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記事 13件
  • 戦略的低クオリティ|高佐一慈

    2020-11-11 07:00  
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    お笑いコンビ、ザ・ギースの高佐一慈さんが日常で出会うふとしたおかしみを書き留めていく連載「誰にでもできる簡単なエッセイ」。今回は、高佐さんが子供の頃から大好きという「スーパーマーケット」について語ります。スーパーで流れてくる絶妙なBGMについて、思いを馳せてみましょう。
    高佐一慈 誰にでもできる簡単なエッセイ第11回 戦略的低クオリティ
     僕はスーパーが好きだ。  スーパースター、スーパーヒーロー、スーパーサイヤ人……。  スーパーと名の付くものには何か特別な存在感があるが、ここでいうスーパーとは、言わずもがなスーパーマーケットのことだ。  なんの特別感もない、むしろ身近な存在として我々庶民のそばに寄り添ってくれるスーパーマーケット。これを読んでる人でスーパーに行ったことのない人はいないだろう。  子供の頃から大人になった今の今まで、ほぼ毎日お世話になっている。  僕は北海道函館市という北海道の中では3番目に大きい街の出身ではあるが、市の中でもだいぶ田舎の町に住んでいたので、子供の頃の遊び場としては、スーパーの中に設置してあるこじんまりとしたゲームセンターくらいしか無かった。  母親とスーパーに行くということになると、ちょっとウキウキした気持ちで車に乗り向かった思い出がある。  カートにレジカゴを嵌め、青果コーナー・鮮魚コーナー・精肉コーナー・惣菜コーナー・お菓子コーナーを母親と一緒にゆっくり見て回る。
     「白菜が昨日と比べてこんなに安くなっている!」  「おっとっととハイレモンとチョコフレークでちょうど500円以内に収まるぞ!」  「カレーのルーってこんなに種類があるのか」
     飽きたらカートの運転を母親に代わってもらい、僕はゲームセンターへと足を運び、じゃんけんゲームをしたりする。
     「ジャンケンポン! あいこでしょ! あいこでしょ! ズコー!」
     そして和菓子コーナーに向かい、棚からどら焼きを一つ手に取り、母親が運転しているカートを探しに向かう。探すコツは、スーパーの中央を横切る通りを歩きながら、縦に並んだ棚を左右見ながら進んでいくことだ。あまり歩みが早すぎると、ちょうど棚の死角に隠れてしまっている母親を見落としてしまう。  そうやって母親のカートに合流し、母親が献立を考えている隙を突いて、レジカゴの下の方にどら焼きをそっと忍ばせる。レジでお会計している時に、どら焼きがひょっこり顔を出すけど、もう時すでに遅し。どら焼きは店員にバーコードを読み取られ、受け取りのレジカゴへと入れられる。母親は、「あんた、いつの間に入れたの?」という顔をしている。  そんな微かなスリルを楽しめるのもスーパーの醍醐味だ。
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  • キングオブコント2020|高佐一慈

    2020-10-08 07:00  
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    お笑いコンビ、ザ・ギースの高佐一慈さんが日常で出会うふとしたおかしみを書き留めていく連載「誰にでもできる簡単なエッセイ」。今回は、ザ・ギースが決勝に進出した「キングオブコント2020」について語ります。コントを作るとは、いったいなにを追求することなのか。高佐さんが出した答えを、ぜひ読んでみてください。
    高佐一慈 誰にでもできる簡単なエッセイ第10回 キングオブコント2020
     コント日本一を決める大会、「キングオブコント」が今年も開催された。今年はコロナ禍での開催ということもあり、予選・決勝ともに感染対策を徹底させての開催で、本当に無事に終わってよかったなと思っている。  そんなキングオブコントに僕らザ・ギースもエントリーし、見事4度目のファイナリストとなることができた。  去年は準々決勝で敗退し、ちょうど新世代との交代の年とも言われていたので、いわゆる若手ではない僕らが今回返り咲いたことは素直に嬉しかった。実際、決勝進出が決まった瞬間は優勝したのかというくらいのテンションで泣いてしまった。嬉しすぎて、ハイタッチを求めてきた相方の尾関に全く気がつかず、相方をオロオロさせてしまうという事態に。その時の動画もあるので、いずれどこかのライブで流そうと思う。
     さて、今回の「キングオブコント2020」。結果から言うと僕らザ・ギースはファイナリスト10組中4位。上位3組が2本目のネタを披露し、合計得点で優勝者を決めるというルールなので、あと一歩のところで決勝戦に進むことができなかった。しかも3位とは1点差だった。惜しかった。  でも振り返って、こうしておけばよかったなぁということが思い当たらないので結構清々しい気分だ。SNSやメディア媒体上で僕たちのことに言及されている感想や総評を見聞きしていると、「確かにそこを変えていたらもっと面白くなったな!」と思うことが多く、なんで気付けなかったんだろうと思う。でも気付けなかったということは、それが今の実力なのだ。これくらいの実力なのだから、優勝できなくてもそれはもうしょうがない。だから清々しい。そして今の自分たちの実力が分かれば、今後への気合いがよりいっそう入る。
     今回のエッセイは、この大会において僕が考えていたことや、自分の中で沸き起こってきた衝動、そして披露したハープのネタが生まれてから仕上がっていくまでの過程を書いていこうと思う。
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  • 日常に持ち込んだシュール|高佐一慈

    2020-09-03 07:00  
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    お笑いコンビ、ザ・ギースの高佐一慈さんが日常で出会うふとしたおかしみを書き留めていく連載「誰にでもできる簡単なエッセイ」。今回のテーマは「誕生日」です。今年、高佐さんはある特別な方法で、大切な人の誕生日をお祝いしました。シュールという言葉の裏側にある甘酸っぱさを、どうぞご堪能ください。
    高佐一慈 誰にでもできる簡単なエッセイ第9回 日常に持ち込んだシュール
     世の中にはいろんな記念日がある。  例えば建国記念日や敬老の日などの国民の祝日系の記念日。  節分や七夕などの伝統的な祭りごと系の記念日。  誕生日や結婚記念日などの個人的な出来事系の記念日。
     調べてみると365日、毎日何かしらの記念日だ。  例えば1月9日は「とんちの日」。とんちで有名な一休さん、いっ(1)きゅう(9)から来ているらしい。  2月28日は「エッセイ記念日」。エッセイストの元祖、フランスの哲学者ミシェル・ド・モンテーニュの誕生日にちなんでというもの。  5月15日は「ヨーグルトの日」で、ヨーグルトの研究者メチニコフ博士の誕生日だからなのだが、4月4日に「脂肪0%ヨーグルトの日」というのもあって、もう何でもござれだ。  6月1日に至っては、「写真の日」「電波の日」「バッジの日」「気象記念日」「チーズの日」「麦茶の日」「氷の日」「チューインガムの日」「ねじの日」「真珠の日」「景観の日」「スーパーマンの日」「マリリン・モンローの日」と、記念日の大渋滞だ。もう6月1日を何かの記念日にするのはよしてほしい。6月1日自身ももう私を何かの記念日に制定するのはよしてくれと悲鳴を上げているはずだ。
     僕が今回言いたいのは、色んなおかしな記念日を紹介することではない。  誕生日に関することだ。
     僕は人の誕生日を祝うことが苦手だ。  一応大人なのでみんながおめでとうと言っていたら、周りに合わせておめでとうと言うくらいの社会適合性はあるつもりだ。  サプライズでプレゼント渡そうよ、という意見にも賛同できるくらいの分別は持っている。つもりだ。  けど本当は心の底からどうでもいいなぁと思っている。  こう言うと、酷い人間だという印象を持たれてしまいそうだが、誤解して欲しくないのは、僕は自分の誕生日を祝われるのも苦手なのだ。
     一時期何でこんなに嫌なんだろうと、原因を模索したことがある。  自分の中の深い場所に、誕生日のお祝いが嫌いになってしまったトリガーがあるはずだ、と。
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  • 父親の話|高佐一慈

    2020-08-18 07:00  
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    お笑いコンビ、ザ・ギースの高佐一慈さんが日常で出会うふとしたおかしみを書き留めていく連載「誰にでもできる簡単なエッセイ」。今回はちょっと変わっているという高佐さんのお父さんについて。大人になってから、自分の親に対する認識が変わったこと、ありませんか。
    高佐一慈 誰にでもできる簡単なエッセイ第8回 父親の話
     僕の父親は変わっているらしい。  「らしい」というのは、僕自身は父親のことを別段変わっているとは思っていないからだ。いや正確に言うと、思っていなかった。今は思っている。  僕は18歳の時までは実家暮らし、そこから大学進学とともに上京し、もう東京での生活はかれこれ20年以上にもなる。
     今年71歳。もう定年で退いたのだが、父は学習塾を経営していた。家の隣に車庫があるのだが、その上に部屋を増築し、そこを塾としていた。通うのは主に町内の中学生。僕もクラスメートとともに、自分ちの車庫の2階に通っていた。
     各家庭には、各お父さんがいる。友達のユウスケくんのお父さんはスーパーの店長。タナベのお父さんは学校の先生。フジのお父さんはタクシーの運転手。他にもサラリーマンのお父さんや、歯医者のお父さん、自衛隊のお父さんなど様々だ。色んなお父さんがいるので、別段塾の講師をしている自分の父のことを変わっているとは思っていなかった。ああ、うちのお父さんは塾の先生という仕事をしているんだなぁ、くらいの。  しかしポイントはそこじゃない。  いわゆる内面や行動のことだ。  大人になり、色んな人と出会い、色んな経験をした上で、改めて父親を思った時、父は完全に「変わってる人」だった。  変わっていると言っても、全身ピンクの服を着て休みの日は勝手に町内のパトロールをするだとか、飲み屋で仲良くなった素性も知らない人たちを大勢引き連れて次の日バーベキューに行くだとか、そういう豪快さを孕んだ、ある種わかりやすい「変わってる人」ではないのだ。なんというか、静かに変わっているのだ。
     この連載の前々々回くらいで軽く触れたが、父は携帯電話を持ったことがなく(今現在も持っていない)、家にはテレビもない。家では寝る時間以外はずーっとラジオを聞き続けている。  しかも3台同時にだ。FMでクラシックとポップスをかけながら、AMを聞く。ちなみにAMはNHK第一放送しか聞かない。  僕が知ってる中で同時に何かを聞く人は、聖徳太子か父親くらい。聖徳太子は十人の話を同時に聞くのだから、僕の父親はさしづめ「三割聖徳太子」だ。だからもしも父がこれから「冠位3.6階の制度」と「5.1条の憲法」を作ったら、いつか三千円札の顔になるかもしれない。
     父親のことを父親としてしか見ていなかった子供の自分。大人になって一人の人間として父を捉え直した時に、思い出は途端に色を変える。ブルーだったはずの景色がオレンジに。グリーンだと思っていた言動がワインレッドに。
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  • 青春時代の捻れた爆発|高佐一慈

    2020-07-14 07:00  
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    お笑いコンビ、ザ・ギースの高佐一慈さんが日常で出会うふとしたおかしみを書き留めていく連載「誰にでもできる簡単なエッセイ」。今回は「勉強」がテーマです。勉強が大好きだった高佐少年。青春真っ只中、高校進学を前に起こした一世一代の反撃とは……。
    高佐一慈 誰にでもできる簡単なエッセイ第7回 青春時代の捻れた爆発
     僕は勉強が好きだ。何を唐突にと思うかもしれないが、こうやってはっきり「勉強が好き」と言うことができるようになったのはここ最近の話だ。それまでは勉強が好きと言うことに抵抗があった。ほら、何かカッコよくない感じがあるじゃないか。それに人としてとっつきづらい感じもある。あと女子にモテなさそうだ。  でも僕はここではっきりと断言する。勉強が好きだ。  「勉強が好きだーーーーー!」  目の前に海があったら、こう叫びたいくらいだ。  勉強することで、知識と言う栄養を吸収し、自分と言う人間が成長していく感じが好きなのだ。  しかしその割に知らないことがめちゃくちゃ多い。飛行機が雲の上を飛んでる時ってなんでいつも晴れているんだろうとか本気で思っていたし、四国がぷかぷかどこか流れていってしまわないのは、本州と瀬戸大橋・明石海峡大橋・しまなみ海道(この3つの名前は勉強したので知っている)で繋がっているおかげだと思っていた。  つまり誰もが常識として知っていることはすっぽりと抜け落ち、教科書や参考書で勉強したことは知っているという、社会で生きていくことにおいて、なんというか融通の利かない人間なのだ。  よくラ・サール卒業して早稲田に入るなんて頭がいいんだねと言われたりするが、俯瞰で見ても僕は頭のいい人間ではないと思う。いわゆる学校の勉強は出来るけどそれ以外は応用が利かないという頭の悪い人間だ。学校の勉強は出来なかったけど、話が上手かったり、機転が利いたり、物事の理解力が早い人間に憧れる。
     そんな僕の中学時代。学歴社会真っ只中。学校の勉強に真面目に取り組んでいた僕の青春が爆発した。
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  • 不自由律|高佐一慈

    2020-06-16 07:00  
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    お笑いコンビ、ザ・ギースの高佐一慈さんが日常で出会うふとしたおかしみを書き留めていく連載「誰にでもできる簡単なエッセイ」。第6回は、たった一人での生配信ライブ「不自由律」を終えたばかりの高佐さんによる、ライブ開催までの奮闘記です。涙なしには読めません。
    高佐一慈 誰にでもできる簡単なエッセイ第6回 不自由律
     2020年6月3日水曜日夜19時。下北沢ザ・スズナリという老舗の劇場で「不自由律」なるタイトルのライブを行った。コンセプトは、劇場内にたった一人で生配信ライブを行うというものだ。本番はお客さん無しの無観客ライブな上、スタッフさんもいない、劇場内のドアは解放という三密超回避作戦だ。自宅から劇場へも電車は使わず、車で向かう。  僕自身、正直ここまでやる必要はないと思っているのだが、この形式が上手くいけば、緊急事態宣言が発令されたとしてもライブを開催し続けられると思った。
     実際、4月中旬はこのくらいの厳戒態勢で臨まないといけない風潮があった。  そう、このライブは元々4月14日〜19日に開催する予定だったのだ。 本来この期間に、ザ・ギース単独ライブ「自由律」を行うはずだったのだが、やむなく中止となったため、タイトルを引き継ぐ形で「不自由律」と銘打ち、この無謀なライブを行う計画を立てていた。
     遡ること2ヶ月半前。2020年3月31日。ギース、事務所の社長、マネージャーで話し合い、単独ライブ中止の決定をした。その2週間前あたりから、そうするしかない、それがベストな判断だとは薄々気づいてはいたものの、いざ中止と決定するとそれまでライブに向けて張っていた力がみるみる脱力していった。  その頃はどの芸人も劇団もアーティストも、ライブの中止を発表していた。  これはしょうがない状況であるし、いやしょうがないというか、中止にするべきだと自然に思ったし、芸人という職業もといエンタメなんて緊急事態な状況においては何ら必要の無いものなんだなぁと思った。それに「こんな状況だからこそ、ただ自粛するだけじゃなく、何かしら動くことで、エンタメの力を発揮しよう! それをお客さんも望んでいるはずだ!」と、何の疑いもなく、使命感に駆られた熱いエンタメ魂を放出することは、ただのエゴだなとも思ってしまった。こんな時に何も出来ないのがエンタメ界に身を置く者の宿命だ。一番の目的はウイルスを抑え込むことなんだから、勝手に使命感なんて抱くなよ、と。
     しかし。これが1〜2年も続くと話は変わってくる。この状況はワクチンや特効薬が出来るまでのことと、その時の僕は思っていたので、だとしたらウイルスと共存して生きていかないとと思った。家でじっとしているのが一番安全で賢い方法だとは理解した上で、その中で生きていくための手段を講じないといけない。
     4月に入り、どうやって生きていくかを毎日考えた。何度考えても人の命より勝るものはなかった。そして絞り出して出た答えがこのライブだった。  当初はギースで代替ライブをやろうと思っていたのだが、この状況に関しては人によって温度差がある。その人を取り巻く環境であったり、その人自身の経済状況であったり。もし僕が子供や両親と暮らしていて、1年やり過ごす蓄えもあるのなら、ライブをやろうなどとは考えなかったかもしれない。  結局、人を巻き込まない形、つまり僕がたった一人で開催するということになった。  ハープを弾き続けるライブ、石膏でダビデ像を作り続けるライブ。いろんな案を経て、4月14日〜19日の元々の単独ライブの開演時間に合わせて、45分間の無観客ライブを配信する、という結論になった。  45分間8ステだ。あと10日も無い。  無我夢中で考えた。  そして本番まであと1週間というところで、大枠の構成が出来た。配信なので、毎ステ内容を変えなければならないということもあり、構成は一緒で、ネタの中身を全部変えることにした。8ステかけての連続物の演目も用意した。あとは1週間で細かいボケを出すだけ出しまくる作業だ。
     しかし、その日の夜に電話があり、配信という形でも劇場の使用が不可になったという連絡があった。  残念という気持ち以上に、ホッとしている自分がいた。怖かったのだ。  また別の形を模索する毎日だった。  それから緊急事態宣言が発令され、自粛期間が続いた。そして、そろそろ緊急事態宣言が解除されそうという動きになってきた頃だ。
     そこで再びお話が来た。スズナリからだ。6月から劇場を再開するので、もし何かあれば生配信ライブをやりませんか? というお話だった。現在5月中旬。 世の中では自粛警察のニュースが出始め、ライブや営業を再開しようとしている人への風当たりが強い時期でもあった。  そこで、一旦ゴミ箱に捨てた「不自由律」を拾いなおし、再構築することにした。  開催日時は6月3日。1ステ限りの生配信。  この2ヶ月で生活様式はガラッと変わり、ほとんどの仕事がリモートでの配信や収録に取って代わり、中でもZoomを使っての配信というライブ形式が、全配信ライブのほとんどを占めていた。僕もそのテクノロジーにあやかり、トーク配信をしたり、別の企画配信に参加したりした。Zoomはめちゃくちゃ便利なツールで、なんで今まで知らなかったんだろうというくらい重宝しているのだけれども、このツールはそもそもオンライン会議用アプリとして開発されたものなので、ライブを配信するには、画質が悪かったり会話にタイムラグが生じたりという欠点もある。慣れてくればそれも気にならなくなってくるのだが、やはりストレスなく100%すっきりと見れるかというとそれには及ばない。  だからこそちょっと忘れかけていたであろう、劇場でお笑いや芝居や音楽を鑑賞するという、あの感覚。あの感覚を感じてもらいつつ、配信という形を生かしたものを提供できたなら。それは今後のライブ生配信の可能性を広げられるかもしれない。それをするのは別に僕じゃなくてもいいのだが、まだ誰も手をつけていないことだったので、やってみようと思った。
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  • 自粛の上手な活用法|高佐一慈

    2020-05-20 07:00  
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    お笑いコンビ、ザ・ギースの高佐一慈さんが日常で出会うふとしたおかしみを書き留めていく連載エッセイ。外出自粛により家で過ごす時間が増えた高佐さん。時間の使い方をどうしているかというと……。
    高佐一慈 誰にでもできる簡単なエッセイ第5回 自粛の上手な活用法
     「コロナウイルスの影響により予定していたライブは中止となりました」  2020年1月に中国の武漢で発生した新型コロナウイルスは、今この原稿を書いている4月14日現在まで日増しに猛威を奮い、感染者は増え続け、世の中の殆どの人が家で自粛する状況へと追い込まれている。  いつまでこの状態が続くのかはわからないが、僕個人としてはコロナに対するワクチンができるまでと考えている。つまり少なくとも1年間はこの状態が続くと思っているし、それを覚悟している。勿論、アビガンなどの薬がコロナウイルス感染者に効くことがわかってきたり、一度感染した人が治る事例が徐々に出て来てもいる。もしかしたら夏に向けてコロナウイルスの勢いは衰えてくるかもしれない。だとしてもこれは未知のウイルスなので、最悪のケースを考えるに越した事はない。
     僕の職業は芸人であり、お客さんの前に立ってパフォーマンスをすることを主な活動としているため、当然のことながら予定していた仕事はほぼキャンセルとなった。残った仕事といえば、本当にこのエッセイくらいだ。  とはいえ仕事は無くなってしまったが、なぜだかやることは沢山ある。  芸人とは不思議なもので、仕事ではない事がすべて仕事に結びついてしまう。  よく「休みの日は何をされてるんですか?」という質問を受けるが、いつも答えに困ってしまう。例えばネタを考えることはその時点ではお金は発生しない。けどそれがいつかお客さんの前で形になって現れることで仕事へと変化する。同じように、映画を見たとしよう。これは遊びと捉えられるかもしれないが、この映画から何か着想を得て、それがネタへと昇華し仕事へと変貌を遂げる。新しいゲームをやるとしよう。これは完全に遊びっぽいが、やはり何か知識を得たり、人によってはこのゲームを極めることで仕事へと結びつく。考え出すと仕事になり得ないものはないのではないかと思ってしまう。  料理をする、英会話を始める、楽器を習う、写真を撮る。何だってそうだ。  そんなわけで、僕が今抱えている仕事はとてもじゃないが、緊急事態宣言の効力が切れる5月6日(4月14日時点)までには、とてもじゃないが終わりそうにない。
     この1ヶ月でやらなければいけない仕事をざっと挙げてみよう。
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  • ハープを手に入れた|高佐一慈

    2020-04-14 07:00  
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    お笑いコンビ、ザ・ギースの高佐一慈さんが日常で出会うふとしたおかしみを書き留めていく連載エッセイの第4回。ある日、「ハープを使ったコントがしたい」という欲望に取り憑かれ、本当にハープを手に入れた高佐さん。次第に高まっていくハープ愛のゆくえは……?
    高佐一慈 誰にでもできる簡単なエッセイ第4回 ハープを手に入れた
     ハープを弾いている。いきなりなんだと思うかもしれないが、僕は今人前でハープを弾いている。  ハープとは、あの人魚が水辺で奏でている、弦が何本も縦に張られた面白い形の楽器である。たまにオーケストラで演奏している人を見るくらいで、あまり身近では見かけないだろう。そのハープが今僕の自宅の玄関にデーンと置いてある。小六男子くらいの大きさだが、それはものすごい存在感だ。  普通ハープが置いてある家というのは、一軒家で、玄関は吹き抜けで、広い庭があって、リビングにはペルシャ絨毯が敷いてあり、その上には大きなシャンデリアが飾られている。グランドピアノもあるだろう。ガレージにはベンツやポルシェなどの外車が何台も停まっている。  しかし残念なことに僕の家に引き取られたハープは、いろんな世帯が入っている普通のマンション、庭は無し、リビングにはコタツが置いてあり、その上の蛍光灯は先日電気料金の未払いで明かりが点かなくなった。ガレージには外車など停まってるわけもなく、それどころかガレージすら無い。というか僕は免許を持っていない。そんな家の狭い玄関に置かれている。  ハープも「なぜ私はここにいるのだろう」と不思議がっているに違いない。
     そもそもなぜハープを始めたのか。その理由はいたって簡単だ。
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  • 「ニーズが無い」という言葉の恐怖|高佐一慈

    2020-03-12 07:00  
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    お笑いコンビ、ザ・ギースの高佐一慈さんが日常で出会うふとしたおかしみを書き留めていく連載エッセイの第3回。日頃から物持ちが良すぎるという高佐さん。長年クローゼットに保管されたままになっていた服をまとめて処分しようと、衣服の買取店を訪れますが……?
    高佐一慈 誰にでもできる簡単なエッセイ第3回 「ニーズが無い」という言葉の恐怖
     僕は物持ちがいい方だ。  スマホは最低6年は使い続けるし、靴も底に穴が空くまで履き続ける。フライパンに至っては今年で13年目に突入したので、テフロンが全て剝がれ落ちてしまいめちゃくちゃ使いづらいのだが、テフロンの代わりに愛着が表面にコーティングされてしまっているので、捨てるに捨てられない。  そんな中でも溜まっていくのが服だ。自分で買った服以外に、先輩からもらった服、プレゼントで頂いた服など、一度着ると愛着が湧いてしまい、どんどん溜まっていく一方だ。もうクローゼットはパンパンである。  思い切って処分することにした。いつか着るだろうと保管していた服も処分しようと決めた。その服は余裕で5年、10年着ていなかったりする。  有名ブランドの服をまとめて20点。ちゃんと状態のいいものだけを選出した。汗ジミのあるものや、ボタンが外れ糸もほつれてしまっているのものは、雑巾として第二の人生を歩ませることにした。
     渋谷の有名ブランド買取店に持っていくことに決め、行く前にどれくらいの値段になるのかを、自分でざっと計算してみた。  以下は僕にとってのご都合計算。20点合計の、買った時の値段が合計で25万円。一応聞いたことのあるブランド。古着の買取の相場など全く知らないが、おそらく1割の値が付く。なので買取額は2万5千円! しかし一度も着ていない、まだタグの付いた服もあることを考慮すると、もう少し値が上がる。ズバリ3万5千円だ! 3万5千円を超えたら今日はすき焼きにしようと、昭和の主婦みたいな考えになり、大きめの黒いナイロンカバンに服を詰め、いざ出発した。アウターも入っているのでまあまあな重さだ。カバンの紐が右肩にギュギュッと食い込む。しかしそんなことは気にならない。なぜなら今日はすき焼きだからだ。
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  • 相田みつをゲーム|高佐一慈

    2020-02-25 07:00  
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    お笑いコンビ、ザ・ギースの高佐一慈さんの連載『誰にでもできる簡単なエッセイ』。新宿のファミレスで暇そうな女子高校生のグループに遭遇した高佐さん。彼女たちが退屈しのぎに始めた「相田みつをゲーム」なる遊びに興味を持ちますが……?
    高佐一慈 誰にでもできる簡単なエッセイ第2回 相田みつをゲーム
     都内のファミレスに行った。店内に天使の絵が飾られている激安イタリアンレストランだ。ファミレスの中でも最も価格帯が安いという理由のせいか、顧客も学生が多い。僕も大学生の頃よく利用していた。  夕方の16時くらいだったが、場所が新宿ということで、店内は割と混雑していた。僕はタバコを吸うので通常は喫煙席に座るのだが、喫煙席は満席で何分待つかもわからない状態だったので、禁煙席に案内してもらった。
     一人で席に着き、この店で一番コストパフォーマンスが良いと思われる、イタリアの都市の名前が付けられたドリアとドリンクバーを注文し、スマホを開きながら料理を待っていると、隣のテーブルから騒がしい声が聞こえてきた。見ると、制服を着た女子高生5人グループが料理を食べ終えたテーブルでキャッキャと談笑している。皆うっすら化粧を施し、ピアスをし、5人のうち一人は金髪である。ハーフというわけではなく、顔立ちは純日本人といった面持ちなので、恐らくカラー剤で染めたのだろう。校則が緩いのか、はたまた校則を無視して染めたのか、いずれにせよこの時間にファミレスにいるということは、家に帰って真面目に宿題をやったり、部活動に勤しんだりするタイプの学生ではないということである。
     僕は高校が男子校であり、それもカトリックの進学校だったこともあり、学校帰りは寄り道などせず、まっすぐ家に向い、次の日の宿題をしているような真面目な学生だった。なのでこういったいわゆるギャルの女子高生が普段どんな会話をしているのかにとても興味があり、なんとなく隣のテーブルの会話に耳をそば立てた。
     「なんかダルいよねぇ〜」 「マジで超ヒマなんだけどぉ〜」 「確かに〜」
     ヒマなら部活に所属して汗かいたらいいだろと思うが、そういうことではなく、こうやって彼女たちなりにコミュニケーションを楽しんでいるのだろう。  すると、料理を全て食べ終え、この何も無い時間に本当に飽き始めたのか、一人が言った。
     「ねぇ、ゲームしようよ。ゲーム」
     今時の女子高生が一体どんなゲームをするのかに多少興味が湧いたが、どうせスマホゲームか何かだろう。そう思った僕の耳にゲーム提案者の甲高い声が飛び込んできた。
     「相田みつをゲーーーーーム!」■PLANETSチャンネルの月額会員になると…・入会月以降の記事を読むことができるようになります。・PLANETSチャンネルの生放送や動画アーカイブが視聴できます。