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  • プロデューサーシップのススメ #03 地元産品を海外に売り込め!~茨城の成功例から学ぶ~

    2020-05-07 07:00  
    550pt

    NPO法人ZESDAによる、様々な分野のカタリスト(媒介者)たちが活躍する事例を元に、日本経済に新時代型のイノベーションを起こすための「プロデューサーシップ」を提唱するシリーズ連載。第3回目は、日本貿易振興機構(JETRO:ジェトロ)でスタートアップ支援に携わる西川壮太郎さんです。このままでは「茹でガエルの釜」になるばかりの日本市場の先を見据えて、茨城の農業を世界に向けてブランディングすべく、西川さんはいかに生産者たちをinspireしグローカルなプレイヤーとして飛躍させたのか? 精度の高いコミュニケーションでリスクを抑えながらファースト・ペンギンの背中を押す見事な範が、そこにはありました。
     本連載では、イノベーションを引き起こす諸分野のカタリスト(媒介者)のタイプを、価値の流通経路のマネジメント手法に応じて、「inspire型」「introduce型」「produce型」の3類型に分けて解説しています。(詳しくは第1回「序論:プロデューサーシップを発揮するカタリストの3類型」をご参照ください。)
     今回はカタリストの第1類型、すなわち、イノベーターに「チエ」を注ぐ「inspire型カタリスト」の事例の第2弾として、日本貿易振興機構(JETRO、以下「ジェトロ」)で活躍する西川壮太郎氏をご紹介します。
     ジェトロは日本企業の海外進出を支援したり、海外からの投資を促進する政府機関です。国内外に120以上の事務所を持ち、展示会や現地視察ツアーを催したり、マッチングや情報提供などのサービスを提供したりしています。まさしく、国営のカタリスト機関として「コネ」や「チエ」を企業に注いで新規ビジネスを導くことがミッションです。
     ジェトロの信用力やネットワークは抜群ですが、国営ゆえに悩ましいポイントもあります。というのも、税金で運営されているので、公平性や中立性を守る必要があり、特定の企業を贔屓することは好ましくありません。ゆえに、ついつい受け身な仕事ぶりになってしまいがち、という弱点があります。しかし、実際に新しい取引を生み出していくためには、通り一遍のマッチングイベントの開催や情報提供だけでは足りません。優良なバイヤーと優良な生産者の間で真の信頼関係が結ばれるよう、精度の高いコミュニケーションを取り持つ必要があります。そのためには、あの手この手でひと工夫ふた工夫、していかなくてはなりません。ジェトロの担当者には、バランス感覚とビジネススキルと情熱を兼ね備えた、カタリストとしての手腕が高度に求められるのです。
     西川さんは、まさしく「真のジェトロマン」として、ハノイ事務所駐在時代、茨城事務所長時代をはじめ、圧倒的な実績を残されてきました。本稿では特に、バイヤーに関する徹底した調査分析を基に生産者を動かす西川さんの「チエ」の決定力に着目します。「ファースト・ペンギン」と共に跳び、共に成果を残していく、inspire型カタリストのお手本とも言うべきご手腕から学んでいきたいと思います。(ZESDA)

    日本という「茹でガエルの釜」
     ジェトロの西川と申します。本稿では、地元産品を海外に売り込むグローカル・ビジネス、特に茨城県が農産物を海外に輸出することによって地域活性化に成功した事例をご紹介します。この事例で得られた知見は他県の場合にも十分に応用可能だと思いますので、これを横展開して日本の地方経済の復興に少しでもつながれば、ありがたいと思っています。
     まずはクイズから始めさせてもらいます。『私たち日本人は、世界で何番目にお金を稼いでいる国民でしょうか?』日本は、アメリカ、中国に次いで、世界第3位の経済大国だということは広く知られています。しかし、これはあくまで国全体で計算した場合に限られるということはご存知でしょうか?日本が一年に稼ぐ金額(GDP)を一人当たりに換算すると、実は世界26位に大きく後退してしまいます。2018年の国際通貨基金 IMFの発表によると、日本の一人当たりGDPは年間約400万円(39,306米ドル)で、これはヨーロッパ諸国はおろか、シンガポールや香港の方々よりも稼ぎが低いということになります。今後のわが国が確実に迎えるであろう超高齢化社会や人口減少を鑑みると、労働力が減り、国内の需要も期待できない。このような環境では「海外で稼ぐ」ことを無くして、日本人が再び豊かな生活を取り戻すことはあり得ないと言えるでしょう。  いざそう言われてもなかなか危機感を抱きにくいと思いますが、この問題はいつまでもなおざりにしておけるものではないかもしれません。「茹でガエルの法則」という訓話をご存知でしょうか? カエルは自分が泳いでいる池の水が急激に熱くなれば、その変化を察知して逃げるなどの行動を取とることができる。しかし少しずつ温度が上がり続けた場合は、そのうち何とかなるだろうと思ってそのまま同じ場所に居続けて、いつの間にか茹で死んでしまう、というお話です。この話の「池の水」を私たちの環境である「日本経済」に置き換えても、同じことが言えるでしょう。少しずつ人口が減り少しずつ売上が減っている、しかし今のところなんとかなっているという場合に、適切なタイミングで何らかの行動を取ることは非常に難しいのです。今は日本市場だけでも十分に食べていけるかもしれませんが、いつまでもそうとは限りません。将来への布石として、今からでも海外市場とのつながりを作っておくべきだと思います。
     しかし、もちろん盲目的に海外市場に挑戦するのはナンセンスです。海外市場にリスクが多いのは事実です。実際に私はジェトロ海外事務所(ベトナム及びバングラデシュ)での駐在期間中に、現地に進出する日系企業を支援してきましたが、現地企業に騙されて失敗した事例も数多く見てきました。契約金額を振り込んでも契約書通りに履行されないことなど日常茶飯事でした。ただ、そのようなリスクがある反面、人口がどんどん減少し、高齢化が進む日本国内に留まり続けることもリスクだと言えます。そして幸いにも、現在は海外企業との貿易決済においてリスクを回避する方法が数多くあり、正しく計画することで海外進出の際のリスクを最小化することができます。やみくもにリスクを恐れるのではなく、そのリスクの大きさや回避手段などを冷静に判断することが大切です。そうしたリスクヘッジの手段を踏まえた上で、経済発展が著しい新興国などに攻めていくべきではないでしょうか。
    茨城からアジアへの挑戦
     茨城県からアジアに向けた挑戦は2014年から始まりました。私は、それまでベトナム、ハノイのジェトロ事務所に約4年間駐在していましたが、「茨城県にジェトロの地方事務所を新設するから、お前はその初代所長をやれ」というお声がかかり、それを機に日本に帰ってきました。  茨城県に着任して真っ先に始めたのが、県内の44市町村の全てを見てまわることです。各地を実際に訪問することは、地図上を見て想定していたよりも大変なことではありましたが、今ではこの経験が私の財産となっており、生まれも育ちも茨城県民の方よりも私の方がむしろ詳しいという逆転現象が起きているほどです。 各地の商工会議所などを訪問するにあたって、それぞれの地域にどういう課題があるのか、私が持っているノウハウはどのように活かせるだろうか、などと色々と考えました。やがて、根本的な課題の一つが浮き彫りになりました。あまり知られていないかもしれませんが、茨城県は北海道に次いで、農業産出額が日本で第2位を誇る農業県です。しかし、東京では茨城の農産品は他県のものよりも安く売られているため、農家の収入が低く、これが結果として後継者問題を深刻化させる原因の一つとなっていたのです。
     さらに調べてみると、その時点(2014年)では茨城県の農産品はほとんど海外に輸出されていませんでした。例えば茨城県はメロンの生産量が日本一でありながら、それすらも全く輸出されていなかったのです。この状況を何とかしなければならないと考えた私たちは、新たに農産品を輸出することによって地域を活性化させる戦略を考え始めました。茨城県の農産品を海外に輸出し、それをメディアで報道してもらうことでブランド化を図る。そうすれば、農産物の売価が上昇し、農家の方々の収入もあがるはず、という戦略です。 結論を先に申し上げると、この取り組みは大成功をおさめました。こちらのグラフが茨城県の青果物輸出の推移を表しています。ご覧の通り、もともと0に近かった青果物の輸出は、おかげ様でその翌年から20倍の40トン、更に翌々年に4倍の179トン、と飛躍的に伸びていきました。さらに青果物だけではなく、茨城で生産されている常陸牛というブランド牛肉の輸出量も凄い勢いで伸びています。

     一体ジェトロはどのようなカラクリで輸出を伸ばしたのでしょうか。
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  • プロデューサーシップのススメ #02 データシティ鯖江から始まったウェブ新時代

    2020-04-16 07:00  
    550pt

    NPO法人ZESDAによる、様々な分野のカタリスト(媒介者)たちが活躍する事例を元に、日本経済に新時代型のイノベーションを起こすための「プロデューサーシップ」を提唱するシリーズ連載。第2回目は、福井県鯖江市で様々なイノベーションの仕掛け人として活躍する福野泰介さんです。現在、「新型コロナウイルス対策ダッシュボード『COVID-19 Japan』」のネット公開でも注目を集める福野さんの「inspire型カタリスト」としての先進性とは?その実践の来歴と目の醒めるような着想の数々をご紹介します。
     初回では、イノベーションを引き起こす諸分野のカタリスト(媒介者)のタイプを、価値の流通経路のマネジメント手法に応じて、「inspire型」「introduce型」「produce型」の3類型に分けて解説しました。(詳しくは第1回「序論:プロデューサーシップを発揮するカタリストの3類型」をご参照ください。)
     今回はカタリストの第1類型、すなわち、イノベーターに「チエ」を注ぐ「inspire型カタリスト」の事例の第1弾として、株式会社jig.jpの福野泰介会長をご紹介します。
     福野さんは、イノベーティブなプログラマーとして、また鯖江を拠点としたIT起業家として、傑出した実績をお持ちです。その一方で、オープンデータをフル活用する「データシティ鯖江」構想を市長に提案して実現したり、鯖江の小学生にプログラミングを教えたりと、「データ活用のスキル」という「チエ」を鯖江市民に注ぐ「inspire型のカタリスト」としても非常に活発に活動されています。
     特に、ITスキルをそのままサービスとして提供するのではなく、国際組織から学んだオープンデータという概念の導入を鯖江市長に促したり、安価なコンピュータ(IchigoJam)を開発して提供しながらプログラミングを子供たちに分かりやすく教えたりと、最先端の思想やスキルをかみ砕いて伝達することによって付加価値を生んでいる点が、カタリストとしての福野さんに刮目するべきポイントです。
     そして、政府の「オープンデータ伝道師」として、また優れたアプリを世に発信することを通じて、福野さんの「チエ」は鯖江に限らず、世界に発信されているところではありますが、「鯖江から世界を変える」の言葉を体現するかのように、鯖江を変革のドミノの最初の1枚とするべく、福野さんの「チエ」は、鯖江(市役所や子供たち)に、特に意識的に集中投下されています。近い将来、福野さんからinspireされた鯖江のイノベーターたちが、データの可能性をますます開拓して、イノベーションをどんどん興していくことでしょう。(ZESDA)


    ▲福野氏はカタリストとして鯖江に「チエ」を注いでいる。
    ウェブ新時代の地域活性化とは
     株式会社jig.jpという会社の社長をしております、福野泰介と申します。 まずは簡単に自己紹介です。本業はjig.jpというスマートフォンのアプリを作る会社の社長です。政府CIOから、オープンデータ伝道師ということで、オープンデータを日本中に広めてきなさいという命を受けていたり、各種NPOをやったりしております。
     あとCode for Sabaeという、いわゆる地域活動をやっております。地域のゴミ拾い、ドブさらい、いろんな貢献の形がありますけど、Code for Sabaeはプログラムを作って地域に貢献する、そんな活動を地元鯖江で始めております。2017年からは鯖江市商工会議所の常議員を始めまして、一世代上の方々と遊ぶことも増えてきました。
     福井県鯖江市は、東京から新幹線で3時間ちょっとの場所にあります。鯖江市は色々と面白いところで、近年のトピックスとしては「最強の地下アイドル」と呼ばれている仮面女子が挙げられます。何が最強かと言うと、Facebook、Twitterのフォロワーが数百万単位でいるのです。なので、一般向けのメディアとは違うチャンネルですごい影響力がある、そんなアイドルと、なんと鯖江市が提携をしました。鯖江市と仮面女子をYouTubeで検索いただくと、市長が仮面女子のライブで一緒に踊っていたりと、なかなかぶっ飛んだまちになっています。

     いろいろな活動をしていますが、原点はコンピューターに出会ったことと、ウェブに出会ったことにあります。人類とテクノロジーの歴史において、人間とそうでないものが分かれたのは10万年前に言葉というものが生まれた時だと思っています。それまでDNAでしか伝えられなかった情報が言葉として、瞬時に伝えられる。これはすごいことです。 その後、9万5千年かけて発明された文字もまた画期的です。「この先に行くと死ぬぞ」と書いておけば、みんなそこで止まることができます。さらに4千年経って、文字は活字としてコピーできるようになり、拡散を始めました。

     続いて放送。テレビ、ラジオ、当たり前のようですが、わずか100年前にできた技術です。放送は、あたかも語りかけるように、時に映像と共に世界中に対してコミュニケーションできる、非常に強力なツールとなりました。ただ、活字も放送も無料ではないため、発信できる人は限られます。
     そして25年前に誕生したウェブは、この活字や放送の特徴を併せ持った機能を、すべての人に無料で開放するという、非常にインパクトのある技術です。自分はそんなウェブが大好きなので、14年前、ウェブをどこでも見られる、ガラケー向けのアプリ「jigブラウザ」を開発しました。
     現在の主力事業は、スマートフォン向けのC to Cで物を売買できるプラットフォームや、動画配信するためのプラットフォームなどです。これも強力なメディア、ウェブがあるからこそできることです。ウェブを駆使すればあたかも誰もが放送局になれることに匹敵する凄さに、まだ人類は慣れていないかもしれません。
     ウェブにより、様々なローカルなアイドルが多数誕生し、うちのサービスでもトップの人間は一月に1000万以上稼いでいます。テレビと違って、見ていておもしろかったらダイレクトに投げ銭するという、ストリートのミュージシャン的なモデルです。人気な人は1000万円以上稼いでしまうのです。実に100人以上の人がこのサービス上で、生活できるレベルを稼いでいます。
     弊社、jig.jpは、東京代々木に本社があり、福井県鯖江市に本店があります。「利用者に最も近いソフトウェアを提供し、より豊かな社会を実現する」という目標を掲げています。

    オープンデータがもたらす変革
     会社の転換期は、実はガラケーからスマホに変わった時です。社会全体がガラッと変わりました。日本は様々な携帯電話があって非常に良かったのですが、今はもうスマホ一色ですよね。そんな地殻変動に結構翻弄されていたわけですが、幸い、この鯖江にいたということが一つ大きなきっかけとなって乗り越えてきました。
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  • 【新連載】プロデューサーシップのススメ #01 序論:プロデューサーシップを発揮するカタリストの3類型  桜庭大輔

    2020-04-01 07:00  

    今回から、NPO法人ZESDAによるシリーズ連載「プロデューサーシップのススメ」がスタート。東京一極集中・内需主導型では立ちゆかなくなる日本経済のこれからに向けて、諸分野のカタリスト(媒介者)たちがプロデュースする様々な化学反応の事例と考え方を紹介していきます。初回は序論として、ZESDA代表の桜庭大輔さんが、イノベーションの推進役となるカタリストの役割について、3つのタイプ別に解説します。
    〈緊急告知〉 明日4月2日にオンライン開催されるイベント『Thursday Gathering #98 脱・働く③ - 「コネ・カネ・チエ」 の資本主義 - これからの時代を生き抜くために大事なこと』にて、桜庭大輔さんが登壇されます。詳細・お申し込みはこちらまで!
    はじめまして? ZESDAです。
     PLANETSメルマガ読者のみなさま、はじめまして。NPO法人ZESDA代表の桜庭と申します。ZES