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記事 3件
  • 山下優 波紋を編む本屋 第2回 書店は文化なのか

    2019-05-21 07:00  
    540pt

    青山ブックセンター本店・店長の山下優さんによる連載『波紋を編む本屋』。第2回では、書店が文化の一端を担うためにはどうしたらよいのか? 「人のつながり」という視点から考えます。
    撮影:森川亮太
    街から書店が消えていくと惜しまれることが多いですが、その惜しまれ方には違和感を感じています。青山ブックセンター本店も2回ほど、閉店、倒産の憂き目にあっている。昨年、六本木店が閉店した際も、ウェブサイトの閲覧が多かったため、サーバが落ちたり、SNSでも多くの反響がありました。
    そう、書店は閉店したり経営母体が変わったりするのです。なぜか。当たり前ですけど、書店も商売、ビジネスの一つだからです。今さら何を、と感じられるかもしれませんが、書店の数が全盛時より減っていくにつれ、書店の存在自体が文化と捉えられているような、その感じ方、惜しまれ方に違和感を感じています。日本では、書店に税金が投入されているわけでもありませんし、税制の優遇もありません。
    (たしかに、最近はポイント施策等によるグレーゾーンもありますけれども)、基本的には再販制度(再販売価格維持制度)によって、書籍は、書店、コンビニ、ECサイトなど、どこでも一律で同価格で販売されています。日本書籍出版協会によれば「出版物再販制度は全国の読者に多種多様な出版物を同一価格で提供していくために不可欠なものであり、また文字・活字文化の振興上、書籍・雑誌は基本的な文化資産であり、自国の文化水準を維持するために、重要な役割を果たしています。」(一般社団法人日本書籍出版協会ホームページ、読者のみなさまへより)と述べられています。個人的にも本全般と出版は紛れもなく文化だと思っています。
    では改めて、書店は文化なのか。NOであり、YESともいえます。なぜNOかと言えば、書店が、そこにただあるという存在自体だけでは、文化とは言えないからです。YESと言うためには、様々な本を実際に並べる場を生かし、読みつがれてきた本を引き継ぎつつ、さらに未来を切り開いていこう書店員の意志があってこそ、書店は本の文化の一端を担っているといえるのではないでしょうか。

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  • 【新連載】山下優 波紋を編む本屋 第1回 なぜ書店員として発信を始めようと思ったのか

    2019-04-03 07:00  
    540pt

    今日から、青山ブックセンター本店・店長の山下優さんによる新連載『波紋を編む本屋』が始まります。出版不況の中、青山ブックセンターの快進撃を支える若き店長が、これからの書店文化について多角的に論じます。
    ▲青山ブックセンター本店・店長 山下優さん(撮影:森川亮太)
    はじめまして。青山ブックセンター本店、店長の山下です。「どうして書店員になったのですか」。よく訊かれるのですが、特別に本が大好きだった訳でも、強く志していた訳ではありませんでした。6歳から18歳までは、サッカー漬けの日々でした。その間の読書といえば、恥ずかしいやら、もったいないやら、サッカー漫画やいわゆる話題書、実家にあった『真田太平記』『鬼平犯科帳』『沈黙の艦隊』が主な読書歴でした。大学に入ってからの読書量は、ジャンルと量が増えたものの、日々アルバイトに明け暮れ、お金が貯まったらロンドンやニューヨークに行って、レコードを買っていたインディーのバンドのライブを観るということを繰り返していました。当時は、ふんわりと雑誌の編集や音楽のレーベル運営に興味があったくらいで、強烈に何かになりたい、何かをやりたいといったことがなかったことがコンプレックスでもありました。そんな自分が、洋雑誌の取扱いが多いからと、本当に何気なく働き始めたのが青山ブックセンターでした。そこで、書店という「場」を編集し、これから青山ブックセンターが始めようとしている出版事業において、ある種のレーベルを立ち上げることができるようになりました。恵まれた人生だと思っています。おこがましいかもしれませんが、なにかしらの形で自身の経験を世に還元したいと思っていたところ、PLANETSから連載のお話を頂きました。書くことだけからはずっと逃げてきたひとりの書店員が日々感じることを中心に、書店や出版というものについて、現場にいる人間だからだからこそ伝えていけるられる内容にしたいと思っています。どうぞおつき合いください。
    撮影:森川亮太
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  • 宇野常寛 NewsX vol.10 ゲスト:山下優&兼頭啓悟「これからの本屋さんの話をしよう」【毎週金曜配信】

    2018-12-07 07:00  
    540pt

    宇野常寛が火曜日のキャスターを担当する番組「NewsX」(dTVチャンネル・ひかりTVチャンネル+にて放送中)の書き起こしをお届けします。11月6日に放送されたvol.10のテーマは「これからの本屋さんの話をしよう」。青山ブックセンター本店の山下優さん、銀座 蔦屋書店の兼頭啓悟さんをゲストに迎え、近年衰退著しい書店文化の現状と、人と本との未知のつながりを生み出す、創造的空間としての書店の可能性について語り合いました。(構成:籔和馬)
    NewsX vol.10「これからの本屋さんの話をしよう」2018年11月6日放送ゲスト:山下優(青山ブックセンター本店勤務)、兼頭啓悟(銀座 蔦屋書店勤務) アシスタント:加藤るみ(タレント) アーカイブ動画はこちら
    宇野常寛の担当する「NewsX」火曜日は毎週22:00より、dTVチャンネル、ひかりTVチャンネル+で生放送中です。アーカイブ動画は、「PLANETSチャンネル」「PLANETS CLUB」でも視聴できます。ご入会方法についての詳細は、以下のページをご覧ください。 ・PLANETSチャンネル ・PLANETS CLUB
    衰退・均質化する書店業界、その原因とは
    加藤 NewsX火曜日、今日のゲストは青山ブックセンター本店の山下優さん、銀座 蔦屋書店の兼頭啓悟さんです。山下さんのほうから簡単に自己紹介をお願いします。
    山下 渋谷と表参道の間にある青山ブックセンター本店で、ショップディレクターとして働いております。棚入れをしたり、イベントを企画運営したり、最近は出張販売もしたり、いろいろな仕事をやっています。
    加藤 では、兼頭さんもお願いします。
    兼頭 去年オープンしたGINZA SIXにある、銀座 蔦屋書店で働いております。肩書きとしてはワークスタイルコンシェルジュと、雑誌コンシェルジュをやっております。
    加藤 今日のトークのテーマは「これからの本屋さんの話をしよう」です。宇野さん、こちらのテーマの意図は?
    宇野 この二人は書店という場を愛していて、本が好きで、壊滅しようとしている出版業界と書店業界をどうにかしようとあがいている人たちなんだよね。僕がやっていることにも理解があるし、応援してくれている二人なんだよ。それに、社会や街にとって、書店は大事なものだと俺は思うんだよね。だから、書店があることによって僕らの生活がどう豊かになるのかという話まで、今日はつなげていけたらなと思っています。
    加藤 今日も三つのキーワードでトークしていきます。まずひとつ目は「いま、本屋さんが抱えている問題とは」です。山下さん、いかがですか?
    山下 ずっと言われているんですけど、どの本屋さんに行っても同じ本が推されているし、同じ本しか売っていない。それらは全国ランキングとかで、単純に売れたから置いている。というのが一番問題だなと思っています。要するに、すごい均質化しているなと感じています。たしかに売れる可能性は高いし、楽だし、効率的ではあるんですけど、それによってお客様が本屋に一番求めているものをどんどん失っているのが現状かなと考えています。
    加藤 兼頭さんはいかがでしょうか?
    兼頭 僕も似たような問題意識がありますね。棚=人が僕の持論なんですけど、棚がどんどんシステム化、効率化しているんです。転職して今の会社にいるんですけど、前の会社にいたときにすごく感じていました。本を扱う問屋さんがあって、書店が発注していなくても毎日勝手に売れ筋の本が入ってくるんです。会社の本部からもこれを置きなさいという一括注文があって、それが勝手に送られてきて、それを効率よくいかに並べるかというゲームになっているのが、どの本屋でも品揃えが変わらないことの根本の原因です。それに人員不足をシステムで補う構造的な問題がすごい大きいなと思っています。
    宇野 今のお二人の話は半分ぐらい僕ら出版社側の、作っている側の問題でもあるんだけど、やっぱり書店さんもたいがいですよね。お二人の勤めている本屋さんはすごい良心的なところだと思うけど、やっぱりどこに行っても同じ棚になっちゃったなと僕も一読者として思う。申し訳ないけど、それだったらAmazonで買うよ。どの本屋でも入り口に平積みされている新刊は変わらなくなっているよね。本屋さんは街に根づいているもので、それぞれの街によって、訪れる人も違えば、売れる本も違っている。そういうものを細かくケアするから、本屋はその街のカラーをすごく反映するものだった。僕が若い頃は、「この本屋はこのジャンルの本の品揃えが充実しているから行ってみよう」みたいなことを考えていたんだけど、そういうカルチャーがほとんどなくなってしまって、今の本屋は自らAmazonに負けにいっている気がする。申し訳ないけどね。
    加藤 山下さん、いかがですか?
    山下 そのとおりだと思います。売り上げが落ちたから棚をシステム化しようという動きが7〜8年前に一度あって。全国の書店が一斉にそうなったことで、どんどんお客様も減っていったんです。今の時代、棚を作れることが評価基準にならないんですよね。
    宇野 それはもうアウトでしょ。
    山下 結局、個性的な棚が売り上げにつながっていたはずなのに、数字しか見ていない人にとっては過程は関係なくて、「売れている本を売れば数字に繋がるんでしょ?」となったことで、どんどんお客様が減っていったと思います。言い訳ではありませんが、書店員の間にも諦めに似たような感覚があって。その結果、張っているアンテナもどんどん低くなってしまったというのは感じますね。
    加藤 兼頭さんはいかがですか?
    兼頭 人材不足はすごく大きいとは思いますね。本を見るにしても、「何が売れるか」じゃなくて「何を売りたいか」。その本がどういうコンテクストの中にあって、社会的にどういう価値があって、何を問うているのかを考えながら展開していくことが非常に重要なんですが、それをできる人がなかなかいないという問題がありますね。
    宇野 書店は棚をつくることでシーンを形成する力が、本来はあるんですよ。カリスマ書店員ブームはたかだか10年ぐらい前ですよね。あれは主に漫画が中心だったけど、書店員さんがおもしろい本を発掘してきて、しっかり棚をつくってお客さんにアピールすることによって、書店から何かが起きるという文化がずっとあったんだよね。だから、僕ら出版社の人間も、有名書店の個性的な棚を偵察することでシーンをチェックしたり、トレンドを掴むといったことをずっとやっていたんだけど、本屋の数もどんどん減っていくし、個性的な本屋も潰れていってる。LIBROがなくなり、青山ブックセンター六本木店が撤退し、行ってみたい本屋がなくなってる。その背景には、棚をつくることでシーンが生まれ、新しい本が売れるということを、書店業界が軽んじ過ぎているし、そもそもわかってないんじゃないかと思わされることが多すぎるんだよね。二人は現役の書店員で言いづらいと思うから、俺がはっきり言うけど、書店業界は人を大事にしなさすぎているよ。棚をつくっているのは書店員さんなのに、仕事の割に待遇があまりに悪い。正社員も少ないし、重労働の割に時給もいいとは言えない。個性的な本屋さんは、現場の書店員さんが、給料以上の働きでボランタリーに棚をつくることによって、かろうじてが生き延びている状況なんだよね。現状のままだと、優秀で意欲的な人間は業界に絶望して、どんどんいなくなってしまう。僕は自分が版元になって10年ぐらい本を出し続けてきたけど、人材流出が止まっていない。これでは持続できないよ。
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