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  • プロデューサーシップのススメ #02 データシティ鯖江から始まったウェブ新時代

    2020-04-16 07:00  

    NPO法人ZESDAによる、様々な分野のカタリスト(媒介者)たちが活躍する事例を元に、日本経済に新時代型のイノベーションを起こすための「プロデューサーシップ」を提唱するシリーズ連載。第2回目は、福井県鯖江市で様々なイノベーションの仕掛け人として活躍する福野泰介さんです。現在、「新型コロナウイルス対策ダッシュボード『COVID-19 Japan』」のネット公開でも注目を集める福野さんの「inspire型カタリスト」としての先進性とは?その実践の来歴と目の醒めるような着想の数々をご紹介します。
     初回では、イノベーションを引き起こす諸分野のカタリスト(媒介者)のタイプを、価値の流通経路のマネジメント手法に応じて、「inspire型」「introduce型」「produce型」の3類型に分けて解説しました。(詳しくは第1回「序論:プロデューサーシップを発揮するカタリストの3類型」をご参照ください。)
     今回はカタリストの第1類型、すなわち、イノベーターに「チエ」を注ぐ「inspire型カタリスト」の事例の第1弾として、株式会社jig.jpの福野泰介会長をご紹介します。
     福野さんは、イノベーティブなプログラマーとして、また鯖江を拠点としたIT起業家として、傑出した実績をお持ちです。その一方で、オープンデータをフル活用する「データシティ鯖江」構想を市長に提案して実現したり、鯖江の小学生にプログラミングを教えたりと、「データ活用のスキル」という「チエ」を鯖江市民に注ぐ「inspire型のカタリスト」としても非常に活発に活動されています。
     特に、ITスキルをそのままサービスとして提供するのではなく、国際組織から学んだオープンデータという概念の導入を鯖江市長に促したり、安価なコンピュータ(IchigoJam)を開発して提供しながらプログラミングを子供たちに分かりやすく教えたりと、最先端の思想やスキルをかみ砕いて伝達することによって付加価値を生んでいる点が、カタリストとしての福野さんに刮目するべきポイントです。
     そして、政府の「オープンデータ伝道師」として、また優れたアプリを世に発信することを通じて、福野さんの「チエ」は鯖江に限らず、世界に発信されているところではありますが、「鯖江から世界を変える」の言葉を体現するかのように、鯖江を変革のドミノの最初の1枚とするべく、福野さんの「チエ」は、鯖江(市役所や子供たち)に、特に意識的に集中投下されています。近い将来、福野さんからinspireされた鯖江のイノベーターたちが、データの可能性をますます開拓して、イノベーションをどんどん興していくことでしょう。(ZESDA)


    ▲福野氏はカタリストとして鯖江に「チエ」を注いでいる。
    ウェブ新時代の地域活性化とは
     株式会社jig.jpという会社の社長をしております、福野泰介と申します。 まずは簡単に自己紹介です。本業はjig.jpというスマートフォンのアプリを作る会社の社長です。政府CIOから、オープンデータ伝道師ということで、オープンデータを日本中に広めてきなさいという命を受けていたり、各種NPOをやったりしております。
     あとCode for Sabaeという、いわゆる地域活動をやっております。地域のゴミ拾い、ドブさらい、いろんな貢献の形がありますけど、Code for Sabaeはプログラムを作って地域に貢献する、そんな活動を地元鯖江で始めております。2017年からは鯖江市商工会議所の常議員を始めまして、一世代上の方々と遊ぶことも増えてきました。
     福井県鯖江市は、東京から新幹線で3時間ちょっとの場所にあります。鯖江市は色々と面白いところで、近年のトピックスとしては「最強の地下アイドル」と呼ばれている仮面女子が挙げられます。何が最強かと言うと、Facebook、Twitterのフォロワーが数百万単位でいるのです。なので、一般向けのメディアとは違うチャンネルですごい影響力がある、そんなアイドルと、なんと鯖江市が提携をしました。鯖江市と仮面女子をYouTubeで検索いただくと、市長が仮面女子のライブで一緒に踊っていたりと、なかなかぶっ飛んだまちになっています。

     いろいろな活動をしていますが、原点はコンピューターに出会ったことと、ウェブに出会ったことにあります。人類とテクノロジーの歴史において、人間とそうでないものが分かれたのは10万年前に言葉というものが生まれた時だと思っています。それまでDNAでしか伝えられなかった情報が言葉として、瞬時に伝えられる。これはすごいことです。 その後、9万5千年かけて発明された文字もまた画期的です。「この先に行くと死ぬぞ」と書いておけば、みんなそこで止まることができます。さらに4千年経って、文字は活字としてコピーできるようになり、拡散を始めました。

     続いて放送。テレビ、ラジオ、当たり前のようですが、わずか100年前にできた技術です。放送は、あたかも語りかけるように、時に映像と共に世界中に対してコミュニケーションできる、非常に強力なツールとなりました。ただ、活字も放送も無料ではないため、発信できる人は限られます。
     そして25年前に誕生したウェブは、この活字や放送の特徴を併せ持った機能を、すべての人に無料で開放するという、非常にインパクトのある技術です。自分はそんなウェブが大好きなので、14年前、ウェブをどこでも見られる、ガラケー向けのアプリ「jigブラウザ」を開発しました。
     現在の主力事業は、スマートフォン向けのC to Cで物を売買できるプラットフォームや、動画配信するためのプラットフォームなどです。これも強力なメディア、ウェブがあるからこそできることです。ウェブを駆使すればあたかも誰もが放送局になれることに匹敵する凄さに、まだ人類は慣れていないかもしれません。
     ウェブにより、様々なローカルなアイドルが多数誕生し、うちのサービスでもトップの人間は一月に1000万以上稼いでいます。テレビと違って、見ていておもしろかったらダイレクトに投げ銭するという、ストリートのミュージシャン的なモデルです。人気な人は1000万円以上稼いでしまうのです。実に100人以上の人がこのサービス上で、生活できるレベルを稼いでいます。
     弊社、jig.jpは、東京代々木に本社があり、福井県鯖江市に本店があります。「利用者に最も近いソフトウェアを提供し、より豊かな社会を実現する」という目標を掲げています。

    オープンデータがもたらす変革
     会社の転換期は、実はガラケーからスマホに変わった時です。社会全体がガラッと変わりました。日本は様々な携帯電話があって非常に良かったのですが、今はもうスマホ一色ですよね。そんな地殻変動に結構翻弄されていたわけですが、幸い、この鯖江にいたということが一つ大きなきっかけとなって乗り越えてきました。
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