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【新連載】石岡良治『石岡美術館』第1回『マイク・ケリー展 デイ・イズ・ダーン』(ワタリウム美術館)
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【新連載】石岡良治『石岡美術館』第1回『マイク・ケリー展 デイ・イズ・ダーン』(ワタリウム美術館)

2018-07-05 07:00
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    今回から石岡良治さんが美術館を訪れ、実際の作品を見ながら作家や作品について解説する、『石岡美術館』が始まります。第一回に選んだのは、ワタリウム美術館で開催された『マイク・ケリー展 デイ・イズ・ダーン』です。80年代から90年代にかけて、キモかわいい作風でポップ・アートを牽引した作家マイク・ケリー。フェイクやパロディに満ちたそのジャンクな作風から、米国の大衆文化の核心を読み解きます。(構成:池田明季哉)


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    ▲今回は、東京都渋谷区のワタリウム美術館で2018年1月8日〜3月31日の期間に開催された「マイク・ケリー展 デイ・イズ・ダーン」を訪れました。

    最近、現代アートについてのまとめ本が立て続けに出版されています。小崎哲哉『現代アートとは何か』は、グローバルなアートマーケットにおいて現代アートがどのように扱われているのかをまとめた著作です。個々の作品観については異論もありますが、アートマーケットのレポートとしては、この本は入り口にふさわしい本となっており、発売されるやいなや、Amazonではすぐに売り切れになるほどでした。

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    ▲小崎哲哉『現代アートとは何か』(河出書房新社)

    こうした本を買っているのは、私のような人文学系に興味がある人というよりは、おそらくビジネスマンなのではないかと思います。世界的に見ると、いわゆるグローバルエリートと呼ばれるようなお金持ちの層には、アートを買い求めている人も多い。アートに対するリテラシーがビジネスマンにとって必要であるという感覚が、日本にも輸入されつつあるということでしょう。

    この流れに木村泰司『世界のビジネスエリートが身につける教養「西洋美術史」』という書籍があって、amazonの西洋美術史カテゴリで1位になっています(2018年4月現在)。これ、なんだかすごそうなタイトルですよね。私はこのタイトルを見て「今のグローバルエリートはこういうものを集めている人もいるから、学んでおいたらどう?」というような内容だと思ったのですが、実際に読んでみると、最終章はなんとピカソで終わっていて、現代アートについてはほとんど触れられていない。一昔前の学校の美術の教科書とほとんど変わらない範囲しか扱っていなくて、「ピカソって絵うまいのかな?」みたいなレベルにとどまってしまっているんです。

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    ▲木村泰司『世界のビジネスエリートが身につける教養「西洋美術史」』(ダイヤモンド社)

    考えてみれば当たり前のことですが、ピカソあたりまでの古典のアートと、それ以降の現代アートは連続しているものです。でも特に日本では、このふたつの窓口が完全に分かれてしまっている。私のように人文系・美術系で学んできた人間としては、こうした状況はちょっと悲しいなと思うわけです。

    この『石岡美術館』では、私が美術を見ながら作家や作品について語っていきます。古典アートと現代アートを両方扱っていくことで、ジャンルや文脈に囚われすぎず、美術を見る基礎的な目線が生まれてくるようになればいいなと思っています。

    マイク・ケリーというポップ・アーティスト

    第一回に選んだのは、ワタリウム美術館で開催された『マイク・ケリー展 デイ・イズ・ダーン』です。これはマイク・ケリーの代表作のひとつである『課外活動 再構成』という映像とインスタレーションを組み合わせた作品を中心にした展示ですね。ワタリウム美術館ではマイク・ケリーについての展覧会をこれから複数行う予定らしく、これはその第一弾とアナウンスされています。

    まずはマイク・ケリーという作家について確認しておきましょう。マイク・ケリーは、ポップ・アートといわれる分野を代表するアーティストのひとりです。かの有名なアンディ・ウォーホルのひとつあとの世代ですね。1954年生まれで、2012年に亡くなっていますから、70年代に青春を過ごし、アーティストとして活躍したのは80年代から90年代にかけてです。

    ウォーホルの頃のポップ・アートは、アートそのものは本物で、あくまでポップなモチーフを使っていたという側面が強かったんです。でもマイク・ケリーの時代あたりから、ポップ・アートは美術品としてのアウラを意識的に手放していくことになりました。

    例えばソニック・ユースというニューヨークのロックバンドが、現代アート作品をアルバムのジャケットに積極的に採用して、アートの窓口になっていたことがありました。『Daydream Nation』(1988)はゲルハルト・リヒターの作品を使っていますし、『Goo』(1990)のジャケットを手掛けたレイモンド・ペティボンはコミックを題材にしたアーティストです。そしてこの次にリリースされた『Dirty』(1992)のジャケットに使われているのが、マイク・ケリーです。ポップでキモかわいい感じのあみぐるみですね。

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    ▲Sonic Youth『Daydream Nation』(1998)

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    ▲Sonic Youth『Goo』(1990)

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    ▲Sonic Youth『Dirty』(1992)

    こうした流れを通じてポップ・アートは世界中に爆発的に広がっていったわけですが、同時に勘違いを生んでしまったという側面もあります。つまり、こうした「ポップでキモい感じのものを作ればアートになる!」と思われたわけです。このぬいぐるみなんて、いかにもサブカル系の雑貨屋さんに置いてありそうな感じですよね。他にもポスターのようなものやTシャツを使った作品なども作っています。でもそう思ってしまうのはある種の逆転現象で、むしろ現在のサブカル系雑貨屋的なものの起源のひとつがマイク・ケリーにあるといえるわけです。マイク・ケリーはこうしたイメージを作り出すことで、結果的に現代アートの裾野を大きく広げたといえるでしょう。


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