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  • 動画教育が可視化する新しい日本人の人生設計とは――スクー代表・森健志郎の学歴社会"解体プラン" ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.105 ☆

    2014-07-02 07:00  
    216pt

    動画教育が可視化する新しい日本人の人生設計とは
    スクー代表・森健志郎の学歴社会"解体プラン"
    ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
    2014.7.2 vol.105
    http://wakusei2nd.com

    今朝のほぼ惑は、インターネットを活用して動画教育サービス・schoo(スクー)代表を務める、若干28歳の森健志郎さんのインタビュー記事です。これまで受験産業ばかりが目立ってきた動画教育の本当のポテンシャルとは何なのか。そして、サービスを運営するなかで見えてきた、現代人ならではの教育への欲求とは?


    「schoo WEB-campus」は、ウェブ上で生放送の授業に参加できるサービスだ。
    各業界の第一線で活躍する人々が先生となり、ビジネスのみならずカルチャー、政治など幅広いジャンルの授業を行っている。宇野も今年5月に、『「日本的想像力」と「新しい人間性」のゆくえ』という授業を行った。
    今回は、運営会社である株式会社「スクー」代表取締役の森健志郎さんにインタビューを行った。森代表は、リクルート退社後、2011年に24歳でスクーの運営に乗り出した人物。86世代を代表する事業家の一人だ。そんな彼がスクーで目指しているのは、入った学校ではなくて、学んだ内容を重視する学歴革命だという。スクーによって可視化された現代人の欲望と、そこから再編成される新しい教養体系とは――森と宇野が、スクーが描く未来について語った。

     

    ▲森健志郎さん
     
    ◎聞き手:稲葉ほたて、構成:稲葉ほたて・浦島まゆ
     
     
    ■教育という遅れている分野に注目が集まった
     
    宇野 森さんってお若いんですよね?
    森 今年で28歳です。
    宇野 アラサーのその時代って、いちばん仕事をこなせる時期じゃないですか。どうしてその時期を動画教育の分野に賭けようと思ったのですか?
    森 前職はリクルートだったのですが、2年目の終わりあたりにeラーニングのシステムを使ったんですね。でも、使ってみたら、おじさんがカメラ目線でダサいパワポを使って延々と10時間語ってるだけだったんですよ。それで、最後は早送りしてレポートだけ出した(笑)。もうね、こんな面白くないことが世の中にあるのか、と。
    だって、今や一人一人がデバイスを持っていて、インターネット回線も十分に通じている時代なわけですよ? それなのにコンテンツの体験も、サービスのデザインもイケてない。これはもっと進化の余地がある。僕でももうちょっとうまく出来るだろう……そんなふうに思ったら居ても立ってもいられなくなって、次の日に会社に退職届を出しちゃって……。
    ――えええ(笑)。
    森 いや、もう「eラーニングという分野を変えてやろう」と。そこからは、ひたすらジェットコースターみたいに運営をしています。
    宇野 なるほどね(笑)。
    ――ちょっと前から動画教育は話題になっていますが、どういう雰囲気の業界なんですか?
    森 動画学習そのものは、実は何か新しいテクノロジーが伸びると毎回話題になるものみたいなんです。
    今回であれば、デバイスが増えて、通信ネット回線が速くなって、いよいよ動画が見やすくなってきた。そういうタイミングで、再び盛り上がるのは当たり前の流れかなとは思います。ただ、古くから投資をしている会社さんには、「eラーニングは昔も盛り上がったんだけどねとか」みたいに言われることもあって……(笑)
     
     
    ■デパートのカルチャーセンター的な教養――スクーでは、どういうコンテンツが人気なんですか?
    森 今だと、やはりウェブデザインのコンテンツですね。
    ――あー、その辺はわかりやすいですね。個人的にはスクーって、普通のビジネス寄りのeラーニングではやらないような「落語」の講座とかをやってるのが面白いなと思うんですよ。
    森 実は、その辺の番組のターゲットは、40代の女性なんですよ。そういう人たちって、落語のような日本的な教養に興味があるようで……。実は彼女たちの層は、スクーのメインユーザーの一つなんです。もちろん、会社でITを任されて慌てて勉強しに来ているような中年男性や、起業家志望の若い男性なども多いのですが。
    ――てっきり、そういうビジネスマンばかりかと思っていたのですが、40代の女性とは珍しいゾーンのユーザーですね。
    宇野 でも、落語って、この10年くらいに『ちりとてちん』や『タイガー&ドラゴン』などのテレビドラマをキッカケに、女性を中心にブームが起きたジャンルですよ。確かに、その世代が見るのはひじょうによくわかる。
    森 実はウェブデザインと落語のコンテンツって両方を受けてるユーザーさんって、すごく多いんですよ。他にも、睡眠学とか栄養学の講義も、ひじょうに彼女たちからの反響が高いコンテンツでした。
    ――なんかeラーニングというより、デパートのカルチャーセンターの代替になっている感じですね(笑)。
    宇野 いや、それはたぶん正しくて、彼女たちのセンスがデパートの上の階にあるようなカルチャーセンターでは満たされないから、スクーにやってきているところがあるんじゃないかな。
    実際、今の40代の女性って、要は団塊ジュニアの上の方じゃないですか。今の団塊ジュニアの、経済的に中流を成す層の好きなものって、戦後日本が作ってきた、団塊世代の専業主婦の趣味とはかなり変わっていますからね。それなのに、ウェブデザインと落語の講座を同時に提供してくれるようなプラットフォームは、おそらく今の団塊世代向けの、60代をターゲットにしたカルチャーセンターにはないと思う。
    森 まさにそうだと思いますね。既存の学習の選択肢では満たしてもらえない学びの欲求は、潜在的なパイが非常に大きいと感じています。いま顕在している学習のマーケットよりも、こういうピッタリなものがあったら参加してみたいのにっていう、潜在的なニーズを掴んでく方がいいなと思っています。
    だから、スクーの人気講座って、一見バラバラに見えるようなのですが、僕らや受講者にとってはそうでもないんですよ。実際、ウェブデザインは、その典型です。子供がある程度大きくなって、自分で流行のネットECを作ってみたくなったのだけど、本を買ってもわからなかったという人がたくさんいる。実際に先日、そういう女性のターゲット軸で切ってイラストレーターの授業を作ったら、4000人くらいの受講者が来たんです。
     
     
    ■大学の教養科目は人々のニーズからズレている
     
    ――デパートのカルチャーセンターでは生け花や小説の講座を開いているけど、彼女たちが本当に作りたかったのは、実はアフィリエイトサイトだった、と(笑)。でも、こういう欲望ってほとんど可視化されていないですよね。
    宇野 東京でメディアの仕事をしていて、30半ばになってくると、実は40代の主婦との接点が全くないんですよね。自分よりちょっと年上の層のことが全然わからない。でも、確実に興味や関心は変化していて、それがこの話に現れているのだなと思いました。
    森 スクーでは、受講者の居住地域や年齢がデータで取れるんです。そういうところで、敏感にニーズをキャッチし続けることで、ちゃんとターゲット軸に最適化し続けられるわけです。だから、みんながまだ気付いてない、ウェブデザイン×落語のような掛け合わせを、どんどんアップデートして作っていける。こういうところはウチの強みになっていくんじゃないかなと思いますし、実はこれこそがインターネットで動画教育をやるメリットだと思います。
    宇野 講義の内容はノンアカデミックなものが中心になっているようですが、アカデミックにも専門教育と一般教養の二種類があるでしょう。でも、大学が重点的に教えている専門教育も、一般教養も、今の都市部のホワイトカラーのニーズからかなりズレてしまっている現状があると思うんですよ。
    森 そうですね。もう大幅にズレてしまっていると思います。その原因は「学び」をカテゴリーで捉えてしまったからだと、僕らは思っています。例えば1986年に生まれた人と、88年に生まれた人では、抱えている課題感も、教えなければならないことも違う。
    ――旧来の教育は、「学び」をカテゴリーで捉えているから、柔軟性がないというわけですね。
    森 そこをターゲットで区切って、その人はどういう事に悩んでいて、どういう事を知るべきなのかを捉えた上で学習コンテンツを設計していかないと、今のニーズにマッチはできません。例えば、先ほど40代女性とデザインの相性の話をしましたが、これがデザイナーとしてフリーランスでやりたい人の場合になると、今度はイラストレーターの講座と一緒に受講したいのは、確定申告の講座になったりするわけです。そういう欲求のセグメントをしっかりと見ていくのが大事です。
    宇野 僕の友人の濱野智史がニコニコ動画の研究をしたときに、ユーザーのニーズからカテゴリー分けをするという逆転の発想が勝因になったのだと指摘していました。こういう発想は、ニコニコ動画のようなエンターテイメントサービスの世界ではこの10数年で当然のものになったけど、教育の分野には全く及んでいなかった。それが、いままさに変わり始めているということなんでしょうね。
    森 そうなのかもしれません。ただ、実際それに取り組んでいるコンテンツもプラットフォーマーもまだまだ多くないと思うので、時間はかかると思います。やっぱり、マサチューセッツ工科大学やハーバード大学が公開している授業動画でさえも、結局はその大学の従来の形と同じで、カテゴリーで捉えたコンテンツを出しているんです。
    でも、スクーでは、ターゲットがどんな人で、どういうことを学びたいと思っているのかまで含めて、ディレクション設計しています。だから、1本の学習コンテンツに1回参加すると、大体87%ぐらいは離脱せずに最後まで観てくれるわけです。
    ――その離脱率は、かなりすごい数字ですね。
    森 ただ、究極的には、広めのジャンルのコンテンツを集めて、ターゲットに相応しいものをデータの上で最適に配信し続ける形にしないといけないとは思っていますね。スクーを開いていくだけで、自分の視野が広がるものにどんどん出会えていけるようにしたい。その為にはコンテンツ数の桁が、あと3つ4つ5つ増えるくらいにする必要があるんです。
     
     
    ■「入った学校」から「学んできたこと」への学歴革命
     
    宇野 それも確かに重要だと思うのですが、僕はどこかでスクーという企業は、これからの「教育」や「教養」のイメージを打ち出す必要があると思うんですよ。要は学校ではなく動画で、それも数多の動画サイトの中でスクーでなければならない理由づけがもっといるはずなんです。なぜならば、いまスクーに集まっているのは、授業のシステムや、科目ラインナップのセレクション、そしてコミュニティの雰囲気も含めて「スクー的なもの」を求めて集まっていると思うんです。それは今は結果的に生まれたものかもしれないけれど、どこかのタイミングで森さんがこうしたユーザーの望むものをまとめて、練り上げて、「スクー的なもの」を意識的に発信していくタイミングが来るんじゃないかと思うんです。
    森 いつも言っているのは、「学歴革命」です。動画教育のメリットとして、僕らは生放送を重視しているんです。同じタイミングで同じ事柄を学びたい、近しい学習志向性の人たちが集まって、コミュニケーションを取り合えれば――そういう双方向性に大きな可能性を感じています。実は動画学習に限った事ではないのですが、インターネットに学びを転換す最大のメリットは、学びのログが全て残ることなんです。
    ――その人間の学習経過や興味が可視化されてしまうわけですね。
    森 はい。でも、重要なのは、学んでいるときにどんな発言をしたのかまで、全て残せることです。そういう学習のログをどんどん残すことで、最終的には入った学校ではなくて、学んできたことの経歴が履歴書になるような学歴に変えていきたいんです。それによって、人材のマッチングの精度が高まり、また人間が輝ける社会に変わっていくのだと思うんですよ。
    宇野 それって、つまりは新しい「ベネッセ」なんじゃないですか。