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  • 超ロングセラーミニカー「トミカ」の50年──“本物らしさ”と“優しさ”を守り続けて

    2020-12-23 07:00  
    550pt

    皆さんはトミカで遊んだことはありますか? 1970年に登場したミニカーシリーズ「トミカ」も今年で50歳。発売以来、低価格、高品質を維持しながら、子どもも大人も夢中にさせてきたトミカ。こんなにも長きにわたって愛され続けた理由は何なのでしょうか? 発売元のタカラトミーを訪ねて、その魅力を探ってきました。(聞き手:宇野常寛、構成:杉本健太郎・PLANETS編集部)
    なぜトミカは国民的ベストセラーになったのか
     ミニカーの代表的ブランド「トミカ」が発売50周年を迎えた。現在までに、累計1050種類、販売台数6億7000万台という驚異的なロングセラーブランドである。常に140種をラインナップし、毎月第3土曜日に新車を発売し、ラインナップを入れ替えている。1970年の登場以来、低価格ミニカー市場において豊富な商品ラインナップを維持し続けているトミカ。ミニカーといえば、外国車や1/43サイズなどの大型モデルが中心だった時代に国産車で子どもの手のひらサイズというまったく新しいコンセプトで登場したミニカーだった。
    ▲1970年発売の初代トミカのラインナップ
     「1970年当時日本にはいろんなミニカーがあったんですけど、国産車でも大きいものが多くて、トミカサイズの小さいものはなかったんです。あったとしても海外から輸入されたものがほとんど」と語るのはタカラトミーでトミカの開発を担当している流石正氏だ。
     トミカの自動車は明確なスケールを設定していないという。国産ミニカー市場自体がほぼなく、ミニカー=輸入玩具という時代に、子どもの手のひらに乗るようなサイズのおもちゃを考えて、このサイズに落ち着いたという。価格も180円(当時)と買い求めやすい値段設定にした。小サイズ、低価格がもたらすコレクション性は、トミカの魅力の中核だ。日本の子どもにミニカーカルチャーを根付かせたのがトミカなのである。
    ▲2021年1月発売予定。No.89 ランボルギーニ シアン FKP 37(© TOMY)
    ▲2020年12月発売。No.26 トヨタ クラウン(© TOMY)
    ▲同じく12月発売。No.84 レクサス RC F パフォーマンスパッケージ(© TOMY)
     トミカ誕生当時、同様に現実の車両をモデルにした(広義の)おもちゃとして、プラモデルがあった。男児向け玩具の歴史に詳しいデザイナー/ライター/小説家の池田明季哉氏は、田宮模型(タミヤ)がリードしていたプラモデル全盛の時代におけるトミカ登場の意義をこのように振り返る。
     「トミカ誕生前夜となる1960年代は、世界中でいわゆるスケールモデルが発展したプラモデルの黄金時代で、日本のメーカーが高い技術力で急激にそこに迫っていった時期です。1968年にタミヤが1/12 ホンダF-1をドイツのニュルンベルク国際玩具見本市に出品し好評を博したことは、日本メーカーの技術力を窺い知ることのできる象徴的な出来事でしょう。まさにホンダがF-1へ電撃参戦し活躍したことに見られるように、こうした模型の発展は日本の工業技術の発展とシンクロしています。70年代後半にスーパーカーブームがおもちゃ業界を席巻したことからもわかるように、この時代の日本の子どもたちにとって、自動車はたいへん勢いのある“かっこいい”モチーフであったはずです。  しかしながら、当時から現在に至るまで、自動車のプラモデルは小さくとも1/48スケールが主流で、トミカのような1/64前後のスケールはほとんどありません。またプラモデルをトミカと同じレベルで見栄えがするように仕上げるためにはたいへんな工作技術が必要です。1/64という手のひらサイズで、国産の低価格で、しかも頑丈でよく走るトミカは、当時の小さな子どもが抱いていた自動車への憧れの受け皿として、唯一無二のポジションだったと思われます」
    毎月2つが消えて2つが加わる。140種の熾烈なラインナップの決め方とは
     毎月2種類のラインナップを変更しながら、常時140種を維持しているトミカ。この編成はどのように決められているのだろうか。改めてタカラトミーの流石氏に訊いてみた。
     「大きくは変わらないです。基本は働く車や緊急車両、スポーツカー、乗用車や外国車などです。その時々のブームになっている車、例えばRVやコンパクトカー、ファミリーカー、今だとエコカーや電気自動車などが出てきたとしても、そういう車が一気に増えるわけではありません。バリエーションを大事にしているので、多少の割合は変わりますけども、緊急車両やスポーツカー、乗用車やバスなどの基本種はある程度の一定の割合を維持しています。例えば2018年からフェラーリのモデルをトミカで製品化していますが、非常に好調です。もっと種類を増やせばいいと思われるかもしれませんが、あえて抑えています。トミカは“立体版の乗り物図鑑”であることを肝に銘じています。いろんな車両があってこその図鑑なので、ラインナップが偏らないように、乗り物全体にバランスをとるよう意識しています」
    ▲No.62 ラフェラーリ(© TOMY)
     “立体版の乗り物図鑑”であるというのは、言い得て妙だ。そうだとすれば、トミカにラインナップされることは、時代時代の自動車産業全体の縮図になるような代表選手を選んでいくのに等しい作業だということになる。そうだとすれば、気になるのは、各シーズンごとの「具体的なラインナップはどういう基準で決まっているのか」だ。廃盤になるトミカ、新たに加わるトミカ、相当な駆け引きがある気もするが、実際のところはどうなのだろう。流石氏の回答はこうだ。
     「毎月新たに2種類加わるわけですから、当然既存のラインナップから2種類減ることになります。これにはいろんな理由がありますが、基本的には外国車ですと、版権の問題があります。あとは安全基準の部分で、『これは今の基準に合致しないな』というものは落としていきます。もちろん販売データも加味していますが、販売実績よりも、さっき言ったようにバランスを保つことの方が大事なので、売れてないから入れ替えるなどと単純に決めているわけではありません」
     廃盤にするトミカと新たに加えるトミカを決めるときの「入れ替え戦」で、部署内の「推し車種」の衝突があったり、版権をもつ自動車メーカーとの関係性で揉めたりとかはしないのだろうか?
     「廃番になる方はあまり喧嘩にならないですが、新しく入れる方は皆さんいろんな意見がありますね(笑)。開発にだいたい1年ぐらいかかるので、議論には時間をかけます」 
     どうやら野暮を聞いてしまったようだ。そうした50年の移り変わりの中で、売れる車の傾向にはどのような変遷があったのだろうか。
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