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記事 16件
  • 【特別寄稿】倉田徹「香港民主化問題:経済都市の変貌史」

    2018-02-28 07:00  
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    来る2018年3月11日に、香港では立法会の補欠選挙が予定されています。香港衆志の周庭氏も立候補を予定していましたが、基本法に反することを理由に出馬無効を言い渡されました。なぜ香港の若者が活発に民主運動を行うことになったのか、なぜ政府は民主派を弾圧するのかーー。現在の状況に至るまでに香港が辿った歴史について、立教大学法学部政治学科の倉田徹教授に解説していただきました。
     香港と聞いて、日本人がイメージするものは何か。グルメ天国、買い物天国、目もくらむような看板のネオンサインの洪水、あるいは林立する高層ビル、アジアの金融センター、はたまたブルース・リーやジャッキー・チェンのカンフー映画……。観光や文化、経済についての様々なキーワードが浮かんできそうだが、その一方で香港の政治は、従来注目されることが非常に少なかった。「香港人は金儲けにしか興味がない」が、自他共に認める香港人に対するお決まりの評価であった。
     ところが2014年、その香港が国際政治の焦点になってしまう。「真の普通選挙」を求めて集会に殺到した人々が、79日間も道路を占拠して民主化運動を展開したのである。警察の催涙スプレーから、手持ちの傘でとっさ身を守ろうとする人々の姿から名付けられた「雨傘運動」は、「エコノミック・アニマル」とは全く異なる新たな香港人の像を世界に示したのである。
     一体なぜ、このような大きな変化が生じたのか。
     重要なのは若い世代の台頭であった。「雨傘運動」で活躍したのは、当時わずか17歳の黄之鋒(ジョシュア・ウォン)や周庭(アグネス・チョウ)などの若者であった。上の世代と全く異なる価値観を持つ世代の登場によって、香港の民主化運動は空前の盛り上がりを見せた。一方、巨大な運動は、北京の中央政府からの強力な弾圧も引き込むこととなった。そういう情勢の中で、香港の民主化運動は現在どういう状況にあり、将来どのような展開が見通せるであろうか。
     現在を知り、将来を考えるため、ここでは香港の民主化問題を過去から遡って考えてみよう。
    植民地期・「金儲けにしか興味を持てなかった」時代
     香港は1842年にアヘン戦争によってイギリスの植民地となり、1997年に中国に返還された。その150年を超えるイギリス統治の歴史のうち、1980年代までの約140年の間、香港にはほとんど全くまともな民主主義はなかった。政治権力はほぼイギリス人の総督が独占し、反政府的な社会運動には厳しい弾圧もあった。しかし、香港市民の間では、強い民主化運動は起きなかった。これが香港市民は「政治に無関心」と評された主な理由である。
     なぜ香港に民主化要求は起きなかったのか。イギリスの統治の巧みさや、政治を汚いものとして嫌う中国人の政治文化などが理由とされてきたが、近年言われているのは、政治に興味を持つことを許されなかったという、香港市民の置かれた環境条件である。選挙がほぼ存在せず、異民族支配の環境では、そもそも一般市民には議員や政府の高官や長になる手段がなく、政治家を職業とすることは不可能である。
     もっとも、イギリス当局への批判は弾圧の対象であったが、中国を批判することは自由であり、政府に動員されたり、忠誠を誓わされたりする類いのこともなかった。その点では政治の面でも、毛沢東の中国や、蒋介石の台湾といった周辺の独裁体制よりもましでもあった。少なくとも、社会主義体制とは異なり、金儲けは自由にできた。特に戦後の香港は飛躍的な経済成長を実現したから、裸一貫から大富豪になる者もいたし、そこまでは無理でも、努力によって暮らしを改善させてゆくことは、多くの者にとって可能であった。香港市民の多数派は、こういう条件の香港という地を選んで、大陸から逃げてきた難民とその子孫たちなのである。当然ながら、彼らは政治に背を向けて、自身の生活のために日々努力を重ねる以外に生きる術がない。「金儲けにしか興味がない」というより、「金儲けにしか興味を持てなかった」のである。
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  • 御宅女生的政治日常――香港で民主化運動をしている女子大生の日記 第11回 議員資格剥奪・収監・反権威主義運動【毎月第3水曜配信】

    2017-10-18 07:00  
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    香港の社会運動家・周庭(アグネス・チョウ)さんの連載『御宅女生的政治日常――香港で民主化運動をしている女子大生の日記』。香港では民主派議員の議員資格が剥奪され、著名な若手活動家たちに禁固刑が言い渡されるなど、大きな変化が起こっています。民主を目指し活動する周庭さんが、改めて香港の未来について考えます。(翻訳:伯川星矢)
     わたしが書いた文章を掲載するのはとても久しぶりとなってしまいました。前回はブラック・バウヒニア行動と返還記念日デモのお話をしました。7月1日の返還記念日から今日までの間で、香港の政治情勢はまた大きく変わってしまいました(恐らく日本でも同じですが)。今回は、この変化についてお話をしたいと思います。
    民主派議員の議員資格剥奪
     まず7月14日、香港の最高裁判所は香港衆志のネイサン・ローを含む4人の民主派議員の議員資格剥奪の判決を下しました。この件についてあまり詳しくない読者もいるかもしれませんので、簡単に説明したいと思います。昨年の10月、香港の律政司は「香港独立」を主張する二人の立法会議員が就任する際の宣誓内容に不備があると称し、議員資格の有効性について司法審査を要請しました。11月、全人代は基本法の内容に対して解釈権を行使しました(実際は解釈のみではなく新たな制限を設けており、実質的には改正でした)。12月、香港政府はさらに4人の民主派議員の議員資格の有効性について司法審査を要請しました。その結果、現在合計6人の民主派議員の資格が剥奪となりました。
    ▲雨傘運動3年集会の様子■PLANETSチャンネルの月額会員になると…
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  • ジョシュア・ウォン×周庭「香港返還20周年・民主のゆくえ」後編(御宅女生的政治日常――香港で民主化運動をしている女子大生の日記)【毎月第3水曜配信】

    2017-09-20 07:00  
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    香港の社会運動家・周庭(アグネス・チョウ)さんの連載『御宅女生的政治日常――香港で民主化運動をしている女子大生の日記』。今回は2017年6月14日に東京大学駒場キャンパスで行われた講演「香港返還20周年・民主のゆくえ」の内容をお届けします。香港で民主活動をしているジョシュア・ウォンさんと周庭さんが、雨傘運動後の活動について語りました。(構成・翻訳:伯川星矢)
    ※文中の役職は、講演当時のものです。
    ※この記事の前編はこちら

    雨傘運動を終えての失望と、民主活動の危険性
    ジョシュア ここからは雨傘運動が終わった後のお話をしたいと思います。雨傘が終わったあと、香港人の間には失望感がありました。民主を実現するのは非常に難しいことなのではないか、という疑問も出始めていました。  ご存知の方も多いかとは思いますが、中国政府を批判する本を販売したとして銅鑼湾書店の店主さんや関係者の方たちが、昨年相次いで中国中央政府に拉致・拘束されるという事件が起きました。そして今年の1月末頃に、親中派であるビジネスマンが中央政府の内部闘争に巻き込まれ、香港のホテルで拉致されるという事件も起きました。  かつての香港は最低限の安全が保たれていると思われていましたが、これらの一連の出来事によって、香港は安全ではないのだと思い知らされました。去年までだったら、香港にいればとりあえずは安全だと僕自身も思っていましたし、中国側に立っている人物だったらなおさら問題ないと言えたはずなのですが、親中派のビジネスマンまでもが拉致されたことにより、その考えは誤りなのだと痛感しました。移民をしたり、もしくは外国籍を持って香港に住んでいるのならば、大丈夫だと思っている香港人も多くいたことでしょう。しかし、実際に拉致されたのは、イギリスやスウェーデンなどの外国籍を持っている人たちでした。香港は安全だという考えは間違いかもしれない、そう思いながら活動をしなければならない。これは、活動を行う上で、かつてと今との大きな違いです。  皆さん、想像してみて下さい。香港の繁華街にある、とても豪華なホテル。そこで突然人がいなくなり、拉致される。そして香港政府の目から逃れて、国境線を潜り抜け、中国大陸へと連れていかれる。そういったことが今、香港で起きているのです。一連の事件では、一国二制度がありながら、中国の中央政府関係者が香港で中国の法律を執行したということになります。このような大事件がありながらも、果たして一国二制度は機能していると言えるのでしょうか? 香港ではもはや、最低限の安全すら守られていないというのが現状です。  さらに民主制度に基づく選挙で選出された議員が資格を剥奪されるという事態も起こっています。香港では、立法会(日本の国会にあたる)の議員が就任する際には「香港は中国の一部」と定めた香港の基本法(日本の憲法にあたる)を遵守するという定型の宣誓文を読むことになっています。しかし、 基本法の解釈権を持つ中国の全人代は、故意に法定通りでない宣言をしたとして、反中派の議員たちの宣誓無効を言い渡しました。  中国と香港の政治制度は異なり、香港は三権分立がある法治社会です。それにもかかわらず、中央政府が「気に入らないから」というだけで、香港の法律を「解釈」してその議員を追放してしまいました。こんなにもあっさりと議員資格が剥奪になるのかと驚くほどです。選挙で3万から5万得票を得て、民選議員になった人であっても、行政長官と中央政府に気に入られなければ議員資格剥奪となるということになります。今の行政長官が当選したときの票数はわずか689票です(編注:香港の行政長官選挙では約1200人の選挙委員のみが選挙権を持つ/参考:「香港返還20周年・民主のゆくえ」前編)。そんな行政長官が、民衆から数万票を獲得した民選議員よりもはるかに大きい権力を持っているのです。  今のところ、香港独立を主張する2人の民選議員が立法会から追放されました。そして今、民主派で公民的不服従を主張する議員4人が議員資格をめぐる裁判にかけられています。その中のひとりが、香港衆志の主席でもある、ネイサン・ローです。今はまだ議員ですが、突然来週裁判の結果が出て、議員ではなくなるということもあり得ますし、ここにいる私たちふたりも議員のアシスタントとしての職を失うことにもなります。その上、政府との裁判なので、もしここで負けたら約200万香港ドル、日本円で言うと約2500~3000万円もの裁判費用を支払いしなければならなくなります。(編注:講演後の7月14日、ネイサン・ロー氏ら4人の議員資格を剥奪するという決定が下された。その後、ネイサン・ロー氏、ジョシュア・ウォン氏ら雨傘運動のリーダーは、違法な集会への参加や扇動をしたとして実刑判決を受けた) 
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  • ジョシュア・ウォン×周庭「香港返還20周年・民主のゆくえ」前編(御宅女生的政治日常――香港で民主化運動をしている女子大生の日記)【毎月第3水曜配信】

    2017-08-23 07:00  
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    香港の社会運動家・周庭(アグネス・チョウ)さんの連載『御宅女生的政治日常――香港で民主化運動をしている女子大生の日記』。今回は2017年6月14日に東京大学駒場キャンパスで行われた講演「香港返還20周年・民主のゆくえ」の内容をお届けします。立教大学の倉田徹教授の解説のもと、ジョシュア・ウォンさんと周庭さんが、民主を求める香港の学生によるここ5年間の活動について語りました。(構成・翻訳:伯川星矢)
    ※文中の役職は、講演当時のものです。

    倉田 本日は多数のご来場ありがとうございます。こんなに人の入った講演会でお話をすることは滅多にありませんが、もちろん皆様のお目当ては私でないことは、よく承知しています。

    会場 (笑)。
    倉田 こちらにいらっしゃるのは黄之鋒(ジョシュア・ウォン)さんと周庭(アグネス・チョウ)さんです。香港衆志という政治団体で幹部を務めていらっしゃいますが、ジョシュアくんは香港公開大学、周さんは香港浸会大学の、現役の大学生3年生という立場でもあります。皆さんが2人のことを知るきっかけになった出来事は、おそらく2014年の雨傘運動ではないでしょうか。
     ジョシュアくんは、香港での真の普通選挙を求めるこの運動を起こし、香港の道路占拠を行った中心人物です。彼はまた同年に『タイム』の表紙を飾ったこともあり、世界的にも名の知られた人です。しかし、実は彼が香港で知られるようになったきっかけは、それよりも前、2011年からの反国民教育運動です。中国式の愛国教育に反対するその運動は、後に普通選挙を求める運動に変化していくことになりますが、そこで彼はリーダーを務めていました。

    (画像出典)
     こちらの周さんは学民思潮に加入し、スポークスパーソンとして活躍をされました。日本ではよく知られていることですが、彼女は私よりも日本語が上手ですね。
    会場 (笑)。
    倉田 ボキャブラリーの使い方がうまかったり、日本のポップカルチャーに詳しかったりと、私は彼女にいろいろ教えてもらう立場にあります。そして日本のテレビなどのメディアを通しても非常に人気のある2人でもあります。今年の7月1日に香港返還から20周年を迎えますが、それにあたって日本の皆様に話したいことがあるということで、この場に来ていただきました。皆さんもご質問などでこの場を盛り上げていただければと思います。よろしくお願いします。
    民主を求めて、香港の若者の政治活動
    ジョシュア (日本語で)こんにちは、私はジョシュアです。

    会場 (笑いと拍手)
    ジョシュア (以下、広東語で)周庭ほど日本語ができないので、ここからは広東語で話させていただきますが、ご了承ください。今回は香港の民主運動の過程を中心にお話をさせていただきたいと思います。この5年間の活動内容と、雨傘運動の後にどんなことをやってきたかの紹介、そして日本の方々へのメッセージをお伝えしたいと思います。どうぞよろしくお願いします。
     あらためまして、ジョシュア・ウォンです。香港公開大学の3年生で、学民思潮の元リーダー、現在は香港の政治団体、香港衆志(デモシスト)の秘書長を務めています。2011年から学生運動・民主運動に参加しています。
     日本に来るのは今回で5〜6回目になりますが、今回は初めて公開の場でお話しさせていただくことになり、実はけっこう緊張しています。まずお話したいことは、日本の文学が大好きだということです。日本のアニメは私にとっては欠かせないものです。『進撃の巨人』Season 2も観ていますし、『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』や『機動戦士ガンダム00』も大好きです。
    会場 (笑)。
    ジョシュア 雑談はこれくらいにしておいて、本題に入りたいと思います。みなさんご存知のように私たちは雨傘運動に参加していました。まずは私たちがかつて所属していた学民思潮の紹介と、今所属している組織、香港衆志の紹介をさせていただきます。

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  • 御宅女生的政治日常――香港で民主化運動をしている女子大生の日記 第10回 ブラック・バウヒニア行動と初めての逮捕拘束

    2017-07-25 07:00  
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    香港の社会運動家・周庭(アグネス・チョウ)さんの連載『御宅女生的政治日常――香港で民主化運動をしている女子大生の日記』。7月1日の返還記念日を前にデモに参加した周庭さんは、初めての逮捕拘束を経験しました。公民的不服従を主張しデモに参加する上での覚悟、逮捕後の様子を語ります。(翻訳:伯川星矢)


    ▲7月1日の返還記念日デモに参加する周庭さん
    先月の連載を見返してみると、京都や台湾への旅、そして六四燭光晩会など、すべてが遠い昔に起きたことのような気がします。ここ一ヶ月であまりにたくさんの出来事がありました。香港の情勢は激しく変化していて、毎月さまざまなことが起きているものですが、それでもこの一ヶ月、わたしは人生で初めての体験をいくつもしました。それはわたし自身の視野を広げ、更なる覚悟を決める機会でもありました。
    ▲返還記念日前のデモ、1回目のブラック・バウヒニア行動 (撮影:jimmy lam)
    ▲2回目のブラック・バウヒニア行動 (撮影:jimmy lam)
    前回、台湾に向かい林飛帆氏の結婚式に参加し、翌日香港に戻り、更にその翌日に東京へ行ったというお話をしました。それとはまた別に、今回はジョシュアと二人で東京に向かいました。とても厳しいスケジュールをこなしながら、わたしたちは初めて海外で記者会見を行いました。日本記者クラブで会見を行う機会をいただいたのですが、約40〜50人もの記者の方たちが参加されました。これほど多くのメディアの方が参加されたことに、本当にびっくりしました。たとえ香港で記者会見を行っても、雨傘運動のような大事件でもない限り、40〜50人もの記者が参加するということはほとんどありません。かつて、ジョシュアとネイサン・ローが台湾の政党・民間団体と一緒に記者会見を行ったり、アメリカも国会の公聴会に出席したりする機会がありましたが、単独での海外記者会見はこれで初めてでした。「主権移行20年」と題した海外会見がこれほどの成功を収めたことは、本当に想定外でした。
    記者会見以外にも、わたしたちは東京大学の阿古先生のご招待により、東京大学駒場キャンパスで行われた講演会に出席しました。その日、わたしとジョシュアは雨傘運動後の香港についての講演を行いました。たとえば中国共産党体制を批判する書籍を出版・販売していた香港の銅鑼湾(どらわん)書店の関係者5人が連続して失踪した事件や、親中派のビジネスマンが香港から中国大陸に誘拐された事件、そしてジョシュアがマレーシアとタイに入国拒否されたことなどについてお話をしました。また、わたしたち香港衆志の理念についても紹介しました。講演に来てくれたみなさんにわたしたちが民主的な制度を求めていると同時に、香港の民主主義と民主自決を求めていることを知ってもらいたかったのです。そしてとても驚いたことに、当日の参加者がとても多く、150人分の席がいっぱいになり、隣の教室から椅子を運び込んで座っている人もいましたがそれも入らなくなり、最後には廊下に椅子を並べてドア越しに講演を聞いている人も大勢いるほどの大盛況でした。正直、「すごすぎる」としかことばが出ません。当日参加された方たちに本当に感謝しています。
    ▲東京大学での講演の様子
    東京から香港に戻ると、わたしたちは7月1日の返還日記念日前後のデモ活動について考えを巡らせていました。今年の7月1日は香港の主権移行20周年でもあり、習近平が初めて国家主席として香港に来訪する日でもありました。毎年この日に、わたしたちはデモに参加していますが、公民的不服従を主張する組織として、デモ以外にも更に積極的な行動も行いたいと思っていました。7月1日よりも前に直接的な行動を起こすことによって、民衆が習近平の来訪を意識する空気を作り出し、返還記念日デモにももっと参加してもらえるのではないかと考えていたのです。
    最終的に、わたしたちは「“ブラック”・バウヒニア行動」を決行しました。20年前、中央政府は香港に、香港の「永遠の繁栄」を象徴としてゴールデン・バウヒニア(編注:ハカマカズラ科の植物)像を贈りました。土台と柱は「中国が香港をやさしく包み込む」ことを表しています。わたしたちはこの“贈り物”を行動地点とし、香港の「偽りの繁栄を破り捨てる」ことを表そうとしました。もしも繁栄と強さが人権弾圧によってもたらされるものなのだとしたら、わたしたちはそんなものは必要としていません。あの日、朝6時、わたしを含む約10人の香港衆志メンバーが湾仔(ワンチャイ)にあるゴールデン・バウヒニア像に黒い布を被せました。警察側は事前にこの行動の情報をつかんでいなかっため、わたしたちは布を被せることに成功し、目標の行動を達成しました。

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  • 御宅女生的政治日常――香港で民主化運動をしている女子大生の日記 第9回 京都での人権会議と六四追悼【毎月第3水曜配信】

    2017-06-21 07:00  
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    香港の社会運動家・周庭(アグネス・チョウ)さんの連載『御宅女生的政治日常――香港で民主化運動をしている女子大生の日記』。最近あちこちを飛び回っているという周庭さんは、先月京都で行われた「Human Rights Watch」の人権会議に参加しました。活動家にとって大切な価値基準について、周庭さんの考えを語ります。(翻訳:伯川星矢)


    ▲高橋愛表紙のminaを購入。
    この一ヶ月を振り返ると、今月もまた忙しい時期でした。
    まずわたしの今の状況を説明しましょう。
    わたしは今、台湾に来ています。台中のセブン-イレブンに座って、アイスとおでんを食べながら、この原稿を書いています。わたしは朝台中に到着し、明日には香港へ戻ります。そのあとさらに支度して、明後日にはジョシュアと東京に向かい、インタビューを受け、大学の公開講座に出席します。今回台湾に来たのは、ひまわり学生運動(編注:台湾が中国と調印した「海峡両岸サービス貿易協定」をめぐる審議で、台湾の内政委員会が強行採決したことをきっかけに、2014年3月18日、台湾の国会にあたる立法院に学生と市民らが突入・占拠した事件から始まった社会運動)の参加者である林飛帆の結婚式に出席するためです。わたし以外にも香港衆志メンバーのジョシュアとネイサン・ローも参加しました。でもお互いに違う飛行機を予約していたため、今ここで1人食事をしながら、ホテルのチェックイン時間を待っています。

    ▲その後、さらにジョシュア・ウォンさんと日本へ

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  • 御宅女生的政治日常――香港で民主化運動をしている女子大生の日記 第8回 多忙を極めた4月を振り返る

    2017-05-25 07:00  
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    香港の社会運動家・周庭(アグネス・チョウ)さんの連載『御宅女生的政治日常――香港で民主化運動をしている女子大生の日記』。第8回の今回は、周庭さんが最も大変な時期であるという4月の忙しさを振り返りながら、香港の政界で起きている事件を解説します。(翻訳:伯川星矢)


    やっと大学生活で最も忙しい時期を耐え抜きました。レポートを4本提出し、数え切れないほどの課題とプレゼンをこなし、3科目の試験を受け終わり、あともう1科目の試験でこの学期が正式に終わります。こういう時期には、立法会のパートタイム政策研究員、英語の家庭教師、政党業務、そして学生を兼任する辛さを深く感じてしまいます。


    ▲香港衆志は1周年を迎えました。
    香港の大学は9月から始まります。9月から12月が第1学期で、1月から5月が第2学期、一般的に課題提出や試験の時期は11月から12月と4月から5月です。やっと終わった4月という月は、もっとも辛い時期の一つです。課題と試験があるだけでなく、高校生の家庭教師として3月から5月に行われる大学受験のために用意しないとならないのです。わたしは大学のレポートと課題をこなしながら、生徒に集中講座を行わないとなりませんでした。もちろん日々進めている政策研究の仕事と政党業務も同時にありました。
    正直なところ、ここ数週間本当に死ぬかと思いました。
    そしてここ数週間、香港の政界でもいろんなことが起きています。まず、以前議員資格を剥奪された青年新政の游蕙禎(ゆう・けいてい)と梁頌恆(りょう・しょうこう)が逮捕されました。その後9人の民主活動家が反基本法解釈の道路占拠や暴動の罪に問われて検挙されました。その中にはわたしたち香港衆志のメンバー2人も含まれています。毎年恒例で行われる返還記念日デモは、ビクトリアパークを始点にしています。しかしここ数日のメディアの報道によれば、香港政府は他の団体による返還記念セレモニーを理由に、このビクトリアパークの使用を許可しなかったと報じられています。

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  • 御宅女生的政治日常――香港で民主化運動をしている女子大生の日記 第7回 香港行政長官選挙を終えて【毎月第3水曜配信】

    2017-04-19 07:00  
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    香港の社会運動家・周庭(アグネス・チョウ)さんの連載『御宅女生的政治日常――香港で民主化運動をしている女子大生の日記』。非民主的だと周庭さんが批判する行政長官選挙は、予想通りの結果を迎えることとなりました。しかし、選挙が終わると、予想外の事件が周庭さんを待ち受けていました。(翻訳:伯川星矢)


    前回、みなさんに香港の非民主的な行政長官制度を紹介しました。先日3月29日に行政長官選挙が終わり、新たな行政長官――林鄭月娥(りんてい・げつが/キャリー・ラム)氏が選出されました。
    正直なところ、今回の選挙結果は完全に予想通りといえるものでした。行政長官選挙で勝つために最も重要なのは、一般市民からの支持ではなく、中央政府からの「祝福」だからです。選挙期間中、メディアはどの官僚が林鄭月娥氏を支持するよう呼びかけたかに報道の重点を置いていました。その報道の数日後には、どの官僚が遠まわしに曽俊華(ジョン・ツァン)を支持しないよう呼びかけたかが報道されました。実際、このようなことは香港人にとっては全く珍しいことではありません。毎回の行政長官選挙の度に、わたしたちはこのような情報を耳にしてきました。それは選挙委員会に属する大多数の親中派が利益と権力に屈し、中央政府の指示を待っているに過ぎないということを意味しています。


    ▲行政長官選挙当日のデモ

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  • 御宅女生的政治日常――香港で民主化運動をしている女子大生の日記 第6回 香港行政長官選挙について【毎月第3水曜配信】

    2017-03-15 07:00  
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    香港の社会運動家・周庭(アグネス・チョウ)さんの連載『御宅女生的政治日常――香港で民主化運動をしている女子大生の日記』。3月26日には、香港の首長である行政長官を選出する選挙が行われる予定です。実際に香港で社会運動を行う女子大生の目線から、行政長官選挙の現状と課題について語ります。(翻訳:伯川星矢)

    この連載で以前、香港政府による自決派及び本土派の議員資格剥奪のお話をしました(編注:中国からの独立を唱える本土派の議員2名が、議員就任の宣誓時に「Hong Kong is not China」の旗を掲げ、「チャイナ」を「シナ」と発音した。これを受け全国人民代表大会(全人代)は、宣誓の内容を規定する香港基本法の法解釈を行い、2人の議員に宣誓無効を言い渡した)。法解釈が行われた後、香港政府による司法審査が始まりました。現在すでに2人の民選議員が司法審査によって資格剥奪となり、香港衆志の主席であるネイサン・ローを含む4人の議員への判決が間もなく下されることとなります。

    ▲テムズ川の前で。

    ▲Human Rights Watch Film Festivalに参加するため、現在はロンドンに滞在中。
    この件については法廷で3日間討論され、本来は3月8日から10日の間に司法審査の結果が言い渡されることとなっていました。しかし、4人を弁護する弁護士が「政府による司法濫用」と言う理由で裁判中止を申し出たことにより、判決は少なくとも1ヶ月は先送りされることとなりました。つまり、ネイサン・ローら4人の議員は、3月26日の行政長官選挙を含む今後1ヶ月、立法会議員として政務執行が許されることとなります。
    今、香港では行政長官選挙で盛り上がっています。その前にまず日本のみなさんに香港の選挙制度について説明をしたいと思います。香港において、首長にあたる行政長官は、市民が一票一票投票して選出されるわけでも、立法会によって選出されるわけでもありません。行政長官を選び出すのは、1200人で構成された選挙委員会です。この1200人は、製造業、金融、政界など様々な業界に分かれています。政界には、区議員代表、立法会議員全員、全人代代表、全国政協委員などが含まれています。こうした政界からのメンバーを除いた、他の業界からの委員は選挙によって選出されます。しかし投票可能な選挙民は約25万人しかおらず、香港の選挙民総人数である約350万のうちのほんの一部にすぎません。さらに、業界ごとの選挙民人数も異なり、一票の価値が平等とは言いがたい状態になっています。しかも、この選挙委員会は、行政長官候補者のノミネートや投票の権利も持っています。簡単に言えば、選挙結果はこの委員会が握っているのです。

    ▲次期行政長官候補らへ直接抗議をする周庭さん。「あなたが当選したら、4人の議員資格剥奪問題はどうなるのか」と直接問いかける。

    ▲周庭さんらの活動の様子は現地のニュースで取り上げられた。
    (画像左)最有力候補といわれる親中派、キャリー・ラムへの抗議の様子。
    (画像右)次期行政長官候補の一人、ホー・グゥオシン元判事へマイクを向ける周庭さん。

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  • 御宅女生的政治日常――香港で民主化運動をしている女子大生の日記 第5回 わたしの日本文化愛【毎月第3水曜配信】

    2017-02-15 07:00  
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    日本のアニメやアイドルが大好きだという、香港の社会運動家・周庭(アグネス・チョウ)さん。日本に興味を持つきっかけになったアニメや、ファン歴8年にもなるモーニング娘。などのアイドル、今期期待の映画など、日本文化について熱く語りました。(翻訳:伯川星矢)

     これまでは、香港の政治情勢やわたしの考え方についてお話をしてきました。しかし、わたしがどうして日本文化を好きになったのかは、まだお話していませんでした。今回はそれをお伝えしたいと思います。

    ▲香港衆志のメンバーと、ヴィクトリアパークの旧正月祭りにて。
     わたしが日本のアニメに興味を持つようになったのは、小学校6年生か中学校1年生の頃でした。それまでも、ときどき香港テレビ局が放送していた吹き替えアニメを観たことはあったのですが、あまり夢中になることはありませんでした。

    ▲『アイドルマスター』の星井美希と『アイドルマスターシンデレラガールズ』の双葉杏のフィギュアと。
     日本のアニメの中で、初めて大好きになったのは『きらりん☆レボリューション』です(しかもちゃんと日本語バージョンで観ました)。もともとアイドルが好きだったからかもしれませんが、子供の頃は香港テレビ局が放送していたアニメ、『満月をさがして』も観ていました。ヒロインがステージの上で歌う姿がすてきで、すっかり熱中していました。『きらりん☆レボリューション』の中で一番好きなキャラクターは、男性アイドルグループ・SHIPSに所属する風真宙人でした。だって、宙人はかっこよすぎだし、優しすぎだし、ヒーローオーラが出まくりなんですもの(←オイ)。毎回、宙人とヒロインのきらりのラブシーンが出てくるたび、つい何回も観たくなってしまいます。

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