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京都精華大学〈サブカルチャー論〉講義録 第2回 サブカルチャーから考える戦後の日本(毎週金曜配信「宇野常寛の対話と講義録」)☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.596 ☆
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京都精華大学〈サブカルチャー論〉講義録第2回 サブカルチャーから考える戦後の日本(毎週金曜配信「宇野常寛の対話と講義録」)
☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
2016.5.20 vol.596
http://wakusei2nd.com
今朝の「宇野常寛の対話と講義録」では、京都精華大学で行われた、宇野常寛の講義をお送りします。第2回となる今回は、21世紀に改めて見直す〈サブカルチャー的な思考〉の可能性と、その中でもとりわけ〈オタク的な想像力〉を重視する理由。そして、20世紀前半に普及した〈自動車〉と〈映像〉が、いかにして現代社会を作り上げたのかについて論じます(この原稿は、京都精華大学 ポピュラーカルチャー学部 2016年4月15日の講義を再構成したものです)。
毎週金曜配信中! 「宇野常寛の対話と講義録」配信記事一覧はこちらのリンクから。
前回:京都精華大学〈サブカルチャー論〉講義録 第1回 〈サブカルチャーの季節〉とその終わり(毎週金曜配信「宇野常寛の対話と講義録」)
■ いま、サブカルチャー的な思考を経由する意味
前回は60年代の「政治の季節」の終わりから70年代以降のサブカルチャーの時代、そして2000年代以降のカリフォルニアン・イデオロギーの台頭までの流れを、駆け足で見てきました。1970年代から20世紀の終わりまでは世界的に人口増加=若者の時代であり、そして若者の世界は脱政治化=サブカルチャーの時代だった、とおおまかには言える。もちろん、サブカルチャーと政治的な運動の関係は内外でまったく異なっているし、一概には言えない。しかし重要なのは、マルクス主義の衰退からカリフォルニアン・イデオロギーの台頭までは「世界を変える」のではなく「自分の意識を変える」思想が優勢な時代であって、そこに当時の情報環境の変化が加わった結果としてサブカルチャーが独特の機能を帯びていた、ということです。そして、そのサブカルチャーの時代は今終わりつつある。
普通に考えれば、サブカルチャーの時代が終わろうとしているのなら、僕はとっとと話題を変えてカリフォルニアン・イデオロギー以降の世界を語ればいい。情報技術の進化と、その結果発生している新しい社会について語っているほうが有益なのは間違いない。僕は実際にそういう仕事もたくさんしてます。
でも、ここではあえて古い世界の話をしたい。それはなぜかというと、皮肉な話だけれど、いま急速に失われつつあるサブカルチャーの時代に培われた思考のある部分を活かすことが、この新しい世界に必要だと感じることが多いからです。
かつてサブカルチャーに耽溺することで自分の意識を変え、さらには世界の見え方を変えようとしていた若者たちは、いま市場を通じて世界を変えることを選んでいる。実際に、僕の周囲にもそういう人が多い。学生時代の仲間とITベンチャーを起業して六本木にオフィスを構えているような、いわゆる「意識高い系」の若者たちですね。彼らは基本的に頭もいいし、人間的にも素直です。付き合っていて不快なことはないし、仕事もやりやすい。だけど、話が壊滅的に面白くない。
なぜ彼らの話が面白くないのか、というとたぶんそれは彼らが目に見えるものしか信じていないからだと思うんですね。彼らはたとえば、うまくいっていない企画があって、それに対して予算や人員を再配置して最適化するような仕事はとても得意です。しかし、今まで存在していなかったものを生み出すような仕事は全然ダメな人がすごく多い。もちろん、そうじゃない人もちゃんといて、彼らはものすごく創造性の高い仕事をやってのけているのだけど、その反面これだけ賢い人なのになんでここまで淡白な世界観を生きているんだろう、という人もすごく多い。ブロックを右から左に移動するのはものすごく得意で効率的なのだけど、そのブロックを面白い形に並べて人を楽しませることが苦手な人がとても多い。正確にはそれができる人とできない人の落差があまりにも激しくてびっくりするわけです。
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音楽フェス、都市型バーベキュー、フリークライミング――〈アウトドア〉は社会をどう変えたのか(アウトドアカルチャーサイト「Akimama」滝沢守生インタビュー・前編) ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.595 ☆
2016-05-19 07:00550ptチャンネル会員の皆様へお知らせ
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音楽フェス、都市型バーベキュー、フリークライミング――〈アウトドア〉は社会をどう変えたのか(アウトドアカルチャーサイト「Akimama」滝沢守生インタビュー・前編)
☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
2016.5.19 vol.595
http://wakusei2nd.com
これまでPLANETSメルマガでは、スポーツ・アウトドア・ファッション・ライフスタイルが渾然一体となった新たなカルチャーの輪郭を描き出すべく、いくつかの記事を不定期で配信してきました。今回は、1970年代〜現在までのアウトドアの歴史を「野外音楽フェス」を軸に紐解いていこうと、音楽フェスからアウトドアまでを幅広く扱う情報サイト『Akimama(アキママ)』を運営する株式会社ヨンロクニ代表・滝沢守生さんにお話を伺いました。
《これまでの本シリーズのダイジェスト》
近年、都市住民を中心としてランニングやヨガやフリークライミング(ボルダリング)、登山などのアウトドア・アクティビティを生活やレジャーに取り入れる動きが活発化しています。かつてはスポーツといえば学校の球技系部活が中心となっていましたが、個人でも取り組めて、かつ「競う」のではなく「楽しむ」趣味の一貫として、または運動不足に悩むデスクワーカーたちが健康維持のために行うものとしてのスポーツが存在感を増しています。水面下で起こっているこの巨大な変化を私たちはどう捉えればいいのだろう――そんな問題意識から、このシリーズはスタートしました。
最初にPLANETS編集部は、「ライフスタイル化するスポーツとアウトドア」の様々なギアをパッケージングして販売し、好評を博しているスポーツセレクトショップ「オッシュマンズ」の営業計画・販売促進担当マネージャー・角田浩紀さんにお話を伺うことにしました。
都市生活とスポーツの融合が生み出す”新たなライフスタイル”とは!? ――「アメリカ生まれのスポーツショップ」オッシュマンズを取材してみた
角田さんによれば、「今の東京の都市生活者たちのライフスタイル・スポーツの文化は、アメリカの東海岸と西海岸の文化を融合させた独自のものだ」とのこと。さらに、アウトドアウェアのような機能性の高い服を日常着として着る文化はアメリカ発であるものの、そこにさらに「ファッションとしての文脈」を加えたのは、80年代の日本のファッション業界だったようです。
そこで今度は、アウトドア&スポーツウェアが日常着として日本社会で受容された経緯について「ファッション」の側から明らかにすべく、BEAMSの中田慎介さんにお話を伺いました。
「日常着としてのアウトドアウェア」はなぜ定着したのか? ――アメカジの日本受容と「90年代リバイバル」から考える(BEAMSメンズディレクター・中田慎介インタビュー)
中田さんによれば、カウンターカルチャー全盛の60年代アメリカでは、スーツをはじめとしたビジネススタイルへの反発からワークウェアがヒッピーたちの支持を得た、とのことでした。「文脈の読み替え」として、機能的な服がファッション文化において意味を持つようになったのでした。
さらに、アウトドアウェアの日本受容が進むなかで、日本の80年代以降の「DCブランド」的な感覚の延長線上で「ファッションアイテム的なモノ」として位置付けられたことが、文化の拡大において大きな役割を果たしたそうです。
一方で、純粋なアクティビティとしての「アウトドア」の側面からは、現在までの状況をどう捉えられるのだろうか、という疑問も浮かびます。そこで今度は、アウトドア誌「ランドネ」(エイ出版社刊)の朝比奈耕太編集長にお話を伺いました。
「山スカート」はなぜ生まれたのか? アウトドア誌「ランドネ」編集長・朝比奈耕太に聞くファッションとライフスタイルの接近
かつては男性の趣味と思われていたアウトドアが女性に人気となり、メディア上で「山ガール」と名付けられ話題になったのは2009〜2010年ごろのこと。もともと運動に無縁の「文化系女子」たちがカラフルなウェアに身を包み、続々とアウトドアに参入していくようになりました。その結果、昔ながらの登山者たちとの対立構図なども生まれつつ、アウトドア・アクティビティの楽しみ方は多様性を増していっている、とのことでした。
ここまで3人の方に取材を重ね、なかでもオッシュマンズの角田さん、「ランドネ」の朝比奈さんが口を揃えて語っていたのは「アウトドアブームの拡大にはフジロックが大きな役割を果たした」ということでした。
そもそも「文化系」のものである音楽フェスがきっかけとなってアウトドアへの入口が大きく開いたとすると、「フェスを中心としたアウトドアの歴史」も描くことができるのではないか。そんな関心から、今回は音楽フェスからアウトドアまで幅広く扱う情報サイト『Akimama(アキママ)』を運営する株式会社ヨンロクニ代表・滝沢守生さんにインタビューをお願いすることにしました。
*
『Akimama』は、フェスや登山、キャンプなど、アウトドアに関する情報を網羅するウェブメディアとして2013年よりスタートしました。運営は、これまで20年以上アウトドア業界に携わってきた編集者、ライター、カメラマンなど、その道のエキスパートたちによって行われています。自らの視点と自らの足で入手した一次情報をいち早くニュースとして配信、ビギナーからベテランまで幅広いアウトドアユーザーに、オンリーワンな情報ツールとして親しまれています。
サイトを立ち上げた代表の滝沢さんは、山岳専門誌を出版する「山と溪谷社」に勤務、その間、1976年に創刊された月刊誌『Outdoor』にて6年間編集デスクを務め、その後、独立。これまで数多くのアウトドアメディアに携わるだけでなく、フジロックのキャンプサイトの運営責任者を10年務めるなど、野外イベントの制作・運営などもを行うアウトドア業界の第一任者として広く活躍されています。そこで、アウトドアカルチャーの歴史と変遷を熟知する滝沢さんに、1970年代に日本にはじめて到来したアウトドアムーヴメントから2000年代のフェスの隆盛までを振り返っていただきながら、これからのフェスやキャンプ、アウトドアブームはどう変化していくのかについて、お話を伺いました。
◎聞き手・構成:小野田弥恵、中野慧
▲Akimama アウトドアカルチャーのニュースサイト
■思想と分離された70年代のアウトドアファッション
――『Akimama』は、アウトドアのなかでは気軽なフェスから、登山、クライミング、バックカントリー、女子も気になる “アウトドアごはん”に“ファッション”など、アウトドアカルチャー全体の旬な情報を発信していますよね。「なんとなくアウトドアに興味がある」という人でもとっつきやすい一方で、山岳ガイドや専門店のスタッフによる寄稿など、読み応えのある記事も多い充実したメディアだと感じています。
滝沢 ありがとうございます。もともとは、僕がアウトドア雑誌で編集をしていたときから一緒に仕事をしていた仲間のライターやカメラマンらと「ウェブで自分たちのアウトドアのメディアを作れないか」とよく話していたのがきっかけです。「出版不況だし、紙ではなく、自分たちの拾ってきたリアルな情報をニュースとして伝えるウエブメディアを作ってみよう」というようなノリで始めました。
誰もやっていないことをやりたかったので、今のところは非常に手応えを感じています。ただ、しっかりとお金を使って綺麗なデザインにしたり、SEO対策をしたりと、ウェブの世界で常套手段とされているようなことは、まだまだあんまりできていないんです。月に2回、編集会議と称して勉強会のような形で、いろいろな専門家の方を招き、サイトについての意見を聞きながら、ちょっとずつ自分たちも学びながらやっています。今も試行錯誤中、という感じですね。
――今日は「フェスを中心としたアウトドアの歴史」をテーマにお話を伺っていきたいのですが、まず滝沢さんが長年アウトドアメディアに携わってきたなかで、ご自身の印象としてアウトドア誌が最も盛んだったのはいつごろなんでしょう?
滝沢 雑誌『Outdoor』(山と溪谷社刊)が創刊されたのが1976年、『BE-PAL』(小学館刊)は81年ですから、70年後半から80年ぐらいが、日本のアウトドアの草創期ではないでしょうか。そもそも日本のアウトドアって1970年代のアメリカ西海岸のライフスタイルやグッズを紹介した『Made In USA Catalog』(マガジンハウス刊)の刊行をきっかけに、アウトドアグッズを組み合わせたファッションスタイル「ヘビーデューティー」の流行、つまりファッションの輸入によってもたらされたものなんです。
当時のカリフォルニアはカウンターカルチャーの絶頂期でした。もともと、1950~1960年代中盤のアメリカ西海岸では、ビートジェネレーションを背景に、資本主義やベトナム戦争に異を唱える学生や反体制運動家によって自然回帰を求める「バックパッキング革命」が起こっていました。東海岸のエスタブリッシュな人間が、自然への回帰やエコロジーの思想を求め、バックパックに荷物を詰めて都市から荒野へ旅に出よう、というものです。そういった思想を背景に広がったのがアメリカのアウトドアムーヴメントだったんです。
しかし1970年代に日本に輸入されたのは、アウトドアのなかのファッションやギアのみで、思想は二の次、ともいうべきものでした。アウトドアのアイテムは、当初は「新しいファッションアイテム」という側面が注目されたんですね。一方で、フライ・フィッシングやバックパッキングなどの目新しいアクティビティは、輸入されると同時に、スタイルとともに、その思想もしだいに広まっていきました。
▲Akimamaを運営する株式会社ヨンロクニ代表・滝沢守生さん(撮影:編集部)
■日本の元祖山ガールは、戦前の女学校登山?
――日本におけるアウトドア文化の受容の初期段階において、「ファッション」の部分が先行していたわけですね。独特でとても面白い現象のように思います。そもそも70年代まで、「アウトドア」という言葉は日本にはなかったということなんでしょうか?
滝沢 そうですね。1978年に出版された子ども用のキャンプ読本などを読んでも、「アウトドア」の「ア」の字も出ていないんですよ。ただ、「アウトドア」という言葉がなくても、すでに行為そのものは成立していました。今でこそ、山に登る女性を「山ガール」と呼んだりしてちょっと特別な現象のように言いますけど、実はそのルーツは戦前の「高等女学校【1】」なんですよ。今でも地方の学校で、年に一度、“学校登山”を行事として行っている学校もありますが、あれはもともと戦前の女学校でちょっとしたブームになって定着したものなんです。
【1】高等女学校:戦前の日本で、女子に対して中等教育(現在の日本の学校制度における中学校・高等学校の教育課程)を行っていた教育機関。主に12〜17歳の5年間を修業年限としていた学校が多い。
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「ノイタミナ的なもの」の発生源(『石岡良治の現代アニメ史講義』10年代、深夜アニメ表現の広がり(1))【毎月第3水曜配信】 ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.594 ☆
2016-05-18 07:00550ptチャンネル会員の皆様へお知らせ
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「ノイタミナ的なもの」の発生源(『石岡良治の現代アニメ史講義』10年代、深夜アニメ表現の広がり(1))【毎月第3水曜配信】
☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
2016.5.18 vol.594
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今朝のメルマガは『石岡良治の現代アニメ史講義』をお届けします。今回からは「深夜アニメ」がテーマ。『あの花』をはじめとする2010年代深夜アニメの一大潮流「ノイタミナ的なもの」がどのようにして形成されたのかを考察します。
▼プロフィール
石岡良治(いしおか・よしはる)
1972年東京生まれ。批評家・表象文化論(芸術理論・視覚文化)・ポピュラー文化研究。東京大学大学院総合文化研究科(表象文化論)博士後期課程単位取得満期退学。青山学院大学ほかで非常勤講師。PLANETSチャンネルにて「石岡良治の最強☆自宅警備塾」を放送中。著書に『視覚文化「超」講義』(フィルムアート社)、『「超」批評 視覚文化×マンガ』(青土社)など。
『石岡良治の現代アニメ史講義』これまでの連載はこちらのリンクから。
前回:キッズアニメは「闘争性」を脱臼させる(『石岡良治の現代アニメ史講義』キッズアニメーー「意味を試す」〈4〉)
■深夜アニメ表現の象徴としての『あの花』とノイタミナ枠
今回は「10年代、深夜アニメ表現の広がり」というやや漠然としたタイトルになりますが、現在のアニメのほとんどが放映時間的に「深夜アニメ」になった状況について、いくつかの角度から考えていきます。私は、2010年代の深夜アニメで最もメジャー化したタイトルは『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』(2011、以下『あの花』)だと思っています。現状が流動的なこともあり、若干曖昧な言い方になることをご容赦いただきたいのですが、「ポストジブリ」というほどの規模ではないものの、細田守や新海誠の監督作品とほぼ同じカテゴリーに、長井龍雪監督、岡田麿里脚本、田中将賀キャラデザの『あの花』、そして同じく秩父近辺が舞台になっている『心が叫びたがっているんだ。』(2015、以下『ここさけ』)が含まれるのではないかという見立てです。
もちろん、売上や影響力などのマーケット的には、深夜アニメ発のタイトルでは『魔法少女まどか☆マギカ』(2011)、『ラブライブ!』(2013-2014)、『ガールズ&パンツァー』(2012-2013)もかなりヒットした作品ですが、これらと『あの花』の違いを挙げるなら、普段アニメをあまり見ない人が各シーズンごとに見る数本のうちに入る点だと思います。現在ではアニメをまったく見ない人は減っているものの、それでも深夜アニメに対してある種の「濃い」世界を感じる人たちにとって、『あの花』が他のヒットアニメとは違う感触をもって受け止められているのでしょう。御存知の通り、この漠然とした雰囲気を作り上げたアニメ枠こそが、2005年に始まった「ノイタミナ」なのだろうと思います。
この枠をエンタメ小説に例えるならば、狭義のライトノベルやWEB小説(時に「なろう系」とまとめられることもあります)よりは、雑誌「ダ・ヴィンチ」(KADOKAWA/メディアファクトリー)がプッシュするタイプの原作を擁したシリーズということができるでしょう。そこで想定されているのは、男性オタクだけでなく、女性読者も強く意識した枠、すなわち、「ラノベ」と呼ばれる以前のジュニア小説的な側面をもちつつ、現在の小説レーベルでは例えば「新潮文庫nex」(新潮社)などが追求しているようなテイストと言えばよいでしょうか。『図書館戦争』(作・有川浩、単行本はアスキー・メディアワークス/文庫版は角川文庫より刊行)や『四畳半神話大系』(作・森見登美彦、角川文庫)のような人気小説がノイタミナからアニメ化されていることが、そうした連想を誘うのでしょう。
▲『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』(2011)
■「ノイタミナ的なもの」の発生源
こうした印象をまとめると、ここ十年ぐらいの深夜アニメでは「ノイタミナ的なもの」を考えることが不可欠だということです。ノイタミナは2005年の『ハチミツとクローバー』から始まった深夜アニメ枠で、翌年の『ハチミツとクローバーⅡ』が長井龍雪の初監督作品ということも注目されます。『ハチクロ』の後は『Paradise Kiss』(2005)、『怪 〜ayakashi〜』(2006)、『獣王星』(2006)、『働きマン』(2006)、『のだめカンタービレ』(2007)と続いていて、はじめの2年間くらいは完全に少女マンガものばかりでした。そうした傾向が変わるのは『もやしもん』(2007)、『墓場鬼太郎』(2007)あたりからでしょうか。『もやしもん』は若干『げんしけん』マイナーチェンジ版という感じで、特に序盤は良いマンガだと思いますが、個人的には原作者のオタク的自意識の露悪的な部分がやや苦手で、このへんは人によって変わってくるところかもしれません。近作だと『僕だけがいない街』(2016)もこの枠ですね。
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粟飯原理咲『ライフスタイルメディアのつくりかた』第6回「場所への共感は時間を超えるーー「黎明期」以降のメディア運営」【毎月第3火曜配信】 ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.593 ☆
2016-05-17 07:00550pt※本記事は編集部の不手際により、昨日(2016年5月16日)にも配信が行われました。関係者の皆様には謹んでお詫び申し上げますとともに、編集部一同、今後の再発防止に努めてまいります。
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粟飯原理咲『ライフスタイルメディアのつくりかた』第6回「場所への共感は時間を超えるーー「黎明期」以降のメディア運営」【毎月第3火曜配信】
☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
2016.5.17 vol.593
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本日は、アイランド株式会社代表の粟飯原理咲さんによる連載『ライフスタイルメディアのつくりかた』の第6回をお届けします。今回はメディア運営の黎明期の後にやってくる成長期に求められるものは何か。一対一で書き手と向き合う編集者の役割を、イベントやメディアの仕組みの中に、どのように組み込んでいったのかについて語っていただきました。
▼プロフィール
粟飯原理咲(あいはら・りさ)
アイランド株式会社代表取締役。国立筑波大学卒業後、NTTコミュニケーションズ株式会社先端ビジネス開発センタ勤務、株式会社リクルート次世代事業開発室・事業統括マネジメント室勤務、総合情報サイト「All About」マーケティングプランナー職を経て、2003年7月より現職。同社にて「おとりよせネット」「レシピブログ」「朝時間.jp」などの人気サイトや、キッチン付きイベントスペース「外苑前アイランドスタジオ」などを運営する。美味しいものに目がない食いしん坊&行くとついつい長居してしまう本屋好き。◎構成:稲葉ほたて
本メルマガで連載中の『ライフスタイルメディアのつくりかた』配信記事一覧はこちらのリンクから。
前回:特別編:夢見るプロデューサーの熱狂ーーレシピブログ初代編集長・川杉弘恵インタビュー(粟飯原理咲『ライフスタイルメディアのつくりかた』第5回)
■ 成長期に求められる“場の成長と個人の成長”が共鳴するフィールド
前回まではメディアの立ち上げについて話してきましたが、今回はそんな「黎明期」の次のステージ、メディア運営について話してみたいと思います。
「レシピブログ」が成長しはじめたときに、私たちが大事にしたのが「場の成長と個人の成長が共鳴するフィールドを、書き手のためにつくっていく」ということでした。というのも、初期の頃は編集部と書き手である料理ブロガーさんが一対一の関係で熱くメールを交わすことで、メディアの想いを共有していたのですが、成長期に入りユーザー数も増えてくると、なかなかそういう関係を結ぶのは現実的に難しくなってきたからです。
そこで私たちが、編集者による一対一のフィードバックやコミュニケーションの代わりに導入したのが、「ステージ制」と「イベント」でした。
そのときに考えたのは、書き手同士で互いのセンスや視点などに刺激を受け、活動を励みにしあう仲間を作ってもらおうということです。何かを続けるとき、人間には仲間が必要です。直接コミュニケーションが密に発生しなくても、「私と同じフィールドであの人が頑張っているから、私も頑張ろう」と思える研鑽の仲間がいるだけで、その後の持続性は大きく変わってきます。いかに書き手の方々にそういう関係を作っていただくかは、編集部が常に工夫をこらしている部分で、これは当時も今も変わりません。
レシピブログ内にステージ制を設けて、長く活躍を続けた方には「シルバーブロガー」、さらに続けると「ゴールドブロガー」「プラチナブロガー」とランクアップしていく仕組みを作ったのも、“一定の書き手が集まるフィールド”を設計することで、そういうモチベーションの1つになってくれればと考えたからです。ステージが上がることにサイト上でも発表を行い、多くの書き手の方々の励みになることを意識しました。
ただし、こうして書き手同士を繋いでいくときも、私たちは「コンテンツを介して人と人が繋がる」ことだけは大事にしていました。ステージ制はあくまでブログでの発信に対する評価ですし、リアルでのイベント開催でもその点は変わりません。
成長期に入って以降、レシピブログでは「料理写真を上手に撮る教室」や「レシピの書き方講座」などの、コンテンツの質を高めるためのノウハウを共有する講座をリアルで開くようにしました。私たちが作りたかった、互いに料理写真を共有して「いいね」を言い合えるような場所をより広げていくために、プロの講師の方を呼んでノウハウを提供していったのです。そういう場では、特定のテーマに興味を持って集まったユーザーさん同士で、繋がり合ってもらうようにしました。すると、「あのイベントで知り合った●●さんがどんどん写真が上手になっているから、私も頑張ろう」というふうに、書き手同士が互いをブラッシュアップする仲間になります。イベントでは、そういった書き手の間の関係づくり、コミュニティとしても個人としても成長感がある場づくりを主眼にして設計を行っていました。
▲これまでに開催されてきたイベントの様子
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【対談】吉田浩一郎×宇野常寛 それでもクラウドソーシングは働き方を変えるのか ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.591 ☆
2016-05-16 07:00550ptチャンネル会員の皆様へお知らせ
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【対談】吉田浩一郎×宇野常寛それでもクラウドソーシングは働き方を変えるのか
☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
2016.5.16 vol.591
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今朝は、クラウドワークスCEOの吉田浩一郎さんと、宇野常寛の対談をお届けします。先日、クラウドワークスが公開した決算資料から、月収20万円以上の利用者が111名しかいないことが明らかになり、議論を呼びました。「新しい働き方」として世界的に注目を集めるクラウドソーシング、その日本における牽引役とも言えるクラウドワークスが突き当たった「壁」とは何か。そしてそれでも期待を集めるクラウドソーシングの可能性とは何か。クラウドワークスを率いる吉田浩一郎さんに宇野常寛がお話を聞きました。
▼プロフィール
吉田浩一郎(よしだ・こういちろう)
パイオニア、リードエグジビションジャパンなどを経て、ドリコム執行役員として東証マザーズ上場を経験。2011年11月に株式会社クラウドワークスを創業し、日本最大級のクラウドソーシングサービス「クラウドワークス」を展開。創業3年でマザーズ上場、登録会員75万人、利用企業は11万社にのぼる。2015年に経済産業省 第1回「日本ベンチャー大賞」ワークスタイル革新賞受賞、グッドデザイン・未来づくりデザイン賞受賞。著書に『クラウドワーキングで稼ぐ! ―時間と場所にとらわれない新しい働き方(日経新聞出版社)』『クラウドソーシングでビジネスはこう変わる(ダイヤモンド社)』などがある。
◎構成:菅 葉奈
■ 年収250万円の利用者が100人という衝撃
宇野 数年前から僕と吉田さんはクラウドソーシングの導入による働き方の変化、そしてその向こう側にある社会そのものの大きな変化の可能性について議論してきました。いちばんまとまっているものとしては、2年前に河出書房新社から出版された『静かなる革命へのブループリント: この国の未来をつくる7つの対話』(以下『ブループリント』)という対談集での議論があるのだけど、あれから日本における働き方の状況も変わってきたと思います。実際クラウドソーシングも普及したし、クラウドワークスという会社も大きく成長した。しかし同時にクラウドソーシングは当時期待されたような「働き方革命」を起こせているかというと、残念ながらまだそこには至っていない側面が大きいと思います。いろいろな問題点にも突き当たっているはずです。その辺について今日は「ぶっちゃけどうなの?」という話をしたいです。微妙に炎上騒ぎもありましたよね。
吉田 この場では隠し事はできないのでね(笑)。
宇野 そういったところも含めて、お話できればと思って今日はお呼びいたしました。
『ブループリント』には「2016年までに年収500万円の人を1万人作る」という吉田さんの発言があります。出版から2年近く経って、最近クラウドワークスのユーザー分析の資料を発表されていましたよね。
吉田 その中で申し上げたのが「月収20万円以上の利用者が、111人誕生しました」ということです。年収250万に換算すると100人くらいですね。
宇野 「年収500万円の人間が1万人」と「年収200万円の人間が100人」の間には、絶大な差がありますね。
吉田 そうですよね。2年前は、どれくらい伸びるかはやってみないとわからないという状況の中で、ベンチャーとして目標を大きく掲げた、というのが実際のところです。
「月収20万円以上の利用者が111名」を公明正大に言うべきか、もう少し先に、数字がついてきてから言うべきか、という議論が社内でありましたが、我々としては、炎上したとしてもすべて公表して、ユーザーの皆さんと一緒に少しずつ着実に歩んでいこう、という結論に至り、発表しました。
宇野 よくぶっちゃけましたよね。炎上するって分かっていましたよね?
吉田 当然、炎上するとは思っていました。
しかしクラウドソーシングは、このまま「魔法の杖」のイメージで語られ続けるべきなのでしょうか。我々としては、株式上場もしたし、公明正大に隠し事なしに歩んでいきたい。私は去年から「働き方革命」を提唱していますが、この「働き方革命」を掲げる上で、これはスタートラインなんです。
もちろん『ブループリント』出版当時から見れば、2年後にどうなったか、という話なんですが、我々としては現状の数字を開示することで、ここをスタートラインにしていきたい。「働き方革命」のはじまりを設定したということです。
宇野 ちなみにこれも、ぶっちゃけて聞きたいんですが、吉田さんの実感として、月収20万円の数は思った以上に伸びていないですよね?
吉田 宇野さん、今日は突っ込みますね!
宇野 いや、単純に聞きたいんですよ。大事なのは当然「それ、みたことか」と得意になって指摘することじゃなくて、なぜ伸びていないのかを検証すること、そしてこれから伸ばして行く方法を考えることじゃないかと思うんです。そして日本におけるクラウドソーシングの代表的な企業の社長である吉田さんは、「クラウドワーカーが食べていくことが難しい理由」について、日本で最も詳しいはずなんです。20万円クラスの収入が、クラウドワーキングで得られない一番の理由は何なんですか?
吉田 いろいろありますが、1つは、クラウドソーシングの仕事は、普通の仕事と手間や労力は変わらない。そこに誤解があるのかなと。クラウドソーシングには、今までの仕事よりも手軽にできるイメージがあります。ところが、やってみると思ったよりも大変で、そこを乗り越えられないことが多いです。
例えば、子育てママで働きたい人がいるとして、子育ての合間に、1日に1回メールをチェックすればいいんじゃないか、くらいに思っています。でも東京の会社はフルタイムで動いているので、1日に20回はメールのやり取りをしたいと考えます。そうなったとき、「そこまでして働きたくない」と思って仕事を辞めてしまいます。
宇野 クラウドワークスは、子育て中の主婦層や、定年退職後の団塊世代のパートワークをサポートすることで伸びていきましたが、彼らの目的は、それで生活することではないですからね。
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京都精華大学〈サブカルチャー論〉講義録 第1回 〈サブカルチャーの季節〉とその終わり(毎週金曜配信「宇野常寛の対話と講義録」) ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.590 ☆
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京都精華大学〈サブカルチャー論〉講義録第1回 〈サブカルチャーの季節〉とその終わり(毎週金曜配信「宇野常寛の対話と講義録」)
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2016.5.13 vol.590
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今朝の「宇野常寛の対話と講義録」では、京都精華大学で行われた、宇野常寛の講義をお送りします。
テーマは戦後の若者カルチャーの変遷です。60年代の学生運動の挫折から、サブカルチャーの時代の到来、米国西海岸で生まれたカリフォルニアン・イデオロギーの拡大と、サブカルチャーの時代の終焉まで、1960年代から2000年代までの世界的な文化状況を、俯瞰的に論じます(この原稿は、京都精華大学 ポピュラーカルチャー学部 2016年4月15日の講義を再構成したものです)。
毎週金曜配信中! 「宇野常寛の対話と講義録」配信記事一覧はこちらのリンクから。
■ はじめに ーー〈オタク〉から考える日本社会
これから半年間、「サブカルチャー論」という授業を担当する宇野と言います。もしこの中で僕のことを知っている人がいたら、たぶんワイドショーやテレビの討論番組に出演して、社会問題についてしゃべっているところを見た、という人がほとんどだと思うのですけれど僕はどちらかといえば社会ではなく文化の評論家で、専門はサブカルチャーです。特にアニメやアイドルといったオタク系の文化を題材にしてきました。
この授業はそんな人間が、なぜ社会問題について語るようになったのか、というところからはじめたいと思います。僕という人間と社会のとかかわりから、サブカルチャーと現代社会のかかわりについて考えるところを議論の出発点にしたい。
というのも、僕がニュース番組に出ると「あんな奴をテレビに出すな」という苦情がいっぱい来るんですよ(笑)。なぜなら、僕は生放送中にまったく「空気を読まない」からです。
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「今ここ」を未来にするタイムマシン――憧れを顕現するメディア、コンセプトカー(根津孝太『カーデザインの20世紀』第10回)【毎月第2木曜配信】 ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.589 ☆
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「今ここ」を未来にするタイムマシン――憧れを顕現するメディア、コンセプトカー(根津孝太『カーデザインの20世紀』第10回)【毎月第2木曜配信】
☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
2016.5.12 vol.589
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今朝のメルマガでは、デザイナー・根津孝太さんの連載「カーデザインの20世紀」をお届けします。コンセプトカーに託された、未来への思いとは? その歴史を辿りながら、コンセプトカーが今社会に果たすべき役割を語ります。
▼プロフィール
根津孝太(ねづ・こうた)
1969年東京生まれ。千葉大学工学部工業意匠学科卒業。トヨタ自動車入社、愛・地球博 『i-unit』コンセプト開発リーダーなどを務める。2005年(有)znug design設立、多く の工業製品のコンセプト企画とデザインを手がけ、企業創造活動の活性化にも貢献。賛同 した仲間とともに「町工場から世界へ」を掲げ、電動バイク『zecOO (ゼクウ)』の開発 に取組む一方、トヨタ自動車とコンセプトカー『Camatte (カマッテ)』などの共同開発 も行う。2014年度よりグッドデザイン賞審査委員。
本メルマガで連載中の『カーデザインの20世紀』これまでの配信記事一覧はこちらのリンクから。
前回:エコと効率化のさらにその先へ――痛車・スポコンと〈欲望ドリブン〉の美学(根津孝太『カーデザインの20世紀』第9回 国産スポーツカー・後編)
今回はコンセプトカーについて語ってみたいと思います。コンセプトカーとは、モーターショーでの展示を目的に作られた車両のことで、基本的に市販はされません。モーターショーに足を運ぶと、各社が威信を賭けて制作したさまざまなコンセプトカーを見ることができます。
自動車業界の人や自動車ファンのあいだでは「コンセプトカーが市販されないのは当たり前だよね」ということが暗黙の前提になっていますが、読者の方のなかには「お店で売らない車をなんで作ってるの?」と不思議に思われる方も多いのではないかと思います。まずは、そんなコンセプトカーが自動車業界でどんな役割を果たしているのかについてお話ししてみたいと思います。
■コンセプトカーは「自動車界のファッションショー」
コンセプトカーの存在に近いのは、アパレル業界のファッションショーです。パリコレなどで発表される奇抜な服はインターネットでも話題になったりしますよね。これは言ってみれば「コンセプトモデルの提示」なんです。かなり過激なデザインでも、ファッションショーで見せるものであれば許されるので、胸が露出しているような服を着て、女性モデルが平気でランウェイを歩いたりしています。でも、その服をお店でそのまま売るわけではありません。各メゾンがファッションショーでこぞって奇抜な服を発表するのは、新しい美の形や、次に来るべき流行、あるいは服という概念を更新するゲームを戦っているからなんですね。
▲オランダのメゾン、ヴィクター&ロルフの2016SSオートクチュールコレクション。「ウェアラブルアート(着て歩く芸術)」がテーマになっており、衣服と彫刻を融合させている。(出典)
コンセプトカーの場合、ものによってはファッションショーの服よりも現実的な形をしているので、来年売られてもおかしくないような気がしてしまうのですが、構造としては同じです。コンセプトカーは、メーカーの力や未来のビジョンを示すために作られるものなんです。
■コンセプトカーの誕生――チシタリア・202クーペ
コンセプトカーの源流は、遡れば自動車以前、馬車の時代に行き着きます。当時は貴族のために馬車に豪奢な飾り付けを行う「カロッツェリア」と呼ばれる架装工房が発達していました。もともとドイツやイタリアでは中世から手工業者の共同組織「ギルド」というものが発達していて、徒弟制度を敷いて親方が若い職人たちを育成していく仕組みができていたんですね。第二次世界大戦前夜、こうしたカロッツェリア文化を引き継いで、自動車のデザインを専門に手がける工房が登場します。その代名詞とも言える最も偉大なカロッツェリアが、バッティスタ・ピニンファリーナによって設立されたイタリアの「ピニンファリーナ」です。
ピニンファリーナはたくさんの職人を擁して多くの自動車を手がけていて、さまざまな革新的デザインで一世を風靡し、やがて自動車だけでなくさまざまなプロダクトを手がけるようになっていきました。ピニンファリーナ印がついた素晴らしいデザインのプロダクトは飛ぶように売れるという、まさに言葉通りの「ブランド」を確立したデザイン工房です。
▲ピニンファリーナがデザインを手がけたペン「Forever Pininfarina Cambiano」。なめらかなスタイルが美しいだけでなく、ペン先に紙との摩擦で酸化し筆記する特殊な合金を使用、インクを補充したりペン先を交換することなく永久に使用できる機能を持つ。(出典)
そのピニンファリーナが手がけた作品の中でも有名なもののひとつが、1947年に発表された「チシタリア・202クーペ」です。これはニューヨーク近代美術館(MoMA)に美術品として永久展示された史上初の自動車となりました。
▲チシタリア・202クーペ。全体が一体となった流麗なデザインになっている。MoMAに収蔵された8台の自動車のうちの一台。なお、本連載に登場したフォルクスワーゲン・ビートルや、メルセデスベンツ・スマート(初代)などもMoMAに収蔵されている。(出典)
チシタリア・202クーペのデザインは、当時としてはもちろん斬新だったのですが、今見るとどことなくかわいらしいレトロな雰囲気にも見えますよね。第二次大戦直後のコンセプトカーはこうした流麗で美しいデザインが主だったのですが、60年代になるとはっきりと「未来的」なデザインを打ち出すようになっていきます。
■2000年の空飛ぶ自動車――フォード・X2000
1958年には、アメリカのフォードが「X2000」というコンセプチュアルな車を発表します。今見ても未来感のある、SFマンガに出てきそうな外観になっています。
▲フォード・X2000。ジェットエンジンのようなテール部分や、各所に開口されたエアインテークが今にも飛びそうなイメージ。(出典)
第二次大戦以前まで、自動車はまさに「工業化社会の象徴」でした。自動車は、世界に存在するだけで十分に未来を感じさせるものだったんですね。しかし戦前〜戦後にかけて「フォルクスワーゲン・タイプ1」や「フィアット・500」、日本ではこの連載でも以前お話しした「スバル・360」(連載第5回を参照)などの大衆車が販売され一般化していきました。そんな時代状況のなかで、改めて「自動車の未来の姿」を提案しようということで、こうした斬新なデザインのコンセプトカーが登場しはじめました。
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PCオンラインゲームが行き着いた「脱・戦争」競技のかたち 〜『League of Legends』『World of Tanks』『艦隊これくしょん』〜(中川大地の現代ゲーム全史)【毎月第2水曜配信】 ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.588 ☆
2016-05-11 07:00550ptチャンネル会員の皆様へお知らせ
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PCオンラインゲームが行き着いた「脱・戦争」競技のかたち 〜『League of Legends』『World of Tanks』『艦隊これくしょん』〜【毎月第2水曜配信】
☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
2016.5.11 vol.588
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今朝のメルマガは『中川大地の現代ゲーム全史』をお届けします。今回は「eスポーツ」としてのPCオンラインゲームの展開と、その潮流と並行して日本で独自進化を遂げた『艦隊これくしょん』の脈絡を論じます。
▼執筆者プロフィール
中川大地(なかがわ・だいち)
1974年生。文筆家、編集者。PLANETS副編集長。アニメ・ゲーム関連のコンセプチュアルムックの制作を中心に、各種評論・ルポ・雑誌記事等を執筆。著書に『東京スカイツリー論』(光文社)。本メルマガにて『中川大地の現代ゲーム全史』を連載中。
第11章 デジタルゲームをめぐる地殻変動/汎遊戯的世界への芽吹き
2010年代前半:〈拡張現実の時代〉本格期(6)
前回:ソーシャル時代のコンシューマーゲームと新世代ハードの応答〜『デモンズソウル』『ダンガンロンパ』『P.T.』〜(中川大地の現代ゲーム全史)
■「eスポーツ」化するPCオンラインゲーム
繰り返し述べてきたように、海外に比しての日本のゲーム市場の特徴は、パソコンゲームの分野がファミコンブームを機に、極端にニッチ化してしまったことにある。その構造は、1990年代後半以降のインターネットオンラインゲームの時代にも変わらず、例えば欧米のインディーズ系のディベロッパーなどが開発コストの低いPC環境で一定の成功を果たしたのちにコンソールへの移植でメジャー化してブレイクしていくといった回路でのヒットタイトルの更新が、日本市場にはほとんど波及しえなくなっていた。
そのため、PCとのアーキテクチャに大差がなくなっていくXbox以降の家庭用ゲーム自体においても、海外ならばありうるイノベーションのエンジンを欠く格好になり、少なくともモバイルゲーム台頭以前までは、世界のゲーム市場全体の成長から日本だけが取り残される事態を招く一因にもなっていたと言えるだろう。
とりわけ2010年代に入ってからは、『League of Legends』(ライアットゲームズ 2009年)や『World of Tanks』(ウォーゲーミング 2010年)など、基本無料でありつつオンラインでの対人戦の競技性の高いタイトルが爆発的な人気を獲得し、世界のパソコンゲーム市場を大きく牽引していく。
▲『League of Legends』(ライアットゲームズ 2009年)
(出典)日本版サイト
前者の『LoL』は、RTSにアクションRPG的な要素を加えるかたちで派生したMOBA(Multiplayer Online Battle Arena)と呼ばれるサブジャンルを汎く浸透させた作品だ。MOBAとは元々、人気RTSシリーズの拡張セットである『WarcraftⅢ:The Frozen Throne』(ブリザート・エンターテイメント 2003年)のMODとして制作された『DotA Allstars』において確立されたゲーム形式で、通常のRTSでは一人のプレイヤーが半自動的に行動する多数のユニットに指令を与えるのに対し、「ヒーロー」ないし「チャンピオン」と呼ばれる特に強い主人公格のユニット一体だけをリアルタイム操作しながら、他のプレイヤーが操る別のヒーローやAI制御される多数のモブユニットと連携して敵の拠点を攻め落としていくというスタイルを特徴としている。この形式を踏襲しつつ、3対3ないし5対5のプレイヤー同士のチーム戦を簡便に行えるよう、ルールや操作系をカジュアル化したのが『LoL』だった。一般的なMMOゲームやソーシャルゲームのアイテム課金とは異なり、課金要素がチャンピオンのスキン(外見)の変化のみにほぼ限られているため、ゲームの勝敗は純粋にプレイヤーの技量に依ることや、対戦場となるマップの形式が規格化されていることなどの特性により、本作はデジタルゲームを用いて一般スポーツのような競技大会を行う「eスポーツ」の絶好の種目としても見出されていくことになる。
▲『World of Tanks』(ウォーゲーミング 2010年)
(出典)日本版サイト
後者の『WoT』は、その名の通りソ連、ドイツ、アメリカ、日本などの各国で第一次世界大戦期から朝鮮戦争期あたりまでに開発・構想された様々な戦車を駆って最大15対15のチーム戦を行う対戦型TPSで、ベラルーシで創業したウォーゲーミング社がロシアを皮切りにサービスを開始した。日本製のゲームに喩えれば『機動戦士ガンダム 戦場の絆』などと同様、はじめは性能の低い旧型の戦車で出撃しつつ、プレイを重ねてゲーム内通貨などを蓄えることでより強くバラエティ豊かな戦車に乗り換えていくという、まずはミリタリーな機体へのフェティッシュによってファンをモチベートしていくタイプのタイトルと言えるだろう。
ただし戦車の操作は極力簡略化し、伝統的なウォーSLGのように実際の戦史上の戦いをモデルにしたりはせず、なるべくカジュアルなユーザーが取りつきやすいような措置が採られていたのが、同種のゲームの中での本作の特徴であった。課金によってプレミアムな戦車や特殊砲弾などの購入は可能だが、本作もまた無課金のユーザーであってもゲーム上不利にならないように周到にバランス調整がなされていたことで、題材のマニアックさに比して多くのプレイヤーを獲得することに成功。『LoL』などと同様にeスポーツ的なタイトルとしての認知を受け、全世界規模での競技大会が開催されるに至る。
このように課金によって〈闘争(アゴン)〉のフェアネスを損なわないかたちでオープンな競技性を練り込み、大会での勝利という目標設定を置くことでプレイヤーに継続的な動機を与え、一過性の消費に留まらないタイトルの長寿命化をはかるというビジネス構築の仕方は、ひたすらにガチャなどの〈運(アレア)〉に依存して射幸心を煽りつつ、課金による結果の差別化ばかりを追求していた同時代の日本のソーシャルゲームの展開とは、まったくもって対極のものだったわけである。この対照は、かつてロジェ・カイヨワがアゴン優勢の遊びが持つ文明形成の力を重視する立場から、日本人がパチンコに興ずるさまをして低次元な受動性の遊びに淫していると批判した比較文化論的図式が、まるでそのままオンラインゲームの受容形態にスライドしたようにも見えるだろう。
ただし、かように〝健全なeスポーツカルチャー〟の後進国たる日本コンテンツの中から、思わぬかたちで海外の競技的なPCゲームとの接点が発生したりもしている。2012年から放映されたテレビアニメ『ガールズ&パンツァー』が、『WoT』の日本でのサービス開始に合わせて大規模なコラボレーション展開を開始したのである。巨大な空母のような「学園艦」に築かれた女子高における〝乙女のたしなみ〟として、第二次世界大戦期の各国戦車を用いた対戦競技である「戦車道」なる武道が奨励されているというアニメの世界観が、まさにeスポーツとしての『WoT』の競技性に適合したというわけである。
▲『ガールズ & パンツァー』
(出典)ガールズ & パンツァー コンプリート Blu-ray BOX (全12話+総集編2話, 336分)
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スポーツは本当に人間形成につながるのか?(体育学者・中澤篤史インタビュー『AmazingでCrazyな日本の部活』第3回) ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.587 ☆
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スポーツは本当に人間形成につながるのか?体育学者・中澤篤史インタビュー『AmazingでCrazyな日本の部活』第3回
☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
2016.5.10 vol.587
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今朝のメルマガでは、体育学者・中澤篤史さんへの連続インタビュー第3回をお届けします。第2回までは日本と海外の部活事情の違い、そして運動部活動が抱える本質的な問題点について伺ってきましたが、最終回となる今回は、スポーツと地域の関係の再編、そして「スポーツは人間形成につながる」という言説の正否について深掘りしてお話ししていただきました。
▼これまでに配信した記事一覧
体育学者・中澤篤史インタビュー『AmazingでCrazyな日本の部活』第1回:外国にも部活はあるの?
体育学者・中澤篤史インタビュー『AmazingでCrazyな日本の部活』 第2回:「メンバーによる自主的なマネジメント」にこそ部活の価値がある?
▼プロフィール
中澤篤史(なかざわ・あつし)
1979年、大阪府生まれ。東京大学教育学部卒業、東京大学大学院教育学研究科修了、博士(教育学、東京大学)。一橋大学大学院社会学研究科准教授を経て、2016年4月より早稲田大学スポーツ科学学術院准教授。専攻は体育学・スポーツ社会学・社会福祉学。主著は『運動部活動の戦後と現在:なぜスポーツは学校教育に結び付けられるのか』(青弓社、2014)。他に、『Routledge Handbook of Youth Sport』(Routledge、2016、共著)など。
▲中澤篤史『運動部活動の戦後と現在: なぜスポーツは学校教育に結び付けられるのか』青弓社、2014年
◎聞き手・構成:中野慧
■「ハコの空気を読む」だけではなく「ハコそのものをつくる」
――本誌編集長の宇野常寛がテレビの討論番組に呼ばれたときによく、「日本の学校文化は教室という1つのハコの中の空気を読む能力を養成しているだけ。でも、たくさんあるハコのなかから自分に合ったものを複数選んで組み合わせる能力のほうが大事だ」という話をしています。
それを部活に延長して考えてみると、たとえば自分が野球がやりたいとして、自分の高校の野球部は一つしかなくて、学校に紐付けられているせいで同調圧力や息苦しさがある。もしそうなのであれば、青少年スポーツはもっと学校から地域クラブなどに移行されていっていいはずで、現実にもそういう動きがあると思うのですが、その点についてはいかがでしょうか。
中澤 スポーツの学校から地域への移行は、歴史的には「社会体育化」という言葉で何度か試みられてきましたが、上手くいきませんでした。その後も、「学校スリム化」とか「総合型地域スポーツクラブ」という言葉が出てきて、試みられ続けていますが、うまくいっていません。良くも悪くも、部活はやはり残ったまま。地域にハコがたくさんあって選ぶことができる状況にはなっていませんね。
宇野さんの仰るように、「ハコを選ぶ能力」は大事だと思いますが、同時に「ハコをつくる能力」も大事だと思います。ハコを選ぼうと思っても、実は自分に合ったハコとか、自分の好きなハコはこの世の中にあんまりない。だったらそれを創っちゃえばいいんじゃないか。つまり部活を創造する。難しいけど、大事なことです。
野球であれば試合をするには9人必要です。Aさんが「野球をしたい!」と思っても、まずは自分以外に8人を集めなければいけない。その仲間をつくるのが第1段階になります。クラス内で「野球、興味ない?」と声をかけて、「キャッチボールくらいならいいよ」という人が出てきて、だんだん仲間が増えていく。野球を成立させていくために、自分がしたいことをするために、仲間と相談したり協力したりするわけですが、そのプロセスのなかに人生で学ぶべきいろいろなことが入っている。時には子どもの力だけではできないことを、大人がサポートしなければいけない場面も出てくるでしょう。そうやってスポーツを成立させるために子どもが試行錯誤して学んだことは、なかなか汎用性が高そうだなと思います。
それを外側から、「部活の仕方はこうなんだ!」って決めちゃうと、肝心の自主性そのものが死んでしまう。部活は自主性を育てると言いながら、それで自主性が育つわけがない。そもそも「自主性を育てる」って矛盾した表現じゃないですか?
――たしかに、そうですね。
中澤 「自主的になれ!」って命令されて、「はい! 自主的になります!」って返事したらもう自主的じゃない。だから、内側から出てくる子どもの気持ちがないと何も始まらないはず。そういう気持ちをいかに活用するかが部活の肝で、それが「ハコをつくる」という創造性の溢れる教育につながる可能性がある。部活の地域移行の話に関連づけると、「学校でやるスポーツは窮屈で地域はバラ色」と単純に想定されがちですけど、実は地域は冷たかったりします。
――それは、どういうことなんですか?
中澤 たとえば、子どもが一市民として、「野球をやりたい」と思ったとする。ならば大人がそうするように、市民球場に予約しに行かなきゃいけない。すると、「予約が埋まっているので無理です」と断られたり、「まずは来年、地域の会議に出るところから始めてください」と言われたりする。学校を出た瞬間に、子どもは保護されるべき児童・生徒ではなく一市民として扱われてしまう。まだ子どもなのに大人社会のルールに従わなければいけない。それはとても大変で困難なことです。そもそもなぜ子どもが学校に通うのかというと、「一人前の大人」になるための練習をするためです。そういうときこそ、知識も能力もある教師が支援して、子どもが「一人前の大人」になれるように学校が頑張らなきゃいけない。「ハコを選ぶ能力が大事だ」といって窮屈な学校を抜け出してみたはいいものの、自分にあったハコがなかった。その後、「自分に合ったハコをつくってみよう」と子どもが思ったとき、もう一度学校に戻ってハコをつくる練習をする、そんな場所に学校や部活がなればいいと思います。
――ただ、「ハコをつくる」ためには、ある程度の高度な能力が必要になりませんか。
中澤 何が難しいかというと、結局「あれがやりたい」という思いだけではハコは作れないからです。せっかく集めた仲間とケンカしてしまうこともある。そのときにどう指導ができるか。顧問教師はスポーツのルールを知っているだけじゃなくて、人間関係をどうつくるかや、道徳そして市民性をどう育成するか、といった指導力が求められます。それはまさに、一般的に教師に期待されている、子どもを「一人前の大人」に育てるための指導力です。顧問教師に求められる指導力とは、スポーツの経験があるかどうか、だけではありません。教師の一般的な教育的指導力そのものが部活に必要になります。部活を教育のなかで立て直そうとするのであれば、単なるスポーツ知識だけにとどまらないような教師の力量が問われるはずです。
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月曜ナビゲーター・宇野常寛 J-WAVE「THE HANGOUT」5月2日放送書き起こし! ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.586 ☆
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月曜ナビゲーター・宇野常寛J-WAVE「THE HANGOUT」5月2日放送書き起こし!
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大好評放送中! 宇野常寛がナビゲーターをつとめるJ-WAVE「THE HANGOUT」月曜日。前週分のラジオ書き起こしダイジェストをお届けします!
▲先週の放送はこちらからご覧いただけます!
★「THE HANGOUT」月曜日イベント情報
5/28(土)開催! PLANETS+J-WAVE「THE HANGOUT」サマーウォーキング in 小網代の森
リスナーの皆さまと宇野常寛で、三浦半島の小網代の森を散策しましょう!
詳細・応募はこちらから→ http://wakusei2nd.com/series/4450
■オープニングトーク
宇野 時刻は午後11時30分を回りました。みなさんこんばんは、宇野常寛です。松岡茉優さん、今夜も本当にお疲れ様でした。ほら、今日っていわゆるハッピーマンデーってやつじゃないですか。なんだかんだ言って半分ぐらいの人が今日休みですよね。なので、なんで俺仕事なんだろうと思っていたんですが、ガラス越しに松岡茉優さんの後ろ頭を眺めることができて、それだけで今日ここに来て良かったなあと、本当にそう思っています。
ということでね、今日は僕がこの週末に考えた、ちょっと真面目な話から始めたいなと思うんですよ。行った人も多いと思うんですけれど、僕はこのあいだの土曜日にニコニコ超会議に出たんですよ。いくつもブースがあってそのうちの1つに出ただけなんですけど。人工知能をテーマにしたトークセッションがあって、その司会を仰せつかったんですよ。いろいろな話をしたんだけれど、トークの中盤で「人工知能が発達していくと人間の仕事がだんだんとなくなっていく。そのとき社会はいったいどうなっていくんだ」という話をしていたんですよね。その登壇者のひとりに、Ponanzaっていう有名な将棋ソフトの開発者の山本一成さんという若い人がいたんですよ。その彼が「人工知能が生産性を上げていけば働かずに生活できる人は増えるかもしれない。でも人間には仕事にやりがいや自己実現がないと生きていけないんじゃないか」というような話をしていたんです。
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