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【根津孝太特集】根津孝太 × 宇野常寛 プロダクトデザインはいかに更新されるべきか(HANGOUT PLUS 10月24日放送分書き起こし)【『カーデザインは未来を描く』刊行記念】
2017-10-05 07:00
PLANETSのメールマガジンで人気連載だった根津孝太さんの『カーデザインの20世紀』が、大幅加筆修正を加えて、10月7日(土)に書籍として発売開始することになりました!刊行を記念して、著者の根津孝太さんに関連する記事を3日間連続でお届けします。2日目は宇野常寛がナビゲーターをつとめる「HANGOUT PLUS」、2016年10月24日放送回の書き起こしです。日本を代表するカーデザイナーとして、既存の枠組みにとらわれないユニークなプロダクトを次々と生み出し続ける根津さんの、発想の源泉はどこにあるのか、その秘密を語ります。
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宇野 それではメールを読んでいきましょう。
宇野さん、根津さん、こんばんは。クリエイティブな部分に興味があります。以前に私はミュージシャン(カッコつけでなく作曲をする方)に話を聞いたとき、「曲を作る時に立体物を想像して、そこから音にしていく」というのを聞いたことがあります。根津さんはプロダクトを作る際に別のものを想像してから変えていくようなことはありますか? もしくは創作の起点は何から始まりますか。(塩分控えめ 東京都 33歳)
根津 面白い質問ですね、僕は言葉の力が大きいです。立体を作っていく作業をするときに、ほかの立体を見てダイレクトに影響を受けるというのは……まあ、確かにそれもあるんですよ。たとえばzecOOは『AKIRA』や『トロン』に影響を受けているんですが、最近では、宇野さんとお話しするとか、そういうことが次の作品に繋がっていくんですよね。言葉には解釈の余地があって、そこからクリエイティビティを引き出されることがよくあります。楽しい話をした後に、そこから形を考える、モノを考えるということがすごく多くなりましたね。
▲zecOO
宇野 それを言われると評論家としてはプレッシャーが(笑)。僕としても作家の作ったものには、全力で打ち返さないといけないと思っていて。自分の評論に影響を受けて、それを上回る形で打ち返してきてくれたときが、評論家としては一番嬉しいですね。斜め上から「まさかこうくるか!」みたいなね。
根津 「批評性」という言葉を宇野さんが使われていて、僕はすごく感動したんです。自分の作り出したものについて、自分では見えていないことっていっぱいあるんですよね。それを言ってもらうことで、「じゃあ次こうしてみよう」みたいな再発見があるんです。今日だってそうですよ。そういうことが今は一番刺激になりますね。
宇野 もう1枚いきますかね。
宇野さん根津さんこんばんは。私は趣味と実益を兼ねて、普段の都内の移動を自転車で済ませています。都内ならば下手に電車に乗ったりタクシーに乗るよりも、自転車の方が早いことも多いです。夏場はつらいのであまり使っていませんでしたが、だんだんと涼しくなってきて、ちょうど自転車乗りとって気持ちのいい季節になってきました。根津さんはエンジンを積んだ乗り物のデザインを中心に手がけていると思うのですが、スポーツとモビリティの関係についてはどうお考えでしょうか? 根津さんのデザインした自転車があったら、ぜひ乗ってみたいと思っています。今夜の放送も、楽しみにしています!(よきこと聞く 東京都 30歳)
根津 ありがとうございます。実は自転車もいろいろやってるんですよ。
宇野 そうですよね、語ってますもんね。
根津 エンジンやモーターがついた乗り物をやるときでも、自転車の視点を忘れたくないんですよね。今の質問に関していえば、スポーツというのは幅広い年齢層の人にとって大事で、特に体が動かなくなってきた高齢者の方には、電動という方法もあるんですが、ちょっとアシストしてあげるとまた動けるようになったりするんです。移動とスポーツは本質的に近くて、自転車はそれが一致してる素晴らしいモビリティなんですよね。でも、外で自転車を乗り回すのは自信がないな、という人にはもう少し安定感のある乗り物にするとか。あるいは雨の日だと辛くなっちゃうので、屋根を付けてみるとか。そういう自転車から生まれてくる発想は、すごく大事だと思うんですよ。
宇野 なるほどね。自転車・電動自転車・三輪・rimOnO・軽自動車というふうにグラデーションになっていて、足りないところを根津さんが埋めていっているわけですね。
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HANGOUT PLUSレポート 宇野常寛ソロトークSPECIAL (2017年3月20日放送最終回)【毎週月曜配信】
2017-03-27 07:00
毎週月曜夜にニコニコ生放送で放送中の、宇野常寛がナビゲーターをつとめる〈HANGOUT PLUS〉。2017年3月20日の放送は、宇野常寛ソロトークSPECIALをお送りしました。(構成:村谷由香里)
※このテキストは2017年3月20日放送の〈HANGOUT PLUS〉の内容のダイジェストです。
突然の最終回と海外出張のお土産話
オープニングトークで重大発表がありました。HANGOUT PLUSは今回が最終回。4月からは木曜日に放送時間を移し、新番組としてリニューアルします。
最後のHANGOUT PLUSは海外出張のお土産話から始まりました。先週まで、台湾とシンガポールに出張していた宇野さん。台湾では國分功一さんと一緒に淡江大学で開かれたカルチュラル・スタディーズの学会に参加し、『君の名は。』『シン・ゴジラ』『この世界の片隅に』を比較しながら「震災後の想像力」について講演。中興大学の陳國偉准教授と対談しました。
初めて訪れた台湾の印象を「懐かしい感じがした」と語る宇野さん。特に講演を行った淡水の街は、昭和50年代頃の日本の匂いを感じたといいます。グローバルな消費文化が入り込んでいる首都・台北に対して、地方都市である淡水の人々にはある種の田舎臭さが残っていて、とても好感を抱いたそうです。
一方、猪子寿之さんと過ごしたシンガポールは、東京よりも洗練された都市だといいます。都市の空気や文脈を読まなくても、Google翻訳とUberとクレジットカードで全てが済んでしまう。言語に依存しなくても快適に過ごせる多民族国家ならではの環境を、宇野さんはかなり気に入ったようで、執筆作業に集中するための長期滞在に良いかもしれないと語りました。
淡水とシンガポール、対照的な二つの都市ですが、どちらにも共通していたのは、東京よりも暮らす人たちの顔が明るかったということ。海外を訪れたことで、改めて日本の閉塞感を実感したと宇野さんは振り返りました。
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HANGOUT PLUSレポート 猪子寿之×宇野常寛「teamLab in シンガポールSPECIAL」(2017年3月13日放送分)【毎週月曜配信】
2017-03-20 07:00
毎週月曜夜にニコニコ生放送で放送中の、宇野常寛がナビゲーターをつとめる「HANGOUT PLUS」。2017年3月13日の放送は、初の海外からの生中継でお送りしました! チームラボの常設展「FUTURE WORLD: WHERE ART MEETS SCIENCE」が公開されている、シンガポールのマリーナベイ・サンズのアートサイエンス・ミュージアム。閉館後の展示室でチームラボの代表・猪子寿之さんに60分間たっぷりお話を伺いました。1500平米の巨大展示空間作品が表すもの、そしてチームラボのこれからについて猪子さんはどのように語ったのでしょうか。(構成:村谷由香里)
※このテキストは2017年3月13日放送の「HANGOUT PLUS」の内容のダイジェストです。
2016年の敗北と、21世紀のアートに残された希望
今回の放送は〈HANGOUT PLUS〉初めての海外生中継! シンガポールにあるマリーナベイ・サンズのアートサイエンス・ミュージアムからのお届けです。昨年3月にスタートした、猪子寿之さん率いるチームラボの常設展「FUTURE WORLD: WHERE ART MEETS SCIENCE」。3月14日からの展示リニューアル直前のタイミングに生放送を行うことができました。閉館後、15の展示作品のひとつである「お絵かきタウン」の前で猪子さんご本人に直接お話を伺うという豪華な内容です。本メールマガジンの連載〈人類を前に進めたい〉でも毎月対談をしている猪子さんと宇野さん。今回も対談の和気藹々とした雰囲気を彷彿とさせる放送となりました。
宇野さんはチームラボの作品を含めた21世紀のアートを語る前提として、2016年に人類が迎えた敗北について解説します。イギリスのEU離脱とトランプ大統領の当選で大きく世の中の価値観が揺らいだが、その内側には二重の敗北があった。一つは20世紀の政治的なリベラリズムの出した最適解としての多文化主義の敗北。もう一つはカリフォルニアンイデオロギー、つまり政治的なアプローチではなく、グローバルな市場に商品やサービスを投下することで世界を変える思想の敗北です。ブレグジットもトランプも、カリフォルニアン・イデオロギーの推進する「境界のない世界」への反動であり、こうして政治的なアプローチも、経済的なアプローチも絶望的な状況になった今、残された希望はアート、つまり文化的なアプローチだけである。その希望の中心にチームラボがあるのではないかと評します。
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HANGOUT PLUSレポート 稲田豊史×宇野常寛「『ドラえもん』から考える日本社会――のび太系男子の魂はいかにして救済されるべきか」(2017年3月6日放送分)【毎週月曜配信】
2017-03-13 07:00
毎週月曜夜にニコニコ生放送で放送中の、宇野常寛がナビゲーターをつとめる「HANGOUT PLUS」。2017年3月6日の放送は、PLANETSのメルマガの人気連載から生まれた書籍『ドラがたり のび太系男子と藤子・F・不二雄の時代』の発売を記念し、著者の稲田豊史さんをゲストにお迎えしました。大長編を中心に『ドラえもん』について徹底的に語り明かした60分の様子をダイジェストでお伝えします。(構成:村谷由香里)
※このテキストは2017年3月6日放送の「HANGOUT PLUS」の内容のダイジェストです。
大長編の困難と藤子・F・不二雄の達成
今回のテーマは『ドラえもん』です。ゲストは、3月4日にPLANETSから発売されたばかりの新刊『ドラがたり のび太系男子と藤子・F・不二雄の時代』の著者・稲田豊史さんです。SF作家としての藤子・F・不二雄の作家論から、『ドラえもん』で育った「のび太系男子」の病理まで、硬軟取り混ぜてお届けする『ドラえもん』づくしの一冊です。PLANETSのメールマガジンでの連載を楽しみにしていた人も多いのではないでしょうか。
この回はゲストの稲田さんと宇野さん――まさに「のび太系男子」世代のふたりの間で、『ドラえもん』にまつわる熱いトークが繰り広げられました。
たとえば稲田さんは、藤子・F・不二雄の本質は短編作家であると指摘します。基本8ページという厳しい制約の中で、独創的なひみつ道具を出し、オチをつけて物語をまとめる手腕おいて、藤子・F・不二雄は卓越していた。その短編の名手が、不得手な長編に挑んだのが劇場版大長編であり、初期の作品こそ、蓄積された経験と翻案能力をもとに傑作を連発したものの、晩年は苦戦を強いられていたと語ります。
そもそも、『ドラえもん』を大長編として描くことにどのような困難があるのでしょうか。ふたりは大きく二つを挙げます。
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HANGOUT PLUSレポート 宇野常寛ソロトークSPECIAL(2017年2月27日放送分)【毎週月曜配信】
2017-03-06 07:00
毎週月曜夜にニコニコ生放送で放送中の、宇野常寛がナビゲーターをつとめる「HANGOUT PLUS」。2017年2月27日の放送は、月に一度の宇野常寛ソロトークSPECIALをお送りしました。前半は2月24日に発売された村上春樹の新作長編『騎士団長殺し』のネタバレ全開レビュー、後半ではシークレットゲストとして濱野智史さんをお迎えし、対談「〈沼地化した世界〉で沈黙しないために」に続く議論を展開しました。(構成:村谷由香里)
※このテキストは2017年2月27日放送の「HANGOUT PLUS」の内容のダイジェストです。
村上春樹の新作『騎士団長殺し』レビュー
オープニングトークは、2月24日に発売されたばかりの村上春樹の最新作『騎士団長殺し』のレビューです。
宇野さんは春樹作品の変遷を、「〈デタッチメント〉から〈コミットメント〉へ」という主題で整理します。初期の村上春樹は、「やれやれ」という独白に象徴される〈デタッチメント〉の姿勢――あらゆる価値観から距離をおく、自己完結的なナルシシズムを特徴的な作風としていましたが、1995年の地下鉄サリン事件と、それに取材した『アンダーグラウンド』(1997年)以降は、主体的に世界と関わる〈コミットメント〉の立場へと転向します。そして、オウム真理教をモチーフにした長編『1Q84』(2009-2010年)は、その集大成となるはずの作品でしたが、第3部(BOOK3)になるとカルト教団との対決というテーマは後退し、主人公たちの邂逅や父親との和解が描かれて物語は収束。〈コミットメント〉の問題は消化不良のまま終わりました。
とはいえ、宇野さんは今作には期待していたといいます。過去の春樹作品では、世界と接続する〈回路〉や〈蝶番〉の役割は女性に与えられていたが、それが短編集『女のいない男たち』(2014年)では、より他者性の強い男性に置き換えられていた。そこに新しい主題の萌芽を見ていました。
しかし、本作『騎士団長殺し』は、従来の春樹的な主人公像を延命するためだけの小説になっていると批判します。行方不明の少女の捜索を老人に依頼された主人公が、幼少期に亡くした妹に似た少女を救うことで自信を取り戻し、別れていた妻との復縁に成功するという筋ですが、そこから主人公の〈成熟〉を読み取ることはできない。〈最初から与えられていたものの回復〉という意味で、『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』(2013年)と同様、熟年世代の「自分探し」の物語にすぎず、作者ほど自己愛の強くない人間はついて行けないといいます。
さらに、本作において重要なのは、実は主人公と少女や妻の関係ではなく、依頼者の熟年男性・免色渉との関係だったといいます。主人公の分身であり同時に他者でもある同性との交流によって、世界に対する想像力を開く、いわばBL的な主題にこそ作品のポテンシャルがあったのではないかと指摘しました。
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HANGOUT PLUSレポート 西野亮廣×宇野常寛「なぜ、この国は西野亮廣の一挙一動に怯えるのか」(2017年2月20日放送分)【毎週月曜配信】
2017-02-27 07:00
毎週月曜夜にニコニコ生放送で放送中の、宇野常寛がナビゲーターをつとめる「HANGOUT PLUS」。2017年2月20日の放送では、お笑い芸人の西野亮廣さんをゲストにお迎えしました。絵本『えんとつ町のプペル』が25万部を突破し、その宣伝手法や炎上を恐れない言動に注目が集まる西野さんに、ご自身の活動に対する思いやこれから展望についてお聞きしました。(構成:村谷由香里)※このテキストは2017年2月20日放送の「HANGOUT PLUS」の内容のダイジェストです。
『えんとつ町のプペル』騒動を総括する
2人の話題は『えんとつ町のプペル』無料公開をめぐる一連の騒動からスタートします。
西野さんに寄せられた「無料公開はエンタメの価格破壊を引き起こす」という批判に対して、宇野さんは「コンテンツの価値が限りなくゼロに近づく現象は、インターネットが登場した瞬間から宿命付けられていた」とし、その批判の根底にあるのは、既存のシステムとルールが通用しなくなることへの人々の〈怯え〉である。その〈怯え〉をいかに解除していくかを考えなければならないとします。
西野さんは、『プペル』の無料公開に踏み切ったきっかけとして、子供の絵本を選ぶ親は必ず最後まで立ち読みしてから購入するという話を聞き、それなら自宅でも無料で読めるべきだと考えたそうです。無料公開は当初、出版元である幻冬舎の上層部の許可を取っておらず、もし自分の意図が理解されなかったら縁を切る覚悟で敢行したといいます。
宇野さんは一連の炎上騒動について、ブログ論壇やTwitterのオピニオンリーダーは炎上によって支持を集めたが、そのほとんどが揚げ足取りやツッコミに終始していた。しかし西野さんは、炎上マーケティング的な手法を利用しながらもクリエイティブな活動を見失わない。なぜ西野さんだけが、他人へのツッコミを売りにしないキャラでいられるのか、と問いかけます。
それに対して西野さんは、最近になってテレビでコメンテーターをする芸人が増えたのを見て、自分はツッコまれる側に立つことを決めたといいます。ツッコミたい人で溢れている社会では、ツッコまれる側に回った方が効率がいい。強度ある作品を作っているのだから、自信を持ってサンドバッグになった方が得られるものが多い、と。
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HANGOUT PLUSレポート 森直人×宇野常寛「日本映画は復活するか――〈川村元気以降〉を考える」(2017年2月13日放送分)【毎週月曜配信】
2017-02-20 07:00
毎週月曜夜にニコニコ生放送で放送中の、宇野常寛がナビゲーターをつとめる「HANGOUT PLUS」。2017年2月13日の放送では、映画評論家の森直人さんをゲストに迎えました。『君の名は。』などのヒット作が続き日本映画復活の年といわれた2016年。しかし映画界の業界構造は以前のまま、ブームはアニメと川村元気作品に支えられている状態です。日本映画の現在と未来について、2人の間で熱い議論が交わされました。(構成:村谷由香里)
※このテキストは2017年2月13日放送の「HANGOUT PLUS」の内容のダイジェストです。
川村元気は日本映画の何を変えたのか
2人の議論は、2016年のキネマ旬報ベストテンから始まります。上位10位内にランクインした川村元気プロデュース作品は、10位の『怒り』のみ。通例のベストテンなら本作品は1位になってもおかしくないとする森さんは、2016年の日本映画を「佳作は驚くほど大量にある。しかし突出した作品のない団子状態」と評します。
森さんによると、この日本映画の充実の端緒は、中・小規模やインディペンデント作品で『SRサイタマノラッパー2』『さんかく』『川の底からこんにちは』といった若手監督の注目作が次々と公開された2010年にあり、東宝の川村元気作品でいえば同年の『告白』と『悪人』が象徴的に巨大なインパクトを残した。そして、2010〜11年の『告白』『悪人』『モテキ』のそれぞれに対応するのが、2016年の『君の名は。』『怒り』『何者』であり、この6年間で川村元気作品は成熟を迎えたが、それは一方で「緩やかな後退」でもあったかもしれないといいます。
宇野さんは、2000年代前半の日本映画は、『ウォーターボーイズ』(2001年)の成功をモデルとした「メジャーと単館の中間でスマッシュヒットを狙える」という夢を見ていた時代がまずあり、その夢が一度破綻したあとに出現したのが東宝という大手配給会社の内部で前衛的な作品制作を試みる川村元気プロデューサーだったと指摘します。
そして2010年というターニングポイントにおける川村元気のプロデュース作『告白』の重要性を訴えます。中島哲也監督によるCM的・PV的なカットの「つながらない」演出は、映画評論家の間では賛否両論だったが、それは日本映画の射程距離を更新しようとする試みであったと評価します。しかしその一方で2016年の川村元気作品にはこうした射程を持ち得た作品はなかったという批判を加えます。
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HANGOUT PLUSレポート 松浦茂樹×宇野常寛「ネットジャーナリズムに希望はあるのか」(2017年2月6日放送分)【毎週月曜配信】
2017-02-13 07:00
毎週月曜夜にニコニコ生放送で放送中の、宇野常寛がナビゲーターをつとめる「HANGOUT PLUS」。2017年2月6日の放送では、スマートニュースの松浦茂樹さんをゲストに迎えました。ライブドアやハフィントン・ポストを経てネットジャーナリズムの様々な側面を見てきた松浦さんと、日本のインターネットとジャーナリズムの未来について議論しました。(構成:村谷由香里)
※このテキストは2017年2月6日放送の「HANGOUT PLUS」の内容のダイジェストです。
インターネットジャーナリズムはどこで希望を失ったのか
スマートニュースの松浦さんを迎えての議論は、「インターネットジャーナリズムはどこで希望を失ったのか」という宇野さんの疑問から始まりました。
2000年代前半のネットは、テレビや新聞とは別の問題設定ができる弁論の場であり、それを武器に既存のマスメディアに対抗していこうする機運があった。だが今やネットは、マスメディアを補完する最大の支援者となってしまった。ワイドショーや週刊誌が設定した炎上ネタに一緒になって石を投げる今のネットは、90年代以前のマスメディアが支配的だった時代への回帰であり、堕落にしか見えないと、宇野さんは強く批判します。
松浦さんは、今の状況を招いた分水嶺として、ソーシャルメディアの登場を挙げます。ソーシャルメディア以降のネットメディアは、情報の生産だけでなく流通をさらに担うようになったことで、コミュニケーションを介した伝播や拡散に注力するようになった。しかし、人々への絶大なリーチ力を持つ「巨大な土管」であるテレビに比べ、多様な分だけ情報網が細いネットの世界で波及力を強めようとすれば、人々の共感力に訴えるしかなく、より強い刺激を求めて、表現はどんどん過激化していったといいます。
宇野さんはネットメディアを革袋にたとえます。これまでは「良い革袋を作れば良い酒が湧いてくる」という発想のもと、中身よりも媒体を作ることに力が注がれてきた。キュレーションサービスであるスマートニュースにも「ネットは良質な情報を生成する」という強い確信があり、その根底には、創業者である鈴木健さん【注1】の「情報を繋ぐことで断絶に満ちた世界をなめらかにする」という思想がある、と指摘します。
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HANGOUT PLUSレポート 古谷経衡×宇野常寛「ネット右翼の治し方」(2017年1月30日放送分)【毎週月曜配信】
2017-02-06 07:00
毎週月曜夜にニコニコ生放送で放送中の、宇野常寛がナビゲーターをつとめる「HANGOUT PLUS」。2017年1月30日の放送では、文筆家の古谷経衡さんをゲストにお迎えしました。著書『ネット右翼の終わり』でネット右翼を批判的に分析している古谷さんと、社会はどのようにネット右翼と向き合うべきなのかを議論しました。(構成:村谷由香里)
※このテキストは2017年1月30日放送の「HANGOUT PLUS」の内容のダイジェストです。
ネット右翼の保守ならざる本質とは?
15年ほど前から大手テキストサイトの管理人同士、ネットを介した知り合いだったという古谷さんと宇野さん。実際に会うのは今回が初めてですが、ともに地元が北海道で立命館大学卒という共通点でひとしきり盛り上がった後に、現在のネット右翼現象について意見が交わされました。
古谷さんは、ネット右翼は自らを「戦後民主主義という病が治った存在」であると考えており、自分たちを批判する側の方が病気に見えているといいます。さらに、彼らの言動は、保守系言論人の発言のオウム返しにすぎず、本当の問題はネット右翼ではなく、彼らに理屈を与えている保守系言論人にあるといいます。
この保守系言論人は2000年以降、急速に数を増やしたそうですが、その契機となったのが、2004年設立の「日本文化チャンネル桜」で、それまで限られた場所で活動していた保守系言論人は、ニコニコ動画やYouTubeによって言説を広める機会を得たことで、多くの視聴数を獲得し、それにともない発言の内容も過激化していったということです。
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HANGOUT PLUSレポート 宇野常寛ソロトークSPECIAL(2017年1月23日放送分)【毎週月曜配信】
2017-01-30 07:00毎週月曜夜にニコニコ生放送で放送中の、宇野常寛がナビゲーターをつとめる「HANGOUT PLUS」。2017年1月23日の放送は、宇野常寛ソロトークSPECIALをお送りしました。メールテーマは「旅の話」。好評の「PLANETSライブラリー」のコーナーでは、『ジ・アート・オブ・シン・ゴジラ』を含む3冊をご紹介しました。(構成:村谷由香里)
※このテキストは2017年1月23日放送の「HANGOUT PLUS」の内容のダイジェストです。
1月23日放送のHANGOUT PLUSの動画アーカイブはこちらからご覧いただけます。
評論家の宇野常寛がナビゲーターとなり、政治からサブカルチャーまであらゆる角度から「いま」を切る取るトーク番組、「HANGOUT PLUS」の番組情報はこちら。
「HANGOUT PLUS書き起こし」これまでの記事はこちらのリンクから。
前回:HANGOUT PLUSレポート 坂口孝則×宇野常寛「日本人はこれから何にお金を落とすのか」【毎週月曜配信】
宇野さんが旅先で大事にしていることは?
月に一度のソロトークSPECIALは、宇野さんの近況報告からスタートしました。今年は月に一度のペースで一人旅をするのが目標と語る宇野さん。年末に大林宣彦監督の映画を見直したのをきっかけに、さっそく週末に「尾道三部作」の舞台となった広島県尾道市へ旅行してきました。
ということで、今回のメールテーマは「旅の話」。旅にまつわるさまざまなエピソードがリスナーから寄せられますが、その中に「ガイドブックに載ってる観光地を巡る旅には疑問を感じる」という声がありました。
実は、宇野さんも観光地が苦手。「絵葉書で知った観光地を訪ね、その場でウィキペディアを引く」旅は「ちょっと手の込んだ読書のようなもの」だといいます。旅の価値は、自分と違う生活をしている人々の存在を知ることであり、異郷での生活によって世の中の見え方が変わるような体験を大事にしている。だから、地元の人が使うレストランやスーパーも積極的に訪れるし、その土地の人々の文化や環境、生活リズムをできるだけ味わうようにしているとのこと。結局、その土地のことは腰を落ち着けて生活してみなければわからない。もし自分が住み着いたらどんなことを感じるのか。そのシミュレーションとして旅を捉えている、と宇野さんは語ります。
そこで考えているのがメルマガの新企画「観光しない京都ガイド」。宇野さんが学生時代に住んでいた京都について、あえて観光地は一切紹介せずに、「まるで住んでいるかのように」地元の人の通うレストランやお店、面白い場所を巡るためのガイドを作って、観光とは違った旅の醍醐味を伝えてみたいそうです。
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