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記事 801件
  • 「発明の条件」を考える|暦本純一

    2021-05-07 07:00  
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    今朝のメルマガは、PLANETSのインターネット番組「遅いインターネット会議」にて、登壇されたゲストさんによる自著解説の書き起こしをお届けします。 本日は、「スマートスキン」の開発者として知られる暦本純一さんをゲストにお迎えした「『発明の条件』を考える」(放送日:2021年2月2日)内で紹介された、『妄想する頭 思考する手:想像を超えるアイデアのつくり方』について。 メディアアーティスト・落合陽一さんも学生のころに学んでいたという暦本さんの研究法について書かれた本書。優れた研究、そして新たな発明というものは、個人の「妄想」のようなところから生まれると言います。 「妄想」が「発明」として形になるには、そしてクリエイティビティの源泉となる「偶然性」を担保するにはどのような条件が必要なのでしょうか? (構成:徳田要太)

    スマホ画面を複数の指で操作する、マルチタッチを実現した「スマートスキン」の発明をはじめ、数々のヒューマン・コンピュータ・インタラクション研究の第一人者として知られる暦本純一さん。2021年2月に刊行された近刊『妄想する頭 思考する手:想像を超えるアイデアのつくり方』(祥伝社)では、暦本さんが長年培ってきた研究法をもとに、「アイデア発想法の決定版」が綴られています。 本稿では、「発明の条件」という切り口から、本書のポイントについて詳しく解説していただきます。


    暦本純一 妄想する頭 思考する手:想像を超えるアイデアのつくり方 祥伝社/2021年2月1日発売/ソフトカバー 240頁
    目次 序章 妄想とは何か 第1章 妄想から始まる 第2章 言語化は最強の思考ツールである 第3章 アイデアは「既知×既知」 第4章 試行錯誤は神との対話 第5章 ピボットが生む意外性 第6章 「人間拡張」という妄想 終章 イノベーションの源泉を枯らさない社会へ

    「妄想」を形にするということ
     以前、僕の研究室に入ってきた学生さん向けに研究法の講義をやっていました。これは「研究とは何か」というのを説明するもので、スライドシェアでネットにも公開もされていますが、ざっくり言うと、本書『妄想する頭 思考する手』はこれを発展させて、研究者以外の方にも役に立つように工夫した内容になっています。実は落合陽一くんもうちの学生だったのですが、彼にも話した内容で「研究って本当に妄想みたいなところから始まるんだよ」ということです。  つまり、正しいか正しくないか、わけのわからないことが頭の中でモヤモヤしているんだけど、それを研究者であれば論文、ビジネスマンであれば製品という形で具現化していくにはどうしたらいいか、というのが問題意識です。
     発明は妄想みたいなところから始まります。私が開発した「スマートスキン」で実現されたいわゆるマルチタッチ、いま皆さんがスマホで使っているような、2本以上の指で操作するという仕組みをどうやって発明したかという話と、「モヤモヤしたところをどうやって着地させるか」といった話、「天使度と悪魔度のバランス」という話が重要です。「天使度と悪魔度」とは黒澤明監督の「天使のように大胆に、悪魔のように細心に」という言葉がありますが、それから取ったものです。発想が天使のように大胆だったりしたとしても、作り込みや緻密さには悪魔的になるべきです。これが天使度と悪魔度のバランスということです。
     また「モヤモヤしたこと」というのは、最初のうちはモヤモヤしたままでいいのですが、それを形にするとなったときには言葉が大事です。これは「考えていることを言葉に書く」というよりも「言語化することで考える」ということです。「言語化は最強の思考ツールである」だと思っています。言語化することで、自分の中の話を外部化して客観的に見ることができます。長い文章にするということではなく、簡潔に「必ず1行で書く」ということを訓練していると、「モヤっとしたこと」の中にある本質がクリアになっていきます。それを客観的に見直すこともできるし、1行なので駄目だと思ったらすぐに書き直すこともできる。いくつも書いていきながら「これかな? これかな?」と試行錯誤できるという意味で、ツールとして強力かつ値段的にもお安く、たくさんのメリットがあります。
     それから「発明は必要の母」という考えが大事だと思っています。「必要は発明の母」という言葉は有名ですが、この「発明は必要の母」という言葉はメルビン・クランツバーグという技術史家が言い出した言葉で、「世の中の大きな発明というのは、えてして発明されてから必要が出てくる」というような意味です。とくに課題もなく、突然アイデアだけ閃いて「どうしてこんなものがあるんだろう」「なんだろこれ」と思ったときに、「何に使えるんだろう」と考えるのはむしろ普通のことです。ニーズから入ってソリューションが出てくるというのは王道ですけれど、それがひっくり返ることも往々にしてあります。
     ちなみに、「ブレストはワークしない」ということも、私の言いたいことの一つです。これは私だけではなく何人か他の人も言っていることですが、ブレストでは「誰かが何か言わないと」と思っています。そして一見考えているふうに見えて魅力的なのが、ポストイットに書いて壁に貼りだすとか、ホワイトボードにアイデアを書くといったことです。いかにもアイデア出しをしたようでインスタ映え的にもいいのですが、そのとき一番だったアイデアが最終的に形になった経験は、私の場合、実はほとんどないです。3日後には忘れている可能性が非常に高い。むしろアイデアというものは、よく言われるように既存のものと新しいものとの掛け合わせでできあがります。「だったら既知のものを増やした方がいいのではないか」ということで、うちの研究室では他のメンバーが知らないことを集めてくる会議というのをやっています。例えば「他人が知らないけど自分はおもしろいと思っているものを見つけていきましょう」と話していて、それをやると特に「アイデアをそこですぐに出せ」とまでは言わなくても、自ずと「そういうことがあるなら、こんなこともできるだろう」という案も出てきます。インプットがないときに無理やりアウトプットを絞り出すよりも、潤沢にインプットを入れていった方が自然にアイデアが出てくるということです。
    発明に結びつくアイデアと試行錯誤
     アイデアを生み出すための秘訣として「試行錯誤は神との対話」という言葉を使っています。大仰に聞こえるかもしれませんが、要するにこれは「手を動かしましょう」という話です。最初に思いついたものがすぐにできてしまうこともあるのですが、それは非常に高い確率ですでに誰かがやっています。最初に思いついてぱっとできるようなものは、きっともう自分と同じぐらいかもっと頭のいい人がだいたいすでにやっていることが多い。ですから「やっぱりやってみたらできなかったこと」とか、さきほどの「発明は必要の母」のように、何か最初の目的とは違う目的になるものをピボット(方向転換)する、というふうに試行錯誤していく過程で本当のアイデアになるかなと思います。リアルワールドに向かって壁打ちしているような感じですが、そのプロセスのことを私は「これは神様と対話しているんだ」と表現しています。
     「人と会話することがアイデアにつながる」ことも当然あるのですが、それはあくまでも人間との会話に過ぎません。別のモードとして、周りがみんなで集まっているときに1人で黙々と実験したりする(神と対話する)のも楽しいし、最初の思惑を超えるような発見もあります。自然科学者が世界を形作っている構造を試行錯誤しながら探求してノーベル賞を取るようなところから、普通の人が日常生活の中でいろいろな工夫を重ねたり、あるいは子供が何かおもちゃを壊したり作ったりといったところまで含めて、彼ら彼女らは「神様と対話している」のだと思います。そういうプロセスの楽しさがもっと伝わってほしいなと思っています。
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  • モノへの回路をひらき、ゆるくつながる | 丸若裕俊

    2021-04-27 07:00  
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    工芸品や茶のプロデュースを通して、日本の伝統的な文化や技術を現代にアップデートする取り組みをしている丸若裕俊さんの連載『ボーダレス&タイムレス──日本的なものたちの手触りについて』。今回は最近丸若さんが取り組み始めたInstagramライブや、新しくプロデュースされる茶筒についてお話を伺いました。SNS時代において、本当に良い「モノ」に出会うために必要な回路を探ります。(構成:石堂実花)
    丸若裕俊 ボーダレス&タイムレス──日本的なものたちの手触りについて第14回 モノへの回路をひらき、ゆるくつながる
    モノを中心としたゆるいつながりをつくりたい
    丸若 昨年コロナ渦に新たに試みたことの一つに、懇意にさせていただいている、素晴らしい茶屋の代表である櫻井さん(櫻井焙茶研究所)と徳淵さん(万yorozu)との、Instagramでのライブ配信があります。  まず僕たちが持っている共通の課題って、「お茶を飲む時間を用意してもらえるかどうか」なんです。昨年までは、皆さん「お茶をゆっくり飲めるような生活できたらいいのにね」と言いつつ、毎日忙しくてそれが実現しなかった。ところが世界中がステイホームになった今、これは今こそやらないでいつやるんだと。自分が尊敬する同世代のお茶屋さんたちとその気持ちを共有して伝えていきたいなと思ったのがきっかけでした。  ライブの配信内容についてはとことんマニアックにいこうと思っています。ただ同時に、それに対して純粋に僕たちが楽しんでいることや、それぞれのスタイルの違いを僕たち自身が受け入れている姿をちゃんと伝えることに意味があると思っています。
     うちと櫻井さん、徳淵さんは、はたからみると一見系統が異なって、そりの合わなそうな印象を持つ方もいると思うのですが、そこが逆に面白いと思っています。もともとの知り合いではあったんですが、僕はお茶のブランドを立ち上げるときに、櫻井さんとご飯に行って、「こういうことがしたい。だけど、僕は絶対にあなたの真似をしない。あなたのやっていることに対して敬意を持っているからこそ、軽率に表層を真似する意義を持つことができない。」と伝えたことを覚えています。あくまで個人的な感想ですが、彼らは所作も含めて美しい、まるで洗練されたなジャズのような存在です。それに対して、結果的に今、僕たちはガレージバンドみたいな存在になっているわけです(笑)。 この三者でのライブ配信では、マニアックなことから、改めて聞けないたわいもない会話まで、ものづくりの過程だけでなく考え方でも勉強になることが多くて、同じ業種間での交流や刺激はその業界の発展には不可欠だと毎回感じています。  1年近く配信を続けることで、お互いの理解や信頼関係は深まったと思います。こうした経験を踏まえて、これからの社会へどう発信していくか? その取り組みも三者で行うことができたらと願っています。茶、道具、時間の楽しみ方をそれぞれの美意識で表現出来る取り組みに繋がっていけたら最高です。 それぞれの世界観を大切にし、実際に道具を使うプロたちの選ぶ物。茶だけではなく職人さんや作家さんと実際に交流することで研ぎ澄まされた道具たち。こうした物に触れることも多くの人に体験してもらいたいです。
     Minimalさんや「Maison」の渥美シェフと一緒にお仕事ができるのも(第13回を参照)、お互いのやっていることに対してリスペクトがあって、お互いのお客さんを紹介しあいたい、という思いがあるからです。自分たちが本当に伝えたいことが伝わらない大多数のお客さんを作りに行くよりも、自分たちが信頼できるお客さんたちで、ひとつの緩やかな連合体を作っていこう、ということですね。 コラボレーションとは、お互いのお店を支えてくれる人たちに対しての自己紹介だと思うんです。だからうちはお客さんに対しても、ぜひ他のお茶屋さんにも行ってみてほしいと言っています。
    宇野 今は数を売ろうとすると、「流行っているから私も乗っかってみよう」とか「みんながこれを買っているから買ってみよう」とかそういった流れを作り上げないといけなくなる。こういった「他人の欲望」を欲望するのは人間の基本的な性質なんですが、今はSNSでそれが強化され過ぎてしまっている。それはモノそのものとのコミュニケーションを置き去りにする行為なんですよね。だから、お互いリスペクトしあえる作り手同士がつながって、「みんなに出遅れたくない」みたいな最高にくだらないことを考えている人間とのコミュニケーションじゃなくて、きちんとモノそれ自体とコミュニケーションが取れる世界を確保しておくことが、新しい価値を生み出すためにはすごく大事だと思います。
    丸若 そうなんですよ。最終的にリアルの場でもそういうことができればいいな、と思っています。架空の中で村を作るというか、サロンというか。同じ価値観を持っている人たちがいるから、ある意味安心してコメントができる、安心してなにかいいって言えるような場をつくりたいですね。
    宇野 そのときにそのサロンのメンバーは、誰かの顔じゃなくて、ちゃんと丸若さんの作るお茶や、Minimalのチョコレート、開化堂の茶筒といった、モノを見ることができていると思う。そのことによって「みんながこれを見ているから見よう」というところからちょっと距離が取れる。これはすごく大事なことだと思います。「これは何百リツイートされている。だからすごい」みたいな価値観から離れたところに、丸若さんたちの考えるいいものだけがひたすら並んでいるカタログがある。そんなイメージですね。
    丸若 最終的に僕たちが目指したいのはそういうことだと思います。やっぱり21世紀に走りきった人たちがどんなものを残したかっていうのを後世の人たちに伝えることが僕たちの使命であり、やりたいことだと思うんですよね。

    モノと出会い、チューニングされていく体験
    宇野 今の丸若さんのお話は、これから僕がどんな雑誌を作って、どんなウェブメディアを作っていくのかを考えるときに、大事なことでもあるなと思いました。僕もさすがに「とりあえずバズっている人を載せよう」とは思わないけれど、やはりどこかで「人」を基準に企画を考えている。要するに面白い人を探してきて、面白いことを話してもらったり、書いてもらったりすることを無意識に企画の中心に置いてきた。しかし、それは僕自身もSNSが代表する現在の情報環境に毒されていた結果かもしれないと反省しているんです。だから、いま僕は「人」ではなくて「モノ」や「コト」にフォーカスした企画を中心にできないか考えはじめています。だから、丸若さんがこの半年でこういうことを始めていたのは、すごくシンクロしているものを感じます。 こういう状態だからこそ、人じゃなくてモノが主役の場を作っていって、そこから結果的にコミュニティが立ち上がっていく……ということを僕らはもっと考えたほうがいいと思うんです。
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  • 銀座の街から、茶と菓子を再考する|丸若裕俊

    2021-03-23 07:00  
    550pt

    工芸品や茶のプロデュースを通して、日本の伝統的な文化や技術を現代にアップデートする取り組みをしている丸若裕俊さんの連載『ボーダレス&タイムレス──日本的なものたちの手触りについて』。今回は2020年11月に銀座ソニーパークにオープンしたばかりの「GEN GEN AN幻」についてお話を伺いました。近年インバウンド需要に応えるかたちで変化してきた銀座。この街で「茶と菓子」を提供することの意味を考察します。(構成:石堂実花)
    丸若裕俊 ボーダレス&タイムレス──日本的なものたちの手触りについて第13回 銀座の街から、茶と菓子を再考する
    銀座のソニーパークで、茶の新たな魅力を伝える
    宇野 今日は、昨年11月に銀座のソニーパークにオープンした「GEN GEN AN幻」を中心に、丸若さんがどういうことを考えてプロデュースしていたか、実際に2ヶ月やってみてどういった手ごたえがあるかについて聞いてみたいと思っています。
    丸若 はい。「GEN GEN AN幻」では茶をメインにした喫茶をやっています。まず、日本人で日本茶を知らない人はいないと思います。とはいえ、じゃあ日本茶がいま、日常のなかにどんな形で受け入れられているかと聞くと、みんな「うーん」と考え込んでしまうと思うんですね。そこで、「GEN GEN AN」では改めて茶の魅力を伝えていくことをコンセプトにしています。なので、いわゆるみなさんの頭の中にあるイメージとはだいぶ異なっているかと思います。たとえば、この看板ひとつをとっても、みなさんが抱く茶のイメージとちょっと違うかなと思います。

     こちらは店舗の景色の一部です。いわゆる「お茶屋さん」のイメージとは離れているかとは思うのですが、茶が持っている可能性を、いろんなものに形を変えて表現をする場所っていう形で、この空間があります。一見どう映るかわからないんですけど、すごく伝統的な、職人さんによる技術のものがあったりとか、ラジカセのような電子家電があったりとか。いろいろなものをミックスさせてこの空間を表現しています。

     銀座のソニーパークは、もともとソニーがビルの建て替えを行う際にその土地を有効活用して、銀座という街に対してどういうメッセ―ジを送れるか、という発想のもと建てられたものなんです。今回はそういった歴史も踏まえたうえで、建築家の荒木信雄さんと一緒にこの空間を作りました。
     こういうご時世なのでなかなか発揮しづらい点ではあるのですが、ここが東京メトロと直結でアクセスしやすい場所にあることは、とても面白いポイントだと思っています。こういう場所にあえてコーヒーやファストフードではなくて茶を出すという試みを、ソニーさんと一緒にやっています。この写真はまさに地下鉄のメトロの通路ですが、うちの世界観がここから少しずつ浸食しているような感じです。

     うちは「GEN GEN AN」というプロジェクトだけではなく、もともと「EN TEA」という茶のメーカーもやっています。なので、茶を作る側だからこそ提案できる、日常を作っていくようなプロダクト作りをしたいということで、見た目的にも手に取りたくなるような、良い意味での違和感を作り上げています。
     僕たちのお店のある階は地下鉄のフロアと地上階の間に存在していて、いわゆる半地下にあるんですが、より都市とコミュニケーションを図っていこうということで、一日限定で、地上階にもいろんな取り組みを施設と協力して行っています。
     僕は、茶はその時代や、その時々の鏡のような存在になってほしいなと思っています。たとえばコロナ禍で出足が悪いとか、人を呼べないだとか、営業時間も短縮せざるを得ない……などなど、お店のことを考え出すといろいろあるんですが、この事象に合わせていろんなコンテンツを伝えていきたい。そう考えて、たとえば年末にはパリのレストラン「MAISON」とコラボレーションでイベントを開催したりもしました。そういった、こういうときだからこそ華やかで楽しめるような試みもしています。
     昨年末には「Taki/Dashi」と題して、地上スペースにキッチンカーを出してイベントを行いました。衛生面や検査など、できることはすべてしたうえで望んだのですが、来ていただいた方たちも、ちゃんとマナーを守ってくれて、とてもありがたかったです。実はこの行列が数時間絶えずあるほどに大きな反響をいただきました。
     場所がとても気持ちのよい場所なので、晴天の日なんかは、気持ち的にもリラックスするかなということで。これからも時期を見ながらやっていこうかなと思っています。

     「GEN GEN AN幻」では基本のメニューも、茶の魅力を感じられるものを用意しています。茶は、茶だけで完結しません。その茶があるということは、どういう空間がいいのかとか、どういう食べ合わせがいいのかとか。もっと言うと、どういう生活リズムがいいかな、といったように、生活を考え直す起点にもなる存在でもあると思っています。なので、茶以外のものが持つ可能性も、茶そのものと同時並行で探求していきたいと考えています。
    「あり得たかもしれない街の風景」を空間で演出したい
    宇野 銀座は日本の中心地のうちの一つで、それゆえの難しさがあると思うんです。丸若さんは、最初銀座のソニーパークでやらないかという話を聞いたとき、この街についてどう思ったんでしょうか。「GEN GEN AN」の一号店は渋谷にあると思うんですが、そこと比べてどう考えたのかについてもお伺いしたいです。
    丸若 茶が伝統的なカルチャーでありながらこれからも残っていくとしたら、現在進行形である必要があると思っています。だからこそ、渋谷や銀座という、日本を代表する土地でお茶屋をやることは、すごく意味のあることだと思っています。
     ただ、渋谷ではじめて店舗を出したときは相当苦労しました。理想は、新しい価値を提案して、新しいムーヴメントを起こす……と言うのは簡単ですが、その場所にはお客さんがそもそも存在してないわけです。こういう洗礼は渋谷でさんざん受けているので、正直、銀座ではさらに洗礼を受けるだろうと思って、最初はあまりポジティブじゃなかった。でも、渋谷の店舗の経験から、できること、できることできないことがわかってきていたということと、ソニーパークさんからコンセプトを聞くうちに、こうした大きい企業さんと一緒に何かやっていくっていうのは、何か新たに挑戦ができるんじゃないかと思うようになりました。
    【4/8(木)まで】特別電子書籍+オンライン講義全3回つき先行販売中!ドラマ評論家・成馬零一 最新刊『テレビドラマクロニクル 1990→2020』バブルの夢に浮かれた1990年からコロナ禍に揺れる2020年まで、480ページの大ボリュームで贈る、現代テレビドラマ批評の決定版。[カバーモデル:のん]詳細はこちらから。
     
  • 【生放送のお知らせ】3/3(水)放送! 【実況】『機動警察パトレイバー2 the Movie』

    2021-02-28 21:30  

    生放送番組のお知らせです!
    4DX版の公開を記念して、「機動警察パトレイバー2 the Movie」を観ながら、実況を行います!「戦線から遠のくと楽観主義が現実に取って代る。 そして最高意志決定の段階では、現実なるものはしばしば存在しない。 戦争に負けている時は特にそうだ。」――第2小隊最後の出撃を、ステイホームしながら一緒に見守りましょう。▼今回はHuluで「機動警察パトレイバー2 the Movie」を視聴します作品ページはこちらから▼放送日時
    3月3日(水)19:45〜
    (映画の視聴は20:00開始予定)
    ▼出演
    宇野常寛ご視聴はこちらhttps://live.nicovideo.jp/watch/lv330690442※番組では、映画本編の放送はありません。
    映画のご視聴は、みなさん各自でご準備ください。
    おすすめ関連動画
    ■〈若い読者のためのサブカルチャー論講義〉
    [第7回]機
  • 1/29(金)放送!『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』を観ながら実況します

    2021-01-25 19:30  

    1/29(金)の夜に、宇野常寛がAmazonプライムビデオで『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』を観ながら実況をする生放送を行います。
    『シン・エヴァンゲリオン劇場版』が公開延期となり寂しいこの頃ですが、『Q』を観ながらこれまでの新劇場版について振り返りましょう。
    ※同時間帯に、「金曜ロードショー」で『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q TV版』が放送されていますが、本番組で視聴するのはAmazonプライムビデオで配信されているバージョンです。
    ご自宅でステイホームしながら、二窓で一緒に映画を視聴してください。
    ご視聴はこちらからhttps://live.nicovideo.jp/watch/lv330190885
    ▼放送日時 1/29(金)20:40〜 (映画は21:00頃から視聴開始します)
    ▼出演者 宇野常寛(評論家・PLANETS編集長) ほか
    ▼『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』Amazo
  • 1/22(金)放送!『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』をアマプラで観ながら実況します

    2021-01-21 21:30  

    1/22(金)の夜に、宇野常寛と編集者・井本光俊さんがAmazonプライムビデオで『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』を観ながら実況をする生放送を行います。
    『シン・エヴァンゲリオン劇場版』が公開延期となり寂しいこの頃ですが、『破』を観ながらこれまでの新劇場版について振り返りましょう。
    ※同時間帯に、「金曜ロードショー」で『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破 TV版』が放送されていますが、本番組で視聴するのはAmazonプライムビデオで配信されているバージョンです。
    ご自宅でステイホームしながら、二窓で一緒に映画を視聴してください。
    ご視聴はこちらからhttps://live.nicovideo.jp/watch/lv330116489▼放送日時
    1/22(金)20:45〜
    (映画は21:00頃から視聴開始します)
    ▼出演者
    宇野常寛(評論家・PLANETS編集長)
    井本光俊(編集者)
    ▼『ヱヴァ
  • 2021年新年のご挨拶

    2021-01-01 07:00  

     あけましておめでとうございます。宇野常寛です。  2021年も、よろしくお願いします。
     2020年は、僕たちにとって節目の1年になりました。インターネットをもう一度「考える」場にするために、一石を投じたい。そう考えていた僕たちは「遅いインターネット」という運動をはじめました。どうして「遅い」インターネットなのか? 詳しいことは昨年に僕が出したこの本に書いたのですが、かいつまんで言えばいまのインターネットは人間の情報に対する「速さ」を均質にすることで人間から思考力を奪っていると考えたからです。タイムラインの潮目を読んで、シェアされるニュースにYESかNOかで態度表明をするとき、果たしてユーザーはその問題についてきちんと考えているでしょうか。そこで語られる問題そのものが妥当なものなのかを検討しているでしょうか。ニュースのソースを確認しているでしょうか。同じニュースを報じる記事を、比較検討
  • デジタルネイチャー時代の人類学──マルチスピーシーズが導く「制作論的転回」とは(後編)|奥野克巳(PLANETSアーカイブス)

    2020-11-27 07:00  
    550pt

    今回のPLANETSアーカイブスは、人類学者・奥野克巳さんへのインタビュー後編をお届けします。 現代社会に広く浸透している「多文化主義」。現代ではそこからのオルタナティヴとして、ヒューマンとノンヒューマンとの関係を探る「多自然主義」が台頭してきていると奥野さんは指摘します。落合陽一さんの提唱する「マタギドライヴ」と、文筆家・上妻世海さんの提唱する「制作論的転回」を、人類学の視点から解説します。(聞き手:宇野常寛・中川大地 構成:石堂実花)※この記事の前編はこちら※本記事は2019年4月10日に配信した記事の再配信です。
    「存在論的転回」としてのデジタルネイチャー
    ──最近の人類学がラディカルな多自然主義に向かっていく流れがある一方で、資本やテクノロジーに密着した人工知能のようなものをフラットな対象とすることに反発するようなアンチ・テクノロジー的な傾向は、人類学者の中にはありませんか? やはり人類学には左翼的な気分というか、文明化以前の弱者に肩入れする学という意識を持つ人たちもいそうなイメージが若干あるんですが。
    奥野 どうでしょう。最近は久保明教さんがAI将棋の話を扱った『機械カニバリズム』という本を出しましていますね。欧米でも徐々に、自然の中の動植物と結びついた精霊や神々だけではなく、人間が作り出したもの、例えば性の文脈であればラブドールやセックスロボットといったものに広がっている流れがあります。そういうものと人間との関係を考えていこうとする文脈が広がってはいるし、実際わたしの研究室の学生でもセックスロボットと人間の性愛の関係が近未来にどうなっていくのかを研究している学生もいます。
    ▲『機械カニバリズム 人間なきあとの人類学へ』
     だから、わたし自身はまったく抵抗感はないです。むしろそういったノンヒューマンなりポストヒューマンなりといった研究分野は、人間を超えた人類学の一部になっていくはずだと思います。
    ──マルチスピーシーズ人類学の射程には、生物学的な意味では「種」とはみなされないものとの関わりも含まれるということですね。
    奥野 そうです。だから私は、『PLANETS vol.10』の落合さんと宇野さんの対談を読ませていただいて、すごく面白いと思いました。上妻世海さんなんかが言っていることにも非常に近い。多自然主義なんですよね。  文化人類学の多文化主義は、自己同一性が確保された安定的なところから、安定したものがいくつかあって、Aという文化からBという文化に出発して、差異そのものをとってきて、その蓄積の中から「これは普遍だ」というようなことを言ってきた。そうではなく、人間の計り知れない力を持ったものと対峙することによって自己変容する、といったことを含めた多自然主義的な自然観こそが面白いですよね。
    ▲『PLANETS vol.10』

    【12/15(火)まで】オンライン講義全4回つき先行販売中!三宅陽一郎『人工知能が「生命」になるとき』ゲームAI開発の第一人者である三宅陽一郎さんが、東西の哲学や国内外のエンターテインメントからの触発をもとに、これからの人工知能開発を導く独自のビジョンを、さまざまな切り口から展望する1冊。詳細はこちらから。
     
  • withコロナ、政権交代、アメリカ大統領選挙…激動の2020年をまるごと振り返るオンラインイベント開催のお知らせ

    2020-11-21 12:00  
    こんにちは。PLANETS編集部です。
    来る12月20日(日)、毎年恒例の年忘れトークセッションをオンラインで開催します。
    2020年は、新型コロナウイルスに対する世界的な闘いが始まり、私たちの生活が大きく変わった年でした。今回は、社会起業家や政治家などのゲストを迎えて、この激動の一年について振り返るとともに、来年の展望を考えます。
    たくさんの方にご視聴いただけると嬉しいです。よろしくお願いします!
    お申し込みはこちらから。
    Hikarie +PLANETS 渋谷セカンドステージSPECIAL
    PLANETS大忘年会2020
    ▼スケジュール
    2020年12月20日(日)15:00開演 / 18:00終演(予定)
    第1部 15:00〜16:00 with / afterコロナ時代をどう生きるか
    「新しい生活様式」が徐々に浸透する現代において、私たちの暮らし方、働き方や、社会のあり方はどう変化
  • デジタルネイチャー時代の人類学──マルチスピーシーズが導く「制作論的転回」とは(前編)|奥野克巳(PLANETSアーカイブス)

    2020-11-20 07:00  
    550pt

    今回のPLANETSアーカイブスは、人類学者・奥野克巳さんへのインタビュー前編をお届けします。人間以外の「他者」との関わりから新たに人類のあり方を捉えなおすべく「マルチスピーシーズ人類学」を主導する奥野さん。議論は人類学の歴史から、落合陽一さんの提唱する「デジタルネイチャー」へと広がっていきます。(聞き手:宇野常寛・中川大地 構成:石堂実花)※本記事は2019年4月9日に配信した記事の再配信です。
    現代人類学は何を課題にしているのか
    ──このたび創刊された『たぐい vol.1』は、奥野さんが2016年から主宰されている「マルチスピーシーズ人類学研究会」を母体にした雑誌です。この年は、中沢新一さんが現代における「野生の思考(レヴィ=ストロース)」の再生だと位置づけてきた『ポケモン』の拡張現実ゲームが世界的なブームを引き起こしたり、ユヴァル・ノア・ハラリの『サピエンス全史』が邦訳されてベストセラーになったりと、人類学的な視座から現代の情報技術文明の在り方を捉え直そうとする機運が大きく高まってきたタイミングでした。
     一方で、僕らが昨年刊行した『PLANETS vol.10』でも、落合陽一さんが「マタギドライヴ」というキーワードを提唱しています。これはつまり、デジタルネイチャー化した人工知能時代の情報環境では、人々の生き方はしだいに農耕民的なものから狩猟民的なものに近づいていくだろうという描像です。
     ですので、こうした情報テクノロジー環境における新たなライフスタイルを展望するにあたっては、奥野さんたちが進めている新しい人類学の知見が、これから非常に重要になっていくのではないかという予感を持っています。そこでまずは、現代の人類学がどのような状況にあるかの見取り図からお伺いしたいと思うのですが。
    ▲『たぐい vol.1』
    ▲『PLANETS vol.10』
    奥野 はい。雑誌の冒頭で人類学の現在についての論考を寄せていますが、20世紀初頭に確立された人類学には、われわれの文明とは異なる社会に出かけて、現地の「文化」を民族誌に記述するというスタイルが、イギリス人類学の立役者であるブロニスラフ・マリノフスキーらによって1920年代に制度化されました。  これが1980年代に入ると、アメリカ人類学からポストモダン的な反省モードが起こって、「再帰人類学」と呼ばれる時期がおよそ四半世紀続きました。要するに、近代的な観察者としての人類学者が、どこか局所的な地域に出かけて民族誌を生産するというシステムの正当性や権力性を自己反省していくモメントですね。
    ──たとえばポストコロニアルやカルチュラルスタディーズなど、植民地主義を批判するような議論とつながっていったということでしょうか。
    奥野 そういうことですね。人類学としては、エドワード・サイードの『オリエンタリズム』(1978年)の批判の流れを引き受けたわけです。一言で言ってしまえば、西欧側の一方的な東側、オリエントに対する表象をめぐる問題ですね。この問題は、人類学の持っている西洋から出発し非西洋をまなざすという学的態度とパラレルです。オリエンタリズム批判を人類学が引き受けて、文化を書くこと、民族誌を書くということはいかなることかについて反省し始めた。そこにさらにポストコロニアルのような権力構造みたいなものが入ってきて、ポストモダンと合体して、二段構造になっているんですね。それを受けて、人類学は反省するような再帰的なモードを持ったと。
    ▲『オリエンタリズム 上 (平凡社ライブラリー)』
    ──なるほど。
    奥野 そうした英米の人類学の流儀に対して、フランスのクロード・レヴィ=ストロースがブラジルで1938年に始めたフィールドワークは、単に局所的な文化を記述するものではありませんでした。いくつかの地域を比較しながら、汎用性のある普遍的な要素を考察するというやり方を、『親族の基本構造』(1949年)から『神話論理』(1964〜71年)にかけての著作で展開し、構造主義人類学を確立して一時代を築きました。つまり、『神話論理』が提示したのは、いわゆる「未開社会」の局所的な文化を観察・記述することではなく、一見異なる表層をもった神話でも、そこに登場した要素を記号的に変形していくことで、その根底にはしっかりとした共通の構造が見出だせるという考え方ですね。
     この『神話論理』における構造抽出の核心にあるのは、自然と人間なんです。従来のマリノフスキー的な民族誌が人間内部の差異に着目していたのに対して、レヴィ=ストロースは人間内部ではなく、人間を超え出た自然と人間の関係をテーマとした。この立場を引き継ぐかたちで、レヴィ=ストロースの弟子たち、フィリップ・デスコラ、エドゥアルド・ヴィヴェイロス・デ・カストロ、さらにはブルーノ・ラトゥールらが20世紀の後半から21世紀に入って台頭してきます。彼らは、アニミズムの再定義やパースペクティヴィズム、さらにはもっと大きなテーマとしては多自然主義やアクター・ネットワーク理論といった、新たな論点を打ち出しました。
    自己反省モードからの脱却 人類学の現在形
    ──つまり、現在の人類学は、西欧近代の伝統的な価値観への単なる自己反省的なモードから、もっと新たな価値をポジティブに模索し始めているということでしょうか。
    奥野 はい、内向きの自己反省モードから抜け出たという認識ですね。英米系の再帰人類学の自己反省的なモードが四半世紀続いて、そこを抜け出ようとする過程で、1990年代あたりには応用人類学や開発人類学といった領域が強くなりました。つまり、人類学には未開社会の知識が豊富にあるので、それは開発や国際協力の文脈で応用できるんじゃないかという流れになった。  しかしそれは、人類学を面白くなくさせたわけです。人類学というのはそもそも人間を考えるものであった。それは、現代社会の制度ややり方を前提としないということですよね。応用人類学や開発人類学が出てくると、その土地のことを良く知っている人類学者が関与し、第三世界に対しての開発協力をする。これは非常に実践的なものであって、再帰人類学をそもそも突破できてないんじゃないかっていう話ですね。
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