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記事 4件
  • 【対談】吉田浩一郎×宇野常寛 それでもクラウドソーシングは働き方を変えるのか ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.591 ☆

    2016-05-16 07:00  
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    【対談】吉田浩一郎×宇野常寛それでもクラウドソーシングは働き方を変えるのか
    ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
    2016.5.16 vol.591
    http://wakusei2nd.com


    今朝は、クラウドワークスCEOの吉田浩一郎さんと、宇野常寛の対談をお届けします。先日、クラウドワークスが公開した決算資料から、月収20万円以上の利用者が111名しかいないことが明らかになり、議論を呼びました。「新しい働き方」として世界的に注目を集めるクラウドソーシング、その日本における牽引役とも言えるクラウドワークスが突き当たった「壁」とは何か。そしてそれでも期待を集めるクラウドソーシングの可能性とは何か。クラウドワークスを率いる吉田浩一郎さんに宇野常寛がお話を聞きました。
    ▼プロフィール

    吉田浩一郎(よしだ・こういちろう)
    パイオニア、リードエグジビションジャパンなどを経て、ドリコム執行役員として東証マザーズ上場を経験。2011年11月に株式会社クラウドワークスを創業し、日本最大級のクラウドソーシングサービス「クラウドワークス」を展開。創業3年でマザーズ上場、登録会員75万人、利用企業は11万社にのぼる。2015年に経済産業省 第1回「日本ベンチャー大賞」ワークスタイル革新賞受賞、グッドデザイン・未来づくりデザイン賞受賞。著書に『クラウドワーキングで稼ぐ! ―時間と場所にとらわれない新しい働き方(日経新聞出版社)』『クラウドソーシングでビジネスはこう変わる(ダイヤモンド社)』などがある。
    ◎構成:菅 葉奈
    ■ 年収250万円の利用者が100人という衝撃
    宇野 数年前から僕と吉田さんはクラウドソーシングの導入による働き方の変化、そしてその向こう側にある社会そのものの大きな変化の可能性について議論してきました。いちばんまとまっているものとしては、2年前に河出書房新社から出版された『静かなる革命へのブループリント: この国の未来をつくる7つの対話』(以下『ブループリント』)という対談集での議論があるのだけど、あれから日本における働き方の状況も変わってきたと思います。実際クラウドソーシングも普及したし、クラウドワークスという会社も大きく成長した。しかし同時にクラウドソーシングは当時期待されたような「働き方革命」を起こせているかというと、残念ながらまだそこには至っていない側面が大きいと思います。いろいろな問題点にも突き当たっているはずです。その辺について今日は「ぶっちゃけどうなの?」という話をしたいです。微妙に炎上騒ぎもありましたよね。
    吉田 この場では隠し事はできないのでね(笑)。
    宇野 そういったところも含めて、お話できればと思って今日はお呼びいたしました。
    『ブループリント』には「2016年までに年収500万円の人を1万人作る」という吉田さんの発言があります。出版から2年近く経って、最近クラウドワークスのユーザー分析の資料を発表されていましたよね。
    吉田 その中で申し上げたのが「月収20万円以上の利用者が、111人誕生しました」ということです。年収250万に換算すると100人くらいですね。
    宇野 「年収500万円の人間が1万人」と「年収200万円の人間が100人」の間には、絶大な差がありますね。
    吉田 そうですよね。2年前は、どれくらい伸びるかはやってみないとわからないという状況の中で、ベンチャーとして目標を大きく掲げた、というのが実際のところです。
     「月収20万円以上の利用者が111名」を公明正大に言うべきか、もう少し先に、数字がついてきてから言うべきか、という議論が社内でありましたが、我々としては、炎上したとしてもすべて公表して、ユーザーの皆さんと一緒に少しずつ着実に歩んでいこう、という結論に至り、発表しました。
    宇野 よくぶっちゃけましたよね。炎上するって分かっていましたよね?
    吉田 当然、炎上するとは思っていました。
     しかしクラウドソーシングは、このまま「魔法の杖」のイメージで語られ続けるべきなのでしょうか。我々としては、株式上場もしたし、公明正大に隠し事なしに歩んでいきたい。私は去年から「働き方革命」を提唱していますが、この「働き方革命」を掲げる上で、これはスタートラインなんです。
     もちろん『ブループリント』出版当時から見れば、2年後にどうなったか、という話なんですが、我々としては現状の数字を開示することで、ここをスタートラインにしていきたい。「働き方革命」のはじまりを設定したということです。
    宇野 ちなみにこれも、ぶっちゃけて聞きたいんですが、吉田さんの実感として、月収20万円の数は思った以上に伸びていないですよね?
    吉田 宇野さん、今日は突っ込みますね!
    宇野 いや、単純に聞きたいんですよ。大事なのは当然「それ、みたことか」と得意になって指摘することじゃなくて、なぜ伸びていないのかを検証すること、そしてこれから伸ばして行く方法を考えることじゃないかと思うんです。そして日本におけるクラウドソーシングの代表的な企業の社長である吉田さんは、「クラウドワーカーが食べていくことが難しい理由」について、日本で最も詳しいはずなんです。20万円クラスの収入が、クラウドワーキングで得られない一番の理由は何なんですか?
    吉田 いろいろありますが、1つは、クラウドソーシングの仕事は、普通の仕事と手間や労力は変わらない。そこに誤解があるのかなと。クラウドソーシングには、今までの仕事よりも手軽にできるイメージがあります。ところが、やってみると思ったよりも大変で、そこを乗り越えられないことが多いです。
     例えば、子育てママで働きたい人がいるとして、子育ての合間に、1日に1回メールをチェックすればいいんじゃないか、くらいに思っています。でも東京の会社はフルタイムで動いているので、1日に20回はメールのやり取りをしたいと考えます。そうなったとき、「そこまでして働きたくない」と思って仕事を辞めてしまいます。
    宇野 クラウドワークスは、子育て中の主婦層や、定年退職後の団塊世代のパートワークをサポートすることで伸びていきましたが、彼らの目的は、それで生活することではないですからね。

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  • ほんとうの生活革命は資本主義が担う――インターネット以降の「ものづくり」と「働き方」(根津孝太×吉田浩一郎×宇野常寛) ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.244 ☆

    2015-01-20 07:00  
    216pt

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    ・駒崎弘樹×荻上チキ「政治への想像力をいかに取り戻すか――2014年衆院選挙戦から考える」
    ・"つながるのその先"は存在するか(稲葉ほたて『ウェブカルチャーの系譜』第4回)
    ・宇野常寛書き下ろし『「母性のディストピア2.0」へのメモ書き』第1回:「リトル・ピープルの時代」から「母性のディストピア2.0」へ




    ほんとうの生活革命は資本主義が担う――インターネット以降の「ものづくり」と「働き方」(根津孝太×吉田浩一郎×宇野常寛)

    ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
    2015.1.20 vol.244
    http://wakusei2nd.com


    本日のほぼ惑は、昨年12月13日の「PLANETS Festival」にて行なわれたデザイナー・根津孝太さんとクラウドワークス代表・吉田浩一郎さん、そして宇野常寛の鼎談をお届けします。対談集『静かなる革命へのブループリント』(以下、『ブループリント』)にも登場し、「クルマ」と「働き方」というそれぞれ別の分野で変革を起こしつつある2人のイノベーターはいま、どんなことを考えて活動しているのか。『ブループリント』以降の視点から徹底的に語りました。 
    ▼当日の動画はこちらから。(PLANETSチャンネル会員限定)

    ▼プロフィール


    根津孝太(ねづ・こうた)
    1969年東京生まれ。千葉大学工学部工業意匠学科卒業後、トヨタ自動車入社。愛・地球博 『i-unit』コンセプト開発リーダーなどを務める。2005年(有)znug design設立、多くの工業製品のコンセプト企画とデザインを手がけ、企業創造活動の活性化にも貢献。賛同した仲間とともに「町工場から世界へ」を掲げ、電動バイク『zecOO (ゼクウ)』の開発に取組む一方、トヨタ自動車とコンセプトカー『Camatte (カマッテ)』などの共同開発も行う。パリ Maison et Objet 経済産業省ブース『JAPAN DESIGN +』など、国内外のデザインイベントで作品を発表。グッドデザイン賞、ドイツ iFデザイン賞、他多数受賞。2014年よりグッドデザイン賞審査委員。



    吉田浩一郎(よしだ・こういちろう)
    株式会社クラウドワークス 代表取締役社長 兼 CEO。
    1974年兵庫県生まれ。登録会員数24万人、4万社超の企業が利用する日本最大級のクラウドソーシングサービス『クラウドワークス』(http://crowdworks.jp/)創業者。ヤフー、ベネッセ、テレビ東京等と提携しており、電通グループや伊藤忠グループ、サイバーエージェント、リクルートグループ等から15億円を超える出資を受ける。日経ビジネス「日本を救う次世代ベンチャー100」選出。著書に『クラウドソーシングでビジネスはこう変わる(ダイヤモンド社)』等がある。
    ◎構成:中野慧
    オープン・イノベーションと「残りの9」の関係
    宇野 この座談会では「産業から社会を変える」というテーマで、カーデザイナーの根津孝太さん、そしてクラウドワークス代表の吉田浩一郎さんとトークをしていきたいと思います。それでは改めてご紹介します、PLANETSのイベントではすっかりお馴染み、カーデザイナーで「znug design」代表の根津孝太さん、そしてクラウドワークス代表の吉田浩一郎さんです。
    根津・吉田 よろしくお願いします。
    宇野 根津さんはもともとトヨタのカーデザイナーで、今は独立してクルマだけではなくいろんなデザインを手掛けていて、「デザインによって世の中をどう変えていくのか」というお仕事をされている方です。
     吉田さんは「クラウドワークス」というクラウドソーシングサービスを運営していて、一言で言うと個人が会社に所属するのではなく、ネットワークに繋がることによって仕事をしていく働き方の実現を目指している。
     対談集『静かなる革命へのブループリント』では、一番最初に根津さんとの対談、二番目に吉田さんとの対談が載っているんですね。僕はこの2人って、まったく異分野のようでいて、抽象的なレベルではすごく近いことをやっていると思うんです。根津さんは「クルマ」もしくは「ものづくり」、吉田さんは「働き方」。ともに戦後日本を支えてきたシステムそのものですが、それが耐用年数を過ぎ、社会全体にある種の閉塞感を生んでいる。
     普通は「じゃあしっかりグローバル化に対応しよう」と考えるんですが、この2人はそうではない。根津さんはたとえば、これまで日本のものづくりのスタンダードだった「トヨタイズム」を否定しているわけではないし、吉田さんも単純に日本的な雇用環境=つまり「正社員」をベースにした社会を否定しているわけでもない。2人とも「日本ならではのアップデート」を考えているわけです。
     『ブループリント』で収録した対談からおよそ一年が経ったんですが、この一年でどうお二人のビジョンが変わっていったのかを訊いてみたいと思います。
    吉田 私はやっぱり、20世紀的な「大企業で正社員が働く」ということを中心に据えた在り方がターニングポイントを迎え、もうすぐ正社員比率が50%を切るという世の中になっている今、働くインフラが未整備になっている状況を何とかしたいと思って日々仕事をしていますね。
    根津 『ブループリント』の対談のなかで吉田さんは「既存の正社員的な働き方もあってもいいけれど、そうではない働き方を広げていきたい」ということをおっしゃっていましたよね。僕が仕事をしている自動車業界って、やっぱり皆さんが思っているとおりの堅い業界で、働き方や組織の組み方はまだまだ動かしづらい。最近トヨタでも、一回アウトソーシングした技術系の会社の一部をもう一度本体に取り込むなんてことをしていましたが、まだまだすごく迷っていますね。
     で、これは本の中でも言いましたが、結局トヨタを辞めたあとのほうが、会社の中に残っている面白い人たちと繋がって仕事ができるようになるんですよ。吉田さんの取り組んでいらっしゃることも、要は「個人と大きな企業が組んででシナジーを起こす」ということだと思っていて。
    吉田 なるほど。ちなみに根津さんがトヨタにいたとき、なんで社内の面白い人たちと組むことができなかったんですか?
    根津 「僕、あの人と組んで仕事したいんですけど」って社内にいる状態で言ったら、それはただのわがままですよね(笑)。
    吉田 なるほど(笑)。でも、21世紀ってもはや「わがまま」ぐらいしか価値を持たない気がするんです。世の中の仕組みすべてがコモディティ化というか、誰がやっても変わらないようになっていくなかで、「わがまま」ぐらいのほうがワクワクするじゃないですか。
    根津 その通りですよね。僕は会社にいたときも自分なりにアンダーグラウンドで動きまわったりしていたんですけど、それをカタチにして価値にするのが難しかった。だから辞めちゃうほうが早いかなと思ったんですね。
     でも吉田さんのやっているようなフレームを上手く使って、社会保障も込みで独立してもやっていけるようになれば、「会社と個人のシナジー」がもっと有機的なかたちで実現できるんじゃないかと思ったりしますね。
    吉田 根津さんに一つ訊いてみたいんですけど、今までにない面白いクルマを考えたとして、それを世に出すには安全面での規制が立ち塞がるんじゃないかと思うんです。自動車ってやっぱり、人の生命を預かる器じゃないですか。
    根津 それはすごく大きい問題ですね。たとえば僕は『zecOO(ゼクウ)』っていう電動バイクをつくっていて、僕がスケッチを書いてから試作品が完成するまで、すごい人たちと組んだこともあって、だいたい3ヶ月ぐらいでした。それはそれで大変だったんですが、でも試作品をつくるハードルが1だとすると、製品として実際に発売されるまで持っていくには10ぐらいかかるんです。
    吉田 なるほど。我々がやっていることって要はオープン・イノベーションで、直近だとネスレさんがキットカットの新しいお菓子をうちのユーザーさんと組んで、クラウドソーシングで企画・デザインしていこうとしているんです。そういうやり方を最終的にはクルマの製品化とかにも使ってほしいんですけど、やっぱり「残りの9」というか製品化までが大変なわけですよね。
     で、私が気になるのは、その「残りの9」って果たしてコモディティ的な仕事なのか、それとも結構ノウハウが詰まっているものなのか、ということなんです。
    根津 その「残りの9」にはノウハウが詰まっていますね。大手のメーカーには、散々辛酸を舐めながらも製品化まで持っていく経験を積んでいる人たちがたくさんいて、そういう人がどんどん独立してもっと自由に活動できるようになったら面白い。機械やシステムにそういったノウハウの部分を任せるのは難しいですし、やっぱり人に属している部分がまだまだ大きいですから。
    本当にイノベーティブなものは「コミュニティ」と「プラットフォーム」のどちらから生まれるのか?――DMM.make AKIBAから考える
    宇野 これってすごく重要なポイントで、その「残りの9」――つまり、製品化までのノウハウやテクニックって、いわゆる企業文化のなかでしか蓄積されていないし、そもそも明文化されていない。結局コミュニティとか文化のレベルでしか養っていけないということですよね。
     これからはそれを、今の硬直した日本の大企業の外側にいかにつくっていけるかが大事になっていく。で、この問題に関して僕はなんとなく答えに近いものが出ているんじゃないかと思っていて、例えばDMM.make AKIBAというものが最近話題になっていますよね。
     どういう場所かというと、要は個人やユニット単位でイノベーティブなものづくりをする人たちのためのシェアオフィスなんですよね。ここでは今までは大企業の研究所にしかなかったような、プロダクトをつくるための環境――3Dプリンターを筆頭に、高圧電流を流す発生装置だったり、マイナス80℃にしても壊れないかテストできる箱だったり、そういった高価な機材が使えるようになっている。でも実はあの場所の一番の強みって、「コミュニティ」としての機能を備えているところだと思うんです。
    根津 実は僕、まさにそのDMM.make AKIBAに引っ越すんですよ(笑)。宇野さんのおっしゃるとおりで、僕があそこに引っ越す第一の理由は「人の繋がり」です。
     ちょうど昨日、SFCの学生さんから「ベンチャーで新しいものをつくりたいので相談に乗ってください」と言われて話をしたんですけど、DMM.make AKIBAに引っ越す話をしたら、その学生さんも「あ、僕もこないだ部屋借りました」って言っていて。やっぱりあの中にいることで、化学反応がより加速しやすいんじゃないかと思うんです。
    宇野 DMM.make AKIBAの事実上のプロデューサーである小笠原治さんって、さくらインターネットの創業陣の一人だったんですよ。つまり90年代後半のインターネット黎明期=テキストサイト時代に、サーバー屋としてイノベーティブなことが起こる環境をネット上に整備した人間なわけです。その彼が、いまDMM.make AKIBAをつくっている。これってすごく大きな思想的転換だと思うんです。
     はっきり言ってしまうと、実はあの場所ってアメリカから入ってきたオープン・インターネットのポピュリズム的な思想から切れている。いや、建物の壁には「Open Share Join」ってドーンって書いてあるんだけど、Openだけは条件つきの「オープン」じゃないかと思っていて、中に入る人をすごく選んでいてある種のエリーティズム的な空間になっているわけです。
     そこで僕が気になるのは、吉田浩一郎はあの場所をどう思うのかということ。つまり、クラウドソーシングって、未だに生き残っているオープン・インターネットの数少ない夢のひとつじゃないですか。
    吉田 うーん、私は小笠原さんとも友人なのでそれを前提にして言いますけど、エリーティズムは嫌いですね(笑)。私はやっぱり学歴コンプレックスもばりばりありますし、ものづくり工場でゼロからやってきた人間だから、そういう意味ではオープン・インターネット、オープン・イノベーションが大好き。いま、3Dプリンターを始めとしたテクノロジーの力で、今まで陽の当たらなかった才能ある人たちがどんどん出てこられるようになってきている。定年退職したシニアの人も子育て中のママも、独学でプログラミングやデザインを学んで稼げるようになってきている――そうやって、既存の組織に属していない個人が、横の繋がりで自由にモノや文化をつくってくことに夢を持っていますよ。
    宇野 僕の理解では、小笠原さんのやっていることってアップルっぽいんです。つまり最初から厳選された人々で狭いコミュニティをつくっていくとイノベーティブなものが生まれるという発想です。これはどちらかといえば、アメリカのハクティビズムに通じるオープンの思想が、日本ではこういった防波堤の中でしか通用しないというジレンマに彼がぶちあたったからじゃないかと思うんです。一方で吉田さんの思想は、それと真逆でグーグルに近いんじゃないか。グーグルはいわゆるオープン・インターネットですからね。
    吉田 そう、でもグーグルだと何でもグーグルの人が判定していて、それってあんまりワクワクしないなぁと思うんです。
     Rubyっていうプログラミング言語があって、これはオープンソースで運営されていて、上がってきたプログラムの可否は「コミッター」という評議員によって判定されるんです。彼らは企業に所属しているわけじゃない。評価する側もオープンなわけです。ああいったやり方のほうがワクワクするなぁ、と思ってしまいますね。
    宇野 あえてディベート的に突っ込むと、あの小笠原治がなぜDMM.make AKIBAに、つまりネットからモノに行ったかって、抽象化していうとネットがポピュリズム(=オープン・インターネット)と組み合わさると「悪い場所」になってしまうからだと思うんです。
     つまり、今のツイッターを中心とするネット文化って、ポピュリズム的に繋がりすぎてしまった結果、言葉の最悪な意味での日本的な「ムラ社会」が全国規模で形成されてしまった。炎上マーケティングが蔓延し、ワイドショー的な「いじめ文化」になってしまったわけです。上場したクラウドワークスも今後さらに規模が大きくなっていくと、やがてはその問題にぶつかるんじゃないでしょうか。
     で、これって2通りの考え方があって、要はコミュニティになっていくのか、プラットフォームになっていくのかだと思います。 
  • 吉田浩一郎と語る『静かなる革命』実行へのロードマップ――「クラウドソーシングが変える労働と社会保障」イベントレポート ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.115 ☆

    2014-07-16 07:00  
    216pt

    吉田浩一郎と語る『静かなる革命』実行へのロードマップ
    ――「クラウドソーシングが変える労働と社会保障」イベントレポート
    ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
    2014.7.16 vol.115
    http://wakusei2nd.com

    今後、日本人の「労働」と、「会社」との関係はどうなっていくのか? 宇野常寛の新刊『静かなる革命へのブループリント』刊行記念として、対談相手の一人でもあるクラウドワークス代表の吉田浩一郎氏を迎え、これからの働き方、そして「ウェブ共済」という新たな社会保障のコンセプトを語ったイベントのレポートです。
    本イベントは7月1日(木)の夜、東京・恵比寿「デジタルガレージ」社にて開催されました。
    もともとは、宇野常寛編著で吉田浩一郎氏も対談相手として登場した『静かなる革命へのブループリント』の刊行記念イベントとして行なわれたこのトーク。しかし久しぶりの2人での対談ということで議論は白熱し、結果的に『ブループリント』吉田さん対談パートの続編のような内容へと発展していきました。このイベントレポートでは、約2時間にわたって議論された内容を圧縮してお伝えします。
     
    ◎文:中野慧
     
    ▲クラウドワークス代表・吉田浩一郎氏
     
     
    まず、トークは吉田さんの意外な来歴から始まりました。
    なんと、かつて中高生時代はコミケで同人誌を出し、大学生のときは演劇を志した「サブカル」な若者で、宗教などについても勉強していたという吉田さん。日本では会社が宗教の代わりとして機能していたと語ります。
    「アメリカには『ブラック企業』という言葉はないですよね。要するに個人と企業が対等なんです。ブラック企業という言葉には、『企業に期待をして裏切られた』とか『ひどいことをされた』というニュアンスが含まれているわけです。でもアメリカだと『だったら会社やめればいいじゃん』となります。アメリカでは企業以外に宗教もあるし、プライベートの友達や家族という概念も明確に存在している。要は、企業とインディペンデントな状態を個人が保てるわけですね。日本だと会社に対して同一化するように枠組みができてしまっていて、正社員であり続けることが良いと信じこまれていたわけです。その枠組みが3.11によって少しずつ崩壊しはじめている」
    このお話を受け、宇野常寛はクラウドソーシングというサービスが社会で一定の力を持つことによって世の中がどう変わるのかを、真剣に考えるタイミングだと指摘。
    「インターネット以降、日本は私達が想定していたよりもずっとバラバラになってしまった。この現実を受け止めた上で、バラバラのまま生きていく方法を考えたほうがいいし、そのためのヒントとしてクラウドソーシングというサービスの位置付けを考えるべき」
    そして、クラウドソーシングの持つより大きな可能性について議論は進んでいきました。
     
     
    ■【クラウドソーシングは「コネ社会」からの解放である】 吉田さんは、「中長期で見ると正社員もクラウドソーシングを併用する時代が来る」と予測しているといいます。その文脈で今注目されているのは全日空、スターバックスやユニクロが採用する「地域限定正社員」。吉田さんが語ります。
    「地域限定正社員のメリットとしては職場の大きな異動がない一方で、デメリットとして、その企業が地域の拠点から撤退すると雇用がなくなるということがあります。地域限定正社員を始めとした雇用の多様化が進んで終身雇用がなくなっていくと、昼間に働く場所と併用して、夜、副業としてクラウドソーシングで稼ぐ力を自分で徐々に身につけようという動きが現実的に起こってくると思います」
    これを受けて、20代の頃は働く気がほとんどなかったという宇野は、「僕が20代の頃は、世の中には『一生フリーターコース』か、正社員になって『銀座ゴルフ文化圏の住人』になるかの二択しかなくて息苦しかった。いろんな距離感を持って会社とつきあってくれる働き手を企業が確保したいと思っているときに、どこかでそれを外側から支えるサービスが要りますよね」とコメント。
    さらに吉田さんは、正社員という制度の陥穽をこう指摘します。
    「正社員ってすごい制度で、地域の定めがなく職種の定めもない状態でどこに飛ばされても、どんな仕事に配属されてもしょうがないということと引き換えに、無期雇用を保障してもらっているという状態なんですよね」
    議論はさらに、クラウドワークスというWebサービスのもつ特性の話へと続いていきました。
    そもそもフリーランスとは一般的に、知り合いの伝手で仕事を紹介してもらい、案件ごとに働いて報酬をもらうという働き方ですが、こうした働き方にはもともと強力なコネクションがあることが必須の条件になります。宇野はクラウドワークスのサービスを、この「コネクション」の必要性からの解放であると見ます。
    「僕のいる人文や批評のような物書きの業界では、一旦コネ社会に身を置かないといけなくて、それがものすごく息苦しかった。でも、仮に物書き用クラウドソーシングみたいなものがあって、『僕はこのジャンルとこのジャンルについては原稿書く自信があります』という感じで登録して、コンペで仕事が取れるんだったらどんなによかっただろうと思うんです。僕がクラウドソーシングというサービスが面白いと思っているのは、日本のコネ社会の嫌な部分をシステムで代替してくれる可能性があるところです」
    この宇野の話を受けて吉田さんはこう答えました。
    「今まさにクラウドソーシングではそういうことが起こっていて、仕事で実績を上げると個人が仕事を選べる、つまり個人と企業と対等になるという風景が現れ始めている。個人に紐づいた信頼を、どんどん見える化していっているんですよね」
     
     
    ■【クラウドワークスへの期待は、「バラバラのものをバラバラのままにつなげること」】
     
    そして議論は、Webサービスというものが「人々をどうまとめ、どうバラバラにするか」という話へと進んでいきました。
    宇野は今のドワンゴのような会社と、クラウドワークスが提供するWebサービスにはひとつ大きな違いがあるのではないかと指摘します。
    「ドワンゴの運営するニコニコ動画は、実は人々をまとめる役割を果たしていると思います。そしてニコ動がまとめているのは、20代のどちらかというとオタク/インドア系の人たちで、非常にはっきりとしたカラーがある。それがこの先のポスト戦後のスタンダードになっていくのか、それとも僕たちはやっぱりバラバラになっていくのか、がひとつの争点になると思うんですよ。僕がクラウドワークスが面白いなと思うのは『○○である』ではなく『○○ではない』人たちを集めているところ。主婦や高齢者、独立を狙っているサラリーマンで経験値を積みたい人、就職したくない学生でノマドワーカーをやっている人もいて、どちらかというと戦後的な男性会社員中心の社会からこぼれ落ちた人たちですよね。そこに対してニコニコ動画は、『男性会社員中心の社会』へ正面からカウンターする存在です。この2つのどちらのビジョンが生き残っていくのかが最近すごく気になっています」
    ここから議論は、ライフスタイルの話も巻き込んで拡大していきました。
    吉田さんが新卒で就職したのは、まさに日本的な大企業のひとつであるパイオニア。そこで、総合職/一般職という区分けを経験した上で、外資系のリードエグジビションジャパンに転職して見た光景が、今のクラウドワークスの仕事の原体験になっているといいます。
    「その原体験の中でどっちが自分にとって好きかというと、後者のほうなんですよ。 
  • 【特別掲載】この人にこの話が聞きたい!:吉田浩一郎さん(クラウドワークス代表)インタビュー

    2013-07-10 18:32  
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    【6月のこの人】     吉田浩一郎さん(クラウドワークス) 「クラウドソーシング(crowdsourcing)」とは、インターネット上で不特定多数の人(=クラウド。「群衆」の意のcrowdであり、クラウド・コンピューティング cloud computingの「雲 cloud」ではない)を募って、さまざまな仕事を発注するサービスのことである。 まだ日本での認知度はそれほど高くないが、たとえばアマゾン社の提供するサービス「アマゾン・メカニカル・ターク(Amazon Mechanical Turk)」では、「洋書のタイトルの日本語訳が適切かどうかをチェックし、間違っていたら正しい日本語訳を入力する」といった軽作業で、誰でも数セントの報酬を得ることができる。こういった発想を応用して、インターネット上でより専門性の高い仕事を発注するサービスも米国を中心に台頭しており、日本においては吉田浩一郎氏の運営する「クラウドワークス」がその代表格である。 クラウドワークスでは、企業がiPhoneアプリやAndroidアプリの開発、ウェブデザイン、ライティングなどの仕事を、個人のエンジニアやクリエイターに向けて発注することができる。いわば企業と個人のマッチングのためのウェブサービスである。 ……と、ここまで読むと「人材派遣会社とどこが違うの?」「新手の中間搾取では?」「食えないノマドを大量生産するだけでは?」といった疑問が湧くだろう。しかし吉田浩一郎の「クラウドワークス」は、実は社会的事業の性格も強く持っている。長時間労働、大企業を頂点とする厳然としたヒエラルキー構造、新卒一括採用、女性の働きにくさ、地方の疲弊……現在の日本の「働く」を巡る閉塞感を打破する鍵としての、クラウドソーシングの可能性について吉田氏にじっくりと話を聞いた。(構成:中野慧)■目次第一回  「ウィンドウズ型」から「リナックス型」の働き方へ 第二回  クラウドソーシングは職業訓練・社会保障を代替するか!?第三回  日本でクラウドソーシングを根付かせるには第四回  2016年までに、年収500万円を1万人つくる▼今月のこの人吉田浩一郎(よしだ・こういちろう)1974年生。株式会社クラウドワークス代表取締役社長兼CEO。 株式会社ドリコムの執行役員として東証マザーズ上場を経験後に独立し、ベトナムへ事業展開。日本とベトナムを行き来する中で、インターネットを活用した「時間と場所にこだわらない働き方」に着目し、クラウドワークスを創業。エンジニア・クリエイターのクラウドソーシングを手がける。 サービス開始1年で案件総額15億円を突破、8,000以上の事業者が活用している。岐阜県と提携を発表し、厚生労働省での講演実績、日経新聞・ワールドビジネスサテライトなど取材多数。http://crowdworks.jp/ 第一回 「ウィンドウズ型」から「リナックス型」の働き方へ宇野 まず、吉田さんがなぜクラウドソーシングというサービスに注目し、そして自分で事業を始めようと思ったのか、きっかけを教えていただけますか。吉田 私はもともと日本のメーカーにいて、外資系に転職して東京国際ブックフェアなどの国際見本市の事務局をやり、そのあとドリコムというITベンチャーに移って役員として会社を上場させたのですが、ずっと企業向けの営業をやっていたんですね。大企業向けの営業もやったし、外資系の営業もやったし、中小企業やベンチャーでの営業もやった。法人向け営業はいろいろと見てきたわけです。 営業職って、10年前は花形の仕事だったんですよ。生命保険の花形営業マン、外車のディーラーや製薬会社のMRなどはベンツに乗っていたりしていました。当時は「営業マンで活躍すれば年収1千万から1億ぐらい稼いでベンツやフェラーリに乗って、女の子にもモテる」という非常にわかりやすい幻想があったんです。 でも、この10年で社会構造が変わるなかで、営業マンの価値がだんだん下がってきました。これは大きなパラダイムシフトだと思った。なぜ営業マンの価値が下がっていったのかというと、やはりネットの登場は一つの鍵だったと思います。営業マンがわざわざ伝えなくても、個人がネットで情報を取りに行ったり、いろんなものを選定することができる世の中が、これまでの社会の枠組みとは違う場所でパラレルにできつつある。そういう「法人向け営業のパライダイム・シフト」を考え続けているうちに、海外のオーデスクのようなクラウドソーシングの取り組みに行き着いて、これはすごいと思ったんです。いわゆる営業職がまったくないまま、スキルと空き時間と企業のニーズがダイレクトに結びついて仕事がやりとりされている。まるで脳そのもののように、共感したもの同士に電波が走って、信号がやりとりされて指示されていくといった印象を受けました。そして、これこそが本来あるべき姿なのではないかと思ったんです。 うちが事業を始めるときにベンチマークしたのは、アメリカのオーデスク(oDesk)、イーランス(Elance)、フリーランサー(Freelancer)という会社です。たとえばオーデスクでは、最新の数字で月間約30億円の仕事がオンラインだけで受発注されています。オーデスク一社で年間300億くらいの売り上げという計算になります。 そこでやり取りされているのは、プログラミング言語のPHPや、文章を書くライティング、SEO(検索エンジンの上位に来るようサイトをうまく組む作業)、Photoshopを使った画像処理、MySQL(データベースを管理するためのシステム)の管理保全などです。こうしたあらゆるウェブ関係の仕事が、アメリカからフィリピンやインドに進出していて、今は3年連続で90%という成長率になっています。 ベンチマークするなかで僕が面白いと思ったのは、60%の案件がオンラインにもかかわらずフルタイムジョブを要求していることでした。ご存じの通り、フルタイムの仕事と社会保険は不可分です。日本では社会保険を国が運営していますが、アメリカでは社会保険は民間企業に拠っています。そこでオーデスクは、週30時間以上働いているフリーランスの人を対象に、社会保険的な補助制度を提供したんです。つまり、会社に所属しなくても、オーデスクというインターネット上のプラットフォームに所属することで、正社員と同じような待遇を受けられる可能性があるということです。 この事実を知ったとき、宇野さんたちが言うところの「夜の世界」がどんどん立ち上がってきているんだと思ったんです。クラウドソーシングが今、世界中で加速しているのは、要するに会社という枠組みだけではない、新しい働き方のフレームを作る動きが起きつつあるということだと思います。 20世紀には、国家 ‐ 企業 ‐ 個人という枠組みで、上に行くほど情報が集まるという縦の構造がありましたが、インターネットによってそれらの要素が並列になりつつあります。隣の部署や隣の会社でやっていることを、会社や国よりも個人のほうが先にFacebookで知っていたりする。21世紀はこのように、インターネット×個人の世界が盛り上がるだろうから、その状況に貢献するのが面白いと私は考えて、クラウドワークスという会社を立ち上げたわけです。 今、うちは1年間で800%とぐんぐん成長してきています。発注企業も最初はベンチャー企業が多かったのですが、経済産業省、ベネッセ、ソニー、ヤフー、トーマツ、インテリジェンスといったような官公庁や大手企業からも発注を受けるようになってきました。 それとベンチャーとしては珍しいことだと思うのですが、地方にいても東京の仕事ができる特性を活かして、岐阜県や福島県南相馬市と提携するなど、個人や地域の活性化という課題にも取り組んでいるところです。宇野 なるほど。今のお話のポイントは、ベンチマークしていた海外の先行企業が社会保険までカバーしだしたところに吉田さんが注目したというところですよね。 クラウドソーシングの思想的なポイントは、再分配や社会保障といった、これまで国家が担ってきた機能を、インターネットを活用した新しい枠組みが代替する可能性があるところだと思うんです。もっと言うと、「国家 - 企業 - 個人」という三つの階層によって成り立っている今の産業社会の枠組みに対して、楔を打ち込む思想的ポテンシャルを秘めている。インターネットを用いた国家や企業のコストダウンという観点のみで捉えるのは正しくないですよね。 今、意識の高い学生が大好きな話題に「ノマド論争」というものがありますが、要するに「ノマドって能力とコネがある人間がフリーランスで食っていくとカッコいいよね」ということしか現状では言えていないわけです。そうではなく、働き方の多様性を確保するにはどうしたらよいかを真剣に考えるべきで、そのために民間でサービスを提供していこうという取り組みが一番実効性がある。吉田 おっしゃる通りで、「正社員か、そうでなければただちにワーキングプアでしょ」という二元論的な議論をなんとかしたかったんです。正社員比率は2020年までに50%を切るという予測がなされていて、正社員というフォーマット自体が変わらざるをえない状況に来ているのに、正社員にしか正統性が認められていないのはやっぱりおかしい。そのなかで働き方の多様性が生まれてしかるべきですよね。 これはあまり口に出せないことだと思うのですが、国からしてみれば、正社員という制度は非常に真っ当な選択なんです。年収を正確に捕捉できるので、確実に税収を確保できるわけですね。これはマイクロソフトにとってのウィンドウズと同じで、要はみんながウィンドウズを使っているかぎり、マイクロソフトは毎年安定して収入を得ることができる。国が「正社員」というフォーマットを使ってほしいからこそ、「65歳までの定年延長」や「派遣社員が2年以上勤続すると希望すれば正社員になれる」といったような正社員強化の動きが強まった部分もあると思っています。 しかしそれでは時代の状況に合わなくなってきています。そこで、無料で使えるOSであるリナックスのようなものとして、働き方の多様性を確保するためのクラウドソーシングのような動きがあるのだと思う。宇野 派遣切りを批判するリベラルな人たちは、「みんなが正社員になれたあの時代に戻そう」という主張をしてしまいがちですが、それを言った瞬間に保守的な社会体制を支持してしまうことにもなるし、現実味も失われてしまう。ならば具体例を見せるしかない。その具体例を示そうとしている有力な取り組みの一つが、吉田さんのクラウドワークスであるというのが僕の見立てです。吉田 クラウドワークスでは「受注者側が5社と契約して毎月10万円ずつもらう」という形式を取っているんです。そうすると、たとえ1社から契約を切られても、残り4社との契約があるから、個人の側が強くなることができる。今までのように「お前は外注・下請けなんだから、俺の言うこと聞け」というような、ヒエラルキーに基づく搾取構造が効かなくなる可能性があるんです。宇野 「労働者の権利」をきちんと守るために実効的なのは「複数の仕事をしている」という状態である、と。しかし、あえてツッコみますが、左翼っぽい人がここで口にするであろうことは「じゃあ、ここで仕事を取れる能力のない人間はどうなるのか?」という疑問だと思うんです。