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記事 4件
  • ​​霎時施(こさめときどきふる)日の物思い|菊池昌枝

    2021-11-22 07:00  
    550pt

    滋賀県のとある街で、推定築130年を超える町家に住む菊池昌枝さん。ここの連載ではひょんなことから町家に住むことになった菊池さんが、「古いもの」とともに生きる、一風変わった日々のくらしを綴ります。いよいよ肌寒くなってきたなか、古民家の隙間風に悩む菊池さん。今回はそのユニークな対処法と、最近試行錯誤している「糠漬け」をめぐる実験記です
    菊池昌枝 ひびのひのにっき第5回 ​​霎時施(こさめときどきふる)日の物思い
    何でも金継ぎと気候温暖化のこと
     ひと雨ごとに寒くなっていよいよストーブを引っ張り出す。日もくれる頃にはじわっと寂しくなるのである。この春から金継ぎを習い始めた。友人トムのパートナーであるのり子さんが師匠だ。美大出で金継ぎ作家の活動をしている彼女の抜群のセンスに惚れて、田舎タイムでのんびり教わってこの秋の日を楽しんでいるのだ。以前に触れたが我が家の蔵には昔の器類があり、ヒビが入っていたり欠けていたりするものもある。それを捨てずにコツコツと一体どれくらいかかるのかわからないが直していくのだ。
    ▲写真は金継ぎ中の5つの作品
     ところで金継ぎはどういう手順で完成させるのかご存知だろうか。材料は漆と金箔、銀箔。全てのベースに漆が使われていて接着の役割をしたり箔の土台になったりすることもあるし、金や銀の代わりに色合いの役割もしたりするマルチプレーヤーだ。漆の歴史は長くて縄文時代には既に土器に漆を塗っていた。かぶれたりして扱いも面倒なこの漆と人の関係は、森林があってこその関係でもあろうけど、どうしてこの役割に気づいたのだろう。ほんとうに不思議だ。  金継ぎの魅力は何かというと、元の器を修繕するのみならず、その価値が生まれ変わることである。つまり器の風景が変わると言ったらよいのだろうか。壊れたからこその再生の魅力が、そこにはある。新品好きの現代人は「古いものにこそ価値がある」という嗜好がかつてあったことを今一度思い起こしてみてはどうかなと思う。その場合、稀有だから価値が高いだけではないのだ。そこに存在し続けるストーリーや使われている技術(おそらく現在では失われているものも多い)とか、民族的なアイデンティティや伝統、そんな類のものがあるから愛おしいしかけがえのないものになるのだと考えている。そんなことで、ついでに形が気に入っているアンティークの椅子の座面張替えもした。隣町に椅子の張替えを専門にするワカモノがいる。彼は仕事はうまいし早いしリーズナブルでなんとも言えない店構えはいかにもジブリ映画に出てきそうな雰囲気だ。布地がボロボロになってクッションがくたびれて座っても痛くなったのだが、アンティークにポップさを加えて部屋が明るく感じられるようにと選んだ布地は、寒い冬に温かみのある差し色で我が家に新しい存在感を加えたのである。
    ▲布地や鋲は数ある見本帳から選ぶことができる
    ▲ご実家の古民家を改修してお店にしたそうだ。店主のお母様が丹精込めて育てたバラが軒先に並ぶ
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  • 季節の暮らしわけ|菊池昌枝

    2021-10-04 07:00  
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    滋賀県のとある街で、推定築130年を超える町家に住む菊池昌枝さん。この連載ではひょんなことから町家に住むことになった菊池さんが、「古いもの」とともに生きる、一風変わった日々のくらしを綴ります。今回は季節とともにある古民家ならではの暮らし方についてです。気温や環境に都度最適化する「暮らしわけ」について、季節折々の写真とともにお届けします。
    ひびのひのにっき第4回 季節の暮らしわけ
    歳時記と暮らし
     昔から「歳時記」「二十四節気」「七十二候」という季節や行事を表す言葉がある。伝統文化に触れた人は誰でも聞いたことがあるに違いない。殊に二十四節気と七十二候の2つは農林水産や日々の暮らしの季節の指標として使われていたものだという。たとえば七十二候には天候のみならず生物が捉える季節感がでてくる。渡り鳥のツバメや雁は日本に帰ってくる時と旅立つ時に登場する。ちょうどこれを書いている時期(9月中旬)は、七十二候では玄鳥去(つばめさる)にあたり、毎日姿と声を楽しんでいたご近所のツバメは、気づくと子育てを終えて南への旅立ちの準備と出発で巣はだいぶ前から空っぽである。最近はツバメの子育て開始が早まっていると聞く。旅立ちも早まっているのだろうか。また、品種改良で8月から稲刈りが始まっている。地域性や気候変動の影響もあるだろう。受け継がれてきた指標である伝統的な暦が日常生活の当たり前から離れつつあることに寂しさを感じる今日この頃だ。
    ▲夏、お隣のツバメが毎日我が家の様子を見にきているように見える。実際は庭の虫(エサ)とかをチェックしているのだろう。
    ▲夏の終わりかけの花壇は茫々
    ▲夏の収穫、庭の赤紫蘇ジュースとスイカ
    ▲8月下旬のみずかがみの刈り入れ(湖北小谷「お米の家倉」さんの田んぼ)
     さて、築130年以上経つこの家では、季節の微妙な移り変わりを肌で感じられる。外気の温度、日差しの入り方、風の向き、雨や風の音、空の高さ、植物の成長、虫の種類と活動、家の建て付けの状態(木の特性上閉まりにくくなったり、ゆるくなったり)など。そんなことだから家のどこで日常生活を営むかは、夏は風通しで決まるし、冬は日当たりと隙間風で決まると言っていい。ちなみに春と秋はご自由にである。  ここに引っ越して約1年。風情のある家では仕事場を見せないようにと、押し入れをオフィスに作り変えてはみたものの、晩秋から春までは押し入れは非常に寒く、仕事にならないことを知った。押し入れの中にリーラーコンセントを2カ所と壁に1カ所電源をつけ、デスクも取り付けてもらったにもかかわらずだ。古民家には用途別の部屋は向かないということを思い知り本当に悔しい。
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  • 使い続けるもの|菊池昌枝

    2021-08-03 07:00  
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    滋賀県のとある街で、推定築130年を超える町家に住む菊池昌枝さん。この連載ではひょんなことから町家に住むことになった菊池さんが、「古いもの」とともに生きる、一風変わった日々のくらしを綴ります。今回は、前の住民から引き継がれた古道具たちが主人公です。古民家とともに歴史を刻んできたさまざまな「もの」たち。それらを使い続け、時には人に譲り、引き継いでいくことの意味について考えます。 ※「ひびのひのにっき」の第1回~第2回はPLANETSのWebマガジン「遅いインターネット」にて公開されています。今月よりメールマガジンでの先行配信がスタートしました。
    ひびのひのにっき第3回 使い続けるもの
    お掃除と手入れ
     引っ越して8ヶ月が経ち始めての夏。ここ数年住む人がいなかったこの家もだいぶ風通しがよくなってきた。本来のありようや暮らしの姿を取り戻せてきたのだろうか。エアコンは7月初旬で未使用のまま。玄関から裏庭の走り庭の土間にテーブルを置いて仕事をしていると風が吹くたびに心地よく、団扇をたまに使うくらいでやり過ごせている。地面に近い生活をしているせいかこの時期は特に雨風の予感が身近に感じられる。感じたらすることはふたつ。メダカの様子を見にいくことと、洗濯物干しの確認。梅雨入り以降、室内の湿度は70〜85%を行き来している。24時間換気で湿度50%以下で暮らしてきた東京生活には全くなかった環境でビールのおとも柿の種は開封すると間も無く湿気でベタベタになってしまうくらいだ。油断すると蚊が入ってきたりあちこちにカビも生えてくる。もちろん悪いことだけではなく、醗酵には適していたりいいこともある。いずれにせよ、家そのものが生きている感があり、そのために心がけていることは、掃除をすることだ。家の外と内の境界線に住んでいる自然や爬虫類や虫、菌たちと良い関係を創るべく彼らを観察して、時には謎の液体や他人の助けを借りてアレコレする。家も庭も手入れをして活性化し続けないと生存を許されないのが古民家である。
    ▲庭のメダカ池に水を飲みにくるカナヘビ「ぷは〜っ!」
    ▲我が家の苔の森の木陰で涼むカナヘビのカメラ目線
    使い続ける習慣 足るを知る暮らし
     引っ越してしばらくは蔵の中のものの洗い物をした。仕事が終わって深夜まで半端ない量を洗い続けて下水の蓋から泡が吹き出したほどだった。長年埃まみれになっていたものを「漂白する、泡で洗う、干す、拭きあげる」の繰り返し。それでひと月が過ぎた。また家のいたるところに刺さっている釘を筋肉痛になるくらい金槌を握りしめて部屋中抜きまくりもした。なぜ釘ばかり打ってあるのかは未だ謎のままだが、同時に手が届くところまでは壁も床もふすまも拭きまくった。古い匂い、カビの臭いなどは敏感な鼻が許さず、今なお私は天井裏の掃除さえすれば臭いが取れるはずだと業者さん選定中である。
    ▲抜いた釘たち。中には竹製や和釘も。和釘は鍛えているせいか軽い。
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  • 今夜20:00から生放送!菊池昌枝×岸本千佳×宇野常寛「これからの京都の話をしよう」2019.9.24/PLANETS the BLUEPRINT

    2019-09-24 07:30  
    今夜20時から生放送!「PLANETS the BLUEPRINT」では、 毎回ゲストをお招きして、1つのイシューについて複合的な角度から議論し、 未来の青写真を一緒に作り上げていきます。 年間5000万人以上の観光客が訪れる、日本随一の観光都市・京都。2020年東京五輪を前にして、多くの外国人観光客の訪日が予想される今、京都には果たしてどんな観光戦略が必要とされているのでしょうか。今回は、京都での宿泊事業立ち上げに携わり、現在は某リゾート・リート 投資法人でIRをご担当される菊池昌枝さんと、京都を拠点に活躍する不動産プランナーの岸本千佳さんをお迎えし、「観光しない京都」を提唱する宇野常寛とともに、京都のこれからについて考えます。▼放送日時2019年9月24日(火)20時〜☆☆放送URLはこちら☆☆https://live.nicovideo.jp/watch/lv321656191▼出演