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宇野常寛 汎イメージ論――中間のものたちと秩序なきピースのゆくえ 最終回 「汎イメージ」の時代と「遅いインターネット」(1)
2019-07-22 07:00550pt
本誌編集長・宇野常寛による連載『汎イメージ論 中間のものたちと秩序なきピースのゆくえ』。インターネットが生み出す母系的な共同幻想からの自立。かつて吉本隆明が〈文学〉で目指し、ジョン・ハンケは〈テクノロジー〉、糸井重里は〈モノ〉によって目論んだそれを、チームラボはいかにして成し遂げたか。デジタルアートによって試みられる〈境界〉と〈視線〉へのアプローチから考えます。(初出:『小説トリッパー』 2019 春号 2019年 3/18 号 )
1 吉本隆明からジョン・ハンケへ、あるいは糸井重里へ
これまでの議論を整理しよう。今日のグローバルな情報社会の進行はいま、乗り越えるべき大きな壁に直面している。 まずグローバルには多文化主義とカリフォルニアン・イデオロギーが、排外的ナショナリズムの前に躓いている。グローバル化、情報化といった「境界のない世界」の反動として、そこから取り残された人々が民主主義という装置を用いて「境界のある世界」への反動を支持している(トランプ/ブレグジット)。 そして国内ローカルには、Twitterに代表されるインターネットの言論空間が一方では「下からの全体主義」を発揮し、テレビ的なポピュリズムを補完し下支えすることで、社会から自由と多様性を奪っている。そしてフィルターバブルに支援され、二〇世紀的なイデオロギーに回帰した心の弱い人々が他方ではフェイクニュース、陰謀論を拡散している(この現象はかたちをかえて世界各国で観察できる傾向である)。 かつて吉本隆明が唱導した「大衆の原像」に立脚した「自立」の思想は、インターネット・ポピュリズムとフェイクニュース、下からの全体主義と排外主義として、いま世界を覆いつつあるのだ。吉本がアジア的段階、アフリカ的段階へのポジティブな回帰として、肯定的に予見した高度資本主義と情報化の帰結(今思えばこれはカリフォルニアン・イデオロギーのことだ)としての「母系的な」社会とは、情報技術によってもたらされた「母性のディストピア」に他ならなかったのだ。 本連載はその突破口を模索することを目的としてきた。たとえば「政治と文学」という問題設定から出発し、文学の「自立」を唱導し、政治と文学の本来的な「断絶」を受容せよと主張したのが吉本隆明だとするのなら、ジョン・ハンケはこの世界と個人との接続を「政治と文学」ではなく、「市場とテクノロジー」の次元で接続することで解決しようとしていると言える。
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【対談】三宅陽一郎×中川大地 ゲームAIは〈人間の心〉の夢を見るか(後編)(PLANETSアーカイブス)
2019-07-19 07:00550pt
今朝のPLANETSアーカイブスは、ゲームAIの開発者である三宅陽一郎さんと、評論家・編集者の中川大地さんの対談の後編をお届けします。日本のゲームとゲーム批評は、なぜダメになってしまったのか。圧倒的な技術力と資金力で成長を続ける欧米のゲームに、日本のゲームが対抗しうる方策とは? 『人工知能のための哲学塾』の三宅さんと『現代ゲーム全史』の中川さんが、日本のゲームと人工知能に秘められたポテンシャルについて語ります。(構成:高橋ミレイ) ※本記事の前編はこちら
ゲーム論壇の衰退とゲーム実況の登場
三宅 近年、日本のゲームが衰退していると言われています。その責任はもちろん開発者自身にありますが、ゲームを批評する言論の力の弱さも、原因の一端にあると思います。ゲーム産業が盛り上がった時期には、ゲームを語る文化も同時に盛り上がるのが常で、そうした時代には、ゲーム批評を担うスターが現れます。当時、『ゲーム批評』という雑誌がありましたが、今の時代にもそういうメディアや批評家の存在は必要です。
その点、中川さんの『現代ゲーム全史』は、コンピューターの黎明期から現代の『Pokemon GO』までを網羅した、ゲームの歴史を俯瞰するマップとして使うことができる。僕はこのマップを足がかりに、ゲーム批評を再興できるのではないかと期待しています。批評が盛り上がって言論が面白くなると、ゲーム開発の現場もエキサイティングになります。そうしてユーザーとゲーム開発者が高いレベルで応答できるようになれば、もう一度、「文化としてのゲーム」を取り戻せるかもしれません。今のメディアは売り上げばかりを報じていて、商業色が濃すぎますからね。
中川 ありがとうございます。ゲームがコンテンツカルチャーとして伸びていった2000年前後は、批評の文脈でゲームを語る人たちが、テキストサイト界隈で記事を書いていました。ところが、ちょうど三宅さんがゲーム業界に入った頃から、そういった論壇がどんどん弱くなっていった。日本のゲーム産業の停滞と共に、ゲームを批評的に語るモチベーションも衰退していって、2000年代後半に、その隙間を埋めるものとして現れたのが「ゲーム実況」でした。ニコニコ動画内で、ゲームをプレイしている動画を実況付きで放送する。このゲーム実況の登場によって、かつて批評の対象だったゲームが、ネット上のおしゃべりのネタとして共有されていきました。
ゲーム実況でプレイされるゲームは、すでに多くの人が共通体験を持っているレトロゲームとか、あるいは『青鬼』や『ゆめにっき』といった「RPGツクール」などで制作されたフリーゲームです。あの辺の作品は、スーパーファミコン時代のゲームシステムを踏襲しながら、ストーリーテリングの部分に工夫を加えたものです。基本的にファンコミュニティが有する共通のコミュニケーションコードに即したかたちでプレイヤーの心情を揺さぶる手法で、ゲームそのものの本質としては新しい体験が生み出されていないし、求められてもいないように見えます。
三宅 批評の役割のひとつは、その分野を他の分野とつなぐことです。例えば、ゲームと16世紀頃の絵画、あるいはゲームと別の産業のプロダクト、といったように、開発者が気付いていないような、他分野の事柄と関連づけることで新しい可能性を開拓します。確かに、ゲーム実況もこれはこれで興味深い文化なのですが、内輪の盛り上がりだけで終わってしまうのが難点です。
なぜ日本のゲームは衰退したのか
三宅 日本のゲームの衰退の背景には、コンピューターサイエンティストの少なさがあるように思います。ゲームプログラマーとして一流の人はたくさんいますが、ハイパフォーマンスのマシンに向けたゲームを制作する際に、コンピューターサイエンスの土壌の弱さが露呈してしまいます。その結果、相対的に欧米のゲームが伸びて、国内のゲームとその批評が衰退してしまうという連鎖が起きています。
中川 日本のゲーム文化がピークに達した2000年代初頭ぐらいまでは、それまで蓄積したシステムを使って、いかに先進的な表現ができるかを突き詰めていくような試みがありました。ところが本格的な3Dエンジンを使う時代に入ると、技術力の不足も相まって、日本のゲーム業界全体が目的や発想力を失ってしまい、語るべき新しさを持ったゲームが現れなくなってしまったように思います。
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本日20:00から放送!オールフリー高田馬場 2019.7.18
2019-07-18 07:30本日20:00からは、オールフリー高田馬場
今夜20時から「オールフリー高田馬場」生放送です!「オールフリー高田馬場」は、既存メディアや世間のしがらみにとらわれず、 政治、社会からカルチャー、ライフスタイルまで、 魅惑の週替わりナビゲーターとともに あらゆる話題をしゃべり倒す〈完全自由〉の解放区です! 今夜の放送もお見逃しなく!
★★今夜のラインナップ★★メールテーマ「ターニングポイント」今週の1本「きみと、波にのれたら」アシナビコーナー「加藤るみの映画館の女神」and more…今夜の放送もお見逃しなく!
▼放送情報放送日時:本日7月18日(木)20:00〜21:00☆☆放送URLはこちら☆☆
▼出演者
ナビゲーター:宇野常寛アシスタントナビ:加藤るみ(タレント)
▼ハッシュタグ
Twitterのハッシュタグは「#オールフリー高田馬場」です。
▼おたより募集中!
番組では、皆さんからの -
歴史的な200万人デモと苦すぎる現実|周庭
2019-07-18 07:00
香港の社会運動家・周庭(アグネス・チョウ)さんの連載『御宅女生的政治日常――香港で民主化運動をしている女子大生の日記』。逃亡犯条例に端を発する巨大な運動の中にある周庭さん。来日中に史上最大規模となる200万人を動員するデモを実現し、条約改訂を封じ込めることには成功したものの、その心にあるのは苦い思いのようです。(翻訳:伯川星矢)
御宅女生的政治日常――香港で民主化運動をしている女子大生の日記第28回 歴史的な200万人デモと苦すぎる現実
この原稿を執筆し終えた時点で、Facebookを通して悲しい情報が入りました。4人目の仲間が自分の命を絶ちました。そう、4人目です。反逃亡犯条例改定の運動の中、すでに4人の尊い命が未来に絶望して自死したのです。これは香港の主権移譲後の社会運動ではじめての出来事でもあります。
ここ一ヶ月は香港人にとってとても長い一ヶ月でした。日本の皆さんもメディ -
碇本学 ユートピアの終焉――あだち充と戦後日本社会の青春 第7回『ナイン』の成功と6人の編集者たち(前編)
2019-07-17 07:00550pt
ライターの碇本学さんが、あだち充を通じて戦後日本の〈成熟〉の問題を掘り下げる連載「ユートピアの終焉――あだち充と戦後日本の青春」。第7回では、少女漫画誌から少年サンデーへの復帰、そして『ナイン』でブレイクを果たすまでの時期を語ります。才能はあれど時代に歓迎されなかったあだち充。そんな彼を粘り強く支えたのは6人の担当編集者たちでした。
あだち充の本当のデビュー作
1970年にデラックス少年サンデーにて『消えた爆音』で漫画家デビューしていたあだち充は、編集者の異動もあり少女誌の少女コミックに活躍の場所を移していた。70年代初頭から中盤にかけて劇画漫画は、学生運動の下火とともに、次第に人気や勢いに陰りが出てきていた。もともと劇画とは肌が合わなかったあだち充は、少女コミックで連載している萩尾望都や竹宮惠子たち「花の24年組」の自由な作風や活躍を見ながら、自分のやりたかったことを少しずつながら表現できるようになってきていた。 少女漫画誌で活動していたあだち充に、少年漫画誌に復帰する話が出たのは1978年だった。漫画家としてデビューしてから8年、原作付き漫画やコミカライズ、学年誌に漫画を描いていたあだちにとって、漫画人生を変える作品が掲載されることになる。 少年サンデー増刊1978年10月号に掲載された『ナイン』は、1980年11月号まで2年間続く。これはあだち充の本当の意味でのデビュー作であり最初のヒット作になるのだが、実は当初、一話だけの読み切りという話だった。なぜ、読み切り作品が月刊連載になり人気作になっていったのか。また、なぜあだち充に少年漫画誌への復帰の要請があったか。その理由は、当時の少年サンデーが抱えていた問題によるものだった。 今回取り上げる『ナイン』という、あだち充のその後の作品の原型とも呼べる漫画は、様々な要因が重なったことで生まれたものだった。その中でもやはり重要なのは、あだち充の担当編集者たちではないだろうか。あだち充の最初の教育者でありずっと面倒を見続けた武居俊樹から、『ナイン』最終回を担当した白井康介までの6人の編集者たちについて時系列で知ることで、ブレイクの理由がわかるのではないだろうか。
▲『ナイン』
ヒット作の出ない漫画家・あだち充を支えた編集者たち
あだち充の初代担当編集者である武居俊樹については以前の連載でも触れているが、もう一度書いておこう。武居は赤塚不二夫番として有名な漫画編集者であり、著書に『赤塚不二夫のことを書いたのだ‼︎』(文春文庫、解説はあだち充の原作をやっていたやまさき十三)がある。あだち充の兄・あだち勉は「赤塚四天王」と呼ばれていて、公私ともに赤塚に可愛がられた人物だった。また、武居は赤塚から紹介された漫画家の石井いさみと意気投合し仲良くなっていく。その石井の元で、高校を出てから兄と同居をしながら漫画デビューを目指していたあだち充が、アシスタントをしていた。 「俺のところに長くいたら、俺の悪い癖がついちゃうから独立させたほうがいい。武居さんに任せる。絵は描ける。しかも、ちゃんと女を描けるから」と石井からあだちを紹介された武居は、あだち充の絵を見た瞬間に決めたことがあった。
「こいつだよ。こいつが『サンデー』のエースになる!」
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今夜20:00から生放送!山本寛×宇野常寛「山本寛は『薄暮』で何を描いたか」2019.7.16/PLANETS the BLUEPRINT
2019-07-16 07:30
「PLANETS the BLUEPRINT」は、毎回ゲストをお招きして、1つのイシューについて複合的な角度から議論し、未来の青写真を一緒に作り上げていきます。
今夜のゲストは、アニメーション監督の山本寛さん。現在公開中の映画 『薄暮』
東日本大震災後の福島県を舞台にしたこの映画について、
作品制作に至った経緯や、そして、
この作品に込めた思いを全力でうかがいます!
▼放送日時放送日時:本日7月16日(火)20:00〜☆☆放送URLはこちら☆☆
▼出演者山本寛(アニメーション監督)宇野常寛ファシリテーター:中川大地(評論家 / 編集者)ハッシュタグは #ブループリント
ゲストへの質問など、番組へのお便りはこちらから!
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池田明季哉 “kakkoii”の誕生ーー世紀末ボーイズトイ列伝 番外編『トイ・ストーリー4』(1)パラダイス・ロスト・オブ・ザ・カウボーイ
2019-07-16 07:00550pt
デザイナーの池田明季哉さんによる連載『"kakkoii"の誕生ーー世紀末ボーイズトイ列伝』の番外編として、現在公開中の映画『トイ・ストーリー4』を論じます。1995年の第一作目以降、本作の〈男性性の美学〉は少しずつ形を変え、多様な価値観を包括するようになりました。トイ・ストーリーシリーズの24年間の主題の変遷を改めて振り返ります。※注意:本記事には『トイ・ストーリー4』のネタバレが含まれています。
こんにちは。デザイナーの池田明季哉です。今回は『“kakkoii”の誕生ーー世紀末ボーイズトイ列伝』の番外編として、『トイ・ストーリー4』について論じていこうと思います。 ご存知のとおり、『トイ・ストーリー4』は前世紀末、1995年に第一作が公開された「トイ・ストーリー」シリーズの最新作ですから、世紀末ボーイズトイから現代に繋がる想像力を引き出そうとするこの連載としては、避けて通ることはできません。これまでおもちゃにとって重要なトピックを提示し続けてきた本シリーズの批評力は、今作においても健在です。『トイ・ストーリー4』を通じて、現在のおもちゃ、特にアメリカのおもちゃ文化が置かれている状況について考えていきたいと思います。 僕は故あって、現在イギリスに住んでいます。6月21日のアメリカ公開と同時にイギリスでも本作が公開され、7月12日の日本公開に先駆けてこの作品を見る幸運に恵まれました。当然見たのは純粋な原語版ということになるので、カタカナによる代替表記については筆者独自のものであり、後に公開されるであろう日本語の吹き替え・字幕の表記とは揺れがある可能性があることをご了承ください。
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【対談】三宅陽一郎×中川大地 ゲームAIは〈人間の心〉の夢を見るか(前編)(PLANETSアーカイブス)
2019-07-12 07:00550pt
今朝のPLANETSアーカイブスは、ゲームAIの開発者である三宅陽一郎さんと、評論家・編集者の中川大地さんの対談をお届けします。デカルト以降の近代西洋哲学はどのように人工知能を定義するのか。欧米と日本のゲームの背景にある思想的な差異とは。『人工知能のための哲学塾』の三宅さんと『現代ゲーム全史』の中川さんが、ゲームとAIについて徹底的に論じ合います。(構成:高橋ミレイ) ※本記事は2016年10月18日に配信した記事の再配信です。
▲中川大地『現代ゲーム全史――文明の遊戯史観から』
▲三宅陽一郎『人工知能のための哲学塾』
実験物理学の研究からゲームAIの世界へ
中川 今回、三宅さんとの対談をお願いしたのは、『現代ゲーム全史』をまとめてみて、ゲームと人工知能(AI)は車の両輪のような関係にあるなと感じたからなんですね。拙著の序盤の章でも述べたように、ゲームの数学的解析から始まるデジタルゲームとAIは、同じ起源を共有しています。以来、基本的には何か実用的な目的のために使うのではなく、純粋に人間がコンピューターで何ができるかの可能性を追求していくジャンルとして発展してきました。それが2012年あたりからAIではディープラーニング(深層学習)のブレイクスルーがあり、ゲームではOculus Riftなどが出てきてVRへの流れが全面化して、2016年現在はそれぞれに大きな歴史的転機が訪れています。
そんな時流の中で、三宅さんはまさにゲームに活用するAIの専門家として、『人工知能のための哲学塾』と森川幸人さんとの共著『絵でわかる人工知能』を立て続けに出版され、AIという概念についての非常に本質的な思索を展開されていたのが印象的で、ぜひ深くお話をうかがってみたいと思ったわけなんです。
それで、もともと三宅さんは物理学の研究をされていたそうですが、そこからどういう関心を持ってAIの研究に進まれたのかを、まずはお聞きかせ願えますでしょうか。
三宅 最初は京都大学で数学と理論物理を勉強していました。修士課程で大阪大学に移って地下にある半径数kmという巨大な加速器でデータを取るような研究をやっていたのですが、装置を自分で作ってみたくなって、博士課程で東京大学に移り電気工学を学びました。そのうちに装置を自律的に動かすことに興味が出てきて、そこが人工知能の研究のスタートですね。「ひとつの知能を丸ごと作る」というのが僕の目標で、そういった技術はゲーム業界でこそ必要とされているはずだと思って、2004年頃にゲーム業界に入ったんです。でも、当時のゲームで使われていた人工知能は完全なものではなかった。今でも世間で人工知能と呼ばれるものの90%は、人工知能の一部を利用したものです。たとえばAmazonのレコメンドシステムやGoogle検索、ディープラーニング、画像認識などで、こういった単機能のAIの方がサービスにしやすいんですね。でも、僕が作りたいのは、ゲームの世界で本当に生きている、完全な人工知能でした。完璧でなくていいですが、知能として最低限必要な一揃いが作っているという意味で完全な人工知能です。そのためには、ゲームの中に「世界」そのものが存在しなくてはいけない。
中川 なるほど。2000年頃といえば、ゲーム史的には2Dのドット絵の時代から、プレステ革命を経てポリゴンを用いた3DCG表現への主流の移行が完了したくらいの時期ですね。ゲーム世界が3D化すると、物理演算エンジンによって、現実の三次元空間に近い世界を作れるようになる。理念としてのAIは、特定の専門分野での用途に特化したものではなく、人間のような汎用的な問題解決のできる知能を目指すわけだから、知能に対して課題を与える環境の性格が人間のそれに近づくことが大きな意味を持つわけですね。言うなれば、AIがAIとして活動するための最も純粋なフィールドを用意しうる分野が、「世界」や「環境」を生成するテクノロジーとしてのゲームだったと。
三宅 おっしゃる通りです。人間も含め、知能というのは外部の環境に合わせて相対的に生成されるので、単純な世界では知能を複雑にする必要がない。ゲームデザインが複雑になれば、人工知能もゲームを理解するために高い知能を持たなければいけなくなります。僕がゲーム業界に入ったのは、森川幸人さんがプレステで『がんばれ森川くん2号』(1997年)や『アストロノーカ』(1998年)を出した、そのちょっと後くらいでした。
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本日20:00から放送!オールフリー高田馬場 2019.7.11
2019-07-11 07:30本日20:00からは、オールフリー高田馬場
今夜20時から「オールフリー高田馬場」生放送です!「オールフリー高田馬場」は、既存メディアや世間のしがらみにとらわれず、 政治、社会からカルチャー、ライフスタイルまで、 魅惑の週替わりナビゲーターとともに あらゆる話題をしゃべり倒す〈完全自由〉の解放区です! 今夜の放送もお見逃しなく!
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▼放送情報放送日時:本日7月11日(木)20:00〜21:00☆☆放送URLはこちら☆☆
▼出演者
ナビゲーター:宇野常寛アシスタントナビ:井本光俊(編集者)
▼ハッシュタグ
Twitterのハッシュタグは「#オールフリー高田馬場」です。
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消極性デザインが社会を変える。まずは、あなたの生活を変える。第12回 消極性チームを救う鉄壁のface-work戦術(西田健志・消極性研究会 SIGSHY)
2019-07-11 07:00550pt
消極性研究会(SIGSHY)による連載『消極性デザインが社会を変える。まずは、あなたの生活を変える。』。今回は西田健志さんの寄稿です。誘いたいけど断られるのが怖くて声をかけられない……。傷付きやすさゆえに消極的になっている人々のために、コミュニケーションの場面でお互いを体面を守る「Face-work」のテクノロジーを紹介します。
Face-workを円滑にする曖昧さ
まだそれほど親しい距離感でもないと思っている相手から「LINE交換しませんか?」と持ちかけられたとき、みなさんは穏便に断ることができますか?今後もまた付き合いがあるかもしれないと思うとむげに断るわけにもいきません。
「私、LINEはやってないんです。」 「父がすごく厳しくてLINEとか全部チェックするから…ごめんなさい。」 「ごめん今、スマホの充電切れちゃっててまた今度でいいですか?」
相手を傷つけないように、そして自分も傷つけないようにちょっとした嘘をついてその場を収めたことが誰しもあるはずです。かかってきた電話に出ないとき、LINEに返事が遅れるとき、飲み会の誘いを断るとき…など同じような場面は日々の生活の中に満ち溢れています。
このような、お互いの体面を保持するために用いられる日常の方策は “face-work” と呼ばれ、社会学・心理学・言語学など様々な分野で研究されています。インタラクションデザインの分野も例外ではありません(こういうとき日本語でも英語でも同じ「顔 (face) 」という言葉を使うのがおもしろいですね)。
2005年のCHI(インタラクションデザイン分野のトップ国際学会です)で発表された “Making space for stories: ambiguity in the design of personal communication systems” という論文を紹介します。タイトルにある通り、コミュニケーションシステムのデザインでは嘘をつくためのゆとり (space) や曖昧さ (ambiguity) を考えることが大切だと提唱している、ちょっと珍しいタイプの論文です。曖昧さが大切とはいったいどういうことでしょうか?
たとえば、この論文では連絡先交換をリース制にするというデザイン案を検討しています。誰かと連絡できる権利はシステムから期限付きで借り受けるもので継続的に連絡をしたい場合には更新が必要。しかも、無料ユーザは〇人分、ノーマルプランは〇人分、プレミアムプランの人は〇人分まで連絡権を借りることができるという人数制限があるというデザインです。
もう一度最初の連絡先交換を断りにくいというシチュエーションに立ち返りましょう。
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