ない数に設定して、従業員は朝来ると空いている席を探して毎日席替えしながら働くことが「改革的」であるということで、一部でもてはやされるようになりました。 もちろん当社にとってはありがたいブームでした。従来型オフィスから脱皮してフリーアドレスオフィスへの改築が進むということは、オフィス家具の売り上げアップにつながるわけですから。
    フリーアドレスオフィスが使われないというお悩みもブームに
     しかしながら、そのブームに比例して私たちのところに、「フリーアドレスにしたのに、皆いつも同じ席に座るので困っている」「フリーアドレスにしたら、部下が管理職から離れて座るようになって、チームの会話が減って困っている」「フリーアドレスで期待した、チーム間のコミュニケーションが起こらない」というご相談も増えるようになりました。  最も多いご相談が「フリーアドレスオフィスなのにフリーアドレスな働き方にならなかった」というものです。フリーアドレスなオフィスになったはずなのにいつの間にか皆自分なりの「自分の席」を見つけ出して固定席になっていき、結果として集中エリアやコミュニケーションエリアが使われないままの状態になっているケースが多いです。 さらには、本来フリーアドレスなオフィスでは「自分の席」を持たないため、デスクの引き出しをなくして、書類などは個人ロッカーに都度片付ける働き方になるのですが、「毎回片付けをするのは生産性を下げる」と言い出す人が現れ、足元に引き出し代わりに段ボール箱を設置し、そこに書類が収納されていくケースもあります。 こうした「フリーアドレスの固定席化」はわかりやすい問題ですが、一見フリーアドレスな働き方ができていても、働き方改革視点で見ると「実は根っこは変わっていない」というケースもあります。
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  • 働き方改革は、誰かがしてくれるものではない ──(意識が高くない僕たちのための)ゼロからはじめる働き方改革 第2回〈リニューアル配信〉

    2021-05-24 07:00  
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    (ほぼ)毎週月曜日は、大手文具メーカー・コクヨに勤めながら「働き方改革アドバイザー」として活躍する坂本崇博さんの好評連載「(意識が高くない僕たちのための)ゼロからはじめる働き方改革」を大幅に加筆再構成してリニューアル配信しています。現在の「働き方改革」の現場で、ほとんどのケースが上からの「働かせ方改革」一辺倒に陥ってしまうなか、何をターゲットにすればアウトプットの生産性を落とさずに、働く時間の充実度を高めていけるのか。まずは坂本さんが追求する「私の働き方改革」の条件を定義します。
    (意識が高くない僕たちのための)ゼロからはじめる働き方改革〈リニューアル配信〉第2回 働き方改革は、誰かがしてくれるものではない
    あらすじ
     働き方改革とは、やる事・やり方・やる力を見直し、生産性を高めながら、より充実した時間の使い方にシフトすることであると私は考えます。  では、そのやる事・やり方・やる力を見直すのはいったい誰なのでしょうか? 会社? 人事部? それとも上司?  答えは「自分」です。といっても、「会社や上司に言う前に自分でやれ!」という体育会系的な話ではありません。  経営者も管理職も一般社員も、それぞれの立場で自分の仕事の成果を改めて定義し、自分なりのやる事・やり方・やる力を高めていくとともに、個人でできる領域を超えた範囲については周囲に「働きかけていく」ことが重要ということです。  こうした働き方改革を、世の中一般で認識されている働き方改革(組織が推進し、従業員がそれに従う構図)と区別して、「私の働き方改革」と名付けたいと思います。 
    「働かせ方改革」によって自分の働き方を改革する仕方を忘れた私たち
     そういえば2017年ごろ、「働き方改革より先に、働かせ改革をすべきだ。」という論調もありました。しかしこの論調は私から言わせれば「何を今さら」なのです。 日本企業はこれまでは「働かせ方改革」一辺倒でした。OA、ICT、制度改革などなど、会社側は色々な環境改革を行い、従業員の仕事内容、仕事方法を変えてきました。その流れに浸かった多くの働き手は、「働き方というのは、自分で変えるものではなく、上が変えるべきもの」という固定概念を抱くようになったのかもしれません。 以前は環境が変われば仕事が変わりました。もしくはそれら環境を使わないと仕事が進まないので、環境が変われば働き方も変わることが必然でした。 そうした中で、労働者は自らの働き方を自分で変えられるという意識は薄れ、次第にマニュアル化・標準化された仕事をこなすようになり、上司も、決められたプロセス通りに仕事をすることを管理する「現状維持管理人」になっていきました。
     2020年に世界中の暮らし方を大きく変えたCOVID-19のパンデミック、通称「コロナ禍」によって、日本企業の働き方も大きく変わりました。しかしここにおいても、上(外)からの半ば強制的な環境変化とそれに従いマニュアル的にテレワークを取り入れる従業員や管理職たちという構図は変わりませんでした。 コロナ禍発生当初から自分たち自身で現状の環境をある意味「活かし」て、会社に言われるまでもなく進んでテレワークを導入し、そのやり方を考え、会社や上司に働きかけて自分の働き方を変えていった個人や組織は少なかったと思います。  しかし、今の時代、「自分たちで自分たちの働き方を変える」ことに着目することが必要だと感じています。
    働き方改革の主語は「それぞれの私」
     つまり、働き方改革とは、一人ひとりが「〇〇のため、自分の働き方をもっと良くしたい」というパッションのもと、自らが改革者となって自身や周囲「やる事・やり方・やる力」を変えていく(生産性を高めていく)活動であるべきと私は考えています。 言うなれば「私の働き方改革」です。決して「会社の働き方改革」ではなく。 これは「働き方改革は自己責任だ。文句言っていないで一人ひとりががんばれ!」という精神論や経営責任放棄の話ではありません。私はそうした「社畜的な考え」は大嫌いです。 「自分で自分の働き方を変える」というのは、部下への押し付けではありません。経営も管理職も従業員も、それぞれが自分自身でできる改革をして生産性を高める活動をするべきだし、自分自身でどうしようもないことについては、上の階層など然るべき部署・担当・経営層に働きかけるべきだと考えます。 つまり、「自分や組織がより充実することに時間を振り向けられるようになるために、各自が自分の職制に沿って自分や周囲へ働きかけ、生産性を高めていく活動」が働き方改革なのです。
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  • 働き方改革とは、労働時間の削減ではない──(意識が高くない僕たちのための)ゼロからはじめる働き方改革 第1回〈リニューアル配信〉

    2021-05-17 07:00  
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    今月から、大手文具メーカー・コクヨに勤めながら「働き方改革アドバイザー」として活躍する坂本崇博さんの好評連載「(意識が高くない僕たちのための)ゼロからはじめる働き方改革」を大幅に加筆再構成したリニューアル配信が始まります。時代のトレンドワードになるはるか以前から、独自の「働き方改革」を提唱してきた坂本さん。2010年代後半から取り沙汰されたスローガン先行のブームの現状を点検しながら、ほんとうに自分自身が幸福になるための「私の働き方」とは何なのか、ゼロから考えていきます。
    (意識が高くない僕たちのための)ゼロからはじめる働き方改革〈リニューアル配信〉第1回 働き方改革とは、労働時間の削減ではない
    はじめに
     2010年代後半、日本中で「働き方改革」が掲げられ、多くの組織がこぞって働き方の見直しに取り組むことになりました。  「ワークライフバランス」や「多様性活躍」といった表面的なスローガンはさておき、その取り組みの多くが実質的には「残業削減」や「労働時間短縮」に比重を置いた短期的な早帰り促進施策でした。多くのオフィスで20時になると電気が消され、列をなして従業員が駅に向かって追い出されていきました。そして、多くの人が少しばかりの違和感を覚えながらも、これまでの様々な施策同様に黙って受け入れ、「働かせられ方」を変えていきました。  しかし、働き方改革というのは、労働時間短縮(すなわち生活時間の増大)をゴールにするべきではないですし、残業が減ったからといって企業や個人の成果が高まるとは限りません。それはある意味「当たり前」なことです。  企業視点では残業削減=労働力の減少になるわけですから、仕事が納期通りに進めなかったり、対応品質が低下するなどの弊害が発生するおそれがあります。 個人視点でも、早めに会社を出ることができたものの、一人ファミレスで夜までスマホゲームやSNSに勤しんで「時間をつぶす」ファミレス族が出現するという事態も発生していました。ちょうどこの頃、魅力的なスマホゲームも多数登場しており、私も二次元のスクールアイドルやシンデレラアイドルとのライブにお金と時間を投入し、気づけば夜中になっていて虚無を感じることも少なからずありました。 他にも、同僚との愚痴会的な飲み会に参加してみたり、「意識高い系」らとの集合写真をとってSNSにアップするために異業種交流会に参加するなどして、可処分所得と可処分時間を浪費する結果になっているケースもあるかもしれません。また人によっては、「残業代」という収入源の縮小をクリティカルなデメリットとして捉えて、ワークライフバランスは実現しながらもライフの充実感は低下するということもあるかもしれません。  ではなぜ企業は、こんな当たり前のリスクを無視して、やみくもにオフィスの電気を消したのでしょうか?  実はここに、国や企業の働き方改革プロジェクトが目標に掲げる「生産性向上」というテーマに潜む「罠」があると考えています。  今回は、2010年代後半当時の働き方改革ブームを振り返りながら、その「罠」について明らかにし、本来あるべき働き方改革の着目点について考えていきたいと思います。
    国を挙げた残業削減ブーム到来
     2017年、「働き方改革アドバイザー」として地元関西から出てきて、働き方改革ブーム最前線の東京で日本の働き方改革を後押しすべく活動しようと息巻いていた私なのですが、どうもしっくりきませんでした。  多くの企業から働き方改革についてのご相談を受けたり、働き方改革のニュースを目にするたび、次第に「これって働き方改革なのか?」と感じるようになりました。それどころか、「働き方改革が間違った方向に進もうとしている」という印象を抱くようになっていきました。  当時、日本では、「働き方改革関連法」が制定されようというところでした(施行は2019年4月からですが)。その法案の主な内容は、①時間外労働の上限規制(基本45時間/月、例外でも複数月平均80時間以内)、②年休取得の必須化(最低5日)、③正規・非正規従業員の不合理な待遇差の禁止 です。  先立って2016年には政府にて「働き方改革実現推進室」が発足。「一億総活躍、長時間労働からの脱却と生産性向上の両立」をキーワードに、様々な会議や検討が重ねられていきました。  2015年に発生した痛ましい過労死問題や、日本中にはびこるサービス残業問題、過重労働問題、非正規雇用労働者との待遇格差問題が世論として噴出し始めたこともあり、こうした「国策としての働き方改革」において、まずは「残業削減」が喫緊のテーマとなったことは、やむを得なかったと思います。
    ワークライフバランスの「企業の社会的責任化」
     また、時を同じくして、2016年には女性活躍推進法が実施され、「ダイバーシティ」というキーワードに注目が集まるようになりました。企業は育児休暇制度や在宅勤務制度を導入することが求められるようになり、女性管理職の登用人数目標なども定められるようになります。  それと合わせて、「男性も女性も等しく仕事だけでなく家庭にも時間を使おう」というワークライフバランスの視点から、長時間労働の是正が大きな課題となりはじめました。  こうして、国を挙げた働き方改革のブームは、「長時間労働の是正」、「残業削減」が目的・目標になっていると受け止められてしまい、企業や組織の社会的責任としての活動として「やらなければならないこと」になっていきました。  その結果として、自治体や企業でもその流れを受け、活発に「働き方改革」が叫ばれるようになります。猫も杓子も働き方改革時代の到来です。  そして、その取り組みのほとんどが、「長時間労働の是正」になりました。
    「オイダシ作戦」の決行
     20時になると一斉にオフィスが消灯され、「NO 残業推進隊」と書かれた腕章をつけた人事部・総務部がオフィスを巡回し従業員を追い出します。 駅には膨大な数の企業戦士らが列をなして帰路に着くという風景がそこかしこで見受けられるようになりました。  管理職は、グループ会議などで残業の多い部下に「もっと残業減らせ」と指示をするようになりました。そしてこれまで部下が早く帰ろうとするとチクリと嫌味を言っていた上司たちが、「残業バスターズ」などの腕章をつけてオフィス中を練り歩くようになりました。  とあるIT企業では、時間が来ると自動的にPCがシャットダウンされ、「帰りましょう」と画面に表示されるようになったりもしていたそうです。
     こうした早帰り促進活動によって、多くの人が早く帰ることができるようになりました。いえ、早く帰らされるようになったとも言えます。さて、これって働き方改革なんでしょうか。一人ひとりの働き方は変わり、生産性の向上つまり短時間・省エネルギーでより高い価値を生み出すことができるようになったのでしょうか?
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  • 【今夜21時から見逃し配信!】坂本崇博×新野俊幸「ワークスタイルから社会を変える」

    2020-12-26 12:00  
    今夜21時より、コクヨ・働き方改革PJアドバイザーの坂本崇博さんと退職代行「EXIT」代表取締役社長の新野俊幸さんをお招きした遅いインターネット会議の完全版を見逃し配信します。
    24時までの限定公開となりますので、ライブ配信を見逃した、またはもう一度見たいという方は、ぜひこの期間にご視聴ください!
    坂本崇博×新野俊幸「ワークスタイルから社会を変える」見逃し配信期間:12/26(土)21:00〜24:00
    気がつけば「働き方改革」という言葉がブームになって随分長い時間が経ちました。しかしこの国のワークスタイルは、企業社会は、本当に変わったのでしょうか。「働き方」「やめ方」のプロを交えて、サラリーマンの働き方から社会を変えるための作戦会議を行います。 
    ※冒頭30分はこちらからご覧いただけます。https://www.nicovideo.jp/watch/so37157730
    また、PLANE
  • 明日からできる「私の働き方改革(My WX)」その3|坂本崇博

    2020-11-19 07:00  
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    「働き方改革アドバイザー」の坂本崇博さんが、「My WX(私の働き方改革)」の極意を説く異色のワークスタイル指南、いよいよ最終回です。これまでの「意識が高くない」からこそできるメソッドで見えてきた選択肢を、どうすれば組織の中で行動に移していけるのか。新規事業開発のための「エフェクチュエーション」理論を坂本さん流に変換しつつ、「外道」の実践方法を考えていきます。
    坂本崇博『(意識が高くない僕たちのための)ゼロからはじめる働き方改革』最終回 明日からできる「私の働き方改革(My WX)」その3
     前回は、「私の働き方改革(My WX)」の実践理論として、セルフマネジメント論や心理学(脳科学)的な視点での行動変容アプローチも引用しつつ、「意識が高くないからこそできるやり方」をご紹介させていただきました。
     「二次元にしか興味がない」状況から、ちょっとした地名トリビアを調べることで脳内ホルモンを分泌させ、次第に世界のあらゆることにアンテナを張りたいと「ハマる」ための手法。新たに記憶したいことを過去の後悔している体験(もしくはそのリベンジ妄想)と結びつけることで長期記憶領域に残す「クヨクヨ記憶術」。そして、記憶したネタ同士を斬新な組み合わせ方をしてアイデアを生み出す力を育てるためにことあるごとに「私が大富豪ならこのときどうするか?」を考えるFR(虚構現実)発想術。
     これらを組み合わせることで、自分がやりたい志事にもっと注力できるようになるために、様々な情報を組み合わせ、過去の慣習・固定概念(王道)に流されずに自分の働き方を変えるための新たな選択肢(外道)が見えてくるようになるわけです。
     しかし、私の働き方改革(My WX)の実現にあたっては、こうして浮かんだ選択肢を「実行」できるかどうかが、大きな分岐点になります。そしてその選択肢を実行できるかどうかの鍵が、「Effectuation(エフェクチュエーション)」に代表される新規事業開発・イノベーション理論に隠されていると、私は考えます。  私の働き方改革(My WX)実践理論の最後はこの「行動」のやり方・やる力についてご紹介したいと思います。
    5 行動力を高める(前回からのつづき)
     Effectuation(エフェクチュエーション)とは、「Effect(効果)」からくる言葉で「効果をあげる・実現する」という意味です。つまり、浮かんだアイデアを「いつかやる選択肢」のまま放置することなく、実際に行動に移し、かつ成果が出るまで試行錯誤したり、やり方を見直したりしてやり続け、最終的に成果をあげることを指します。
     この言葉は、米国バージニア大学ダーデン経営大学院のサラス・サラスバシー教授が2008年に発表した『エフェクチュエーション 市場創造の実効理論』の中で新規事業に成功するために求められる「行動原則」の総称として用いられています。 サラスバシー教授は、27人の新規事業創造に成功した人へのインタビュー調査などを経て、新規事業創造(イノベーション)という効果をあげる(Effectuation)ために必要な「5つの行動原理」を見出しました。さらにそれら行動原理は天才的・先天的に備わっているものではなく、誰もが学び実践することができるものであると分析しています。
     そして私は、私の働き方改革(My WX)という「改革(イノベーション)」を実行する上でも、この行動原理を意識し取り入れることで、効果をあげられる確率が高まると考えます。 その行動原理とは、次の5つです。

    1 手中の鳥(手元にある資源を使ってできることからやる) 2 許容可能な損失(成功したときの利益よりも失敗したときの損失の量に着目し、その損失量が自分の許容範囲ならチャレンジする) 3 クレイジーキルト(一人で進めず周囲の人たちに働きかけ、パートナーとしてコミットしてもらう) 4 レモネード(“レモンをレモネードにする”ということわざの通り、酸っぱい状況(トラブルや予期せぬ事態)に直面しても、発想を転換してそれをテコにして成果につなげる) 5 飛行機パイロット(刻々変化する状況を観察し、目的地すら変更しながら常に状況に応じて自らをコントロールし続ける)
    (『エフェクチュエーション(日本語)』(サラス・サラスバシー (著), 加護野 忠男 (翻訳), 高瀬 進 (翻訳), 吉田 満梨 (翻訳),2015,碩学舎/碩学叢書 より)

     これら5つを意思決定や判断の際に心がけ実践し習慣化することで、効果をあげられるというわけです。 ただ、この5つ、日本語訳をする際に米国のことわざや慣用句をそのまま訳してしまっているせいか、申し訳ないのですが個人的には「すっと入ってこない」印象を受けます。そこで、私なりに言葉を編み直し、かつ5つを3つに再編して、「私の働き方改革(My WX)流エフェクチュエーション理論 ~3つのシ~」としてみました。
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  • 明日からできる「私の働き方改革(My WX)」その2|坂本崇博

    2020-10-21 07:00  
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    「働き方改革アドバイザー」の坂本崇博さんが、「My WX(私の働き方改革)」の極意を説く異色のワークスタイル指南。坂本さんがこれまで自ら実践してきたやり方を応用可能にしていくメソッド編。今回は、誰かに与えられた“働かされ方改革”ではなく、もっとわがままに自分の「やりたい事」のためにパワーを使えるようにするためのセルフマネジメント手法を紹介します。
    坂本崇博『(意識が高くない僕たちのための)ゼロからはじめる働き方改革』第11回 明日からできる「私の働き方改革(My WX)」その2
     前回は、コロナ禍を経験した社会においても誰かに与えられた“働かされ方改革”ばかりが進んでいること。それはこれまでの働き方改革ブームにおいての強制早帰りやツールの導入と本質的に変わりがないこと。本来の私の働き方改革(My WX)とは、自分なりに自分のやる事・やり方・やる力を見直して、もっとわがままに自分のやりたい事(志事)に時間を注ぐこと。そのためには、自分のやりたい事を見出すための時間と場所を設けてじっくり考えたり、虚構の世界への没入することなどによって普段は得られない「経験拡張」を体験することで、自分を客観視する機会を設けることが必要であるとご紹介しました。
     ここからは、そうして見出したやりたい事に時間を注ぐために、今の自分の状況(やる事・やり方・やる力)を変えていくためのセルフマネジメントの手法を解説していきます。
    私の働き方改革(My WX)のコツ2 “今を変えるためのセルフマネジメント”
     セルフマネジメントという概念については、クレアモント大学院大学のピーター・F・ドラッカー・スクールで准教授を務めるジェレミー・ハンター氏の著書『ドラッカー・スクールのセルフマネジメント教室 ── Transform Your Results(2020年 プレジデント社 )』の中で詳しく解説されています。 2017年、ご縁あって京都の禅寺「春光院」で開催されたジェレミー・ハンター氏のセッションに参加し、セルフマネジメント論の本質をお聴きして非常に共感し、それ以来私が登壇する働き方改革セミナーでもよく紹介させていただいています。
     ハンター氏は、成果(Result)を高めるには、決められた行動(Action)レベルでもがくのではなく、選択肢(Choice)を変えるべきであると提唱しています。これを私の働き方改革(My WX)に当てはめれば、成果とは「やりたい事に時間を注げるようになること」です。そして、やりたい事にもっと時間を注げるようになるためには、今の仕事内容やその進め方を見直し、新たなやる事・やり方・やる力へと選択肢をシフトさせることが不可欠ということです。
     彼はさらに、選択肢を変えることができる人は、いろいろな選択肢候補のアイデアを浮かべることができる人であると述べています。 アイデアの浮かべ方については、1940年に出版された『アイデアの作り方』の著者であるアメリカの実業家ジェームス・W・ヤングは、「アイデアとは既存の要素・知の組み合わせである」と断言しています。 ハンター氏も、選択肢のアイデアを広げるためには、いろいろな事柄を経験・認識(Perception)し、アイデアの素材として活用できることが重要であり、そのためには様々なことに意識・注意を払う(Attention)ことが不可欠であると論じています。 さらには、世の中にあふれる多様な情報に意識的に注意を払えるようになるには、「自分がどうなりたいかという意図(Intention)」が明確でなければならないとも紹介されています。
     つまり、前述の通り、自分のやりたい事(志事=意図)が見つかれば、いかにそこに時間やパワーを注げる自分になれるかに意識・注意が払われ、結果、常に「今の自分の状態を変えるきっかけ」にアンテナが張られることになるわけです。 世にあふれる様々な情報を「今の自分には関係ないこと」と流すのではなく、「これからの自分のやる事・やり方・やる力の見直しに関係があるかもしれないこと」という視点で注意して観察し、1つひとつ自分なりに解釈する。こうして自分の頭で反芻され解釈された情報たちは、脳内の記憶領域(海馬)に「知」として長期間記憶されやすくなると言われています。 こうして多様な情報が脳内に記憶されることで、今のやる事・やり方・やる力を見なすために有効なアイデアが生まれ、もっとやりたい事に時間が注げる、すなわち私の働き方改革(My WX)が進むというわけです。 私が提唱する働き方改革にあえて「私の(Self)」とつけているのは、このセルフマネジメント論に大いに共感しているからでもあります。
     セルフマネジメント論においても、何かを成すためには「やりたい事=意図(Intention)」を見出すことが重要と謳われています。その手法については、前述の通り私なりのやり方をご紹介させていただきました。 そして以降は、セルフマネジメント論の残りのフェイズにおいて不可欠な力として、注意力(アンテナ)、認識・記憶力、アイデア創出力、行動力の4つの力の高め方について、私なりに心がけているコツをご紹介します。やりたい事にますます多くの時間とパワーを注ぎ込むための、やる事・やり方・やる力の見直しを進める上でのヒントになれば幸いです。
    1 注意力(アンテナ)を高めるには?
     社会に出ると「もっと世の中の情報にアンテナを張れ」と精神論的な指導がされることがあります。そうした指導に対して「どうやって?」と具体論を聞くと、たいていは新聞を読め、いろんな本を読め、人の話を聞けといったわかりきった答えが返ってきてモヤモヤすることはないでしょうか。 ただ、これは質問する側が悪いのかもしれません。私は、アンテナを活発に張ることができていない人が本来着目すべき問いは「どうすれば日頃できていない行動習慣を、自然にやれるようになれるか?」であると考えます。
     日頃からアンテナを張って様々な情報を収集できている「意識の高い人」は、そういった問いを立てるまでもなく、様々な情報をキャッチして自分の認知に加え、アイデア出しに生かしています。 しかし、私のようにそんなに意識高く生きてこなかった人間は、自分の興味のないことにわざわざアンテナを張るなんて「面倒だ」と感じるものです。もはやこれは習性・感性といってもよいでしょう。 ですので、たとえやりたい事がある程度明確になったとしても、日頃からアンテナを張るという行動に慣れていない私たちは、染みついた引き篭りの習性・感性を切り替えることに注力をしなければなりません。
     その1つとして私が実践していることが、「ドーパミン・コントロール」です。
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  • 明日からできる「私の働き方改革(My WX)」その1|坂本崇博

    2020-09-15 07:00  
    550pt

    「働き方改革アドバイザー」の坂本崇博さんが、「My WX(私の働き方改革)」の極意を説く異色のワークスタイル指南。今回から、いよいよ坂本さんのこれまでの取り組みを普遍化するメソッド編が始まります。コロナ禍を経て、多くの人々が働き方を強制的に変えさせられている中だからこそ、本当に「自分のやりたい」仕事をするには、何が必要なのでしょうか?
    坂本崇博『(意識が高くない僕たちのための)ゼロからはじめる働き方改革』第10回 明日からできる「私の働き方改革(My WX)」その1
    もう働き方改革いらなくないですか?
     最近こう聞かれることがあります。「坂本さん、コロナ禍によって強制的に働き方改革ができてしまった中で、働き方改革のコンサルティングってもういらないんじゃないの?」と。
     2020年現在、世界はCOVID-19(新型コロナウイルス)による経済社会の大混乱の最中にあります。疫病という外敵によってもたらされた社会経済活動の強制停止は、個人の生活、そして企業の生産活動に未曾有の被害をもたらしました。  通勤、登校、集会、外食など、これまで息をするように当たり前に営まれていた様々な活動が禁止や自粛に追いやられ、生活習慣の抜本的な見直しを迫られています。  そうした中で、意識が高い人たちは「ピンチはチャンス」と口を揃えわめき立て、「withコロナ時代のニューノーマルとは?」と問いを掲げ、毎日オンラインセッションを開催しながら、これからの世界を予測し合って「政府はこうすべきだ」「社会はこうなっていくべきだ」「コロナによって日本の働き方改革が強制的に実行されてしまった」と盛り上がっています。
     この状況は、日本中で働き方改革がブームになった2016年前後の状況を彷彿とさせます。
     当時も今と同じく、メディアの論客や経営者、コンサルタントたちがこぞって「働き方改革とはこうあるべし」と持論を展開して、政府や企業への提言を“あさっての方向”に向かって発信していました。違ったのは、その発信の仕方がオンラインセッションではなく、広い会場を貸し切りしたシンポジウムであったことくらいです。
     企業経営者らの動きも驚くほど酷似しています。現在ほとんどの企業で設置されている「コロナ対策委員会」と同じく、2016年ごろには「働き方改革推進委員会」や「働き方改革プロジェクト」を立ち上げ、委員会メンバーに対応を考えさせ、出てきた案にああでもないこうでもないと「審査」を下していました。
     そして、企業で働く私たち一人ひとりの反応もそっくりです。すなわち「無関心」もしくは「無抵抗」です。  「きっと経営層が、政府が、何かするだろう」と達観したり、「うちの会社はなかなか対応が遅い、弱い」と愚痴を言い合いながら、なるべくこれまでの通りのやる事・やり方・やる力で、日々を送ろうとしています。また、現在のコロナ禍で「出社禁止」と言われれば粛々とそれに従う様は、「残業禁止」と言われてオフィスの照明を強制消灯されれば粛々と帰路につくサラリーマンたちと重なります。
     リアルに集まっての会議ができなくなったのでオンライン会議に切り替える。判子を押すことができなくなったので電子押印を導入する。会社に出てこられないので在宅ワークを始める。コロナ禍での働き方の強制的な変化を受けて、彼らは「これで生産性が高まった」「ついに働き方改革ができた」と喜んでいます。 しかしこれは、残業削減と言われて業務を途中で切り上げて早く帰り、ペーパーレスと指示を受けて会議資料の配布を止めて見づらいプロジェクターで資料を閲覧し、最新のフリーアドレスオフィスで人気のない場所を選んで「集中しやすくなって生産性があがった」と喜んでいた当時とそう変わらない状況のように思えます。
     つまり、コロナ禍によっても相変わらず「私の働き方改革(My WX)」は進まないままで、「誰かにお膳立てされた働き方改革(働かせられ方改革)」に乗っかっているだけではないかと思うのです。 もちろん、2016年前後の働き方改革ブームと違って、コロナ禍の現在は社会全体が強制的にアップデートされ、その成果を実感している人の絶対数が飛躍的に拡大したことは確かです。しかしこれは「My WXを進めた人が増えた」ということと同義ではなく、単に「働き方が変わった(変えさせられた)人が増えた」に過ぎません。
     私は、コロナ禍を経た今も、いえ、皆が強制的に「新しい働き方」を受け入れ横並びになってしまった今だからこそ、My WXが必要だと思うのです。
     だって、皆さん、コロナ禍の働き方の変化を通じて、アニメを思う存分観られるようになったのでしょうか? 多くの人が進む王道とは違う「外道」に入ることができたのでしょうか? そして何よりも新しい働き方をする自分に「萌え」を感じられているのでしょうか?
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  • コクヨにおける私の働き方改革 最終章:マネージャー編|坂本崇博

    2020-08-12 07:00  
    550pt

    2014年、昇格試験を受けてマネージャーへの道を歩みはじめた坂本崇博さん。それまで「早く家に帰ってアニメが観たい」というワガママで意識の低い動機で「My WX(私の働き方改革)」を進めてきた坂本さんが、なぜ管理職を目指したのか? そしてそこで直面した「燃え尽きそうなほどのギャップ」とは?自らの半生をサンプルに「私の働き方改革」の普遍化の手がかりをさぐる自己検証編、いよいよクライマックスです。
    坂本崇博『(意識が高くない僕たちのための)ゼロからはじめる働き方改革』第9回 コクヨにおける私の働き方改革最終章:マネージャー編
     入社して十数年、新人研修、営業への配属、新規事業開発プロジェクトを通じて、早く帰ってアニメを観たいという「ワガママ(欲)」に動機付けられ、他の人とは異なるやる事・やり方・やる力で「道を外れる」ことにこだわり、My WX(私の働き方改革)を進めてきた私ですが、ここでまた大きな転機、いえ、大きな壁に直面します。  その壁はこれまでで最も高く、手掛かりすら見つからない「管理職(マネージャー)としての私の働き方改革」という壁でした。 その話に入る前に、「そもそもどうして私は管理職になったのか?」というところから振り返ってみたいと思います。
    「管理職・坂本崇博」──爆誕!
     2014年、私は管理職への昇格試験を受けることにしました。これに合格すると、「管理職資格」という位置づけになり、俗にいう「課長」としてチームのマネージャーとして仕事することができるようになるわけです。
     36歳での管理職受験はコクヨという老舗会社の中では比較的若いタイミングでしたので、周囲の先輩、上司から「まだ早い!」とか「もうチャレンジするの?」とか言われるかなと思いつつ相談を持ち掛けました。 しかし相談相手から返ってきた反応は、「え? 坂本って管理職になりたいの?」というものでした。
     我ながらなんともひどい話なのですが、そのときはじめて私は、「なぜ私は管理職試験を受けるんだろう?」という問いに直面することになったのです。 そして導き出した答えは、「会社のなかで管理職としてチームを持ち、チームの力を発揮して大きな仕事をして、組織にも社会にも貢献しながら、自己成長を図りたいから」という意識が高いものではもちろんなく、一言でいうと「“ギャップ萌え”だから」でした。
     よくある老舗企業の管理職のイメージは、メンバーシップを重視し、毎週定例会議という名の自分がお山の大将であることを確認する場を開き、従来のやる事・やり方・やる力に従ってメンバーを画一化していくチェック者というものだと思います。少なくとも私はどこかでそういうイメージを持っていました。 一方で、私はこれまでの10数年間、メンバーシップに時間を費やすことよりも、やることをやってとっとと帰ることに情熱を注ぎ、従来と異なるやる事・やり方・やる力を探り、人と違ったことばかりやろうとする「外道社員」として働いてきました。
     私のイメージにある「王道の管理職」の姿に対して、自分自身が管理職になることで「これまでにない管理職としての外道」を見出して踏み出すことができるかもしれない。外道の探求者として、今このタイミングで私が管理職になるということは、とても魅力的な「道を外れる行為」だったのでした。
     そして、そんな私が管理職になる。そのギャップの大きさは、きっと多くの人にとって意外に受け止められるとも思ったのです。 雨の日に不良が捨て犬に傘をさしてミルクをあげているような、もしくは日頃はおとなしい眼鏡っ娘が眼鏡をとると急に残虐な殺し屋になるような、そんなギャップの中に感じるそこはかとない「萌え」を私が体現できるかもしれない。萌えの探求者でもある私として、そうした萌え展開にもとても大きな魅力を感じたのです。
     こうして自分の内なる想いがクリアになり、一層管理職になることへの情熱を高めた私は、前述のなぜ管理職になりたいのかという問いにも胸を張ってこう答えることができるようになりました。
     「新しい道に進みたい、それにもえるからです」と。
     この想いを、あえて若干の誤字をしながら論文にしたためて提出したところ「実は熱い男だったらしい」という評価を得られたのか、無事最終面接まで進みました。
     そして面接では、「徹底的に自分を表現する」ことにこだわることにしました。なぜなら私の本質について誤解をされたまま管理職に昇格してしまっては、会社にとっても自分にとっても不幸ですから。
     そこで面接当日、多くの被面接者が待合スペースに、論文とこれまでの成果物(デザインした商品や、設計したオフィスの写真パネルなど)を持参して面接に臨む中、私は、大きな模造紙をつなぎ合わせて作った3mくらいの「巻き物」を持ち込みました。
     そして、よくある面接室、すなわち被面接者1人が椅子に座り、その1メール前くらいに長机をいくつか並べて5名ほどの面接官の部長や役員が座るスタイルの部屋に入り、いきなり自分の椅子を長机に寄せて、巻物を机の端から端までざーっと広げたのです。 この時点で面接官は面食らったようでしたが、気に留めずに、「それでは、私の半生を巻物にしてきましたのでご説明します」と右端から左端まで、いかに道を外れつつ人生・そして仕事を進めてきたかを解説していきました。 最後に「管理職になってもこの道を続けていくことを約束します。」と結び、「普通の管理職になろうとしている」と誤解がされないように最大の配慮をしたプレゼンテーションを終えました。
     そこからの質疑応答は、もやは「ブレスト」でした。会社としての変わりたい想いの強さと「何だかわからないけどまず試してみよう」という度胸を確認しながら、部長や役員と私とでどうすればこれから面白い会社として成長していけるかを語り合い、新しい事業のアイデアなんかも飛び出したりと、入社面接同様、とても面白い面接になりました。
     そうしてお互い偽りなく本音を出し合った末、「管理職 坂本」が誕生したのです。
     ちなみにコクヨでは、その年の昇格者を集めて新しいステージに立つことを祝い、気を引き締める「昇格記念訓話会&パーティー」が行われるという慣例があります。その席上で、私の面接の後に順番待ちをしていた先輩から「お前の番のときに面接室からやけに大きな笑い声が聞こえてきたのは何だったのか?」と問われ、「面接が面白かったので」と答えた通り、この昇格試験は、自分が「変」でありたいことを再確認するとともに、入社面接から10年以上たった今もコクヨが「変な会社」であることを再確認する機会にもなったと感じています。
    Mission Impossible:オフィス設計の専門家集団を「管理」せよ
     そうこうしていよいよ、私は所属する部署に新しく発足したグループのグループリーダーに任命されます。 自ら進んで管理職試験を受けて管理職になったわけですから、組織を持つことは必然ですし、ギャップ萌えかつ変な管理職になるという野望を持った私にとっても1つの夢の実現だったわけですが、現実とのギャップは萌えるどころか大炎上でした。 なぜなら、グループリーダーである私がグループで一番の若手だったからです。
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