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落合陽一『デジタルネイチャーと幸福な全体主義』第2回 デジタルネイチャー時代の『人間機械論』(後編) ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.685 ☆
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落合陽一『デジタルネイチャーと幸福な全体主義』第2回 デジタルネイチャー時代の『人間機械論』(後編) ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.685 ☆

2016-09-08 07:00

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    落合陽一『デジタルネイチャーと幸福な全体主義』
    第2回 デジタルネイチャー時代の『人間機械論』(後編)
    ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
    2016.9.8 vol.685

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    今朝は『デジタルネイチャーと幸福な全体主義』第2回の後編をお届けします。今回は、ノーバート・ウィーナーの『人間機械論』をベースに構想するデジタルネイチャーの社会論です。単一のコンピュータが人間を支配するディストピア的な社会観を超えて、各人向けにカスタマイズされたコンピュータを仲介に集合知と繋がる、新しい社会構造の仕組みを考えます。


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    ☆「映像の世紀」から「魔法の世紀」へ。研究者にしてメディアアーティストの落合さんが、この世界の変化の本質を、テクノロジーとアートの両面から語ります。
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    ▼プロフィール
    落合陽一(おちあい・よういち)
    1987年東京生まれ。東京大学大学院学際情報学府博士課程を飛び級で修了し、2015年より筑波大学に着任。コンピュータとアナログなテクノロジーを組み合わせ、新しい作品を次々と生み出し「現代の魔法使い」と称される。研究室ではデジタルとアナログ、リアルとバーチャルの区別を越えた新たな人間と計算機の関係性である「デジタルネイチャー」を目指し研究に従事している。
    音響浮揚の計算機制御によるグラフィクス形成技術「ピクシーダスト」が経済産業省「Innovative Technologies賞」受賞,その他国内外で受賞多数。

    ◎構成:長谷川リョー

    『デジタルネイチャーと幸福な全体主義』これまでの連載はこちらのリンクから。

    ▼ニコ生放送時の動画はこちらから!
    放送日:2016年6月28日


    ◼︎人間知性をコンピュータの知性が補完する新しい協業関係

    前編では、「コンピュータが〈人間の補集合〉を作るようになる」というところまで、議論を進めましたが、これは一体どういう意味を持つのでしょうか。
    我々の知性には限界があります。一人の人間が知り得る物事は、この世界全体の持っている情報量からすると、あまりにも少なすぎます。しかし、もしAさんが知らないことの全てを代わりにコンピュータが把握してくれるようになれば、それは、Aさんが考えつかないアイディアを提案する装置になっていく。
     
    この〈人間の補集合〉としてのコンピュータは、現実化しつつあります。たとえば、日立製作所はウェアラブル技術で「幸福度を測る装置」を発表していますし、あるいはFacebookが開発していると噂される「自殺しそうな人を特定するシステム」も、(ややディストピア的ではありますが)そのひとつかもしれません。
    これらが意味するのは、我々自身について、すでに自分よりもコンピュータの方が詳しくなりつつあるということ、自分の知らないことまでコンピュータが把握しているという状況です。たとえばスマホもそのひとつです。昨日の朝食に何を食べたか、スマホに残っている写真を見て思い出したなら、それはすでにスマホの方が自分に関する記録をより多く持っているということです。

    これは、生まれたときからスマホに全情報を蓄積している世代が大きくなったときに、より大きな意味を持つでしょう。誕生以降のすべての記憶をクラウドにバックアップすることで、生涯の全記録をいつでも取り出せるようになる。それは、人間の記憶よりも遥かに巨大な容量のメモリを用いた、過去へと向かうタイムマシンのようなものです。
    先日、講演を行ったある中学校では、生徒の全員が21世紀生まれで、99%がスマートフォンを持っていました。彼らが大人になったとき、特定の日時の情報を引っ張り出して、自分がそのとき何をしていたのかを容易に振り返ることが可能になるはずです。
     
    このように、人間と機械が新しい関係の元で対峙したときに、これまでの人類社会ではありえなかった価値観が生み出されつつあります。
    たとえばTwitterには、Botと変わらないような行動をしている人間がたくさんいます。特定の有名人に粘着してリプライする、その人の「ツイート検知器」みたいになっている人もいますね。そんな人と、Microsoftが開発した女子高生AIの「りんな」を比べれば、後者の方がはるかに人間的でしょう。これは人間が機械的になり、機械が人間的になりつつある状況の一例だと思います。
    もちろん、人工知能の「人格」をいかに定義するかについては、様々な議論があると思いますが、そこで行われている入力された情報に対する処理は、人間並みに複雑になっているはずです。逆にいえば、我々人間も、ある統計的な情報に基いて、言葉や行動の形で情報を出力しているに過ぎない。統計的な情報であれば、コンピュータにも人間と同様に蓄積できるはずです。その出力手段としての「言語」は、確かに複雑な体系を持っていますが、有限個の組み合わせである以上、人格の存在を推測しうるレベルの高度な情報の伝達が、いずれ行えるようになるのではないか。そういうことが明らかになりつつあるのが2016年の世界です。


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