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記事 3件
  • 草野絵美 ニューレトロフューチャー 第3回 検閲と複数の正義(2) 〜中国・深圳の経済成長と消費文化について〜

    2019-08-07 07:00  
    540pt

    今日のメルマガは、アーティストの草野絵美さんによる連載「ニューレトロフューチャー」の第3回をお届けします。マイケル・ジャクソンをモチーフとした作品のヒントを求めて、中国・深圳へと向かった草野さん。メイカーシーンにおける「複数の正義」を目の当たりにしたことで、新たな作品の制作に取り掛かります。
    目の当たりにしたい!中国の急激な経済成長と消費文化
    前回の記事で、マイケルジャクソン(以下、MJ)が表紙の雑誌を模した“下絵”のアウトソース先として、「量産的で作り手が不確かな点や、ハイクオリティな複製品という意味で、フェイクニュースや複数のリテラシー・正義が流通している現代社会と重なったから」という理由で選んだ、中国・深圳(シンセン)の『絵画村』。とはいえ、実際に中国へ行ったのは、半年前、私が主宰するSatelliteYoungのMV撮影に挑んだ上海が初めてで、深圳には行ったことがありませんでした。
    MJモチーフの作品のみに留まらず、「情報の流通や消費」「倫理観のアップデート」「“真実”の真実性」などは、私にとって非常に重要なテーマであり、今後も作品を作る上で一貫して関わりが深いであろう議題です。その過程で、中国のめまぐるしい経済成長や留まるところを知らない消費文化には、一度ガッツリ向き合い、探求したいというモチベーションがあったので、この度、中国・深圳へ、行って参りました!
    ……が、最初にお詫びしたいのが、実はスケジュールが合わず、『絵画村』には行けませんでした。その代わりと言ってはなんですが、今回は、作品に想いを馳せながら、私なりの切り口で、イノベーションシティとしての深圳を探求したレポートをお届けします!
    イノベーションシティ深圳、訪問
    改めて、今回の旅の目的は、私の興味や作品コンセプトと親和性が高そうな、現代の中国における消費文化およびMakerシーンを視察することです。 まず、言うまでもなく現地での決済は現金を使う場面は一度もなく、すべてがQRコードで行われます。街には、中国版Uberといわれる配車アプリ『滴滴出行(DiDi)』の乗用車が溢れ、中国語以外の言語は通じませんが、翻訳アプリ『有道翻訳官(Dear Translate)』を使えば無問題です。 ちなみに、中国の街にはそれぞれ地域が掲げるスローガン的なものがあるらしいのですが、深圳のスローガンは「来了 就是深圳人(来ればあなたも深圳人)」。
    なんとオープンなんでしょう! 流石は、中国屈指のイノベーションシティです。
    アップルストアを彷彿とさせる家電ショップ「Xiaomiストア」
    深圳に着いてから最初に行ったのは、真っ白なアップルストアを思わせる内装の『Xiaomi(シャオミ)』のストア。Xiaomiというと、日本ではスマホメーカーというイメージもあると思いますが、今や中国を代表する大手家電メーカーです。

    そんなXiaomiストアで驚いたのが、最新の商品ラインナップ。 というのも、クラウド・ファンディング等で盛り上がったスタートアップの権利を片っ端から買収して、オフィシャルとして低価格で売っているという仕組みがあるようです。なんと、セグウェイも買収されて、今はXiaomiのもの。フィリップスにそっくりな家電も数年前に出して模倣品と話題になっていましたが、財政難に陥ったフィリップスに一部出資をして、今やオフィシャルにしてしまったから驚きです。
    ちょっと荒技すぎる気はしますが、プロセスとしては、一企業をピンチから救済し、正当に権利の交渉を踏まえているので、れっきとした公式ですよね。
    公式/非公式における正義とは
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  • 草野絵美 ニューレトロフューチャー 第2回 検閲と複数の正義(1)

    2019-06-19 07:00  
    540pt

    アーティストの草野絵美さんが自らが取り組むアート作品の制作過程をレポートする連載「ニューレトロフューチャー」。第2回目となる今回は、検閲と正義にまつわる作品の制作レポートです。アーティストの不祥事によって過去の作品が抹消される風潮に違和感を覚えた草野さん。生前のみならず没後も疑惑の絶えない、とあるアーティストにフォーカスします。
    「虚実と検閲、複数の正義」結論が出ないことを題材にしたい
     目まぐるしく発展する現代社会において、結論を出すことが難しい議題はたくさんあります。自分に身近な議題もあれば、縁遠いと感じる議題もありますが、せっかくアート作品に落とし込むなら、様々な角度から議論を生むものが良いと私は思っています。
     今回は、その中でも、私が最近最も想いを巡らされた題材に触れたいと思います。それは「虚実と検閲、複数の正義」についてです。この題材を、アート作品に昇華するために、プロセスを3回に分けてこの連載で綴っていこうと思います。
    虚実と検閲のことが頭から離れなくなったキッカケ
    今年3月、ピエール瀧氏がコカイン所持で逮捕されたとき、彼が所属する音楽ユニット『電気グルーヴ』の作品があらゆる音楽配信サービスから姿を消しました。
    わたしはこの現象に、世界一有名なディストピア小説、オーウェルの『1984年』に登場する『vaporized(蒸発)』という設定を彷彿とさせるような恐怖を感じました。『1984年』の世界では、人には「死」という概念がなく、政府に逆らったものは生きた痕跡を消され、その人のことについて最初からいなかったように扱われるのです。
    ストリーミングサービスが普及してから起こった事件ということもあり、報道の直前までSpotifyで普通に聞いていたニューアルバムにエラーメッセージが表示されるなど、あまりにダイレクトに私の生活にも影を落とし、動揺を隠せませんでした。
    ドラッグ所持や使用を擁護するつもりは当然ありませんが、その時は「なにも素晴らしい作品をすべて回収しなくても……」と気の毒に思い、「作品と作家は切り離すべき」という種のツイートをしました。その発言は多くの人に賛同いただきニュースにも取り上げられました。
    しかし、その後、モデル女性を搾取してきたことが明るみに出た写真家のアラーキーこと荒木経惟氏が、『SLY』という女性向けファッションブランドとコラボレーションをするというニュースを見た時、「彼を使うくらいなら他の写真家にチャンスを与えようよ」と思ったのも、「今後このブランドを買うのは辞めよう」と思ったのも、事実です。これは、先のピエール瀧氏に対して抱いた私の心情とは矛盾した感覚……なのでしょうか。
    罪状、作品そのものの良し悪し(好き嫌い)、巻き込まれた人々の存在、作品への思い入れの有無、自分が許せるかどうか、社会が許すかどうかなど、様々な因子から、思想を導き出しているつもりでも、「私が許せるかどうか」すら、事実とも虚構とも分からない情報に影響を受けた産物でしかないのです。
    『ネバーランドにさよなら』からくる二重の悲しみ
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  • 【新連載】草野絵美 ニューレトロフューチャー 第1回 テクノロジーへの思いをアートで体現する

    2019-05-14 07:00  
    540pt

    今日のメルマガは、草野絵美さんによる新連載の第1回目をお届けします。音楽からファシリテーションまで、多方面に活躍する草野さんが、アーティストとしての活動を本格化。80年代のSF的な想像力と10年代に実現したテクノロジーとのギャップから、現代という時代を見つめなおします。
     はじめまして。私の名前は、草野絵美です。コラムを書いたり、テレビCMに出演したり、TV番組の司会をしたり、作詞作曲をしたり、歌ったりと、様々な活動をしていますが、肩書きとして筆頭に掲げるのは、「アーティスト」です。”Artist” という肩書きは、英語圏で言えば美術作品を手がける芸術家という意味合いが強いですが、日本では、ミュージシャンをアーティストと呼ぶことも多くあります。ちなみに私は、どちらかというと前者の“芸術家”としてのアーティストを名乗っているつもりです。
     とはいえ、私には手がけた美術作品はまだ少なく、フェスに出たりアルバムを配信している音楽活動のほうが目立っているので、このようなことを言うのは正直おこがましいとも思っています。しかし、音楽活動では、楽曲やMVやパフォーマンスなどを包括する世界観を複合芸術として生み出している感覚です。もっと言うと、宮島達男氏が著書『art in you』で説くように、アーティストを職業ではなく、生き方そのものであると捉えるほうが自然であると私は信じています。自分の内なる想いを納得をするまで形にすること、それを他者に伝えること、それは私の理想の生き方です。

    80年代レトロカルチャーの「新しさ」
     平成初頭に東京に生まれた私は、物心ついたころには、ギャル文化、アムラーやシノラーなどの熱狂的な流行に出会い、大人の文化に羨望を抱きながら真似をしていました。しかし、自身が青春時代を過ごす2010年代を皮切りに、圧倒的なファッションリーダーは姿を消し、無数の親しみを帯びたオンライン・インフルエンサーたちの世界線に変わっていきました。  H&M、Zara等のファストファッションが街に溢れ、ガングロギャルやロリータなど、日本特有のファッション部族たちが徐々に衰退を目の当たりにました。終いには、コレクションで模倣した粗悪品も飽きられ『ノームコア(*1)』というなんとも寂しいスタイルが普及したのも印象深い出来事でした。  そんな一連の時代を過ごしてきた私にとって、多くの人間が同じ国の、同じメディアで同じコンテンツに熱狂させられていた時代は二度と戻れないレトロであり、不思議と猛烈に惹かれるものがありました。特にYouTube上にアップロードされたバブル時代のテレビの映像は、どこかグロテスクな魅力を内包しているように私の目には映りました。まだ情報よりも物への執着に狂喜乱舞している情景が、奇妙にもこれから始まる近未来のようにも錯覚し、とにかく目が離せなかったのを覚えています。

     このような偏愛により、大学在学中の2013年に音楽ユニット『Satellite Young』を結成しました。曲調・ビジュアルは近未来風に解釈された80年代アイドルでありながらも、歌詞で扱うテーマは80年代には存在することのなかった「オンライン交際」や「人工知能」「ネット上の仮想記憶」など現代におけるテクノロジーと人間の関係性です。
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