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記事 45件
  • 脚本家・井上敏樹エッセイ『男と×××』第45回「男と食 16」【毎月末配信】

    2019-01-31 07:00  
    540pt

    平成仮面ライダーシリーズなどでおなじみ、脚本家・井上敏樹先生のエッセイ『男と×××』。今回は、魅惑的な食材である牡蠣についての話題から、若かりし日の敏樹先生の思い出が蘇ります。友達のような彼女のような、微妙な関係の女性とのデート中に占い師に捕まった二人。しかし、敏樹先生はある理由から、急いでその場を切り上げようとします。
    男 と 食  16      井上敏樹 
    先日、深夜に咳き込んで目覚めた。しばらくの間、布団の中で咳をしていたが、なにか変だ。異臭がするし眼が痛い。飛び起きてびっくりした。部屋中に白煙が充満している。牛乳色である。一寸先が真っ白である。これは……火事だ。今や火の手はマンション全体に回り、泥酔して逃げ遅れた私は最早助からないーそんな想いが頭を巡りパニックになった。私が死んだら多くの人々がスキップをして喜ぶだろう。悲しんでくれる者は冬の松茸ぐらい少ないだろう。などと考えたのも束の間、すぐに真相に思い当たった。夜、酔っ払っらって帰宅した私は、前日作ったシチューを食べようと火にかけて、そのまま眠ってしまったのだ。私は白煙を掻き分けてキッチンに行き、ガスを止めると全ての窓を開け、ドアを開けた。当然、シチューは台無しである。真っ黒に炭化している。鍋ももう使い物にならない。私は『あっちっち!』と指を火傷しながら鍋に水を入れつつ、『よし、これはエッセイに書けるな』などと考えていたのだから物書きというのはなかなかに図太い。さて、前置きはこのぐらいにして、今回は牡蠣の話。牡蠣というのは、どうやら好き嫌いがはっきりと別れる食材のようだ。そして嫌う者は牡蠣に当たった事がある者が多い。
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  • 脚本家・井上敏樹エッセイ『男と×××』第44回「男と食 15」【毎月末配信】

    2018-12-27 07:00  
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    平成仮面ライダーシリーズなどでおなじみ、脚本家・井上敏樹先生のエッセイ『男と×××』。今回は鰻(うなぎ)のエピソードです。鰻が大好物の祖母と、鰻が大の苦手な父の間で育った敏樹先生。鰻屋ではなく割烹で食べる鰻についての薀蓄から、小学生の頃、家族と外食で鰻を食べたその日に起きた出来事に思いを馳せます。
    男 と 食  15      井上敏樹 
    さて、今回は鰻のお話。鰻と言えば死んだ祖母の事を思い出す。祖母は鰻が大好きだった。八十九歳で死んだ祖母だったが、死ぬ少し前まで、母が買って来た鰻を食べ、さらにもうひとつ好物だった無花果のデザートを楽しんでいた。鰻に無花果と言うと、随分健啖家のように思われるかもしれないが、祖母は痩身で腺病質、そして背中に大きな生まれつきの青痣があった。そのせいで、鰻と無花果と青痣は私の中でひとつのイメージとして繋がっている。父はこの祖母のひとり息子として甘やかされて育ち自己中心的な人格破綻者になったが、鰻が大の苦手であった。あの皮が気持ち悪いと言うのである。きっと子供の頃にひどい鰻を食ったのだろう。皮はなきが如く焼く、のが、鰻を焼く極意だと言うが、群馬の山奥で育った父にはそんな名店に行く機会はなかったに違いない。
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  • 脚本家・井上敏樹エッセイ『男と×××』第43回「男と食 14」【毎月末配信】

    2018-11-29 07:00  
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    平成仮面ライダーシリーズなどでおなじみ、脚本家・井上敏樹先生のエッセイ『男と×××』。以前、上海蟹にハマったことがあるという敏樹先生。上海蟹の老酒漬けを友人に振るうべく、大量の上海蟹を調理していたところ、目を離した隙に一部の蟹が鍋から脱走。部屋中を探し回りますが、どうしても3匹の蟹が見つかりません。
    男 と 食  14      井上敏樹 
    先日、地図を買った。日本地図である。なんとなれば私は呆れ果てるぐらい地理に弱いからだ。昔から興味がなかった。自分は日本人だ、日本中、どこに行ってもそこは日本だ。それだけ分かっていればいいと思っていた。なにしろ広島は東北だと思っていたし、名古屋は『市』ではなく『県』だと信じていたぐらいである。友達と旅行の計画を立てていても『長野と愛媛に行きたい店がある。昼飯は長野、夜は愛媛でどうよ』などと言って顰蹙を買う始末だ。京都奈良間も三鷹から吉祥寺ぐらいの距離かと思ってタクシーに乗ったら一時間半もかかってしまった。これまではそんな感じで強引に生きて来たが、これではいかんと反省し、地図を買ったわけである。最近では夜寝る前に日本地図を眺めている。おかげで四国四県を言えるようになった。人間、幾つになっても勉強である。さて、今回は蟹の話。当然、蟹にも色々あるが、上海蟹の話である。この蟹は名前の通り中国で採れる淡水蟹でモズク蟹の仲間である。中国では蟹は海より川、川より湖のものが良いとされるが、これは上海蟹への讃歌だろう。中国では自動販売機で上海蟹を売っていて、まさに国民食と言っていい。私も、はまった。
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  • 脚本家・井上敏樹エッセイ『男と×××』第42回「男と食 13」【毎月末配信】

    2018-10-31 07:00  
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    平成仮面ライダーシリーズなどでおなじみ、脚本家・井上敏樹先生のエッセイ『男と×××』。松茸の季節に京都を訪れた敏樹先生。友人と割烹の店で松茸料理を堪能するはずが、不運なことに店の料理にケチをつけるヤクザ風の男と遭遇。二人は険悪な雰囲気になりますが……?
    男 と 食  13      井上敏樹 
    先日、電車の中吊り広告をぼんやり見ていると『熱い地獄』とあった。よくある雑誌の広告である。若干の違和感を覚え、降り際によく見ると『熱い抱擁』が正解である。遠目だったので、『抱擁』を『地獄』と間違えたのだ。私は妙に納得した。『抱擁』と『地獄』は結構似ている。さて、世の中には困った事が色々ある。たとえばリュックを背負ったまま電車に乗る奴。不思議と彼らにはリュックを背負っているという自覚がない。車内が混雑している時など余計なスペースを取られるし、下手に向こうが動けばこっちはリュックが当たってよろめいたりする。困ったものだ。大体、リュックとは両手の自由が必要な時に使うものだ。登山とか戦争とかだ。まあ、人生は登山かもしれぬ。戦争かもしれぬ。百歩譲ってリュックを使うなら、電車に乗る際は網棚に乗せるか胸に抱いていただきたい。また、困ったもの、と言えばレストランで帽子を被ったまま、というのはどうなのだろう。先日は鮨屋のカウンターで帽子を被ったままの若者をみかけた。黒いソフト帽だったが、私的にあんまりあり得ない事だったので、一瞬、帽子形の髪形かと思ってしまった。食事をしながらのサングラスというのも、帽子と同じくらいあり得ない。大体、帽子もサングラスも日光から身を守るために使うものだ。登山とか、戦争とか。
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  • 脚本家・井上敏樹エッセイ『男と×××』第41回「男と食 12」【毎月末配信】

    2018-09-28 07:00  
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    平成仮面ライダーシリーズなどでおなじみ、脚本家・井上敏樹先生のエッセイ『男と×××』。友人たちと京都を訪れた敏樹先生。夏の京都の名物である鱧(ハモ)料理にまつわる薀蓄から、20代の頃、初めての京都旅行で、尿道結石を患いながら芸者遊びをした思い出が蘇ります。
    男 と 食  12      井上敏樹 
    先日、十円玉が立った。部屋で落とした十円が床に跳ね返って立ったのである。これは、茶柱が立つより稀れな現象ではあるまいか。きっと縁起がいいに違いない。さて、今年の夏も友人たちと京都に行った。京都は盆地なので、以前は東京よりずっと暑かったが、最近では様子が変わった。東京より涼しいくらいだ。これも異常気象のせいだろうか。今夏の京都で印象に残ったのは鱧料理が少なかった事だ。夏の京都と言えば鮎と並んで鱧、いや、鮎以上に鱧であり、どの店に行っても必ずと言っていいほど鱧が出る。それも、椀種にするか、湯引きにするか、大体どこも同じ料理。そしてまずい。お碗のひとつぐらいなら、『うむ、夏だな、京都だな』と新鮮に食えるがすぐに飽きる。それが、今回の京都では、二泊で四軒の割烹を回って一度だけ、鱧の湯引きだけであった。これは一体どういうわけか。たまたまいい鱧が入らなかったのか。料理人たちが鱧に倦んだのか。客たちが実はそれほど鱧を喜ばない事に気づいたのか。それはないだろ、と思われるかもしれないが、実際、私の友人たちにも鱧好きは皆無である。ただ、鱧にも魅力がないわけではない。料理人がどんっと鱧の身をまな板に広げ、専用の包丁でシャッシャッと骨を切っていく様子はなかなかのパフォーマンスだ。
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  • 脚本家・井上敏樹エッセイ『男と×××』第40回「男と食 11」【毎月末配信】

    2018-08-31 07:00  
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    平成仮面ライダーシリーズなどでおなじみ、脚本家・井上敏樹先生のエッセイ『男と×××』。前回に引き続いて鮑(あわび)のエピソードです。房州大原のビワッ貝を至高とする敏樹先生。友人の女性ライターの引越し祝いで、金に糸目を付けず食材を買えるのをいいことに、鮑のとろろ汁の調理に挑戦しようとしますが……?
    男 と 食  11      井上敏樹 
    以前、鮑に滑って転んだ事がある。鮑をおろし金の把手で殻から外していた時の事だ。外した拍子に鮑が落ちた。探していると床の鮑を踏んづけて滑ったのだ。大事には至らなかったが、不思議な事が起こった。足の裏の、丁度、鮑を踏んだ部分が赤くなったのである。痛みも痒みもなく、ただ、赤い。鮑の呪いかと思ったが、調べてみると鮑アレルギーというのがあるらしい。だが、食べてみてもなんでもない。だから気にしない事にした。
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  • 脚本家・井上敏樹エッセイ『男と×××』第39回「男と食 10」【毎月末配信】

    2018-07-31 07:00  
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    平成仮面ライダーシリーズなどでおなじみ、脚本家・井上敏樹先生のエッセイ『男と×××』。平成仮面ライダーシリーズなどでおなじみ、脚本家・井上敏樹先生のエッセイ『男と×××』。鮑(あわび)をこよなく愛する敏樹先生。「鮑は長時間蒸すと味が薄くなる」という北大路魯山人の言が本当なのかを確かめるために、蒸し時間に差を付けた鮑の食べ比べに挑戦します。
    男 と 食  10   井上敏樹
    前回、夏と言えば鮎、と書いたが、鮑もまた心くすぐる夏の素晴らしき食材である。
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  • 脚本家・井上敏樹エッセイ『男と×××』第38回「男と食 9」【毎月末配信】

    2018-06-28 07:00  
    540pt

    平成仮面ライダーシリーズなどでおなじみ、脚本家・井上敏樹先生のエッセイ『男と×××』。小学生の敏樹先生は、大叔父を真似て川で生きた山椒魚を飲むことに成功します。さっそく学校で自慢しますが、信じてもらうためにドジョウを飲むことになり……。事態は思いもよらぬ展開を迎えます。
    男 と 食  9   井上敏樹
    先日、仕事場で埃に躓いて転んだ。意味が分からない、と思われるかもしれないが、文字通り埃に躓いて転んだのだ。私はあまり掃除をしない。部屋がきれいだと落ちつかないのだ。だから埃が成長する。ころころと珠のように丸くなる。そいつに躓いて転んだのだ。まあ、そんな事はどうでもよろしい。さて、今年もまた鮎の時期だ。私は鮎狂いなので六月になるとそわそわして来る。一刻も早く、一匹でも多く鮎を食いたい。出来れば日本中の鮎を胃袋に収めたいぐらいだ。子供の頃から私は鮎に縁があった。群馬県の山奥ー大滝村という所に親戚の家があって、夏休みになると遊びに行っていたのだが、村を流れる神流川で鮎が捕れたのである。母方の大叔父は農家であり猟師であり漁師でもあった。村一番の鮎捕り名人で、私が遊びに行くと投網を肩にかけじゃぶじゃぶと川に入っていく。大叔父は好きな形に投網を投げる事が出来た。たとえば岩と岩の間の溜まりを狙うなら、岩に網がかからないように三角形の形に投げる。それが、四角でも丸型でも自在であった。鮎が大量に捕れると、大叔父は腸で鍋を作ってくれた。何匹もの鮎の腸を抜き、包丁で叩いたのを出汁を張った鍋に溶かし込み、そこにこんがりと焼いた鮎を入れ、グツグツと煮込みながら食べるのである。これが、異様なくらい旨かった。美味しいものを食べると頬っぺたが落ちる、とよく言うが、あれは事実なのをご存じだろうか。何人もの人に聞いてみたが、そんな経験はないと言う。だが、本当の事なのだ。私は何度か経験がある。鮎の腸鍋の時もそうだった。頬の付け根のあたりがジンと痛くなる。くすぐったいような痛いような不思議な感じだ。そうなると、頬っぺたが落ちないように、押さえながら食べなければならない。
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  • 脚本家・井上敏樹エッセイ『男と×××』第37回「男と食 8」【毎月末配信】

    2018-04-26 07:00  
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    平成仮面ライダーシリーズなどでおなじみ、脚本家・井上敏樹先生のエッセイ『男と×××』。美食を愛し、あちこちで食べ歩きをしている敏樹先生は、行く先々で様々な珍事に遭遇します。今回は、ある中華料理屋で見舞われた、これまででダントツの珍事をご紹介します。
    男 と 食  8   井上敏樹
    時々、無性に中華料理が食べたくなる。それも、四川。辛い奴だ。やや疲れ気味な時に、体が四川料理を求める気がする。炎の力と強烈な香辛料が元気をくれるのだ。ただし、とっても疲れている時は無理だ。体が四川のパワーを受けきれない。私は辛い物に目がないが、実はトウガラシアレルギーで、その上、胃腸が弱い。従って、四川料理を食べる時は色々と大変である。抗アレルギー薬と胃腸薬を持参しなければならない。さもないと翌日が悲惨である。下半身の柔らかい所に湿疹が出来る。下痢になる。胃腸薬を飲んでも、辛さによっては下痢は免れない。そんな時はトイレでうんうん唸りながら神に誓う。『神様、もう辛い物は食べません。だからこの腹を治してください』と言うわけだ。それでも辛い物への嗜好はやみがたく、誓いを忘れる。その繰り返しだ。
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  • 脚本家・井上敏樹エッセイ『男と×××』第36回「男と食 7」【毎月末配信】

    2018-03-30 07:00  
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    平成仮面ライダーシリーズなどでおなじみ、脚本家・井上敏樹先生のエッセイ『男と×××』。「大人になったら鮨屋のカウンターで、好きなネタを好きなだけ食ってやろう」と心に決めた小学生の敏樹少年。大学生になって、初めての原稿料を手に高級店へ入った敏樹先生を襲った、衝撃的な事件とは……?
    男 と 食  7   井上敏樹
    子供の頃、鮨と言えば出前だった。それも、家族の誰かの誕生日とか、母が異常に機嫌がいいとか、特別な日に限られていた。わが家では、必ず一緒盛りで鮨を頼んだ。すると、大桶に色々なネタが盛り込まれる。三人前で頼んでも、中トロが二貫、その代わり赤貝が一貫、といった案配である。そこが、楽しかった。出前が届くと、私と弟と母でジャンケンをする。そうして勝った者から順番に好きな鮨を選ぶのである。初めてカウンターで食べたのは、私が小学生の頃、父が何かの気まぐれで連れて行ってくれた時だ。父は普段家にいなかったから、罪滅ぼしのつもりだったのかもしれない。そこは出前を取る際にいつも使う店で、まあ、町場の普通の店だった。今でも鮮明に覚えているのは店のテレビでサリドマイド児の特集をやっていて、父が『食欲がなくなる番組だ』と言ったのに、店の者は誰もチャンネルを変えなかった事だ。その程度の店だった。とは言え、当時の私はカウンターで鮨を食うという事にわくわくしていた。大人になった気分だった。ガラスのケースで様々なネタが光っている。
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