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記事 9件
  • 宇野常寛 NewsX vol.18 ゲスト:岸本千佳 不動産で都市を編集する

    2019-02-12 07:00  
    540pt

    宇野常寛が火曜日のキャスターを担当する番組「NewsX」(dTVチャンネル・ひかりTVチャンネル+にて放送中)の書き起こしをお届けします。1月15日に放送されたvol.18のテーマは「不動産で都市を編集する」。不動産プランナーの岸本千佳さんをゲストに迎え、古い建物のリノベーションによって地域に変化を生み出す試みや、京都や和歌山といった地方都市の中心街に住人を呼び戻す、新しい取り組みについてお話を伺いました。(構成:籔 和馬)
    宇野常寛 News X vol.18 「不動産で都市を編集する」 2019年1月15日放送 ゲスト:岸本千佳(不動産プランナー) アシスタント:得能絵理子
    宇野常寛の担当する「NewsX」火曜日は毎週22:00より、dTVチャンネルで生放送中です。 番組公式ページ dTVチャンネルで視聴するための詳細はこちら。 なお、弊社オンラインサロン「PLANETS CLUB」では、放送後1週間後にアーカイブ動画を会員限定でアップしています。
    立地を考え、建物をリノベーションする
    得能 NewsX火曜日、今日のゲストは不動産プランナー、岸本千佳さんです。岸本さんは京都生まれで、addSPICEという京都に拠点を置く会社の代表でもあります。宇野さんにとっても京都は馴染深い場所だと思うんですけども、接点はそのあたりからですか?
    宇野 いや、そうではなくて、岸本さんは3年くらい前に著書『もし京都が東京だったらマップ』という本を出されていて、それを読んだのが初めて岸本さんを知ったきっかけなんですよね。その本では、京都の大宮は東京でいう赤羽というように、京都の地名を東京の地名で例えていて、東京に住んでいて京都に馴染みがない人に京都を親しみやすく説明する本として話題になっていたんですよ。若いけどどんな人なんだろうと思って検索してみると、京都でおもしろい取り組みをしていて、プロデュースしている建物にはリノベーションの物件が多いんですね。それも単に古民家を綺麗にしてカフェにしましたみたいな話だけではなくて、このエリアにはこういった建物を建てると、この街が位置付けていた文脈が変わるみたいなことをしっかりプロデュースされているんです。その取り組みで、地方都市や京都のような歴史のある街をプロデュースしていくのはおもしろいと思って、うちのメールマガジンに出てもらったり、紙の雑誌で取材したりして仕事をさせてもらっています。
    ▲『もし京都が東京だったらマップ』
    ▲『PLANETS vol.10』
    得能 今日、岸本さんと一緒に考えるテーマは「不動産で都市を編集する」です。
    宇野 土地や建物を通じて、どう街をプロデュースしていくのか。地方創生とか散々言われているじゃないですか。町おこしや文化をどうしようとか、ゆるキャラをつくるとか、伝統芸能を若い人に無理やりやらせてみるとか。あるいは、もうちょっと経済誌的な話で、グローカル戦略でベンチャー企業を誘致しましたとか、元々ある伝統工芸をちょっと外国に売ってみようとか、そういった話ではなくて、実際に僕たちが住んでいる空間を変えることによる町おこしを彼女はやっている。そういう視点から都市を、特に地方について議論してみたいなと思ってお呼びしました。
    得能 今日もキーワードを三つ出していきます。まず一つ目は「不動産プランナーというお仕事」です。
    宇野 岸本さんの肩書きの不動産プランナーってあまり耳慣れないじゃないですか。
    岸本 自分で名づけたんです。
    宇野 だから、検索しても、岸本さんしか出てこないんですよね。そのこと自体が岸本さんの活動のコンセプトをすごく表していると思う。そこから入っていきたいと思うんですね。
    岸本 そもそも名づけようと思ったきっかけは、テレビに出たときに肩書をフリーランス不動産業と勝手につけられていて、これではまずいと思ったんです。それがすごく叩かれたりして、いろいろあったので、自分でつけたほうがいいなと思って、今の自分の仕事を形容した肩書きを考えて「不動産プランナー」にしました。
    宇野 具体的にはどういうことをされているんですか?
    岸本 建物のプロデュースなんですけど、建物を持っている大家さんから相談を丸投げにされて、お金のことなども考えながら企画を提案して、設計と工事を一緒にチームを組んで作って、借りる人を自分で見つけてきて、運営するという一連の流れをしています。設計や建築の人は作って終わりなんですが、私は使うところまで考えてやっています。
    得能 めちゃくちゃ大変そうですね。ただ作って終わりではないんですね。
    岸本 だから、関わっている期間は長いですね。
    宇野 逆にそこまでやらないと、本当にコンセプチュアルな街づくり、建物を通した街づくりはたぶんできないんだと思うんだよね。
    岸本 一貫して関わらないと、最初に考えたコンセプトがいつの間にか消えて、全然想定していなかった人が使っているようなことになるんです。それがこの仕事をしようと思ったきっかけではありますね。
    宇野 設計事務所や建築業の人たちは作るところまでが自分の仕事で、運用はオーナーや実際にテナントに入った人におまかせいうことに、全部ではないかもしれないけど、結果的にどうしてもなっちゃう。アトリエを持っているような個人の設計事務所の人の中には、こういうふうに使ってほしいと希望を持ってつくる人も多いんだよ。でも、なかなかそこまで管理ができないし、逆に不動産屋はいかに坪単価を上げるか、坪あたりの家賃を上げるかしか考えていない。そのことが街の長期的なブランディングにどう影響するのかとか、どんなテナントさんを入れると、その建物の価値が最大化するのかを建っている場所や建物の特性を踏まえて考えるところまで、なかなか踏み込まないわけ。だから、リノベするところから出るところまで、ちゃんとしたコンセプトでやるのが今すごい必要。岸本さんはそれをやっているところにアドバンテージがあると思うんだよね。
    岸本 出口を考えないといけませんからね。借りる人や使う人を見つけないと仕事のゴールがないんです。なので、エリアのことも考えて、絶対に需要があるものをつくらないといけない。そんなプレッシャーと日々戦っている感じですね。
    得能 ほかに楽な道はたぶんあって、今やられているようなことをしなくてもいいのかなという気も勝手にしているんですけども、あえて苦労する道を進もうと思われたきっかけは何かあるんですか?
    岸本 やっぱり建物を最初から最後まで見届けないとすっきりしないのと、みんなが使っている状態が自分の中の完成のイメージかなとなっています。ピカピカの建物が完成しましたというのは、自分の中の完成ではないなというのを前職のときに思っていて、それで仕事にしようかなと考えましたね。
    宇野 ちなみに新築じゃなくて、リノベーションにこだわっているのは、どんな理由があるんですか?
    岸本 こだわっているわけではないんですが、京都で仕事をすると建物を活かす仕事が多いのと、もともと京都で育っているので、昔ながらの建物を活かしたいという想いが自然と自分の中に備わっていた感じですね。
    宇野 リノベーションは、それこそ十年ぐらい前から日本でブームになってきたじゃないですか。たとえば、東京でいうとセントラル・イースト・トーキョーとかですよね。東京の東側のオフィスビルはだんだん空き家になってきているから、そこをアーティスト・レジデンスみたいな感じでリノベしようという動きがあって。それがどこまで成功したかは横に置いておいてね。そういったリノベブームがどんどん地方に波及していっていると思うんですよ。その中で自分の仕事をどう位置づけているんですか?
    岸本 そういうリノベーションのブームが日本にあって、次に第二波、宇野さんはよく「リノベ第二世代」というんですけど。それで考えることとしては、やっぱりただひとつの建物を綺麗に素敵にすればいいというよりは、今後そのエリアをどうにかしていくためのアイテム、不動産やリノベーションを手段として街をつくっていくのに使えたらなという気持ちでやっていますね。
    宇野 初期のリノベーションは、バブルの贖罪だったと僕は思うんですよね。自分たちが作っては壊しをやりすぎてしまったと。そこでリノベーションという武器を手に入れることで、街への視線を切り替えてみようという運動だったと。ただ岸本さん世代は、そこと似ているようでちょっと違っていて、やっぱり最初に地域ありきで、自分たちが好きな地域のエリアのアドバンテージを活かすために手を入れていこうという発想なんだよ。そこには街にコミットメントする動機のレベルで差があると思うんですよ。
    岸本 最近は街に対して抱いている課題などを圧倒的な企画書としてつくっていて、物件がきたら、それに当て込むことをやっていますね。
    宇野 やっぱり最初にエリアありきなんですね。
    岸本 だから、そこで考えていることを建物で表現する、そのアウトプットのかたちとして不動産は使えるんじゃないかなと最近思っています。
    リノベーション建築で「京都らしさ」を取り戻す
    得能 次のキーワードは「これからの京都の話をしよう」です。
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  • 岸本千佳『都市を再編集する』第6回 新しい拠点・和歌山で実現する「まちなか暮らし」

    2018-10-10 07:00  
    540pt

    不動産プランナーの岸本千佳さんによる連載『都市を再編集する』。結婚を機に京都と和歌山の二拠点生活を始めた岸本さん。多くの地方都市と同様、中心部のシャッター街化が進む和歌山ですが、地域の魅力を知ることにより、街を草の根から活性化するリノベーションのアイディアが湧き出てきます。
    京都と和歌山での二拠点生活のはじまり
    これまでは、実際にリノベーションした実例を中心に紹介してきましたが、今回、こらからはじめようとしているプロジェクトの話です。ゆえに、妄想が多めに混じりますこと、お許しください。
    実は私、これまでいかにも京都人のような振る舞いで、京都という街においての、京都のプロジェクトについて語ってきましたが、今年4月から、和歌山との二拠点生活をはじめています。結婚を機にとはいえ、まさに青天の霹靂。同じ関西と言えど、和歌山市内に足を踏み入れたのは、仕事で呼ばれた一度きりでした。 私に限らず、日本では結構な確率で、夫婦のどちらかが、結婚を機に見知らぬ地に住むことがあると思います。しかも、夫が仕事の都合上、和歌山を離れることができないので、せっかくだったら和歌山でも仕事をつくりたい。何ができるだろうか。未踏の地に住むことは不安でしかなかったですが、その地で仕事を始める見通しが立つまで時間はかからなかったおかげで、不安は希望へと変わりつつあります。

    まずは、これまでのプロジェクトでそうしてきたように、和歌山のまちで肌感覚での状況把握に徹しました。4月から暮らしはじめて真っ先に感じたことは、とにかく飲食店が多く、しかもそのレベルが高いこと。海が近く素材が良いことはもちろん挙げられますが、進学せずに地元で独立する業種として真っ先にあがる職種が飲食店という事情もあるようです。他には、美容室や中古車販売が目立ちます。それは和歌山だけでなく、地方中核都市でも同じような状況でないでしょうか。それにしても、日々閑散としたまちなかに比して、飲食店数が圧倒的に多い。
    和歌山市は、「リノベーションまちづくり」という考え方が広く根付いているまちでもあります。リノベーションまちづくりとは、遊休不動産や公共空間を活かして、民間が主体となり新しい使い方を発明することで、都市型産業の集積を図り、雇用の創出やコミュニティの活性につなげていく手法です。
    その実践の場として、北九州市を皮切りに「リノベーションスクール」というものが開催され、今や全国で、不動産の再生を通じて新しいビジネスが生み出されています。私もユニットマスターと呼ばれるコーチ役として、全国で事業を地元の人が事業づくりをサポートしています。ちょうど1年前も、和歌山市を担当しました。 和歌山市は特に盛んで、この6年間で17件の事業が生まれています。そこで生まれた事業でも、やはり飲食を中心とした事業が多く存在します。
    ▲和歌山の堀(水辺)を活かしたバー
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  • 岸本千佳『都市を再編集する』第5回 ありふれた倉庫を「自分の城」につくりかえる

    2018-09-12 07:00  
    540pt

    不動産プランナーの岸本千佳さんによる連載『都市を再編集する』。今回は、岸本さんが自身の事務所のために行ったリノベーションです。人づてに舞い込んできた、微妙な立地の業務用倉庫の案件。決してポジティブではない諸条件をプラスに転換すべく、岸本さんの「再編集」が始まります。
    何の変哲もない倉庫に潜む新しい価値
    前回までは、建物の所有者から依頼が来て、プロジェクトがスタートしましたが、今回は、はじめて自らリスクを取ってスタートしたプロジェクトです。金額も規模も小さいですが、小さく始めることが大事だと心がけています、何事も。
    2015年夏、間借りをしていた事務所を出て、そろそろ自分の城をつくろうと考えていました。ここは不動産屋という身分を存分に生かしてお得な物件を借りて、プランナーらしく、せっかくなら自分を実験台に、他人の物件ではできない何か面白いことをしてみたい。 場所や家賃といった条件はかなり広範囲に、ぼんやりと考えていました。広ければ誰かに貸したり、シェアできる人を見つければいいと思っていたからです。 そんな矢先、知り合いの工務店さんから「物件を見に来てほしい」と電話がありました。これまでも何度か物件の相談を受けている工務店さんで、私の運営している物件メディアに掲載する、もしくは活用のアイディアがあれば企画から入る。内見時は、そのどちらも可能性があります。なんでも、工務店自身が使っている「倉庫」とのこと。物件は例えば事業用(店舗など)の場合、住居よりも通常高い賃料だったり、用途によって金額が決まってきます。その中でも倉庫は最底辺。 だけど、使う側にしてみれば、不動産屋と大家で決めた用途が必ずしもハマるわけではない。私は、駐輪場バーや木賃アパートのシェアアトリエのこれまでの経験から、「用途に惑わされず、ピュアな眼で空間だけを見る」ことの重要性を知っていました。

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  • 岸本千佳『都市を再編集する』 第4回 お年寄りと若者による新しいシェアハウスのかたち

    2018-08-09 07:00  
    540pt

    不動産プランナーの岸本千佳さんによる連載『都市を再編集する』。東京と違い、地方ではなかなか上手く行かないシェアハウスですが、今、お年寄りと学生が同居する新しいタイプの取り組みが始まっています。今回は岸本さんが京都で手がけたマッチングの事例をご紹介します。
    地方都市のシェアハウスの困難
    今回は、建物のリノベーションではなく住まい方のリノベーション。つまり、これまでの住み方にはない住み方を事業として進めているというお話です。
    私が東京から京都へ帰ったのは5年前。東京ではシェアハウスをたくさん作ってきました。東京のシェアハウスは、さまざまな人を享受する受入皿として非常に効果のある住まい方でした。たとえば、チャレンジしたいことがあって上京したいけど、賃料は抑えたい人。ストーカー被害に遭って一人では住めない人。シェアハウスはリア充の巣屈のように思われがちですが、私の中でのシェアハウスは「楽しくて明るいシェルター」のような存在でした。 東京でシェアハウスを作っていた経験から、京都でも、前職と共同してシェアハウスを作りました。女性専用の新築物件で家賃は6万円程、しかも京都の市街地の真ん中で利便性も良い物件でした。東京でもあれだけ需要のあるシェアハウスだから、京都でも大丈夫だろうと思っていたのですが、これが落とし穴。予想以上になかなか入居者が見つかりませんでした。時を同じくして、下鴨神社近くの家賃3万円のシェアハウスで、ものづくりをコンセプトにした物件の管理を行っていました。最寄りの電車の駅からは徒歩20分、絶望的な立地でしたが、なんと、後者の方が明らかに人気があったのです。私がこの失敗から身をもって学んだことは、東京で成立した事業がどの街でも通用するわけではない。その街その街に合った事業を組み直さないといけない、ということ。実際、地方都市でのシェアハウスの事例を一通り調べてみましたが、大学などと提携の無い限り、ほとんどがうまくいっていないという事も判明しました。
    高齢者と大学生が同居する住まい
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  • 岸本千佳『都市を再編集する』 第3回 街を変えるための「共犯者」を見つけ出す

    2018-07-03 07:00  
    540pt

    不動産プランナーの岸本千佳さんによる連載『都市を再編集する』。今回紹介するのは、京都の中宇治エリアを、地元民や観光客に愛される街にするためのプロジェクト。その中心となる小商い複合施設の立ち上げの鍵となるのは、一緒に街を変えていく「共犯者」を探すことでした。
    中宇治エリアを変えるための五箇年計画
    この連載も、早くも第3回になりました。今回は、京都は宇治の町家+建具工場のリノベーション。しかも建物単体でなく、エリアにリノベーションが波及するプロジェクトの紹介です。
    私のもとに来る相談は、「○○を作ってほしい!」と用途がはっきり決まっているものより、「この空き家を何とか活用したい。こういう想いを汲み取ってほしい。」というような相談が多いです。 今回も、「若い人の実験的な出店と地域の人たちの交流拠点にしたい。うまくいけば、ここを拠点として、このエリアの空き家再生へと繋げていきたい。」そうオーナーさんから一本のメールが来たのがはじまりでした。
    ▲宇治川からの風景。昔の貴族も、この風景に惚れ込んだのでしょうか。
    舞台は宇治。京阪宇治駅とJR宇治駅の間、平等院に近い旧市街地の「中宇治」と呼ばれるエリア。中宇治は、古くからお商売をしている地元の方が多く、ヨソモノが入りにくいエリア。ゆえに、雰囲気のある路地や町家がひっそりと残っています。実は、私は宇治の郊外出身なのですが、サラリーマン家庭で育った私にとって、ここ中宇治は近いようで遠い存在でした。
    ▲古い町並みの残る中宇治のエリア
    宇治と言えば、お茶を思い浮かべる人が多いと思いますが、平等院の参道は、観光客向けのお茶関連のお店ばかり。別の商店街は、夜は閑散としています。住居が多いにも関わらず、地元の人が美味しいものをゆっくり食べられる店が無く、結果的に観光客に媚びた街となってしまっていました。
    そこで、オーナーさんやまちづくりが専門の大学教授、商店街の会長さんなどで構成されるプロジェクトメンバーで何度も話し合い、今回の案件は「地元の人に長く愛される場所」であり、「大人の女性が通う場所」をつくろうとなりました。
    また、依頼のメッセージにもあったように、建物単体のリノベーションではなく、このエリア全体のリノベーションの一投目という位置づけでした。そこで、まずは五箇年計画を作成し、メンバーに共有しました。宇治は宿泊施設が少なく、8割が京都市内に戻って宿泊するという統計が出ていたので、宿泊施設に活用するという案もあったのですが、「夜楽しめる場所も無いし、泊まりたいと思えるエリアになっていない」ということから、1年目は「訪れたくなる店」、2年目「通いたくなるエリア」とし、3年目にやっと「泊まりたくなる場所」を書き加えました。
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  • 岸本千佳『都市を再編集する』第2回 不動産を通じて街の課題を解決する

    2018-06-05 07:00  
    540pt

    不動産プランナーの岸本千佳さんによる連載『都市を再編集する』。今回は実際にひとつの建物のリノベーションを通して、街の課題を解決に挑戦した例を紹介していただきます。線路脇で電車音のうるさいボロボロの木造アパートが、クリエイターのためのアトリエへ、その変貌は周囲の人や街全体へと変化を及ぼしていきます。
     ボロボロの木賃アパートをいかにリノベするか
    不動産プランナーの岸本千佳です。連載第1回では、不動産プランナーという仕事がどのようなものなのか、また、私が働いている京都という都市が直面している課題について、ご説明しました。
    今回は不動産を通じて街の課題を解決する。その解の一つを見てもらいましょう。
    相談のあった物件は線路沿いの木賃アパート。オーナーさんは少年時代に、隣にある一戸建ての住宅に家族で住んでおり、木賃アパートに入居していた家族の子供達と一緒によく線路で遊んでいたという思い出深い場所。ご自身は結婚を機に別の家に住むことになりこの地域を離れました。その後、ご両親が亡くなられて以降空き家となっていました。

    ▲複数の線路と並んで建つ木造アパートが、今回の案件。
    場所は京都駅から徒歩10分、エリアに際立った特色のない空白地帯に建つボロボロの木賃アパートです。
    全8室の風呂無しアパートは、線路の真横に建っています。そのため電車音が激しく、住むにはなかなか厳しい状況です。前面道路はとても狭く、建物を撤去したとしても駐車場として利用できない。ひいては建て替えも難しい。
    ただ、良いところもありました。建物は昭和感の雰囲気が漂い、2000年代初めに放送された小林聡美が主演のテレビドラマ『すいか』に出てきそうな階段。場所も色がないと言えばそうのですが、個性的な街が連なる京都市内中心部とは対照的に、この「色がない」という余白が逆に街の魅力的とも捉えられるのです。
    予算も限られたなか、この条件をどう調理するか。ここで私は、大きな弱点でもある「電車音がうるさい」という絶対的な負の条件を逆手に取って、「音を出せるシェアアトリエ」としてリノベーションしたのです! まさに、“音がうるさい”から“音を出せる”へ、発想の転換です。
    こうして、京都駅発クリエーターのためのプラットフォーム「SOSAK KYOTO」が誕生しました。

    ▲シェアアトリエSOSAK KYOTOの玄関。ブロック塀を使って玄関サインを作った。

    ▲各区画の室内。アトリエに必要な設えを最低限施し、改装自由で貸し出している。
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  • 【新連載】 岸本千佳『都市を再編集する』第1回「不動産プランナー」の仕事とは?

    2018-05-22 07:00  
    540pt

    今回から、不動産プランナーの岸本千佳さんによる新連載『都市を再編集する』が始まります。使い道のわからない建物の活用を企画段階から管理・運営までトータルプロデュースをしている岸本千佳さん。所有している側と利用する側、そしてその建物がある街までもを幸せにすることを目指す岸本さんの活動について語っていただきました。
     「不動産プランナー」の仕事とは?
    はじめまして、不動産プランナーの岸本千佳といいます。以前、宇野さんと対談させてもらいましたが、連載では初登場です。

    「不動産プランナー」という職種、はじめてお聞きになったという方が多いかと思います。それもそのはず、私が勝手に名乗っているからです。要は、建物の活用を企画段階から管理・運営まで一気通貫でプロデュースしています(プロデュースというと偉そうな人が出てきそうなのでプランナーとし、不動産プランナーとしました)。
    プロデュースといっても、「ホテルをつくってほしい」「カフェをつくってほしい」という具体的な目的が決まっているわけではなくて、たいてい「この建物をどうにかしたい(けどどう使ったらいいか分からない)」という依頼がほとんど。その依頼に、どう活用をしたらいいか、様々な角度から検証・提案をし、提案が通れば設計と工事を行い(工事はパートナー業者に依頼)、使う人を見つけ、建物が完成してからも場の運営を行う。つまり、建物と物件オーナーに、最初から最後まで一貫して寄り添う。社会人になって以来10年間、いかにも気が遠くなりそうなくらいこの仕事一筋でやってきました!
    でも、手間がかかる分やる価値があるから辞められないわけで。誰もがどうにもできない建物をどう料理するか、それが腕の見せどころです。
    たとえば、賃貸マンションの1階の奥まった空間があり、そこは、駐輪場のような物置のような使われ方がされていました。私は、その空間を見た時、アンダーグラウンドな雰囲気を気に入って借りる人がいるに違いないと、オーナーさんに貸出してみないかと提案しました。その結果、翌日には問い合わせがあり、この空間を気に入った方が借りてくれ、素敵なバーへと変貌を遂げました。

    ▲駐輪場バー「OLBONECAFE」。町内で初めてできた夜営業の飲食店で、西陣の老若男女が夜な夜な集う。
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  • 【特別対談】岸本千佳×宇野常寛 京都の街から〈住み方〉を考える――人と建物の新しい関係(後編)

    2017-09-21 07:00  
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    人と建物の関係を結び直す“建物のプロデュース業”=不動産プランナーとして京都を拠点に活動する岸本千佳さん。 かつて京都に住み、現在も京都へ通う宇野常寛とともに、東京と京都、地方における「住むこと」への意識の課題、そして多様なグラデーションの町・京都の可能性について語り尽くす、これからの「住」を考える対談です。(構成:友光だんご) ※本記事の前編はこちら
    ■京都は町が拡大している
    ▲京都駅
    宇野 後編では、岸本さんが拠点を置く「京都」についてお話を伺っていきます。東京で不動産の会社に勤めたあと、独立する土地として京都を選んだのはなぜだったんでしょう? 
    岸本 京都という町については、他の都市とは違うという印象があるんです。東京に比べて建物が圧倒的に魅力的ですし、それを掘り起こしているプレーヤーも少ない。そこに可能性を感じたのが理由ですね。
    宇野 僕も京都に7年間ほど住んでいましたが、京都の人々の気質については、難しい人が多いなという印象があります。
    岸本 確かに悪い噂が広まりやすい面はあるかもしれませんね。でも逆に、いい評判も数珠繋ぎで広がるので、きちんとした仕事は評価されやすい土地柄だと思います。  それに京都は、東京とは違った意味で、京都は世界中から一目置かれている都市なんです。でも、そのブランド力に、生粋の京都人はあまり気付いていません。京都を客観的に見ることのできる人の方が価値を付与しやすいので、その点において、私にもできることがあるのかな、と思っています。
    宇野 岸本さんが京都に戻られたのはいつ頃ですか?
    岸本 2014年の11月でしたね。
    宇野 今起きている観光バブルが始まる直前ですね。京都が大きく変わり始めたタイミングで、不動産プランナーという新しい仕事を始めたんですね。
    岸本 今思うと凄いタイミングです。あの頃からの京都の変わりようは凄いですから。以前は市バスで外国人を見ることなんてありませんでした。よく地元の人たちは適応できているなと感じます。
    宇野 僕が京都に住んでいたのは1999〜2006年頃ですが、当時はこんなに海外からの観光客が町を歩いていませんでしたからね。ここ4、5年、京都精華大学で教えている関係で、頻繁に京都へ来ているんですが、「京都も変わったな」と感じながら、変な居心地の良さもあるんです。大人の男が昼間からラフな格好で歩いていても、大陸からの観光客だと思ってもらえる(笑)。いい意味で、放っておいてくれる町になりました。
    岸本 仕事柄、町中でよく写真を撮るんですが、そういう行為も以前と比べて許されるようになりましたね。私が住んでいるのは西陣で、観光地エリアではなく住むための町なのですが、今では路地にたくさんの観光客が来ますし、宿のあるエリアも、どんどん外へ広がっているんです。
    宇野 京都は今、町が拡大しているんですね。
    岸本 この2、3年で確実に変わっています。その一方で、誰も京都のことをきちんと見ていないとも感じるんです。観光地としてのミーハーな見方ばかりで、生活の場所としての視点がない。
    宇野 たとえば、僕は桂や久世橋のあたりが結構好きだったりする。京都の西側は東側と比べてるとファミレスやブックオフが点在する普通の住宅地なのだけど、その中に突然、1000年以上の歴史を持つ寺があったりする。あのハイブリット感が魅力だと思うんですよね。日常空間の中に、非日常が入り込んでいるような面白さがある。  岸本さんの著書『もし京都が東京だったらマップ』は、不動産業の経歴がある人ならではの本だと思いました。町というのは総論で語られがちなんだけど、この本では固有の建物にアプローチし、一駅一駅、建物一つ一つの個性に向き合っている。
    ▲出町柳
    岸本 ひとつのイメージでは括れない、モザイク状で多様性のある町が京都なんです。それがこの本で一番伝えたかったことです。
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  • 【特別対談】岸本千佳×宇野常寛 京都の街から〈住み方〉を考える――人と建物の新しい関係(前編)

    2017-08-31 07:00  
    540pt

    京都を拠点に活動する 「不動産プランナー」であり、『もし京都が東京だったらマップ 』の著者でもある岸本千佳さん。人と建物の関係を結び直す彼女のプロデュース業は、建築と不動産の間の壁を超えたところに生まれました。岸本さんが大きな影響を受けた不動産的なアプローチの先駆け「東京R不動産」の衝撃とは? そして、リノベーション第一世代と第二世代の違いとは? 岸本さんと宇野常寛が「住」のこれからについて考えます。(構成:友光だんご)
    クリエイティブな発想が必要とされない不動産業界
    宇野 岸本さんは「不動産プランナー」という肩書きで活動されていますが、具体的にどういったお仕事なのでしょうか?
    岸本 簡単にいうと「建物をプロデュースする仕事」です。まず、不動産の持ち主から相談を受けて、建物の使い方を提案します。提案が通ったら、設計や工事担当の人たちとチームを組んでリノベーションを行い、完成後の入居者を見つけて運営していく……というのが一連の流れです。この全てを一貫して一人で行っています。
    宇野 僕は岸本さんの著書『もし京都が東京だったらマップ』 で「不動産プランナー」という仕事があることを初めて知って、こういった仕事がなぜ今までなかったんだろうと思ったんですよ。世の中がもっと便利に、かつ面白くなることは間違いないのに。

    ▲『もし京都が東京だったらマップ』
    岸本 業界全体の問題として、「不動産」と「建築」の関係があまり良くなかったということが挙げられます。これまで不動産では、クリエイティブな発想は無いものとされてきたし、必要とされてもきませんでした。その一方で、建築にはクリエイティブなイメージがありますが、一般人にとっては少し敷居の高い世界だった思うんです。家を建てる際に設計士や建築家にお願いするのは、一部の限られた層の人ですよね。こうした距離感は業界内にもあって、私が大学で建築を学んでいたときも、先生が不動産業界を見下したように言う風潮がありました。
    宇野 「不動産」の人たちは坪面積あたりの収益には関心があるけど、そこから生まれる文化的なものには関心がない。かといって「建築」の人たちはその状況を軽蔑するばかりで、建てたあとの運用にはタッチしない、ということですね。
    岸本 そうなんです。でも、15年くらい前に馬場正尊さんの「東京R不動産」をきっかけに、不動産と建築の間をつなごうとする動きがやっと現れ始めたんです。
    「東京R不動産」の衝撃
    宇野 東京R不動産が出てくる以前は、住み方のレベルで文化的な表現をしたいと思っても、賃貸では無理でしたよね。面白い建物に住んでみたくても、家を買う、あるいはオーダーするといった建築的な選択肢しかなかった。しかし、持ち家だと今度は住み替えが難しくなってしまう。「住まう」ことを楽しむためには、不動産的なアプローチが必要なんです。そこに、東京R不動産が登場した。
    岸本 私は当時大学生で、太田出版の『東京R不動産』を読んで知ったんです。衝撃でしたね。それまで建築の世界では、建物が完成したあとのことは重視されていなかったんです。だからこそ、「いかに住むか」に価値を置いた東京R不動産の考え方は新鮮で、自分の目指すべき方向だと思いました。それで就職活動でも、いま世の中にある仕事では一番やりたい方向に近いと考えて、不動産業界に進みました。

    ▲『東京R不動産』

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