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記事 50件
  • 「幸福」の数値化によって社会はどう変わるのか|矢野和男

    2020-10-06 07:00  
    550pt

    今朝のメルマガは、イベント「遅いインターネット会議」の冒頭60分間の書き起こしをお届けします。本日は、株式会社日立製作所フェローの矢野和男さんをゲストにお迎えした「多様化する〈幸福〉とテクノロジー」の後編です。「ハピネス関係度」という幸福の数値化が可能になったことで、どのような変化が起きていくのでしょうか。そして、with/afterコロナ時代における幸福追求のあり方とは何なのでしょうか。(放送日:2020年8月25日)※本イベントのアーカイブ動画の前半30分はこちらから。後半30分はこちらから。
    【本日開催!】10/6(火)矢島里佳「〈伝統のアップデート〉でなにをもたらすか」全国の職人と共にオリジナル商品を生み出し、伝統工芸を新しいかたちで暮らしの中に提供する矢島里佳さん。「伝統や先人の智慧」と「今を生きる私たちの感性」を「混ぜる」のではなく「和える」というコンセプトを掲げた“0歳からの伝統ブランド aeru”をはじめ、独自のスタイルでの〈伝統のアップデート〉の取り組みが目指すものについて、じっくりと伺います。生放送のご視聴はこちらから!
    遅いインターネット会議 2020.8.25「幸福」の数値化によって社会はどう変わるのか|矢野和男
    「幸福」という新たな物差しとは

    牧野 このアプリケーション「Happiness Planet」を約3週間、4,000人に使っていただいたところ、「HERO」の数字、すなわち持続的に変え得るハピネスの数字が、標準偏差100%のうち、33%向上しました。実はこれと業績との換算式が学問的に知られていまして、この換算式に入れると、10パーセントの営業利益向上に相当するということで、大変大きな数字になるわけです。


     実際に去年からいくつかの会社で有償で使い始めて、これはいけるということで、7月に「ハピネスプラネット」という会社を作りました。これは組織俯瞰マップという、組織全体を2軸で表現したものに、ある組織の4つのチームのポジションをマッピングしたものです。今月はどうだった、来月はどうなるか、といったことがリアルタイムに評価できます。

     もうひとつは「孤立した人を作らない」ということが組織のオペレーションとしては非常に大事なんです。孤立した人がパフォーマンスが出ないとか不幸になる、うつ病になるということではないんです。孤立した人がいると、その人だけじゃなく、職場全体のパフォーマンスが下がってしまう。ここで雨模様と表示されているのはそういう孤立した人ですが、このアプリではセンサーを使って、そういう人をケアして、現場をよりよくするためのツールも提供しています。

     あと、リモートワークになったときに、計画的、意識的な会議や報告はメールや電話やウェブ会議などでできますが、雑談的なものが非常にやりにくくなっています。雑談的なものが少なくなると、先ほどの4ヶ条すべてが下がるんです。そうなると、問題やトラブルや、ちょっとした調整が必要なことが放置されたりして、組織全体がうまくいかなくなってしまうんですね。

     そこで、このアプリの中に「プチ報連相」という機能を入れました。一般的なSNSも、社内SNSでも、やたらドミナントな人が発信して、ほとんどの人が発信せずにリードオンリーになりがちなんですが、この機能は非常に平等性を重んじていて、1日1回しか発信できないんです。先ほどの4ヶ条に基づいて、ちょっとした気付きや、チャレンジしようとしていること、昨日見た面白かった映画とか、そういうことを通して、チームの一体感を高めている。我々も毎日活用していますし、日立でも社員700人でこれを活用して、リモートワークを活性化するという取り組みをやっています。





     いわゆるハピネスは、従来の宗教や哲学ではなく、データやサイエンスに基づいて計測し、オリンピックの記録のように常に改善できるもので、そのための鍵が計測と可視化です。そのプラットフォームとなっているデバイスはスマホなので、10億人以上の人が持っていて、アプリをダウンロードすれば生産性の改善にもつながっていく。この幸せ、および幸せをドライブしている尺度は、「ディグリーエッヂ」といって、日本語で言うと「ドエッヂ」になっちゃうので一応英語にしてるんですが、あらゆることのものさしになると思っています。


     例えば、就職するときには幸せを生んでいるような会社に入りたいでしょうし、取引先としてもそっちの方がいいと思います。また、サービスを受けたり、導入したり、改善しようとするときにもこういう定量的な尺度が役に立ちます。


     あるいはマンションを買うときに、間取りとか駅からの距離よりも、そのマンションに住んでいる人が、お互いに周りの人を幸せにするような人たちなのかということのほうが大事ですよね。他にも、小売、融資、保険でも、幸せな人を優遇しポイントをつける小売、あるいは幸せな人への融資の金利を下げたり、保険料を下げるといったことをすれば、定量的なインセンティブによって世の中の幸せの度合いを上げていくことができるかなと思っています。

     というわけで、20世紀はモノをきっちり送り出すこと自体が大事だったので、人を機械の部品のように扱うような仕組みができてしまったのですが、いよいよそういうことを見直す契機がコロナ禍によって訪れたのかなと思っています。人というものを、自らの幸せを求めたり、誰かを幸せにすることで幸せを得たりする、心を持った存在として真正面から捉えることで、企業や社会の動かし方を見直す時なのではないかと思っています。
    withアフターコロナ時代における幸福の追求とは
    長谷川 ありがとうございます、矢野さんの話を受けて、宇野さんいかがでしょうか?
    宇野 非常に刺激的なお話でした。矢野さんにたくさん伺いたいことがあるので、スライドを振り返りながら聞いてもいいですか?

     いちばん最初に深堀りしたいと思ったのは、スライドの5枚目ですね。ここで、「幸せ」という言葉が初めて出てきますが、この幸せって何なんでしょうか。今のお話の範囲では、幸せとは「人間が高いパフォーマンスを発揮できる心理状態にあること」みたいな定義になるんでしょうか?
    矢野 ちょっと違うと思いますね。確かに結果的にはパフォーマンスが高いことになります。ただ、幸せには色んな定義がありますが、私は先ほどの生化学的な現象というのが非常にわかりやすい定義だと思っています。
    宇野 ある人間が特定の状態になる生化学現象を幸せという、その定義でずっとお話されていて、それは一貫していて共感するんですが、言葉を扱っている人間として僕個人の意見は、ここで「幸せ」という言葉を使わない方がいいんじゃないかと思っているんですよ。つまりこの状態にあったとしても、自分のことを幸福だと思わない人がいるのではないかというのが、僕の率直な疑問なんですけど、そこはいかがですか?
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  • 多様化する〈幸福〉とテクノロジー|矢野和男

    2020-10-05 07:00  
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    今朝のメルマガは、イベント「遅いインターネット会議」の冒頭60分間の書き起こしをお届けします。本日は、株式会社日立製作所フェローの矢野和男さんをゲストにお迎えした「多様化する〈幸福〉とテクノロジー」の前編です。著書『データの見えざる手』から6年。新会社ハピネスプラネットをリードし、「幸福の可視化技術」を追求する矢野和男さんと一緒に、データサイエンスを前提とした社会における人間の「幸せ」について議論します。(放送日:2020年8月25日)※本イベントのアーカイブ動画の前半30分はこちらから。後半30分はこちらから。
    【次回『遅いインターネット会議』のお知らせ】10/6(火)矢島里佳「〈伝統のアップデート〉でなにをもたらすか」全国の職人と共にオリジナル商品を生み出し、伝統工芸を新しいかたちで暮らしの中に提供する矢島里佳さん。「伝統や先人の智慧」と「今を生きる私たちの感性」を「混ぜる」のではなく「和える」というコンセプトを掲げた“0歳からの伝統ブランド aeru”をはじめ、独自のスタイルでの〈伝統のアップデート〉の取り組みが目指すものについて、じっくりと伺います。生放送のご視聴はこちらから!
    遅いインターネット会議 2020.8.25多様化する〈幸福〉とテクノロジー|矢野和男
    長谷川 こんばんは。本日ファシリテーターを務めます、モメンタム・ホースの長谷川リョーです。
    宇野 こんばんは。PLANTSの宇野常寛です。
    長谷川 遅いインターネット会議、この企画では政治からサブカルチャーまで、そしてビジネスからアートまで、様々な分野の講師をお招きしてお届けします。本日は、有楽町にある三菱地所さんのコワーキングスペースSAAIからお送りしています。本来であれば、トークイベントとしてこの場を共有したかったのですが、当面の間は新型コロナウイルスの感染防止の為、動画配信と形式を変更しております。今日もよろしくお願いいたします。それではゲストの方をご紹介します。今日のゲストは日立製作所フェローの矢野和男さんです。よろしくお願いします。
    矢野 よろしくお願いします。 
    宇野 よろしくお願いします。日立製作所フェローのまま、もう1つ肩書が加わっている感じですか? 
    矢野 そうなんです。一応フェローのままで、今回新しくハピネスプラネットという会社を作りまして、そこの代表になりました。
    長谷川 さて、本日のテーマは「多様化する〈幸福〉とテクノロジー」です。著書『データの見えざる手』(草思社)から6年。今日は、新会社ハピネスプラネットをリードし、幸福の可視化技術を追求する矢野和男さんと一緒に、データサイエンスを前提とした社会における人間の幸せについて議論したいと思います。
    宇野 まさにこの『データの見えざる手』っていう本が出たときに、僕は矢野さんの研究がものすごく面白いなと思ってインタビューを申し込んで、根掘り葉掘り聞かせていただいたんです。そこから5年経って、日立でずっと進められていた研究を、より広い社会に発信していこう、ビジネスを作っていこうということで新会社ハピネスプラネットをこの度設立されたわけですが、このタイミングで、ここ5年分のアップデートについてたっぷりと伺いたいと思っております。改めてよろしくお願いします。
    矢野 よろしくお願いします。
    多様化する幸福のあり方とは何か
    長谷川 それでは早速議論に入っていきたいと思います。今日は大きく二部構成でお届けします。まず前半では、今年6月に設立されたハピネスプラネットを中心にしつつ、矢野さんのこれまでのご活動についてお話をお伺いしたいと思います。後半では「withアフターコロナ時代における幸福の追求とは」というテーマで議論したいと思います。ということで、さっそく矢野さんからハピネスプラネットでの新しい取り組みについてお話をお伺いしてもよろしいでしょうか。

    矢野 わかりました。それではスライドで説明したいと思います。改めまして、矢野と申します。私、日立に入って36年になるんですが、幸せというテーマで仕事をするようになった必然性は全くなかったんです。「人生波乗りだ」って私はしょっちゅう言ってるんですが、入社してから20年ぐらい半導体の研究開発をやっていて、たまたま日立が半導体の事業を辞めたので、仕方なく違う分野の仕事をしなきゃいけないっていう状況になりまして。そこでこの幸せというテーマに携わるようになりました。
    宇野 そうなんですか。じゃあ、日本のものづくり産業が沈没していなければ、矢野さんは今のお仕事はされていなかったんですね。
    矢野 そうですね、ずっと半導体やっていましたからね。日立がその中でもわりと早く撤退して、20年間で培ってきた人脈やスキルを一旦すべてリセットすることになって。頼るものがなくなり先が何にも見えなかったので、大きくデータを扱うことを始めたらどうなるかなと妄想したんです。その時に目標が必要になるわけですが、たまたま私、学生時代からヒルティの『幸福論』(岩波書店、白水社)が大変好きだったので、幸福というテーマを扱い始めました。それがひとつの大きなきっかけになっています。

     先ほどお話しした、半導体をやっていたような頃は、きっちりいいものを作れば誰かが買ってくれるという時代だったと思うんです。ところが21世紀に入って豊かになり、一人ひとりが違うものを求めていますし、同じ人でも明日になると違うモノを欲しがるようになる。さらに、生きがいが必要だとか、あるいは人の役に立ちたいといった要求がより上になっている中で、まさに需要が複雑に変化し、多様性を認めないと価値が生まれないという状況になっていると思います。

     今まさにコロナでこういう変化が顕在化していると思うんですが、未来は予測不可能であるということに、企業も社会も国も全くまともに向き合っていない。ドラッカーが「未来について我々が知っていることは2つしかない。1つは、未来は知りえない。未来は我々が知っているものとも、予測するものとも違う」と言っていますが、これで終わってるんですよね。日立もそうですけど、ほとんどの企業は未来はある程度予測できる、計画できるという前提でやってるんです。

     そこで、前提を書き換えて、未来のことはわからないということを前提に、やってみないとわからないことは、ちゃんとやってみて、そこから学ぶというフローを繰り返すという、実験と学習をベースにしたほうがいいと私は考えています。私自身、20年間やってきた分野がいきなり断たれて、新しいことを始めなきゃいけないという時にまったく先が見えなかった中で、日々この実験と学習をやってきたわけです。

     この実験と学習をするということにおいては、今までのように作ったルールを守る、従うのではなく、常に廃棄し上書きするという仕事のやり方になります。でも、そのためには非常に精神的なエネルギーが必要なわけです。1998年にアメリカの心理学会でポジティブ心理学が始まってから、この20年ぐらい、幸せやポジティブな人間の行動に関する科学が非常に盛んになっていて、心理学にとどまらず経営学や組織行動、経済学に至るまで、今までのようなノイローゼだとかうつ病なんかを研究するような学問から、もっともっとポジティブなほうに移っています。幸せな人たちは生産性も高くクリエイティビティも高く、健康で離職しにくく、離婚もしにくく、幸せな人が多い会社は一株あたりの利益も18%も高い。幸せだから生産性が高いのであって、その逆ではないということもわかってきた。さらに、この中でどういう要因が効果的か、どういう要因が訓練や学習によって高められるかということも明らかになってきた。つまり、テクノロジーでリアルタイムで計測し、改善することが可能になってきたということです。
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  • YouTubeとNetflixは世界をどう変えるのか|明石ガクト

    2020-08-04 07:00  
    550pt

    今朝のメルマガは、イベント「遅いインターネット会議」の冒頭60分間の書き起こしをお届けします。本日は、明石ガクトさんをゲストにお迎えした「YouTubeとNetflixは世界をどう変えるのか」です。YouTubeやNetflixなどの映像配信プラットフォームの台頭により、エンターテイメントの世界が大きな変容を迎える中、今後求められる映像コンテンツとはなにか。そして、それらのコンテンツは、どのように受容され、文化の地図をどう牽引していくのでしょうか。明石さんと考えます。(放送日:2020年7月7日)※本イベントのアーカイブ動画の前半30分はこちらから。後半30分はこちらから。
    【本日開催!】8月4日(火)19:30〜「思想としての発酵/発酵する思考」(ゲスト:小倉ヒラク)話題をあつめた『発酵文化人類学』や、各地のユニークな発酵食品を集めた専門店「発酵デパートメント」の開業など、世界でただひとりの「発酵デザイナー」として精力的に活動する小倉ヒラクさん。味噌や醤油、ヨーグルトに醸造酒と、人類が古来から豊かな食文化を築くために活用してきた微生物たちの「発酵」という活動には、どんな叡智が隠されているのか。そして多彩な発酵食品や醸造文化との付き合い方を見つめ直すことで、現代人の生活をどう豊かにしていけるのか。目に見えないものたちとの協働が育む思考や世界各地の発酵文化の魅力など、「発酵」を通じて見えてくる社会とライフスタイルへの気づきについて、たっぷりと学んでいきます。生放送のご視聴はこちらから!
    遅いインターネット会議 2020.7.7YouTubeとNetflixは世界をどう変えるのか|明石ガクト
    長谷川 こんばんは、本日ファシリテーターを務めます、モメンタム・ホースの長谷川リョーです。
    宇野 はい、みなさん、こんばんは。PLANETSの宇野常寛です。
    長谷川 「遅いインターネット会議」。この企画では政治からサブカルチャーまで、そしてビジネスからアートまで、様々な分野の講師をお招きしてお届けしております。本日は有楽町にある三菱地所さんのコワーキングスペース、SAAIからお送りしています。本来であれば、トークイベントとしてこの場を皆さんと共有したかったんですけれども、当面の間は新型コロナ感染防止のため動画配信と形式を変更しております。今日もよろしくお願いします。それではさっそくゲストの方をご紹介いたします。今日のゲストはワンメディア株式会社代表取締役の明石ガクトさんです。
    明石 よろしくお願いします。
    宇野 よろしくお願いします。
    明石 いやぁもうね、ほんとはここで割れんばかりの歓声と拍手。
    宇野 そう、僕の想定では猪木コールばりの、割れんばかりのガクトコールで始まる予定だったんですけど(笑)。
    明石 「ガクト! ガクト!」って感じになるはずが(笑)。
    宇野 そのはずが、まさかの無観客ですよ。
    明石 マジっすね、ほんと。
    宇野 僕ら、半年近く無観客やってるので、恐るべきことに無観客にこそ慣れつつある。
    明石 しかし、この広大な空間で無観客だと、短パン履いてきたことが間違いだったなってくらい足がスースーしますね(笑)。
    宇野 ちなみに僕も短パンで、ハセリョーはジャージ。有楽町でこんな格好してる3人組ってもう僕たちだけですよ(笑)。
    明石 ほんと、3密とは程遠い空間で(笑)。
    宇野 下半身から疎な感じで行こうかなと思ってます。
    明石 未来感じますね。
    宇野 間違いなく最先端なんで頑張って、気合入れていきましょう。
    長谷川 さて、本日のテーマですが、「YouTubeとNetflixは世界をどう変えるか」です。YouTubeやNetflixなどの映像配信プラットフォームの台頭により、エンターテインメントの世界は大きな変容を迎えております。今後、求められる動画コンテンツとは何か。私たちはそれをどのように受容し、楽しむことができるのか。それらのコンテンツは文化の地図をどのように牽引していくのか。動画制作のプロフェッショナルである明石ガクトさんと議論していきたいと思います。
    宇野 以前、明石さんが『動画2.0』という本を出したときにPLANETSチャンネルの番組に来ていただいて、いろいろ話したわけですよ。自分の著書『遅いインターネット』で引用させてもらったんだけど、20世紀を代表した劇映画というカルチャーが、インターネットの中で大きく変質していて、今や動画はコミュニケーションツールのひとつに過ぎないのだ、ということを「映像から動画へ」というキラーフレーズで表現していたのがあの本だった。あれから2年ぐらい経ったのかな?
    明石 そうですね、ちょうど2年くらいですね。
    宇野 この一連のコロナ騒ぎが起きてステイホームの時代になったことが、あの本が予言していた状況を決定的に後押ししたと思うんです。そこで今日は、このタイミングでもう一度、明石さんと議論の続きをしたいなと思ってお呼びしました。
    明石 いや、めっちゃありがたいですね。宇野さんほど、あの本で本当に言いたかったことを汲んでくれている人はいないです。いかに日本人の読解力が下がってるかっていうこともあるのかもしれないけど(笑)。「映像から動画」みたいなテーマの時には、みんな表面的なことを聞きたがるんですよ。けれども、宇野さんが今言ったように「動画はコミュニケーションツールのひとつになる」っていうことを、あの本では言いたかったんです。今まさにコロナ禍で大きな変化が起こっている中で、そのコミュニケーションツールとしての動画の役割が先鋭化してきている。そういうことを「これから動画に起きる10の変化」としてまとめていて、この後スライドにも出てくるんですけど、今日はそのあたりのことをたっぷり語り合いたいなと思っています。
    宇野 はい。よろしくお願いします。
    「withコロナ時代」において動画コンテンツ、ビジネスはどう変化するか
    長谷川 それではさっそく議論に入っていきたいと思います。本日は2部構成で番組をお届けします。前半では「with コロナ時代」において動画コンテンツ、ビジネスはどう変化していくのか議論していきたいと思います。後半では、これからの動画を考えるうえで、重要になる作品を5つ挙げていただき、それについて話していきたいと思います。ではまず、最初にコロナショックを受けて、これからの動画業界にどのような変化が起きるのか、動画コンテンツ、ビジネスはどう変化していくのかについて、明石さんからお話を伺いたいと思います。

    明石 いまお見せしている、この「The STORY MAKERS」というスライドを何のために作ったのかっていうと、コロナショックでONE MEDIAの仕事がめっちゃ飛んだんですよ。
    宇野 やっぱり飛ぶんですね。
    明石 具体的な金額をあえて言ってしまうと、3.8億円くらい飛んだんですよね。4〜5月の間、宇野さんとは別の収録で一回会ったんですけど、僕は本当にすごく暗かったんです。会社が潰れるかもしれない状況なんで暗くなるんですけど(笑)。
    宇野 そうですよね(笑)。
    明石 そこから復活するためには、「動画」とか言っていても仕方ないんじゃないかって思ったんです。要は、動画ってほとんどの人にとって、いわゆる不要不急のもので、もっと本質的なものに立ち返らなければいけない。それで作ったスライドを今日は持ってきています。

     それで、いろいろやろうと思って、最初にNewsPicksの記事を書きました。もう、困ったときのNewsPicks、みたいな感じで記事寄稿したんですが、これがすごいバズって。今、左下に「バズるは古い」って書いてあって自己矛盾がすごいんですが(笑)。
    宇野 これいいっすねぇ(笑)。
    明石 けっこう読まれた記事で、この中でいろんな表面的なテクニックみたいなものを書いているんですけど、本質的なメッセージとしては、「VUCA」の時代です。

     もともとは軍事用語として使われている言葉なんですが、今って不確定な時代で、いろんなものが複雑になっているから未来予測が非常に困難になっていくよね、ということです。たとえば、70年代、動画コンテンツ、映像コンテンツの世界では、レスラーが空手チョップをやるだけで群衆がワーッと沸き立ち、ウルトラマンがスペシウム光線を出すだけでキッズは大盛り上がりだったんです。そこと比べると、今の『仮面ライダー』や戦隊ものって、半端なく複雑になっているじゃないですか。これはビジネスにおいてもそうで、どんどん世の中の複雑性が増していて、何が当たるのかもわからなくなっている。

     そういう時代に、コロナショックが起きた。それで、最初に述べたように僕の会社も、飲食業界、旅行業界やいろんなところが大変なことになったんです。

     このスライド、イーロンマスクのロケットが打ちあがった瞬間の写真を使ってるんですよ(笑)。
    宇野 それ説明されなきゃわからないですよ(笑)。
    明石 僕、この打ち上げの写真を見ながら「動画とかって必要なのかな」とか考えちゃったんです。もっと言うと、僕らはクリエイティブを作る会社なので、絶対に打ち合わせが必要だと思っていました。会議室に集まって、ホワイトボードにワーッと書いた中からいいアイデアをひねり出そうとやっていたのが、コロナショックでみんなが在宅勤務になって、できなくなってしまった。それで、Zoomでやってみたら、意外とオンライン会議の方がアイデアが出るんです。オンラインの方が会議室の上座と下座みたいな概念もないし、偉そうにふんぞり返ってるだけじゃダメだから自分で意見を言わなきゃ、と思うようになって、むしろうちのクリエイティブが息を吹き返してきた。本質的には、いい議論が必要なのであって、ホワイトボードを使ったりして長時間の打ち合わせをする必要はなかったんです。それで、そういったエッセンシャルなものに向かっていかなきゃいけないと思ったんですね。
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  • 「2020年以降」の経済と、個人の生存戦略 | 山口揚平

    2020-07-20 07:00  
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    今朝のメルマガは、イベント「遅いインターネット会議」の冒頭60分間の書き起こしをお届けします。山口揚平さんをゲストにお迎えした「『2020年以降』の経済と、個人の生存戦略」です。新型コロナウイルスによるパンデミックによって、2020年以降の経済はいかに変わっていくのか。そして、変わりゆく時代を生き抜くための生存戦略を考えます。(放送日:2020年6月16日)※本イベントのアーカイブ動画の前半30分はこちらから。後半30分はこちらから。
    【明日開催!】7月21日(火)19:30〜「現象としての保守とインターネット(遅いインターネット会議)」(ゲスト:石戸諭)新著『ルポ 百田尚樹現象』で、この国の右派ポピュリズムの現在に迫った石戸さん。「新しい歴史教科書をつくる会」から百田尚樹「現象」へ、引き継がれたものとはなにか。この国の「普通の人たち」の本質に迫る議論を試みます。生放送のご視聴はこちらから!
    遅いインターネット会議 2020.6.16「2020年以降」の経済と、個人の生存戦略 | 山口揚平
    長谷川 司会を務めます、モメンタムホースの長谷川リョ―です。
    宇野 こんばんは。宇野常寛です。
    長谷川 この企画は、本来であれば有楽町コワーキングスペース三菱地所SAAIからトークイベントとしてみなさんにお届けしたかったのですが、当面の間は新型コロナの感染防止のため動画配信へと変更しています。それではゲストの方を紹介します。今日のゲストはブルーマリンパートナーズ株式会社代表取締役の山口揚平さんです。よろしくお願いします。
    山口 よろしくお願いします。
    長谷川 さて、本日のテーマは「2020年以降の経済と個人の生存戦略」です。新型コロナウイルスによるパンデミックは世界経済と社会生活をどう変えているのか。この危機を個人はどう生き抜くことができるのか。大きな構造の問題から小さな生活の問題まで議論していきたいと思います。
    宇野 コロナ禍に関してはこのイベント『遅いインターネット会議』シリーズでも、うちのほかの媒体でもだいぶ扱っていて、コロナ危機そのものを、どうやって感染を防いでいくのかといった議論をしてきました。今日は視点を変えて、コロナ禍によってわれわれの生活がどう変わったのか、経済構造をベースに考えていけたらと思って、山口さんに来ていただきました。改めて、今日はよろしくお願いします。
    山口 よろしくお願いします。1年ぶりですね。
    宇野 山口さんはこの1年、どうだったんですか?
    山口 変わらないですね。服も実は同じなんです(笑)。
    宇野 安定の山口さんですね(笑)。
    山口 宇野さんも変わらず。
    宇野 ぼくは……なんとか生きてるって感じです(笑)。
    山口 私は、最近髪の毛が心配なんですよね。
    宇野 そうですね。でも受け入れて生きていこうかなと思ってます。
    山口 いやいや、宇野さんは髪の毛大丈夫じゃないですか。
    宇野 そんなことないですよ。ぼくは家系を辿っていくと危険なので、常に怯えながら生きているんですが、怯えに慣れることをちょっと覚えようかなと思ってます。むしろ、こんなに残ってくれてありがとう、と思えるような日々の感謝みたいなところにたどり着きたいなと思って生きてます(笑)。
    山口 難しい(笑)。
    宇野 それでは、リョ―君よろしく。
    世界の産業構造はどう変わるのか?
    長谷川 それでは、さっそく議論に入っていきたいと思います。今日は全部で10個の質問を準備してきました。それらの質問を通じて、withコロナ時代に貨幣や経済のあり方がどう変わっていくのか。そしてわたしたちが時代を生き抜いていく方法を考えたいと思います。
     まず1つ目の質問は、「世界の産業構造はどう変わるのか?」です。今年3月に公開された記事では、山口さんは新旧産業の交代は2025年であり、一番辛いのはガラガラと崩れていく2020年の後半から2023年までの3年間です、と仰っていましたが、現在この予測は変わっていますか?
    山口 これは、今から5年前に渋谷ヒカリエで行われた「Tokyo Work Design Week」に登壇した際に、書いたものなんですが、今でも変わっていません。産業構造とか社会構造は常にじわじわと変化しています。2015年ぐらいからピークアウトが始まっていて、当時から「これはやばいぞ、2020年から本格的にアウトだ」と予測していました。当時オリンピックがある予定だったので、オリンピックまではこの国もなんとかするけれど、オリンピック後はもうイベントがない。なので、2020〜2021年に停滞し、2022〜2023年で産業・社会構造が崩壊します。そして、2024〜2025年で新しいものが立ち上がってくると考えていて、今もその考えは変わってないですね。
     でも、ある意味でラッキーだったのはオリンピックじゃなくてウイルスがやってきたこと。日本全体の産業構造にとってはラッキーだったんです。みんな違和感を持ってたと思うんですが、日本にそのままオリンピックが来ていたら、そのまま観光立国になってた可能性があるんです。ところが、どこの国にとっても観光立国っていうのは最後の道。今日はあえて経済的視点から見るということで言うと、歴史の産物、つまり過去の人々が作ってきてくれた遺物、レガシーをチラ見せして売るような産業構造になっちゃう訳です。それが1年遅れ、場合によってはないかもしれない。日本は最終手段を取らず、頑張らなくちゃいけなくなったわけです。この点が一番ポイントかなというふうに思っています。
     産業構造の転換は、シンプルに考えられます。自動車および部品、電機産業といった、昔でいうところの加工貿易産業が、日本経済のだいたい10%ぐらい、日本の経済はざっというと500兆円ですから、そのうちの50兆円を加工貿易産業が占めているんです。つるっとした数字なんですけれども、全体を見るときに、こういう数字を覚えておくことはとても大事なことです。貨幣は二次元、三次元と使うわけですが、一次元、つまり単なる数字として見るんです。500兆円ってなんか大きいなっていう感じで、単なる数字で見る。若い人が見てると思うので、この貨幣に関しては後で話すんですけれども、いくつか覚えておくべきものがあるんです。
     この国のGDPは500兆円なんです。GDPというのは売り上げだと思ってください。そのうちの10%が自動車関連産業。つまりトヨタとその周辺が50兆円。それに付随することを考えると、なんだかんだで20%から30%を自動車の販売に頼ってるんです。あとは、内需やサービス業と、いろいろあるんですけど、観光は20兆円ぐらいなので、1/25くらいなんですね。だから、観光立国なんて言ってても誰も食えない。そういう話です。
     冷たい印象があるけど、全体観を持っているといいことがあります。
     もう一つの数字としては、約5000万人が働いている国だと思ってください。本当は6300万人ですけど、減っていくので5000万人だと思ってください。5000万人のうち500万人が自動車工場で働いていたり、保険を売ったり、中古車ディーラーで食べている。けっこうな規模なんですが、トヨタが減収80%、ホンダが赤字ということで、自動車産業はもう崩れちゃっているわけです。そうすると、これが日本の基幹産業だから、もう大変なことになるんです。こうなると、社会保障、医療だとか身の回りのことや生活保護が大切、と言う話になっていきます。
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  • 長谷川リョー 考えるを考える 第19回 前例なき道を、自ら切り拓く。MaaSスタートアップのインハウスロイヤー・南知果氏が構想する“ロビイング2.0”とは?

    2019-10-07 07:00  
    550pt

    編集者・ライターの長谷川リョーが、(ある情報を持っている)専門家ではなく深く思考をしている人々に話を伺っていくシリーズ『考えるを考える』。今回インタビューするのは、モビリティ・プラットフォーム『CREW』を運営する株式会社Azitの"インハウス・ロイヤー"(企業内弁護士)として、パブリックアフェアーズ・法務を担当する弁護士の南知果氏。 未だ厳しい規制が残っている国内の交通産業において、CREWを任意の謝礼で成り立つ「互助モビリティ」と定義し、市場を切り拓いてきたスタートアップ・Azit。南氏は、大手の弁護士事務所でキャリアをスタートし、創業間もない法律事務所ZeLoを経て、2019年6月にAzitにジョインしました。利益誘導ではなく「未来の共創」を目指す“ロビイング2.0”構想から、インハウスロイヤーが普及して多様化する弁護士のキャリア、また大手事務所とスタートアップのカルチャーギャップまで伺い、南氏の「激しく動き、自ら道を切り拓く」“激動型”の思考に迫ります。(構成:小池真幸)
    利益誘導ではなく「未来の共創」。“ロビイング2.0”構想とは?
    長谷川 まず、南さんが現在Azitのインハウス・ロイヤーとしてどのような活動をされているのか、教えていただけますか?
    南 活動内容は、社内向けの業務と社外向けの取り組みの2種類に大別されます。社内向けでは、一般的な企業の法務担当と同じように、あらゆる事業部からの法律相談を受けています。
    CREWのモデルは、法律を遵守することが非常に重要な領域です。地方で実証実験をするために、少しスキームをアレンジしようとするだけでも、すぐに法律に引っ掛かってしまう。そうした法律観点での是非を判断したり、アプリの文言をはじめ、外に出す文言をチェックしたりしています。
    長谷川 ビジネスサイドからの要望が、法律的にグレーだった場合はどう対応しているのでしょうか?
    南 かなり慎重に意思決定していますね。センシティブな領域ゆえに、リスクを取って良いことはないと思っているので。
    長谷川 法律の分野は、前例を踏襲する形で意思決定が行われるイメージもあります。Azitのように、新しくて前例がない領域では、どのように意思決定しているのでしょう?

    南 おっしゃる通り、基本的に前例はありません。専門家に相談はしつつも、法律の主旨や解釈を細かく検討し、慎重に判断していますね。
    長谷川 一歩ずつ丁寧に前進していくしかないのですね。社外向けには、どのような取り組みを?
    南 官公庁や地方自治体の方々にCREWの取組みを知ってもらうべく、ロビー活動を行なっています。
    長谷川 「ロビー活動」という言葉を使うことに、抵抗はないのでしょうか?アメリカなどでは一般的に使われていますが、日本ではややネガティブなイメージを持たれている印象もあります。
    南 めちゃくちゃ使っていますね(笑)。たしかに日本だと、利益誘導のようなイメージを持たれることも多いのですが、実際にやっていることは「未来についての話し合い」です。
    ロビー活動のイメージをアップデートしていきたくて。いわば“ロビイング2.0”ですね。シェアリンングエコノミー伝道師の石山アンジュさんと一緒に手がけている「PMI(Public Meets Innovation)」でも、よくそんな議論をしています。
    長谷川 なぜロビイング2.0が必要なのでしょうか?
    南 パブリックな観点で本気で日本を良くしようとしている官僚の方々が、実際に企業が何を考えてどういったビジネスを進めようとしているのを知らないのは、もったいないと思うんです。そのギャップを埋めるべく、最先端のテクノロジーの状況や、それに基づくビジネス構想を伝えています。
    CREWについての話題が出たとき、「そんな違法なサービスがあるなんてけしからん」とならないように、CREWの取り組み内容やビジネスモデルを前もって説明しておいたり。「道路交通法の許可なしにヒトがヒトを運送するって、そもそもどういうこと?」といった懸念事項に対し、一つひとつ丁寧に説明し、「ファンを増やしている」感覚です。
    事前に知っておいてもらうことで、もし万が一なにか問題が起きたとしても、正しく理解してもらえる可能性が高まります。

    長谷川 なるほど。法律の変化などにも、常にキャッチアップしながら動かれているのですよね?
    南 おっしゃる通りです。法律はこの先も刻々と変わっていくので、常に情報収集しながら動き続けていますね。国会のスケジュールを見れば、法案が書かれたり審議会が実施されたりする時期は分かるので、そうしたタイミングにあわせて動いています。
    たとえば「自家用有償旅客運送」と呼ばれる、交通空白地で自家用車を使い、人の運送を助ける制度があります。次の国会で法改正がなされる予定になっていますが、交通課題を抱える地方ではよく話題になることもあり、注目しています。
    大手事務所で感じた“限界”。スタートアップの世界に足を踏み入れた理由
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  • 今夜20:00から生放送!松島倫明×宇野常寛「実験都市WIRED特区から未来を考える」2019.9.10/PLANETS the BLUEPRINT

    2019-09-10 08:30  
    今夜20時から生放送!「PLANETS the BLUEPRINT」では、 毎回ゲストをお招きして、1つのイシューについて複合的な角度から議論し、 未来の青写真を一緒に作り上げていきます。 今回お迎えするのは、世界的なテック系オピニオン誌として有名な
    「WIRED」日本版編集長の松島倫明さん。
    昨年11月の就任でUS版創刊の25周年記念特大号として同誌をリブートさせて以降、
    国内外のフューチャリストたちを結集し、
    「New Economy」「Digital Well-being」「Mirror World」と、
    毎号次々と先端的な未来像を提示して注目を集めています。
    来る9月13日には「ナラティヴと実装」をテーマにした最新号vol.34の発売を
    控える「WIRED」日本版。
    番組では、リブート後の同誌が提示してきたビジョンを振り返りつつ、
    テクノロジーがカルチャーやライフスタイルをどう変え
  • 今夜20:00から生放送!最上和子×宇野常寛「映像は身体を表現し得るか ──ドーム映像『HIRUKO』をめぐって」2019.8.27/PLANETS the BLUEPRINT

    2019-08-27 07:30  
    今夜20時から生放送!「PLANETS the BLUEPRINT」では、 毎回ゲストをお招きして、1つのイシューについて複合的な角度から議論し、 未来の青写真を一緒に作り上げていきます。 今回のゲストは、舞踏家の最上和子さん。身体の内奥からの表現を追求する「原初舞踏」の担い手であり、アニメーション監督の押井守さんの実姉としても知られる最上さんは、現在公開中のドーム映像作品「HIRUKO」で主演を務めています。同作が試みる舞踏表現と映像メディアの融合のほか、最上さんが取り組んできた様々な活動の来歴を通して、現代を生きる私たちの「身体観」の問題を深く議論していきます。 ▼放送日時放送日時:本日8月27日(火)20:00〜☆☆放送URLはこちら☆☆
    ▼出演者最上和子(原初舞踏家) 宇野常寛(評論家 / 批評誌「PLANETS」編集長) ファシリテーター:長谷川リョー(編集者 / 株式会社モメン
  • 長谷川リョー 考えるを考える 第18回「世界最難関」のミネルバ大学にパスした初の日本人、片山晴菜が見据える新しい「教育」

    2019-08-26 07:00  
    550pt

    編集者・ライターの長谷川リョーが、(ある情報を持っている)専門家ではなく深く思考をしている人々に話を伺っていくシリーズ『考えるを考える』。今回インタビューするのは、合格率わずか1.9%、世界最難関と言われているミネルバ大学に、日本人として初めて合格した片山晴菜さん。同大学の生徒は、4年間で世界7都市を移動し、オンラインで授業を受けながら、各地で地元の公共団体やNPO、企業と連携して社会課題の解決に取り組みます。 スタートアップライクに「教育を再定義」するミネルバ大学とは、一体どのような場所なのでしょうか。アメリカでも異例の手厚い選考プロセスを経て、ディスカッション重視の「反転学習」で学び、日常的に“生殖の未来”を議論する一方、都市探索で過去と対話するユニークなキャンパスライフ。片山さんが構想する、“超エリート”と地方を架橋し、「想像力の格差」を解消する新しい「高校」の全容から、正義が乱立するサンフランシスコで身につけた、「目の前にあるものを、目に見える形で見ない」思考法まで迫ります。(構成:小池真幸)
    ディスカッション重視の教育を、属人性を排したかたちで。ミネルバ大学で実施される「反転学習」とは?
    長谷川 まずは、ミネルバ大学について聞かせてください。世界7都市を移動しながら、オンラインで授業を受けているんですよね?キャンパスのない大学、ということでしょうか。
    片山 はい。一応サンフランシスコに本拠地はありますが、ミーティングルームしかない、ただのオフィスです。

    片山 移動先の都市での、行動スケジュールも組まれています。今後グローバル化が進み、ますます世界が狭くなっていくなかで、さまざまな人たちと共同生活をしていかなければいけなくなるはず。そうした環境変化を背景に、「どうせキャンパスにいる必要がないのであれば、みんなで一緒に動いてください」と、他の文化に接する機会を持たせてくれているんです。
    長谷川 オンラインの授業は、どういったスタイルで行われているのですか?MOOCのようなイメージでしょうか。
    片山 「反転授業」という形式を取っています。事前に資料や課題を読み込んできたうえで、授業の最初に理解度を確認する記述式のテストを実施します。そのテストで一定の結果を残せなければ、出席とみなされないんです。
    授業のメインはディスカッションです。成績評価のためのテストがないので、議論で良い発言をしないと、平常点がもらえません。授業が行われるオンラインプラットフォームには、先生たちのファシリテーションをアシストしてくれる機能もあります。時間を見て「ディスカッションを一回やめて次に行きましょう」とナビゲートしてくれたり、生徒の発言量などが表示されたりするんです。たとえば発言量が少ない生徒には赤い枠が、多い生徒には緑の枠が映ります。
    長谷川 知識の習得は授業前に済ませ、授業ではディスカッションに集中しているんですね。ファシリテーションがシステム化されている点も面白い。
    片山 全体的に「属人化した教えにしない」思想で運営されており、授業の流れも、あらかじめ定められています。もちろん個々の教師の経験則はシェアされるべきですが、だからといって、教育の質に差が出てしまうと困るので。
    授業後は毎回、先生たちがそれぞれの生徒にフィードバックをコメントしなければいけないのですが、その評価も属人化しないように。個々のスキルに対する判断基準がしっかりと定められています。
    長谷川 先生はどういった人たちなのでしょう?一般的な大学と同じように、博士課程を取っている方が多いのでしょうか。
    片山 そうですね、多い印象はあります。先生方は、現在も教育に従事している方と、そうでない方がいらっしゃいます。前者はスタンフォード大学など他の学校でも教えている研究職または教授職の方、後者は現役の経営者やNGO運営者、または以前教育機関に従事していた方が多いです。どちらかといえば、前者の現役研究職または教授職の方が多い印象がありますね。
    アメリカでも異例、3フェーズの手厚い選考プロセス。徹底した公平性の担保と、「全世界70〜80ヶ国」の多様性
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  • 今夜20:00から生放送!音喜多駿はなぜ国政へ挑戦したのか 2019年夏、参院選を振り返る/音喜多駿×宇野常寛 2019.7.23 PLANETS the BLUEPRINT

    2019-07-23 07:30  
    「PLANETS the BLUEPRINT」では、毎回ゲストをお招きして、1つのイシューについて複合的な角度から議論し、未来の青写真を一緒に作り上げていきます。
    今回は、参院選で当選した音喜多駿さんを迎えて、
    その内容を振り返る放送を行います。 音喜多さんは、参院選をどう戦ったのか。
    日本社会の行く末を、一緒に議論します。
    ▼放送日時放送日時:本日7月23日(火)20:00〜☆☆放送URLはこちら☆☆
    ▼出演者音喜多駿 宇野常寛ファシリテーター:長谷川リョー(編集者・モメンタムホース代表)
    ハッシュタグは #ブループリント
    ゲストへの質問など、番組へのお便りはこちらから!
    番組終了後、延長戦をPLANETS CLUBで配信します! PLANETS CLUBについて詳しくはこちら
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  • 長谷川リョー 考えるを考える 第17回 “ことば”こそが、葛藤を「意志」に変える。cotree・櫻本真理が目指す、優しさが伝播する社会

    2019-07-10 07:00  
    550pt

    編集者・ライターの僕・長谷川リョーが(ある情報を持っている)専門家ではなく深く思考をしている人々に話を伺っていくシリーズ『考えるを考える』。今回は、個人向けオンラインカウンセリングサービス『cotree(コトリー)』や、経営者のメンタルを支えるコーチングプログラム『escort(エスコート)』を運営する株式会社cotreeの代表・櫻本真理氏にお話を伺います。前職時代に自らが体調を崩した際、メンタルクリニックで十分なケアを受けられず苦しんだ経験から、2014年5月に起業し、同年10月にはcotreeをスタート。2018年11月には、連続起業家・家入一真氏が率いるベンチャーキャピタル・NOWと連携してescortの提供を開始しました。 「やさしさでつながる社会をつくる」を企業理念に据え、様々なサービスを展開する櫻本氏は、「心理学だけでも、社会学だけでも不十分。内面と外部環境のバランスを探求し、“適切なストレス”と付き合うことが大切だ」と語ります。薬による対症療法が蔓延るメンタルヘルス業界の問題点や「マッチング」の意義。アウシュビッツでも幸福度を高く保てた人の意外な共通点、さらには現代における「親和動機」への注目度の高まりまで、葛藤を「意志」に変える“ことば”を重視する櫻本氏の思考に迫りました。(構成:小池真幸)
    薬による対処療法だけでは不十分。メンタルサポートを求める人と、サービスを提供したい専門家を架橋するcotree
    長谷川 実は僕、昨年すこしメンタルの調子を崩していたんです。その時期、まさに当事者としてcotreeが気になっていたので、今日はお話伺えるのを楽しみにしていました。そもそも、どういったきっかけで作ったサービスなのでしょうか?
    櫻本 きっかけは自分自身の体験です。証券会社でアナリストとして働いていたときに、軽い睡眠障害になってしまったことがありました。病院に行ったところ、対処療法的に症状を抑える薬を処方してもらえるだけで、あまり話を聞いてもらえなくて。
    だけど薬だけで治る気がしなかったんですよね。生活の不調や環境との不一致といったストレス要因を抱えているからこそ、病気になるはずなのに、そうした背景を無視して症状だけ抑えても意味がないなと。

    櫻本 一方で、大学で心理学を専攻していた縁もあり、臨床心理士の知人たちが十分に満足できる待遇で働けていない現状も知っていました。「十分なメンタルケアサービスが流通していない一方で、カウンセラーは働き口に困っている。これってバランス悪いよな」と思い、メンタルのサポートを必要としている人と、サポートを提供したい人をつなげるべく、cotreeを作ったんです。だいたい4年半前の話ですね。
    長谷川 cotreeは、どのように使われることが多いのでしょうか?恒久的に使っていくイメージなのか、治るまでの何回かだけ利用するものなのか。
    櫻本 できれば卒業してもらうのが理想ですね。cotreeは、ご自身の課題を認識してもらい、解決するための行動変容を起こせるようになるためのサポートを行うサービス。一定期間を経てカウンセラーやコーチのことばがインストールされ、「もう自分で立って歩けるね」と思える状態になれば、卒業してもらうことになります。
    でもやっぱり、人生の中でまたしんどい場面は出てくるじゃないですか。そのときに、「そうだ、cotreeがあった」とまた使ってもらえるのが理想ですね。利用者さんに「何かあったら帰れる実家のような存在」と言ってもらったことがありますが、その表現はとても気に入っています。
    長谷川 ゆるやかにアテンションを維持し続けるイメージでしょうか。Netflixのように直接的に会員数を積み上げていくのではなく、「いつでも帰って来られる」コミュニティを広げていくと。
    櫻本 そうですね。何もないのが一番ですが、「何かあったらcotree」と思ってもらえるような存在を目指しています。

    長谷川 メンタルヘルス系のサービスって、他の人に「メンタル崩してたときに、これ使ってみて良かったよ」と伝えづらいイメージがあります。口コミではどの程度広がっているのでしょうか?
    櫻本 本当におっしゃる通りで。ローンチから数年は、SNSでの発信量は相当少なかったです。やっぱりみんな、自分のことを弱いと思われたくないんです。弱さを想起するカウンセリングについて発信するのは、憚られるのでしょう。
    ただ最近は、空気が変わってきたと思います。カウンセリングだけでなくコーチングをはじめたことや、そうしたサービスに対する認知も広まってきて、SNSなどで「cotreeのサービスよかった」と発信いただく機会がとても増えました。
    長谷川 コーチングは、cotreeで提供しているカウンセリングとはどう違うのでしょうか?
    櫻本 本質的には変わらないと思っています。「カウンセリングは課題を解決する、過去を扱う、マイナスをゼロにするためのもの。対してコーチングは目標を達成する、未来を扱う、ゼロをイチにするためのもの」と言われることもありますが、そんなシンプルに白黒つけられるものではありません。
    カウンセリングやコーチングは、人がより良い生き方をするために、専門的な対話能力を持った他者が壁打ち相手として伴走するものです。カウンセリングの中にもコーチング的な場面がありますし、コーチングの中にもカウンセリング的な場面はある。そもそもコーチングはカウンセリングから出てきたものですし、学問流派の便宜上、分けてきただけだと思います。呼び方よりも関わり方が大事です。
    個別の理論の良し悪しは問題ではない。cotreeが「マッチング」を最重視している理由
    長谷川 最近ではカウンセリングやコーチングに限らず、「U理論」や「メンタルモデル」など、人間の内面にフォーカスを当てた議論が増えている印象があります。こうした潮流については、どう思われますか?
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