• このエントリーをはてなブックマークに追加
宇野常寛『汎イメージ論 中間のものたちと秩序なきピースのゆくえ』第五回 吉本隆明とハイ・イメージのゆくえ(3)【金曜日配信】
閉じる
閉じる

新しい記事を投稿しました。シェアして読者に伝えましょう

×

宇野常寛『汎イメージ論 中間のものたちと秩序なきピースのゆくえ』第五回 吉本隆明とハイ・イメージのゆくえ(3)【金曜日配信】

2018-09-07 07:00
    1b8a07c46e7823ac0b38214441a9d0377a040b26
    本誌編集長・宇野常寛による連載『汎イメージ論 中間のものたちと秩序なきピースのゆくえ』。情報社会化の進行にともなう人々の共同幻想への依存、その処方箋のひとつに糸井重里の「ほぼ日」があります。「モノからコトへ」の時代に、あえてモノに回帰することで自立を促す。糸井が提案する洗練されたスタイルの意味と射程について考えます。(初出:『小説トリッパー』 2018 夏号 2018年 6/25 号

    2  モノからコトへ、そしてもう一度モノへ?

     ではどうするのか。
     ここではこの問題を少し違った角度から検討してみよう。
     今日における吉本隆明の紹介者として糸井重里の仕事を、とりわけ「ほぼ日刊イトイ新聞」を補助線的に参照したい。
     糸井重里にとっての「ほぼ日刊イトイ新聞」(一九九八年開設、以下「ほぼ日」)は言ってみればまだ人々がモノの消費で自己を表現していた時代の黄昏に、インターネットという新しいメディアというかたちで出現したコトの消費の先駆けだった。そのメッセージは一言で言えば「現代の消費社会に対してはこれくらいの距離感と進入角度で接すると自分も気持ちよく、他人にも優しくできる」というものだ。インターネット上の文章という、無料の、それもインターネットに接続されたパソコンさえあればいつでも、どこでもアクセスできる文章を日常の中に置く。当時糸井が提示したインターネットとは、個人が自分でちょうどよい進入角度と距離感を調節できるメディアだった。天才コピーライターの糸井がこの自らのメディアに与えた「ゴキゲンを創造する、中くらいのメディア」とは、要するに消費社会に対する気持ちのいい進入角度とほどよい距離感とを提案するメディア、という意味だと思えばよいだろう。それは言い換えればモノ(消費社会)とうまく距離を取るためのコト(情報社会=インターネット)ということでもある。初期の「ほぼ日」は、この時期のインターネットのウェブサイトの大半がそうであったように「読みもの」主体の「テキストサイト」だった。まさに「ほぼ毎日」更新されるコラムや対談記事は、そのテキストの指示する内容よりも、「語り口」をもってして世界との距離感を表明していた。それは吉本的に述べれば、明らかに「指示表出」よりも「自己表出」に力点が置かれたメディアだった。
     しかし今日の、上場後の「ほぼ日」は違う。


    436c3a246273f831fc239ce29d5bf4677baf02b8■PLANETSチャンネルの月額会員になると…
    入会月以降の記事を読むことができるようになります。
    ・PLANETSチャンネルの生放送動画アーカイブが視聴できます。

     
    この記事は有料です。記事を購読すると、続きをお読みいただけます。
    入会して購読

    チャンネルに入会して、購読者になればこのチャンネルの全記事が読めます。

    入会者特典:当月に発行された記事はチャンネル月額会員限定です。

    ブログイメージ
    PLANETS Mail Magazine
    更新頻度: 不定期
    最終更新日:2024-11-13 07:00
    チャンネル月額: ¥880 (税込)

    チャンネルに入会して購読

    ニコニコポイントで購入

    続きを読みたい方は、ニコニコポイントで記事を購入できます。

    コメントを書く
    コメントをするにはログインして下さい。