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記事 5件
  • 宇野常寛 NewsX vol.8 ゲスト:坂口孝則「未来の稼ぎ方」

    2018-11-22 07:00  

    宇野常寛が火曜日のキャスターを担当する番組「NewsX」(dTVチャンネル・ひかりTVチャンネル+にて放送中)の書き起こしをお届けします。10月23日に放送されたvol.8のテーマは「未来の稼ぎ方」。ゲストに坂口孝則さんを迎えて、高齢化問題や空き家問題など、今後20年の間に日本が向き合うことになる問題にいかに対処すべきかを議論しました。(構成:籔和馬)
    NewsX vol.8「未来の稼ぎ方」2018年10月23日放送ゲスト:坂口孝則(調達・購買コンサルタント) アシスタント:加藤るみ(タレント) アーカイブ動画はこちら
    宇野常寛の担当する「NewsX」火曜日は毎週22:00より、dTVチャンネル、ひかりTVチャンネル+で生放送中です。アーカイブ動画は、「PLANETSチャンネル」「PLANETS CLUB」でも視聴できます。ご入会方法についての詳細は、以下のページをご覧ください。 ・PLANETSチャンネル ・PLANETS CLUB
    坂口孝則さんの過去の記事はこちら3.11が発見した新しい消費者像――コンビニエンスストアの商品戦略と展開から(坂口孝則)
    データから未来を予測する楽しさ
    加藤 NewsX火曜日、今日のゲストは調達・購買コンサルタントの坂口孝則さんです。宇野さんと坂口さんはどういう経緯でお知り合いになられたんですか?
    宇野 実は「スッキリ」で共演する直前に知り合っていて、三年前に出た「PLANETS vol.9」で、坂口さんに寄稿してもらったんですね。
    加藤 「スッキリ」の前からお知り合いだったんですね。
    坂口 そのあとに、たまたまテレビの話をしていたら、話の最後に宇野さんから「実は今度「スッキリ」のレギュラーコメンテーターになる」と告白されて、そこから番組自体は2年半ですから、合計3年ぐらいご一緒して、そのあとメルマガに寄稿することもあった。
    宇野 メルマガとかにも書いてもらったし、あと僕がやっているインターネット生放送にも来てもらったりとか、ちょくちょく一緒に仕事をしています。
    加藤 今日のトークのテーマは「未来の稼ぎ方」です。これは坂口さんが出したばかりの本のタイトルになっているんですよね。
    ▲『未来の稼ぎ方』
    坂口 そうなんですよ。2019年から2038年までの20年間に1年に1つずつのトピックを挙げて、それぞれの年度でどういうことが起きるかをあくまでも統計とか事実をベースに書いていきました。コメンテーターとしての違いですけど、僕はデータを活用して、できるだけ杓子定規のことしか言わないように努めています。宇野さんってビジョナリーなところがあるでしょ。そこに対して、うまくバランスをとっていたつもりなんですけどね。だから、あくまでデータを重視したいわけですよ。 たとえば、「のんある気分」が目の前にあるんですけど、ノンアルコールで炭酸の組み合わせの飲料が一番伸びているんでんすよ。データを見るだけだったら誰でも語れるんですけど、その商品をどんな理由で買っているのかを見ていくとすごく面白かったりします。雰囲気的に飲みたいけど飲めないという理由が上位にくると思うんですけど、意外な理由もあって、飲料として安いからなんですよ。あるいは、ノンアルコール飲料は透明のものが売れているんですね。なんで、透明かつ炭酸が売れているかというと、アンケートとか見てみると、歯を汚くしたくない理由があるんですよ。
    加藤 着色料とかですね。
    坂口 だから、統計と同時に現場のヒアリングをしたら、面白いことがわかるんじゃないかなということで、僕はそろそろ40歳になるんですけど、60歳になるまでどういうことが起きていくのかを予想して書いたという内容です。
    加藤 坂口さんの本『未来の稼ぎ方 ビジネス年表2019-2038』に出てくる、これから儲かる20の業界を表にしてみました。こちらは2019〜2028年までの表になります。2019年、セブンイレブンが沖縄進出。2024年、アフリカで富裕層が急増。2028年、世界人口が80億人を突破。

    宇野 早いですね。
    坂口 最近まで60〜70億人といっていたのが、わずか10年で80億人を突破ですよ。
    加藤 続いて左の表なんですが、2029年から2038年ですね。 2029年、中国が人口のピークを迎える。2032年、インドのGDPが日本を超える。2037年、トヨタ自動車が100周年。

    坂口 日本の代表的な製造業社が100周年ですから、エポックメイキングな年になると思いますね。
    愛国心を持つ若者の増加、その実態から見えてくるものとは
    加藤 この中から宇野さんにキーワードを選んでもらって、トークしてもらいたいと思います。
    宇野 前半と後半で一つずつ選ぼうと思っていて、前半は「2026年 若者マーケティングのキーはSNSと愛国」について話したいですね。
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  • 3.11が発見した新しい消費者像――コンビニエンスストアの商品戦略と展開から(坂口孝則)(PLANETSアーカイブス)

    2018-08-16 07:00  

    今朝のPLANETSアーカイブスは、調達・購買コンサルタントの坂口孝則さんによる論考です。テーマは「コンビニの文化地図」。すっかり私たちの生活に浸透し、プライベートブランド商品の開発や地域インフラ化などでも注目されるコンビニ業界。消費者ターゲティングのトレンド、商品開発、そして各社ごとの今後の取り組みまで、「文化としてのコンビニ」について考えます。 ※この記事は2015年5月28日に配信した記事の再配信です。
    ■ 社会のインフラとなったコンビニ
     
    ビジネスパーソンがスーツ姿でスーパーに行くのは躊躇しても、コンビニエンスストアならば行ける。パジャマ姿の女性がスーパーに行くのは逡巡するものの、コンビニエンスストアになら行ける。ちょっとした買い物から、日用品まで、私たちの生活はコンビニエンスストアと切り離せない。
     
    コンビニは現在1年間で約25,000人ものひとたちがストーカー被害、DV、不審者などから逃げ込むインフラとしての役割もある。さまざまな意味で私たちに身近なコンビニでは、どのような取り組みが行われ、コンビニはどこに向かおうとしているのか。
     
    そこで本稿では、まずはコンビニ各社が行う消費者ターゲティングの現在を分析した上で、各社の今後をめぐる展開の、その背後に見える大きなトレンドを探していく。
    高齢化と少子化、世帯の共働き化によって、消費者は近くの店舗で、仕事帰りに手間のいらない多様な食品を買い求める。コンビニは「冷蔵庫のアウトソーシングから」「キッチンのアウトソーシング」までを請け負うために、各社は日本最高の物流システムと、POSデータ等による商品企画を進めてきた。
    セブン-イレブンやローソンの戦略を見るのは、日本流通先端の状況を見ることでもある。
     
     
    ■ コンビニを取り巻く状況
     
    個別の戦略を見る前に、まずはコンビニ業界を取り巻く状況を確認したい。
     
    昨年末(2014年12月末)のコンビニ店舗数を見てみよう。日本全体に5万5139店ものコンビニエンスストアがある。業界1位はセブン-イレブンの1万7206店。そこからだいぶ差があり、2位はローソンの1万2119店、3位はファミリーマートの1万1170店だ。その後、サークルK、サンクス……と続く。ただし、それ以下は桁数も異なるため、コンビニ3強と称される場合が多い。
    コンビニは現在、市場規模約10兆円だ。これから、スーパーとの競争激化のすえ、スーパー(GMS含む)の市場規模20兆円弱の1割をさらに奪えば、まだ2兆円ほどの成長余地が残されている。消費税増税後は伸びが鈍化しているとはいえ、コンビニ3強の鼻息は荒い。
     
    コンビニの発祥については、大阪マミーとする説(昭和44年)、ココストアとする説(昭和46年)、セブンイレブンとする説(昭和49年)がある。
    マミーはスーパーマーケットとする向きもあるため、有力なのはココストアとする説だ。当時、スーパーマーケットの台頭で酒屋がどこも経営的な不調に呻吟していた。ココストアはいわば、彼らの救済を目的として組織され、酒屋の活性化を志向した。そして日本におけるコンビニエンスストアは他の小売フォーマットを凌駕して成長してきた。
     
    しかし、コンビニは、もちろん安穏とした状況にはない。
    これまで勝利してきたスーパーマーケットからの攻勢もある。とくにイオン「まいばすけっと」はコンビニエンスストアなみの敷地面積で、プライベートブランド「トップバリュ」を武器に低価格帯で闘いを挑んでいる。「まいばすけっと」を含む戦略的小型店事業の経営状況は良く、イオン本体との圧倒的なボリュームで、低価格・低コストを実現させてきた。イトーヨーカドーもこの小規模、低価格帯で進出を加速している。
     
    その中で、コンビニ業界各社が近年重視しているターゲティング戦略から、話を始めたい。それは、3.11をキッカケにしたものだった。
     
     
    ■ 3.11が引き寄せた新しい消費者――1.「女性」
     
    2011年の大震災時、これまでコンビニと縁遠かった層が来店し、それがリピートにつながった。同時にコンビニ各社も女性やシニアに焦点をあわせて集客戦略を練ってきた。全国の約5000万世帯のうち、共働き世帯が1000万世帯に至り、構成員が減少するなか、時短かつ少量をもとめる消費者にコンビニが照準を合わすのは当然だった。
     
    大手各社とも、戦略に違いはあるものの、前述の理由から、ターゲット消費者として大きく「女性」「シニア」を外すチェーンは見当たらない。そしてそのターゲティングゆえ、商品トレンドとしては、必然的に「健康」志向となっている。また、その「健康」志向の徹底ぶりとしては、ローソンが先行し、セブン-イレブン、そしてファミリーマート、他チェーン店とつづく。
     
    現在、女性客を増やすために講じられている施策は、「主菜」「スープ」「スイーツ」のいった三本柱が多い。
     
    まずは、「主菜」である。
     
    コンビニエンスストアの商品ラインアップとして少量かつ主菜の商品が目立ってきた。この変化こそ、コンビニ各社が女性向けを意識している特徴だ。というのも男性の消費者と違って、女性は複数食品を食卓に並べたいニーズが高い。具体的には、男性は一品でもじゅうぶんとするひとがいるいっぽうで、女性は三品以上を並べたいと志向する。おかずではなく、食卓の主役としての三品が求められる。
    セブン-イレブンは煮物の魚だけではなく、焼き魚も用意しだしているし、冷凍中華だけではなく麻婆豆腐のような商品に力を入れている。さらに、タンシチュー、牛肉煮などもある。面白いのは、食卓の主役になるものの、かといって、まな板が汚れるほど本格的調理は不要な点だ。焼き魚は皿に乗せて温めればいいし、麻婆豆腐もボウルに入れればいい(そして温めるだけでは再現できないもの。たとえばトンカツなどは商品化されていない)。
    また、ローソンも店内調理商品を意識的に拡大しており、惣菜にくわえ、レジ横で調理する揚げ物等の販売が伸びている。これも女性たちの調理代替需要を狙う。
     
    また、サークルKサンクスでは女性客のニーズをつかむために、「ごちそうデリカ」を拡充している。これは季節ごとの食材を使った惣菜で、店舗にあるフライヤーを使ってカウンター前で販売する。家庭の食卓にそのまま並ぶ食材を目指し、スーパーからの需要を取り込む。これは小口需要も同時に狙っていて、1パック100~200円ていどで、重量は約100gとしている。これからも同社は、女性を中心とした客層拡大を目論む。
     
     
    次に、「スープ」である。
    また、このところ、とくに冬場においてコンビニ各社は、コーヒーとスープで女性客を惹きつけようとしている。当初はコンビニ各社とも試験的に導入したスープだったものの、ローソンの「海老のビスク」「北海道コーンのポタージュ」、サークルKサンクスの「三元豚の豚汁」「10品目のミネストローネスープ」「あさりと野菜のクラムチャウダー」などが、いずれも好調だった。スープ市場が好調な理由は、女性の昼食が変化していることにある。お弁当や定食屋でのランチから、具材を工夫しスープを昼食として消費されるケースが多くなった。
     
    そして、最後は「スイーツ」だ。
    おなじく、これまで男性客比率が大半だったチェーンは、スイーツを活用し女性客を獲得しようとする。この傾向は、ほぼすべてのチェーン店で見受けられる。
    たとえばミニストップはポップなロゴマークのいっぽうで、ほとんどの来客(約7割)は男性となっていた。そこで女性客の取り組みが急務だったため、スイーツに注目した。同社は2012年からアイスクリームを見直し、ソフトクリームの材料を改善したり、夕張メロンソフトを発表したり、プリンパフェなどを発売した。実際に女性客からの評判が上々だったため、これからも高付加価値型スイーツを志向していくだろう。
    また、セブン-イレブンは人気アイスクリームチェーンのコールド・ストーンとアイスクリームを共同開発し限定発売した。同社はコールド・ストーンとの連携でこれまでも商品を発売してきた。これはとくに10代~20代の若年女性層をねらったものだった。
     
     
    ■ 3.11が引き寄せた新しい消費者――2.「シニア」
     
    くわえて各社が力を入れるのは、シニアマーケットだ。おなじく各社の施策のうち代表的なものを抜粋してみよう。
     
    セブン-イレブンはネオ「御用聞き」サービスを開始した。これは買い物弱者ともいわれる高齢者層にたいして食事などの宅配を行うものだ。セブンミールから注文すれば近隣店舗が届けてくれる。セブン-イレブンでは、リアル店舗とネットなどをシームレスにつなぐ「オムニチャネル」化を進めている。ネットで注文したものをリアル店舗で受け取ったり、リアル店舗に欠品していた商品もその場で注文し自宅で受け取ったりできる仕組みを作っている。米ウォルマートが先行するオムニチャネルだが、今後、セブン-イレブンも同種の施策を進めていくだろう。
    また、ローソンは有料老人ホームに併設した店舗で高齢者向けサービスを開始した。佐賀市にあるローソンミズ木原店では、調剤薬局を抱え、商品ラインナップとしては介護関連商品や杖(!)、そしてカツラ(!!)までを揃える。
    ファミリーマートも高齢者向け宅配事業で先行するシニアライフクリエイトを買収し、ファミリーマートの弁当などをあわせて届ける仕組みを構築している。ローソンも佐川急便とタッグを組み、買い物弱者対策を進めている。
    その他の動きとして、サークルKサンクスは、女性とシニア(とくに高級志向をもつシニア層)向けに弁当販売を拡大するために、2013年よりデパ地下の惣菜売り場を手本とした施策を展開している。文字通り、手に取った瞬間にデパ地下のような高級感を醸成する目的で、デパ地下に強い業者とも連携した。
    またシニア層をターゲットにしたコンビニ各社は、おせち料理も変容させている。コンビニ各社は年末に「お一人さま用おせち」を発売して話題になった。セブン-イレブンがはじめた当コンセプト商品は、ファミリーマートとサークルKサンクスにもひろがった。これは単身者需要だけではなく、シニア層をターゲットにしたものだった。セブン-イレブンは、セブンミールなどを通じて高齢者からの注文を集め、またサークルKサンクスは「華GOZEN」という1980円の低価格おせちで訴求した。
     
     
    ■ 明確化した商品トレンド「健康志向」
     
    チェーン店を限定しないプライベートブランド商品でこのところ顕著なのが、パッケージに特徴を大きく表示方法だ。
    とくに女性層は食品にたいして比較優位性を求めるといわれるため、同層にアピールできるように「生きて腸まで届く乳酸菌入り」といったようにフォントを大きく表示する。これもおなじく健康志向の消費者にたいして、その健康メリットを強調するための工夫だ。
    実は、これまで述べたとおり、コンビニ各社が女性とシニアをターゲットに据えたとき、商品全体の健康志向トレンドが必然となったのである。各社とも、カロリーオフ商品、有機栽培、オーガニック、といったキーワードを全面に出すようになった。
     
    そのなかでも、この動きを意識的に加速しているのはローソンだ。「マチのほっとステーション」から「マチの健康ステーション」へと、ローソンはセルフメディケーションを事業の柱に打ち出した。医薬品の販売を開始する店舗を増やしたり、テレビ電話による健康相談も行ったりしている。さらには一部自治体と提携し、健康診断の受付窓口も担っている。ローソンは、事業そのものを健康主体に切り替えるという、きわめて成熟社会的企業と評することができる。
     
    その特徴は商品にも表出している。ローソンは2014年末に特定保健食品の許可を受けたパンやざるそばを発売した。糖質を抑えたパンや、血糖値を抑えるそばで、それら「ブランシリーズ」は同社のヒット商品となっている。これらは調理方法の工夫にくわえて、製粉会社と組んだ材料開発のたまものでもある。糖質制限の必要な消費者からの人気は高く、圧倒的なリピート率を誇る(公正に付け加えれば、これはローソンだけではなく、たとえば人気の商品として、糖質を抑えたファミリーマートの「国産小麦のブランロール」などがある)。
     
    これからも健康志向商品はたえまなく開発されていくだろうし、ファミリーマートが薬局とコンビニを併設するように、業態や店舗設計としても健康をキーワードとしたものが増加していく。
     
     
    ■ トレンドメーカーとしての覇者セブン-イレブン
     
    上の分析を見ても分かるように、既にコンビニ業界は独自の商品開発をはじめている。その先頭を一見して常に切っているように見えるのが、セブンイレブンだ。
     
    実際、コンビニエンスストア業界ではセブン-イレブンが先行した商品を、他社が後追いする傾向が続いてきた。たとえば、サラダをカップ状にしたのも、赤飯をおにぎりにしたのも、ツナマヨネーズを売りだしたのも、セブン-イレブンだった。これは本社の企画力としてセブン-イレブンが優位性を誇っていることを示す。
     
    ただし、生鮮食品を取り扱ったのは、ローソンが先行したし、惣菜もファミリーマートやローソンが先立った。その意味ではセブン-イレブンの優位性とは、先行していても後追いであっても、商品の改善力で圧倒的な品質の商品を具現化するところにある。むしろ我々はセブン-イレブンの改善力の高さにこそ注目したい。
     
    まず、セブン-イレブンの商品開発は同社主導でおこなわれる。
    たとえばセブン-イレブンではセブンカフェで100円コーヒーを販売しており、これがそれまでコーヒーチェーンに向かっていた需要を取り込みはじめた。この圧倒的な成功は、本社主導によって、複数メーカーを共同開発させたことにあった。カフェの豆は味の素ゼネラルフーヅが担当しており、コーヒー機は富士電機が担当していた。ほんらいは別々で開発が進むところを、本社主導で富士電機とともに味の素ゼネラルフーヅが最高の味が実現できるように徹底的に作りなおされた。さらに本社は富士電機にたいして2万台のコーヒー機をまとめ交渉し、導入コストを最適化したうえで全国のセブン-イレブンに納入した。
     
    このようにセブン-イレブンの手法は、まず商品コンセプトを提示し、手をあげたメーカー各社を競合させる仕組みだ。セブン-イレブンはメーカーの技術力をリサーチのうえで最大限の提案を引き出す。また、厳しい目標コストを提示する。高いレベルの商品仕様が決定しており、競争も激しいため、必然的にコストはギリギリまで抑えられる。
    コストの多寡によって売価を決定する方法を原価主義といい、逆に理想売価からコストを逆算する方法を非原価主義と呼ぶ。つまり「コストがいくらかかるか」を考えるのではなく「コストをいくらに抑えねばならない」と考える方法だ。
    セブン-イレブンは非原価主義によって、取引メーカーから最大限の強みを引き出しているといえるし、その徹底した状況からセブンプレミアムなどの高価値商品が生まれているともいえる。
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  • HANGOUT PLUSレポート 坂口孝則×宇野常寛「日本人はこれから何にお金を落とすのか」(2017年1月16日放送分)【毎週月曜配信】 ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.775 ☆

    2017-01-23 07:00  

    HANGOUT PLUSレポート
    坂口孝則×宇野常寛
    「日本人はこれから何にお金を落とすのか」
    【毎週月曜配信】
    ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
    2017.1.23 vol.775
    http://wakusei2nd.com


    毎週月曜夜にニコニコ生放送で放送中の、宇野常寛がナビゲーターをつとめる「HANGOUT PLUS」。2017年1月16日の放送では、日本テレビ系「スッキリ!!」で宇野と共演中の調達・購買コンサルタント坂口孝則さんをゲストにお迎えしました。坂口さんの新刊『日本人はこれから何にお金を落とすのか?』を主軸とした議論は、日本人の消費スタイルの変遷から、EC社会における新しい消費社会論の期待へと発展していきました。
    坂口孝則さんがご出演のHANGOUT PLUSの動画アーカイブはこちらからご覧いただけます。 PLANETSチャンネルで、J-WAVE 「THE HANGOUT」月曜日の後継となる宇野常寛のニコ生番組を放送中!
    〈HANGOUT PLUS〉番組に関する情報はこちら
    ▼ゲストプロフィール
    坂口孝則(さかぐち・たかのり)
    大学卒業後、メーカーの調達部門に配属される。調達・購買、原価企画を担当。バイヤーとして担当したのは200社以上。コスト削減、原価、仕入れ等の専門家としてテレビ、ラジオ等でも活躍。企業での講演も行う。
    「HANGOUT PLUS書き起こし」これまでの記事はこちらのリンクから。
    前回:HANGOUT PLUSレポート川田十夢×宇野常寛「新春うのとむ対談スペシャル 2017年の矢印を考える会」【毎週月曜日配信】
    ※このテキストは2017年1月16日放送の「HANGOUT PLUS」の内容のダイジェストです。
    ◎構成:村谷由香里
    ■日本人の消費の移り変わり
     坂口さんは著書『日本人はこれから何にお金を落とすのか?』の中で、過去60年間の日本人の消費スタイルを4段階に分けて論じています。自動車や家電などの量産品が好まれた「大量消費の時代」、ファッションなど他者との差別化に人々が関心を向けた「顕示消費の時代」、他者と繋がるために携帯電話などの通信にお金が費やされた「社会的消費の時代」。そして、その先に「宗教消費の時代」が到来すると予想しました。
     坂口さんによると、宗教消費とは、いわゆる「カリスマ」と呼ばれる存在に、人々がお金を費やす消費行動を意味します。近年では、ライブによるファンの動員や有料メールマガジンといった、新しいマネタイズの手法が一般化していることを指摘しつつ、興味深いポイントとして、かつては雲の上の存在だったカリスマが、等身大で身近に感じられる「凡人カリスマ」へと変化している点を挙げています。
     日本人の消費対象が〈モノ〉から〈コト〉へと移行しているとよく言われますが、坂口さんはさらにその先に〈コト〉から〈カタ〉(=方)への変化があると分析しています。世の中の見方を変えてくれるオピニオンリーダーにお金を払う傾向が、人々の間で強くなりつつあることから、今後はライブやメールマガジンといったコンテンツの内容そのものよりも、「この人にならお金を払ってもいい」という人間への信用が、消費に繋がるようになるだろうと論じました。

    【ここから先はチャンネル会員限定!】PLANETSの日刊メルマガ「ほぼ日刊惑星開発委員会」は今月も厳選された記事を多数配信します! すでに配信済みの記事一覧は下記リンクから更新されていきます。
    http://ch.nicovideo.jp/wakusei2nd/blomaga/201701
     
  • 東京オリンピックが3日あればパニックに?――晴海地区は物流網における危機管理の盲点か(坂口孝則)/無料公開 ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 号外☆

    2015-09-17 17:00  

    東京オリンピックが3日あればパニックに?――晴海地区は物流網における危機管理の盲点か(坂口孝則)/無料公開
    ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
    2015.9.17 号外
    http://wakusei2nd.com


    2020年の東京五輪計画と近未来の日本像について4つの視点から徹底的に考えた一大提言特集『PLANETS vol.9 東京2020 オルタナティブ・オリンピック・プロジェクト』(以下、『P9』)。その『P9』の中から、特に多くの人に読んでほしい記事をチョイスし、10日連続で無料公開していきます。

    第4弾となる今回はコンサルタント・坂口孝則さんによる論考です。
    物流・インフラは巨大都市・東京の生命線。これを断ち切られれば、東京は途端に呼吸困難に陥るはず――湾岸地帯を中心として開催される東京オリンピックの物流・インフラの弱点を探ります。

    『PLANETS vol.9』連続無料公
  • 3.11が発見した新しい消費者像――コンビニエンスストアの商品戦略と展開から(坂口孝則) ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.332 ☆

    2015-05-28 07:00  

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    3.11が発見した新しい消費者像――コンビニエンスストアの商品戦略と展開から(坂口孝則)
    ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
    2015.5.28 vol.332
    http://wakusei2nd.com

     

    本日のメルマガは、調達・購買コンサルタントの坂口孝則さんによる論考です。テーマは「コンビニの文化地図」。すっかり私たちの生活に浸透し、プライベートブランド商品の開発や地域インフラ化などでも注目されるコンビニ業界。消費者ターゲティングのトレンド、商品開発、そして各社ごとの今後の取り組みまで、「文化としてのコンビニ」について考えます。
     
    ▼執筆者プロフィール
    坂口孝則(さかぐち・たかのり)
    調達・購買コンサルタント/未来調達研究所株式会社取締役/講演家。2001年、大阪大学経済学部卒業。電機メーカー、自動車メーカーに勤務。原価企画、調達・購買、資材部門に従業。2012年、未来調達研究所株式会社取締役就任。製造業を中心としたコンサルティングを行う。著書に『製造業の現場バイヤーが教える調達力・購買力の基礎を身につける本』(日刊工業新聞社)、『モチベーションで仕事はできない』(ベスト新書)、『仕事の速い人は150字で資料を作り3分でプレゼンする。「計って」「数えて」「記録する」業務分析術』(幻冬舎)など。
     
     
    ■ 社会のインフラとなったコンビニ
     
    ビジネスパーソンがスーツ姿でスーパーに行くのは躊躇しても、コンビニエンスストアならば行ける。パジャマ姿の女性がスーパーに行くのは逡巡するものの、コンビニエンスストアになら行ける。ちょっとした買い物から、日用品まで、私たちの生活はコンビニエンスストアと切り離せない。
     
    コンビニは現在1年間で約25,000人ものひとたちがストーカー被害、DV、不審者などから逃げ込むインフラとしての役割もある。さまざまな意味で私たちに身近なコンビニでは、どのような取り組みが行われ、コンビニはどこに向かおうとしているのか。
     
    そこで本稿では、まずはコンビニ各社が行う消費者ターゲティングの現在を分析した上で、各社の今後をめぐる展開の、その背後に見える大きなトレンドを探していく。
    高齢化と少子化、世帯の共働き化によって、消費者は近くの店舗で、仕事帰りに手間のいらない多様な食品を買い求める。コンビニは「冷蔵庫のアウトソーシングから」「キッチンのアウトソーシング」までを請け負うために、各社は日本最高の物流システムと、POSデータ等による商品企画を進めてきた。
    セブン-イレブンやローソンの戦略を見るのは、日本流通先端の状況を見ることでもある。
     
     
    ■ コンビニを取り巻く状況
     
    個別の戦略を見る前に、まずはコンビニ業界を取り巻く状況を確認したい。
     
    昨年末(2014年12月末)のコンビニ店舗数を見てみよう。日本全体に5万5139店ものコンビニエンスストアがある。業界1位はセブン-イレブンの1万7206店。そこからだいぶ差があり、2位はローソンの1万2119店、3位はファミリーマートの1万1170店だ。その後、サークルK、サンクス……と続く。ただし、それ以下は桁数も異なるため、コンビニ3強と称される場合が多い。
    コンビニは現在、市場規模約10兆円だ。これから、スーパーとの競争激化のすえ、スーパー(GMS含む)の市場規模20兆円弱の1割をさらに奪えば、まだ2兆円ほどの成長余地が残されている。消費税増税後は伸びが鈍化しているとはいえ、コンビニ3強の鼻息は荒い。
     
    コンビニの発祥については、大阪マミーとする説(昭和44年)、ココストアとする説(昭和46年)、セブンイレブンとする説(昭和49年)がある。
    マミーはスーパーマーケットとする向きもあるため、有力なのはココストアとする説だ。当時、スーパーマーケットの台頭で酒屋がどこも経営的な不調に呻吟していた。ココストアはいわば、彼らの救済を目的として組織され、酒屋の活性化を志向した。そして日本におけるコンビニエンスストアは他の小売フォーマットを凌駕して成長してきた。
     
    しかし、コンビニは、もちろん安穏とした状況にはない。
    これまで勝利してきたスーパーマーケットからの攻勢もある。とくにイオン「まいばすけっと」はコンビニエンスストアなみの敷地面積で、プライベートブランド「トップバリュ」を武器に低価格帯で闘いを挑んでいる。「まいばすけっと」を含む戦略的小型店事業の経営状況は良く、イオン本体との圧倒的なボリュームで、低価格・低コストを実現させてきた。イトーヨーカドーもこの小規模、低価格帯で進出を加速している。
     
    その中で、コンビニ業界各社が近年重視しているターゲティング戦略から、話を始めたい。それは、3.11をキッカケにしたものだった。
     
     
    ■ 3.11が引き寄せた新しい消費者――1.「女性」
     
    2011年の大震災時、これまでコンビニと縁遠かった層が来店し、それがリピートにつながった。同時にコンビニ各社も女性やシニアに焦点をあわせて集客戦略を練ってきた。全国の約5000万世帯のうち、共働き世帯が1000万世帯に至り、構成員が減少するなか、時短かつ少量をもとめる消費者にコンビニが照準を合わすのは当然だった。
     
    大手各社とも、戦略に違いはあるものの、前述の理由から、ターゲット消費者として大きく「女性」「シニア」を外すチェーンは見当たらない。そしてそのターゲティングゆえ、商品トレンドとしては、必然的に「健康」志向となっている。また、その「健康」志向の徹底ぶりとしては、ローソンが先行し、セブン-イレブン、そしてファミリーマート、他チェーン店とつづく。
     
    現在、女性客を増やすために講じられている施策は、「主菜」「スープ」「スイーツ」のいった三本柱が多い。
     
    まずは、「主菜」である。
     
    コンビニエンスストアの商品ラインアップとして少量かつ主菜の商品が目立ってきた。この変化こそ、コンビニ各社が女性向けを意識している特徴だ。というのも男性の消費者と違って、女性は複数食品を食卓に並べたいニーズが高い。具体的には、男性は一品でもじゅうぶんとするひとがいるいっぽうで、女性は三品以上を並べたいと志向する。おかずではなく、食卓の主役としての三品が求められる。
    セブン-イレブンは煮物の魚だけではなく、焼き魚も用意しだしているし、冷凍中華だけではなく麻婆豆腐のような商品に力を入れている。さらに、タンシチュー、牛肉煮などもある。面白いのは、食卓の主役になるものの、かといって、まな板が汚れるほど本格的調理は不要な点だ。焼き魚は皿に乗せて温めればいいし、麻婆豆腐もボウルに入れればいい(そして温めるだけでは再現できないもの。たとえばトンカツなどは商品化されていない)。
    また、ローソンも店内調理商品を意識的に拡大しており、惣菜にくわえ、レジ横で調理する揚げ物等の販売が伸びている。これも女性たちの調理代替需要を狙う。
     
    また、サークルKサンクスでは女性客のニーズをつかむために、「ごちそうデリカ」を拡充している。これは季節ごとの食材を使った惣菜で、店舗にあるフライヤーを使ってカウンター前で販売する。家庭の食卓にそのまま並ぶ食材を目指し、スーパーからの需要を取り込む。これは小口需要も同時に狙っていて、1パック100~200円ていどで、重量は約100gとしている。これからも同社は、女性を中心とした客層拡大を目論む。
     
     
    次に、「スープ」である。
    また、このところ、とくに冬場においてコンビニ各社は、コーヒーとスープで女性客を惹きつけようとしている。当初はコンビニ各社とも試験的に導入したスープだったものの、ローソンの「海老のビスク」「北海道コーンのポタージュ」、サークルKサンクスの「三元豚の豚汁」「10品目のミネストローネスープ」「あさりと野菜のクラムチャウダー」などが、いずれも好調だった。スープ市場が好調な理由は、女性の昼食が変化していることにある。お弁当や定食屋でのランチから、具材を工夫しスープを昼食として消費されるケースが多くなった。
     
    そして、最後は「スイーツ」だ。
    おなじく、これまで男性客比率が大半だったチェーンは、スイーツを活用し女性客を獲得しようとする。この傾向は、ほぼすべてのチェーン店で見受けられる。
    たとえばミニストップはポップなロゴマークのいっぽうで、ほとんどの来客(約7割)は男性となっていた。そこで女性客の取り組みが急務だったため、スイーツに注目した。同社は2012年からアイスクリームを見直し、ソフトクリームの材料を改善したり、夕張メロンソフトを発表したり、プリンパフェなどを発売した。実際に女性客からの評判が上々だったため、これからも高付加価値型スイーツを志向していくだろう。
    また、セブン-イレブンは人気アイスクリームチェーンのコールド・ストーンとアイスクリームを共同開発し限定発売した。同社はコールド・ストーンとの連携でこれまでも商品を発売してきた。これはとくに10代~20代の若年女性層をねらったものだった。
     
     
    ■ 3.11が引き寄せた新しい消費者――2.「シニア」
     
    くわえて各社が力を入れるのは、シニアマーケットだ。おなじく各社の施策のうち代表的なものを抜粋してみよう。
     
    セブン-イレブンはネオ「御用聞き」サービスを開始した。これは買い物弱者ともいわれる高齢者層にたいして食事などの宅配を行うものだ。セブンミールから注文すれば近隣店舗が届けてくれる。セブン-イレブンでは、リアル店舗とネットなどをシームレスにつなぐ「オムニチャネル」化を進めている。ネットで注文したものをリアル店舗で受け取ったり、リアル店舗に欠品していた商品もその場で注文し自宅で受け取ったりできる仕組みを作っている。米ウォルマートが先行するオムニチャネルだが、今後、セブン-イレブンも同種の施策を進めていくだろう。
    また、ローソンは有料老人ホームに併設した店舗で高齢者向けサービスを開始した。佐賀市にあるローソンミズ木原店では、調剤薬局を抱え、商品ラインナップとしては介護関連商品や杖(!)、そしてカツラ(!!)までを揃える。
    ファミリーマートも高齢者向け宅配事業で先行するシニアライフクリエイトを買収し、ファミリーマートの弁当などをあわせて届ける仕組みを構築している。ローソンも佐川急便とタッグを組み、買い物弱者対策を進めている。
    その他の動きとして、サークルKサンクスは、女性とシニア(とくに高級志向をもつシニア層)向けに弁当販売を拡大するために、2013年よりデパ地下の惣菜売り場を手本とした施策を展開している。文字通り、手に取った瞬間にデパ地下のような高級感を醸成する目的で、デパ地下に強い業者とも連携した。
    またシニア層をターゲットにしたコンビニ各社は、おせち料理も変容させている。コンビニ各社は年末に「お一人さま用おせち」を発売して話題になった。セブン-イレブンがはじめた当コンセプト商品は、ファミリーマートとサークルKサンクスにもひろがった。これは単身者需要だけではなく、シニア層をターゲットにしたものだった。セブン-イレブンは、セブンミールなどを通じて高齢者からの注文を集め、またサークルKサンクスは「華GOZEN」という1980円の低価格おせちで訴求した。
     
     
    ■ 明確化した商品トレンド「健康志向」
     
    チェーン店を限定しないプライベートブランド商品でこのところ顕著なのが、パッケージに特徴を大きく表示方法だ。
    とくに女性層は食品にたいして比較優位性を求めるといわれるため、同層にアピールできるように「生きて腸まで届く乳酸菌入り」といったようにフォントを大きく表示する。これもおなじく健康志向の消費者にたいして、その健康メリットを強調するための工夫だ。
    実は、これまで述べたとおり、コンビニ各社が女性とシニアをターゲットに据えたとき、商品全体の健康志向トレンドが必然となったのである。各社とも、カロリーオフ商品、有機栽培、オーガニック、といったキーワードを全面に出すようになった。
     
    そのなかでも、この動きを意識的に加速しているのはローソンだ。「マチのほっとステーション」から「マチの健康ステーション」へと、ローソンはセルフメディケーションを事業の柱に打ち出した。医薬品の販売を開始する店舗を増やしたり、テレビ電話による健康相談も行ったりしている。さらには一部自治体と提携し、健康診断の受付窓口も担っている。ローソンは、事業そのものを健康主体に切り替えるという、きわめて成熟社会的企業と評することができる。
     
    その特徴は商品にも表出している。ローソンは2014年末に特定保健食品の許可を受けたパンやざるそばを発売した。糖質を抑えたパンや、血糖値を抑えるそばで、それら「ブランシリーズ」は同社のヒット商品となっている。これらは調理方法の工夫にくわえて、製粉会社と組んだ材料開発のたまものでもある。糖質制限の必要な消費者からの人気は高く、圧倒的なリピート率を誇る(公正に付け加えれば、これはローソンだけではなく、たとえば人気の商品として、糖質を抑えたファミリーマートの「国産小麦のブランロール」などがある)。
     
    これからも健康志向商品はたえまなく開発されていくだろうし、ファミリーマートが薬局とコンビニを併設するように、業態や店舗設計としても健康をキーワードとしたものが増加していく。
     
     
    ■ トレンドメーカーとしての覇者セブン-イレブン
     
    上の分析を見ても分かるように、既にコンビニ業界は独自の商品開発をはじめている。その先頭を一見して常に切っているように見えるのが、セブンイレブンだ。
     
    実際、コンビニエンスストア業界ではセブン-イレブンが先行した商品を、他社が後追いする傾向が続いてきた。たとえば、サラダをカップ状にしたのも、赤飯をおにぎりにしたのも、ツナマヨネーズを売りだしたのも、セブン-イレブンだった。これは本社の企画力としてセブン-イレブンが優位性を誇っていることを示す。
     
    ただし、生鮮食品を取り扱ったのは、ローソンが先行したし、惣菜もファミリーマートやローソンが先立った。その意味ではセブン-イレブンの優位性とは、先行していても後追いであっても、商品の改善力で圧倒的な品質の商品を具現化するところにある。むしろ我々はセブン-イレブンの改善力の高さにこそ注目したい。
     
    まず、セブン-イレブンの商品開発は同社主導でおこなわれる。
    たとえばセブン-イレブンではセブンカフェで100円コーヒーを販売しており、これがそれまでコーヒーチェーンに向かっていた需要を取り込みはじめた。この圧倒的な成功は、本社主導によって、複数メーカーを共同開発させたことにあった。カフェの豆は味の素ゼネラルフーヅが担当しており、コーヒー機は富士電機が担当していた。ほんらいは別々で開発が進むところを、本社主導で富士電機とともに味の素ゼネラルフーヅが最高の味が実現できるように徹底的に作りなおされた。さらに本社は富士電機にたいして2万台のコーヒー機をまとめ交渉し、導入コストを最適化したうえで全国のセブン-イレブンに納入した。
     
    このようにセブン-イレブンの手法は、まず商品コンセプトを提示し、手をあげたメーカー各社を競合させる仕組みだ。セブン-イレブンはメーカーの技術力をリサーチのうえで最大限の提案を引き出す。また、厳しい目標コストを提示する。高いレベルの商品仕様が決定しており、競争も激しいため、必然的にコストはギリギリまで抑えられる。
    コストの多寡によって売価を決定する方法を原価主義といい、逆に理想売価からコストを逆算する方法を非原価主義と呼ぶ。つまり「コストがいくらかかるか」を考えるのではなく「コストをいくらに抑えねばならない」と考える方法だ。
    セブン-イレブンは非原価主義によって、取引メーカーから最大限の強みを引き出しているといえるし、その徹底した状況からセブンプレミアムなどの高価値商品が生まれているともいえる。
     
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