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  • 予防医学者の考えるコロナ危機から学ぶべきこと|石川善樹

    2020-07-13 07:00  

    今朝のメルマガは、イベント「遅いインターネット会議」の冒頭60分間の書き起こしをお届けします。今朝は、予防医学研究者の石川善樹さんをゲストにお迎えした「予防医学者の考えるコロナ危機から学ぶべきこと」です。世界的に拡大した新型コロナウイルス危機。予防医学の観点から、どのような対策が必要だったのでしょうか。そして、このパンデミックから私たちは何を学び、どう活かしていけばよいのでしょうか?(放送日:2020年6月9日)※本イベントのアーカイブ動画の前半30分はこちらから。後半30分はこちらから。
    【明日開催!】 7月14日(火)19:30〜「三権分立のパワーバランスはいかに再設定されるべきか(遅いインターネット会議)」(ゲスト:倉持麟太郎・玉木雄一郎) 著名人を含む多くの人々を巻き込み、SNS上で展開された「#検察庁法案改正案に抗議します」。今国会での成立は断念することになりましたが(5/19時点)、今後も改正のための議論は続けると政府は発表をしています。 そこで、今回の改正案の問題点はどこにあるのか、また、私たちはこの国の三権分立のあり方についてどう向き合うべきなのか、ゲストのお二人とともに議論します。 生放送のご視聴はこちらから!
    遅いインターネット会議 2020.6.9予防医学者の考えるコロナ危機から学ぶべきこと|石川善樹
    得能 こんばんは。本日ファシリテーターを務めます、得能絵理子です。
    宇野 こんばんは。評論家の宇野常寛です。
    得能 「遅いインターネット会議」。この企画では政治からサブカルチャーまで、そしてビジネスからアートまで、様々な分野のプロフェッショナルをお招きしてお届けしております。本日は有楽町にある三菱地所さんのコワーキングスペース、SAAIから放送しています。本来ですとトークイベントとしてこの場を皆さんと共有したかったんですけれども、当面の間は新型コロナ感染防止のため動画配信に形式を変更しております。
    宇野 いやー、この圧倒的なソーシャルディスタンス感、やばいっすね(笑)。
    得能 そうですね(笑)。やっぱりこのくらい離れるもんなんですね。
    石川 やりづらいっすね(笑)。
    得能 そうですね。このソーシャルディスタンスで議論盛り上がるのか、ちょっと心配ですね。
    宇野 でも恐るべきことに何回もやってると、慣れてくるんですよ。こんなことに慣れている自分がなんか疑問な感じすらありますけどね。まぁ、慣れてきます。
    得能 人間の適応力はすごいですね(笑)。では、本日のゲストをご紹介したいと思います。本日のゲストは予防医学研究者の石川善樹さんです。よろしくお願いします。
    石川 はい。よろしくお願いします。
    得能 本日のテーマは「予防医学者の考えるコロナ危機から学ぶべきこと」です。石川さんは予防医学研究者でありながら、組織論や幸福論であったり、広く社会に対して提言されていらっしゃると思います。その石川さんと共に現在のコロナ危機から人類全般が、人類社会が学んでいくことについて議論していきたいなと思っております。
    石川 でかいテーマでいいですね(笑)。
    宇野 やっぱり石川さんをお呼びするならでかいテーマじゃないとダメだと思ったんですよ。「具体的にどうウイルスを抑え込むのか」とか「具体的にどうすれば自粛解除できるか」とかそういった話も聞きたいけれど、それだけで終わるのはもったいないと思っていて。だから「コロナについて考える」ではなくて「コロナから考えること」について話し合うのがいいかなと思って今日はお呼びしました! よろしくお願いします!
    石川 いいっすね! よろしくお願いします。
    得能 はい。よろしくお願いします。それでは早速、議論に入っていきたいと思います。今日は大きく二部構成でお届けできればと思っております。前半は、予防医学研究者としての石川さんが今回のコロナ禍をどう分析されているのかをお伺いしたいと思っています。後半は、前半の議論を踏まえたうえで、これから訪れるウィズ・コロナの時代について考えていきたいと思います。「コロナから」というテーマのところですね。
    宇野 最初は、石川さんに今回のコロナ禍をどう分析しているか、お話を聞いたうえで、後半でコロナから考えたことについて深堀りしていこうかと思っています。
    予防医学史からみた新型コロナウイルス
    得能 最初の議題は「予防医学史からみた新型コロナウイルス」です。人類社会の歴史自体が、多くの疫病と闘ってきた歴史でもあると思うのですが、予防医学史において今回の新型コロナウイルスはどういう位置づけになるのか。この辺り、石川さんいかがでしょうか。
    石川 僕も、よく考えたらまだ言葉としてまとめたことはないんですけど、こういう感染症のパンデミックで印象に残っているのは、HIVエイズの時なんですよね。他にも鳥インフルとかエボラ出血熱とかいろいろありましたが、実は、HIVエイズの時に人類は重要な学びをしていて。「HIVエイズをなんとかするぞ」って、人も物も金も、多くのリソースを使い、結果としてHIVエイズの対策は進みました。でもHIVエイズ以外の対策が非常に遅れてしまったんですね。例えば、世界で今、一番人が亡くなっている原因って心臓病なんですけど、物流にしろ医療スタッフにしろ、HIVエイズ対策に行き過ぎてしまって、心臓病対策がアフリカで遅れてしまった。
     今回もそうですね。新型コロナウイルスのパンデミックがある一方で、隠れたパンデミックって言われるものがあって。生活習慣病の方々が医療機関受診を差し控えるってことが起きているんです。これは日本だけじゃなくて世界中で起こっていて、その結果、糖尿病とか高血圧が悪化している。どういうことかというと、パンデミックが起きた時ってその疾病対策にみんなすごいエネルギーを注ぐんですけど、ついつい、システム全体としてものごとを見る視点を失いがちになるってことなんですよね。
     HIVエイズの時に「疾病中心アプローチはもうやめよう」ってなったんです。もっとヘルスシステム全体でものごとを考えないと、局所最適になって、全体最適になっていかない。今回のコロナウイルスもそうだと思うんです。目の前の問題が起きた時は、そこに向けてみんな全力でリソースを集中させるんですけれども、そうするとシステム全体のほうが機能しなくなってしまう。こういった、システム全体で見たときにどうなってるのかという視点は、まだあまり議論されていないし、これから議論が起こっていくのかなと思いますけどね。
     予防医学史の観点から見ると、もともと予防医学は、病気と貧困と不衛生っていう、この悪のサイクルをどう断ち切るのかってところから始まってます。病気の人は貧困になるし、貧困の人は不衛生な状態になって病気になっていく、みたいな。
    得能 確かに循環してますね。
    石川 これが最初に目撃されたのが19世紀のロンドンなんです。人の上に人が住み、人の下に人が住むっていう。それまではこういう状態はなかったわけなんですけれども、「都市」という現象ですよね。そこで不衛生という問題が発生して、病気になり、また貧困に陥っていく。これを、どうシステムとして解決していくかというところから予防医学とか公衆衛生っていうのが始まっていきました。
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