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記事 16件
  • 相方がヒーローに見えた日|高佐一慈

    2021-04-08 07:00  
    550pt

    お笑いコンビ、ザ・ギースの高佐一慈さんが日常で出会うふとしたおかしみを書き留めていく連載「誰にでもできる簡単なエッセイ」。今回は、高佐さんがとあるライブ当日に犯した失敗談。パニックに陥る高佐さんを冷静な態度でフォローする相方の尾関さんについて、リスペクトとユーモアを交えながら語ります。
    高佐一慈 誰にでもできる簡単なエッセイ第16回 相方がヒーローに見えた日
     戦争、いじめ、不倫、犯罪……。  人は何度同じ過ちを繰り返せば気が済むのだろう。  人間誰しも間違いを犯すことはある。してしまったことは百歩譲ってしょうがない。ただその時に、もうこんなことは金輪際起こすまいと固く決意する。自分を律する。日の光を浴びることすら恐れ多いという気持ちで、重い十字架を背負って生きていくことを自分自身に課し、ひたすら猛省する。  だが、時間は犯した過ちを忘却の彼方へと葬り去る。あんなに固く決意した確固たる思いは、色褪せ、風化し、さもそんな間違いなど一度もしたことがないような状態に舞い戻ってしまう。そして同じ過ちを繰り返すのだ。  この連載の第3回目に「『ニーズが無い』という言葉の恐怖」というエッセイを書いたのが、ちょうど1年前。わずか1年という期間の中で、やってしまったのだ。
     電車の網棚に、またしても荷物を置き忘れてしまいました。  大袈裟なプロローグですみません。 「またか」と思う方もおられると思いますが、今回はテイストが全然違います。鬱屈とした自分自身の自意識を吐き出すような話ではなく、僕のミスを救ってくれた相方の尾関がいかにヒーローだったかを伝える英雄譚です。
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  • 「いくつに見える?」問題の解決策|高佐一慈

    2021-03-09 07:00  
    550pt

    お笑いコンビ、ザ・ギースの高佐一慈さんが日常で出会うふとしたおかしみを書き留めていく連載「誰にでもできる簡単なエッセイ」。今回は、誰もが一度は聞かれたことがあるだろう「私、いくつに見える?」という質問について。デリケートなこの質問に上手い返しができるよう、高佐さんが独自に編み出した方法とは? とある収録時に交わしたメイクさんとのエピソードをきっかけに語ります。
    高佐一慈 誰にでもできる簡単なエッセイ第15回 「いくつに見える?」問題の解決策
     先日、テレビ番組の収録前、メイク室でメイクをしてもらってる時のこと。  メイクさんが僕と地元が一緒だということが判明し、ちょっと盛り上がりつつ話を進めていくと、同郷というだけではなく、同じ世代間での共通の話題ものぼってきたので、じゃあ実際いくつなのかと思い、「おいくつですか?」と聞いたところ、メイクさんは「あ、ちなみにいくつに見えます?」と言ってきた。  僕は会話の中からのヒントを手探りに、思った年齢より3つ下に(38歳くらいと思ったので35歳と)答えたところ、実際は僕と同じ40歳だということが分かり、若く見られたということと、お互いの共通項が見つかったことにより、会話はスムーズに進み、そのままクライマックスを迎え、メイク室を後にしてきた。  たまたま、偶然、奇跡的に、年齢当てが上手くいったからよかったものの、上手くいかなかった時のことを考えると、ゾッとする。今までも何度も失敗してきた。
     「いくつに見える?」
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  • 正直すぎる人もどうかと思った話|高佐一慈

    2021-02-17 07:00  
    550pt

    お笑いコンビ、ザ・ギースの高佐一慈さんが日常で出会うふとしたおかしみを書き留めていく連載「誰にでもできる簡単なエッセイ」。今回は、誰もが仕事でついたりつかれたりする営業トークの「嘘」について。言葉巧みに「ぴったりの商品」をオススメしてくる服屋やパソコンショップの店員さんが、思わず出してしまった本音と方便の境目を、高佐さんが観察します。
    高佐一慈 誰にでもできる簡単なエッセイ第14回 正直すぎる人もどうかと思った話
     皆さんは仕事で嘘をつくことはありますか?  僕の職業は芸人だ。簡単に言うと、人前に出て笑いを取ることを目的とした仕事。笑いを取ることを目的とした、とか言うと一気にハードルが上がり、この先何も言えなくなってしまいそうだが、まぁ説明するとそんなところだ。僕は芸人という職業柄、話を盛ることもある。それはもちろん、笑いを取るという目的のために遂行することもあるが、多少大袈裟に言った方が自分の気持ちが上乗せされて、話が伝わりやすいという側面もある。例えば、曲がり角から大きな犬が飛び出してきたことを話す時、その犬が実際は体長1mくらいだったとしても、曲がり角からいきなりそんな大きな犬が飛び出してきたのであれば相当驚くし、プラス僕は犬が苦手なので、大きな犬は恐怖の対象としてある。結果、「曲がり角から軽自動車くらい大きな犬が飛び出してきた」と言ってしまう。怖かったという気持ちを伝えるための誇張だが、まぁこれも嘘といえば嘘だ。
     服屋での話。  僕は別にオシャレではないのだが(最近になってよく私服がダサいとイジられるので気づいた)、気が向いた時に「何かいい服ないかな」と、ふらっと服屋を巡ることがある。そこでいつも思うのは「店員さんというのはどこまで本心で言ってるのだろう?」ということだ。棚に置いてある服を広げて見ていると、そばに近付いてきて「その服いいですよね?」だの、「今のお客様の服にも合いそうですね」だの、「一着持っていて損はないですよ」だの言ってくる。だの、と言ったのは、僕が元々服に対する知識が乏しかったり、基本的に疑り深いところがあるので、「本当は似合ってないんじゃないだろうか?」「何としてでも買わせようと言葉巧みに誘導しているんじゃないだろうか?」と思ってしまうからだ。店員さんの言葉を素直に受け取ればいいのだが、どうも本心ではなくマニュアル的にそう言っているような気がして、買うのを躊躇してしまう。  一度、カーキ色をベースとした柄物のシャツを見ていたら、店員さんがいつものように「そちら、基本的にどんな服にでも合いますよ」と言ってきた。「柄物カーキだぞ。そんなはずないだろ」と思いつつも、「どんなのに合わせたらいいですか?」と聞いたら、「何にでも合いますよ」と返ってくる。これは完全に買わせようとしている案件だぞと思い、あえて「逆にどんなのだったら似合わないですか?」と聞いてみた。すると、「う〜ん」と5秒くらい顔を歪め、「強いて言えば……、蛍光の紫ですかね」と絞り出してきた。服の知識が無い僕でもさすがに、「そりゃそうだろ。逆に蛍光の紫パンツに合う服ってどんな服だ! じゃあほぼ何でも合いますね〜って言うと思ったか、バカ!」と思い、つい「そうですか。だったら大丈夫です」と言って店を出てしまった。店員さんには普段蛍光の紫パンツを履いている人なのかと思われたかもしれない。
     何度も言うようだが、僕のセンスが無いことは重々承知しています。ただ、何としてでも買わせようとしてくる欲が見えてしまった瞬間、僕はスッと引いてしまうのだ。正直に「これは似合わない」「これはオシャレだけどお客様にはハードルが高すぎる」と言ってもらいたい。他にもMサイズが在庫切れな時に、「Lでちょっと大きめに着る方がいいですよ」と言ってこられるのも「本当か?」と思ってしまう。  これは厳密に言うと嘘ではないのかもしれない。方便と捉えることもできる。だが、嘘も方便というが、方便も嘘だ。  服屋に限ったことではないだろうが、どの職業でも方便というのはある。飲食店員でも、美容師でも、雑貨屋店員でも、接客を主とする店員さんは、やはり売り上げのことも考えなければいけないので、自分の本心とは別にオススメしなければいけない。
     で、ここからが本題。  先日、使っているノートパソコンが突然プツンッとシャットダウンしてしまった。再起動したら普通に立ち上がったのだが、「これはそろそろ寿命か?」と思い、パソコン内に入っているデータがいつ消えてしまってもおかしくないので、命燃え尽きる前にと、ソフマップに向かった。
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  • 「マヂカルラブリーno寄席」で感じた苦悩|高佐一慈

    2021-01-27 07:00  
    550pt

    お笑いコンビ、ザ・ギースの高佐一慈さんが日常で出会うふとしたおかしみを書き留めていく連載「誰にでもできる簡単なエッセイ」。今回は、元旦に開催されたお笑いライブ「マヂカルラブリーno寄席」について。コロナ禍でお笑い界でもオンライン配信が一般化するなか、17483枚という驚異的な売り上げを記録したイベントで高佐さんが陥ったジレンマとは……?
    高佐一慈 誰にでもできる簡単なエッセイ第13回 「マヂカルラブリーno寄席」で感じた苦悩
     1月1日。元日。お笑い芸人の配信ライブにとって、超異例のモンスターコンテンツが誕生した。それがタイトルにある、マヂカルラブリーno寄席である。  PLANETSの読者の何割くらいがお笑いに興味があるのかわからないが、マヂカルラブリーの名前は聞いたことがあるのではないだろうか。そう、昨年のM-1グランプリ2020のチャンピオンだ。吉本興業所属。  吉本では毎年1月初旬に「○○no寄席」というタイトルで各芸人が自分たちの名前を冠に、好きな芸人を呼んでネタライブをするというのが通例になっている。僕たちザ・ギースもASH&Dという別事務所ではあるが、毎年誰かの寄席ライブに呼んでもらっていて、そのうちの一つであるマヂカルラブリーno寄席にはなぜか毎年呼んでもらっている。主催のマヂカルラブリーの野田クリスタルくんとは、15年以上も前、僕らがまだフリーの(事務所に所属していない)頃にインディーズのライブでたまに一緒になっていたからだ。その時の野田くんはまだピン芸人で、ガリガリの体に白いタンクトップ、長髪という今とは全く異なる出で立ちで奇想天外なネタをやっていた。  17483枚。このライブ配信のチケット売上枚数である。聞くと、吉本さんの配信ライブでは歴代1位とのこと。平均どのくらい売れるとペイできるのかはそのライブによって異なるが、このライブを行なった会場のキャパは300席弱。2ヶ月間毎日満席にしたのと同じくらいの動員数である。昨年から続くコロナ禍によって、お笑いライブの形式も配信スタイルが普遍的になり、この状況にもう飽き飽きしてきている中での目が覚めるような爆発的売れ行き。まだまだ配信ライブにも可能性があるんだと思わされたライブ。なぜここまでチケットが伸びたのかは様々な要因がある。一つは主催のマヂカルラブリーがM-1で優勝したこと。また一つは、無観客配信をいいことに、出演する芸人も客席に座りながら、ネタをやってる芸人に対して言いたい放題ヤジを入れるスタイルになったこと。普通、無観客生配信だと、客席にスタッフさんや芸人が座ったとて、配信画面の向こう側でネタを楽しみに見ている視聴者の邪魔をしないように、笑い声こそあげれどおとなしく見ているのがマナーというもの。そのタブーを破り、ネタをしている芸人にヤジを飛ばし、そのヤジを聞いたネタ中の芸人が笑ってしまい、もっと言ってやれの空気になるという相乗効果。他にも、出ているメンバーだとか、ヤジのクオリティの高さだとか、細かい要因を挙げればキリがないのだが、もともと700枚ほど売れていたチケットが、さらに口コミに口コミを呼び、結果17483枚販売というお化け配信になった。ちなみにそのうちの2枚は僕と僕の奥さんだ。  今回僕が言いたいのは、何もこんな歴史的快挙の配信に僕らも携わっていましたよ!と声高に自慢したいわけではない。その時の僕自身の振る舞い方、身の置き方について、これがなかなかどうして難しいなあと思ったのだ。
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  • 人に気付かない人間への憧れ|高佐一慈

    2020-12-08 07:00  
    550pt

    お笑いコンビ、ザ・ギースの高佐一慈さんが日常で出会うふとしたおかしみを書き留めていく連載「誰にでもできる簡単なエッセイ」。今回は、周りにいる人になかなか気が付かないという高佐さんの大切な人への、憧れについて。『日常に持ち込んだシュール』と合わせて読むと、胸キュンが倍増します。
    高佐一慈 誰にでもできる簡単なエッセイ第12回 人に気付かない人間への憧れ
     これはまだ僕が結婚する前。僕が所属事務所に向かうために渋谷を歩いていたら、偶然彼女(現・奥さん)が僕の前を歩いていた。そういえば今日はなにやら会議があるとかで普段の仕事場ではない場所に行くと言っていた気がする。  こういう、二人でどこか出かけるとかではなく、街でたまたまばったり出くわすことはそうそう無いので、僕も普段と違う状況にちょっとドキドキし、いたずら心も手伝って、このドキドキを向こうにも味わわせてあげようと、知らないふりをして追い越すことにした。  向こうもびっくりするだろう。街で偶然パートナーが自分を追い越してきたのだから。  『うししし』と心の中でほくそ笑みながら真顔をキープしたまま、前を歩く彼女の真横をサッと通り過ぎた。彼女は僕に気づき、早足で近づいてきて、僕のどちらかの肩をポンポンと叩くだろう。その間恐らく5秒。僕は右肩、左肩に意識を集中させ、その時を今か今かと待った。  5秒後。彼女は僕の真横を素通りしていった。  『あれ、おかしいな?』肩透かしを食らった僕をよそに、彼女はまっすぐ前を見ながらぐんぐん歩いていく。  『気付いてないのか…? いや、もしかしたら気付いていてわざと通り過ぎるという、僕と同じ考えの遊びを仕掛けてきたのかもしれない…』  もう一度追い越した。今度は気付かなかったとは言い逃れできないよう、追い越した後、歩みのペースを緩め、そのままその場に立ち止まった。  立ち止まった僕の真横を彼女が颯爽と通り過ぎていった。  『え…? 本当に気付いていないのか…?』彼女の歩くペースは早い。まるで僕に気付いていないかのような速度だ。もう10m先を歩いている。後ろ姿だとわからなかったのか。  最終手段に出ることにした。小走りで彼女に近付き、そしてそのまま追い越し、少し先でくるっと振る。そしてそのまま引き返し彼女とすれ違う。さすがにこれで気付かないわけはないだろう。というかこれは僕じゃなかったとしても、同じ格好のやつがさっきから3回も自分を追い越しているのだ。こんな変な行動をする奴に気付かなかったという言い訳は通用しない。  作戦通り彼女を小走りで追い越し、くるっと振り返った。少し先にいる彼女がこちらに近づいてくる。僕も近づいていく。向こうがどういう表情に変わるのかもバッチリ見える。  僕たちは何事もなくスッとすれ違った。  『えっ…⁉』という驚きとともに僕が後ろを振り返ると、彼女は僕に背を向けたままぐんぐん遠ざかっていった。すれ違った瞬間の彼女の表情がプレイバックする。それはまるで魔王を倒しにいく勇者のような、雑念を全て削ぎ落とし、余計なものは目に入らない、そんな凜とした表情だった。  『完全に気付いてないやん…』  なぜか関西弁で呟いてしまうくらい訳のわからない感情で、僕はその場に立ち尽くした。僕の存在って……。レベルの上がった勇者がスライム程度の雑魚キャラには遭遇しないように、彼女には僕という存在が感知されなかったようだ。  しばらく呆然とした後、ハッと気を取り直し、彼女にLINEした。

    【12/15(火)まで】オンライン講義全4回つき先行販売中!三宅陽一郎『人工知能が「生命」になるとき』ゲームAI開発の第一人者である三宅陽一郎さんが、東西の哲学や国内外のエンターテインメントからの触発をもとに、これからの人工知能開発を導く独自のビジョンを、さまざまな切り口から展望する1冊。詳細はこちらから。
     
  • 戦略的低クオリティ|高佐一慈

    2020-11-11 07:00  
    550pt

    お笑いコンビ、ザ・ギースの高佐一慈さんが日常で出会うふとしたおかしみを書き留めていく連載「誰にでもできる簡単なエッセイ」。今回は、高佐さんが子供の頃から大好きという「スーパーマーケット」について語ります。スーパーで流れてくる絶妙なBGMについて、思いを馳せてみましょう。
    高佐一慈 誰にでもできる簡単なエッセイ第11回 戦略的低クオリティ
     僕はスーパーが好きだ。  スーパースター、スーパーヒーロー、スーパーサイヤ人……。  スーパーと名の付くものには何か特別な存在感があるが、ここでいうスーパーとは、言わずもがなスーパーマーケットのことだ。  なんの特別感もない、むしろ身近な存在として我々庶民のそばに寄り添ってくれるスーパーマーケット。これを読んでる人でスーパーに行ったことのない人はいないだろう。  子供の頃から大人になった今の今まで、ほぼ毎日お世話になっている。  僕は北海道函館市という北海道の中では3番目に大きい街の出身ではあるが、市の中でもだいぶ田舎の町に住んでいたので、子供の頃の遊び場としては、スーパーの中に設置してあるこじんまりとしたゲームセンターくらいしか無かった。  母親とスーパーに行くということになると、ちょっとウキウキした気持ちで車に乗り向かった思い出がある。  カートにレジカゴを嵌め、青果コーナー・鮮魚コーナー・精肉コーナー・惣菜コーナー・お菓子コーナーを母親と一緒にゆっくり見て回る。
     「白菜が昨日と比べてこんなに安くなっている!」  「おっとっととハイレモンとチョコフレークでちょうど500円以内に収まるぞ!」  「カレーのルーってこんなに種類があるのか」
     飽きたらカートの運転を母親に代わってもらい、僕はゲームセンターへと足を運び、じゃんけんゲームをしたりする。
     「ジャンケンポン! あいこでしょ! あいこでしょ! ズコー!」
     そして和菓子コーナーに向かい、棚からどら焼きを一つ手に取り、母親が運転しているカートを探しに向かう。探すコツは、スーパーの中央を横切る通りを歩きながら、縦に並んだ棚を左右見ながら進んでいくことだ。あまり歩みが早すぎると、ちょうど棚の死角に隠れてしまっている母親を見落としてしまう。  そうやって母親のカートに合流し、母親が献立を考えている隙を突いて、レジカゴの下の方にどら焼きをそっと忍ばせる。レジでお会計している時に、どら焼きがひょっこり顔を出すけど、もう時すでに遅し。どら焼きは店員にバーコードを読み取られ、受け取りのレジカゴへと入れられる。母親は、「あんた、いつの間に入れたの?」という顔をしている。  そんな微かなスリルを楽しめるのもスーパーの醍醐味だ。
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  • キングオブコント2020|高佐一慈

    2020-10-08 07:00  
    550pt

    お笑いコンビ、ザ・ギースの高佐一慈さんが日常で出会うふとしたおかしみを書き留めていく連載「誰にでもできる簡単なエッセイ」。今回は、ザ・ギースが決勝に進出した「キングオブコント2020」について語ります。コントを作るとは、いったいなにを追求することなのか。高佐さんが出した答えを、ぜひ読んでみてください。
    高佐一慈 誰にでもできる簡単なエッセイ第10回 キングオブコント2020
     コント日本一を決める大会、「キングオブコント」が今年も開催された。今年はコロナ禍での開催ということもあり、予選・決勝ともに感染対策を徹底させての開催で、本当に無事に終わってよかったなと思っている。  そんなキングオブコントに僕らザ・ギースもエントリーし、見事4度目のファイナリストとなることができた。  去年は準々決勝で敗退し、ちょうど新世代との交代の年とも言われていたので、いわゆる若手ではない僕らが今回返り咲いたことは素直に嬉しかった。実際、決勝進出が決まった瞬間は優勝したのかというくらいのテンションで泣いてしまった。嬉しすぎて、ハイタッチを求めてきた相方の尾関に全く気がつかず、相方をオロオロさせてしまうという事態に。その時の動画もあるので、いずれどこかのライブで流そうと思う。
     さて、今回の「キングオブコント2020」。結果から言うと僕らザ・ギースはファイナリスト10組中4位。上位3組が2本目のネタを披露し、合計得点で優勝者を決めるというルールなので、あと一歩のところで決勝戦に進むことができなかった。しかも3位とは1点差だった。惜しかった。  でも振り返って、こうしておけばよかったなぁということが思い当たらないので結構清々しい気分だ。SNSやメディア媒体上で僕たちのことに言及されている感想や総評を見聞きしていると、「確かにそこを変えていたらもっと面白くなったな!」と思うことが多く、なんで気付けなかったんだろうと思う。でも気付けなかったということは、それが今の実力なのだ。これくらいの実力なのだから、優勝できなくてもそれはもうしょうがない。だから清々しい。そして今の自分たちの実力が分かれば、今後への気合いがよりいっそう入る。
     今回のエッセイは、この大会において僕が考えていたことや、自分の中で沸き起こってきた衝動、そして披露したハープのネタが生まれてから仕上がっていくまでの過程を書いていこうと思う。
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  • 日常に持ち込んだシュール|高佐一慈

    2020-09-03 07:00  
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    お笑いコンビ、ザ・ギースの高佐一慈さんが日常で出会うふとしたおかしみを書き留めていく連載「誰にでもできる簡単なエッセイ」。今回のテーマは「誕生日」です。今年、高佐さんはある特別な方法で、大切な人の誕生日をお祝いしました。シュールという言葉の裏側にある甘酸っぱさを、どうぞご堪能ください。
    高佐一慈 誰にでもできる簡単なエッセイ第9回 日常に持ち込んだシュール
     世の中にはいろんな記念日がある。  例えば建国記念日や敬老の日などの国民の祝日系の記念日。  節分や七夕などの伝統的な祭りごと系の記念日。  誕生日や結婚記念日などの個人的な出来事系の記念日。
     調べてみると365日、毎日何かしらの記念日だ。  例えば1月9日は「とんちの日」。とんちで有名な一休さん、いっ(1)きゅう(9)から来ているらしい。  2月28日は「エッセイ記念日」。エッセイストの元祖、フランスの哲学者ミシェル・ド・モンテーニュの誕生日にちなんでというもの。  5月15日は「ヨーグルトの日」で、ヨーグルトの研究者メチニコフ博士の誕生日だからなのだが、4月4日に「脂肪0%ヨーグルトの日」というのもあって、もう何でもござれだ。  6月1日に至っては、「写真の日」「電波の日」「バッジの日」「気象記念日」「チーズの日」「麦茶の日」「氷の日」「チューインガムの日」「ねじの日」「真珠の日」「景観の日」「スーパーマンの日」「マリリン・モンローの日」と、記念日の大渋滞だ。もう6月1日を何かの記念日にするのはよしてほしい。6月1日自身ももう私を何かの記念日に制定するのはよしてくれと悲鳴を上げているはずだ。
     僕が今回言いたいのは、色んなおかしな記念日を紹介することではない。  誕生日に関することだ。
     僕は人の誕生日を祝うことが苦手だ。  一応大人なのでみんながおめでとうと言っていたら、周りに合わせておめでとうと言うくらいの社会適合性はあるつもりだ。  サプライズでプレゼント渡そうよ、という意見にも賛同できるくらいの分別は持っている。つもりだ。  けど本当は心の底からどうでもいいなぁと思っている。  こう言うと、酷い人間だという印象を持たれてしまいそうだが、誤解して欲しくないのは、僕は自分の誕生日を祝われるのも苦手なのだ。
     一時期何でこんなに嫌なんだろうと、原因を模索したことがある。  自分の中の深い場所に、誕生日のお祝いが嫌いになってしまったトリガーがあるはずだ、と。
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  • 父親の話|高佐一慈

    2020-08-18 07:00  
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    お笑いコンビ、ザ・ギースの高佐一慈さんが日常で出会うふとしたおかしみを書き留めていく連載「誰にでもできる簡単なエッセイ」。今回はちょっと変わっているという高佐さんのお父さんについて。大人になってから、自分の親に対する認識が変わったこと、ありませんか。
    高佐一慈 誰にでもできる簡単なエッセイ第8回 父親の話
     僕の父親は変わっているらしい。  「らしい」というのは、僕自身は父親のことを別段変わっているとは思っていないからだ。いや正確に言うと、思っていなかった。今は思っている。  僕は18歳の時までは実家暮らし、そこから大学進学とともに上京し、もう東京での生活はかれこれ20年以上にもなる。
     今年71歳。もう定年で退いたのだが、父は学習塾を経営していた。家の隣に車庫があるのだが、その上に部屋を増築し、そこを塾としていた。通うのは主に町内の中学生。僕もクラスメートとともに、自分ちの車庫の2階に通っていた。
     各家庭には、各お父さんがいる。友達のユウスケくんのお父さんはスーパーの店長。タナベのお父さんは学校の先生。フジのお父さんはタクシーの運転手。他にもサラリーマンのお父さんや、歯医者のお父さん、自衛隊のお父さんなど様々だ。色んなお父さんがいるので、別段塾の講師をしている自分の父のことを変わっているとは思っていなかった。ああ、うちのお父さんは塾の先生という仕事をしているんだなぁ、くらいの。  しかしポイントはそこじゃない。  いわゆる内面や行動のことだ。  大人になり、色んな人と出会い、色んな経験をした上で、改めて父親を思った時、父は完全に「変わってる人」だった。  変わっていると言っても、全身ピンクの服を着て休みの日は勝手に町内のパトロールをするだとか、飲み屋で仲良くなった素性も知らない人たちを大勢引き連れて次の日バーベキューに行くだとか、そういう豪快さを孕んだ、ある種わかりやすい「変わってる人」ではないのだ。なんというか、静かに変わっているのだ。
     この連載の前々々回くらいで軽く触れたが、父は携帯電話を持ったことがなく(今現在も持っていない)、家にはテレビもない。家では寝る時間以外はずーっとラジオを聞き続けている。  しかも3台同時にだ。FMでクラシックとポップスをかけながら、AMを聞く。ちなみにAMはNHK第一放送しか聞かない。  僕が知ってる中で同時に何かを聞く人は、聖徳太子か父親くらい。聖徳太子は十人の話を同時に聞くのだから、僕の父親はさしづめ「三割聖徳太子」だ。だからもしも父がこれから「冠位3.6階の制度」と「5.1条の憲法」を作ったら、いつか三千円札の顔になるかもしれない。
     父親のことを父親としてしか見ていなかった子供の自分。大人になって一人の人間として父を捉え直した時に、思い出は途端に色を変える。ブルーだったはずの景色がオレンジに。グリーンだと思っていた言動がワインレッドに。
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  • 青春時代の捻れた爆発|高佐一慈

    2020-07-14 07:00  
    550pt

    お笑いコンビ、ザ・ギースの高佐一慈さんが日常で出会うふとしたおかしみを書き留めていく連載「誰にでもできる簡単なエッセイ」。今回は「勉強」がテーマです。勉強が大好きだった高佐少年。青春真っ只中、高校進学を前に起こした一世一代の反撃とは……。
    高佐一慈 誰にでもできる簡単なエッセイ第7回 青春時代の捻れた爆発
     僕は勉強が好きだ。何を唐突にと思うかもしれないが、こうやってはっきり「勉強が好き」と言うことができるようになったのはここ最近の話だ。それまでは勉強が好きと言うことに抵抗があった。ほら、何かカッコよくない感じがあるじゃないか。それに人としてとっつきづらい感じもある。あと女子にモテなさそうだ。  でも僕はここではっきりと断言する。勉強が好きだ。  「勉強が好きだーーーーー!」  目の前に海があったら、こう叫びたいくらいだ。  勉強することで、知識と言う栄養を吸収し、自分と言う人間が成長していく感じが好きなのだ。  しかしその割に知らないことがめちゃくちゃ多い。飛行機が雲の上を飛んでる時ってなんでいつも晴れているんだろうとか本気で思っていたし、四国がぷかぷかどこか流れていってしまわないのは、本州と瀬戸大橋・明石海峡大橋・しまなみ海道(この3つの名前は勉強したので知っている)で繋がっているおかげだと思っていた。  つまり誰もが常識として知っていることはすっぽりと抜け落ち、教科書や参考書で勉強したことは知っているという、社会で生きていくことにおいて、なんというか融通の利かない人間なのだ。  よくラ・サール卒業して早稲田に入るなんて頭がいいんだねと言われたりするが、俯瞰で見ても僕は頭のいい人間ではないと思う。いわゆる学校の勉強は出来るけどそれ以外は応用が利かないという頭の悪い人間だ。学校の勉強は出来なかったけど、話が上手かったり、機転が利いたり、物事の理解力が早い人間に憧れる。
     そんな僕の中学時代。学歴社会真っ只中。学校の勉強に真面目に取り組んでいた僕の青春が爆発した。
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