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  • 池田明季哉 "kakkoii"の誕生──世紀末ボーイズトイ列伝 第一章 トランスフォーマー(3)「2009年-2016年:西から東へ、軍人から騎士へ」【不定期配信】

    2017-12-14 07:00  
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    デザイナーの池田明季哉さんによる連載『"kakkoii"の誕生ーー世紀末ボーイズトイ列伝』。1984年にトランスフォーマーの描いた成熟のイメージを評価した前々回、2007年の映画『トランスフォーマー』を『グラン・トリノ』と比較した前回に引き続き、今回のテーマもトランスフォーマーです。映画版トランスフォーマーが描こうとして挫折し続けてきた成熟のイメージを、「騎士」というモチーフを中心に論じます。
     1984年に「魂を持った乗り物」として成立した初期トランスフォーマーと、モノとのコミュニケーションによって導かれる成熟について論じた前々回、2007年の映画『トランスフォーマー』を『グラン・トリノ』と比較しながら、アメリカン・マスキュリティを構成する要素を「自動車」「軍人」「キリスト教」の三つに整理した前回に引き続き、今回は、現在公開されている第2作から第5作の映画について、そして映画版トランスフォーマーが失ってしまった可能性について明らかにしたい。
    『リベンジ』ーー「古きもの」によるノスタルジックな成熟
      
    ▲『トランスフォーマー/リベンジ(原題:Transformers : Revenge of the Fallen)』(2009年)
     第2作『リベンジ』においても、主要な登場人物の配置は『トランスフォーマー』から大きく変化しない。オプティマス・プライム、バンブルビー、サムに加えて、レノックス大尉とヒロインのミカエラがほぼ同じ位置付けで登場する。『リベンジ』ではメガトロンに代わって「ザ・フォールン」と呼ばれる存在が敵の指導者としての役割を果たすが、全体的な構図そのものは第1作とそれほど変わるところがない。前作で高校生だったサムの大学進学が描かれているものの、それが決定的に彼を成熟させることもない。
     ただ『リベンジ』からは「老化」や「風化」といったモチーフが現れていることは特筆すべきだろう。たとえばトランスフォーマーシリーズ全体においてリーダーの証として象徴的な意味を持つ「マトリクス(Matrix of Leadership)」は、長年封印されていたために風化しており触れた瞬間に砂になってしまうし、ジェットファイアーという名の老トランスフォーマーは、髭を蓄え腰を曲げて杖をついた老人然としたデザインを与えられている。  

    ▲タカラトミー「MB-16 ジェットファイアー」。写真は映画10周年を記念して2018年に発売が予定されている仕様変更版。
     そして人間とオートボットの勝利は、こうした「古きもの」の力によってもたらされる。一度は命を落としたオプティマス・プライムは、サムの功績によって再びその形を取り戻したマトリクスを使って復活し、強化パーツとなったジェットファイアーと融合することでザ・フォールンを打倒するのである。
     ここでマトリクスやジェットファイアーといった「古きもの」の象徴に込められた理想とは、自己犠牲の精神であることが繰り返し語られる。砂となったマトリクスは、一旦は自ら戦いの犠牲となったサムの臨死体験を通じて復活するし、ジェットファイアーは自ら分解してオプティマス・プライムと融合する。こうした自己犠牲の精神、そしてサムやオプティマス・プライムの再生を、あるいはキリストの死と復活と同期して捉えることも、それほど無理のある見方ではないだろう。
     前回、『グラン・トリノ』と比較しながら、『トランスフォーマー』には「自動車」「軍人」「キリスト教」という三つの要素が重要な位置付けで登場していることを述べた。『リベンジ』以降においてもこれは引き継がれているものの、バランスはやや異なる。「自動車」については徐々にあまり描かれなくなり、「軍人」「キリスト教」というふたつの要素が重点的に描かれるようになっていく。
     こうした描写からは、『リベンジ』がアメリカン・マスキュリニティの有効期限が既に切れつつあることには自覚的であることが伺い知れる。しかしその再生の道筋は、過去の英知の結晶たるマトリックスと、老トランスフォーマーであるジェットファイヤー(のパーツ)によってもたらされる。トランスフォーマーという人間の科学を超越した機械生命体を中心にしたサイエンス・フィクションでありながら、この物語はフューチャリズムではなくノスタルジーに駆動されているのである。
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  • 池田明季哉 "kakkoii"の誕生──世紀末ボーイズトイ列伝 第一章 トランスフォーマー(2)「2007年:ハリウッドの生んだ意外な双子、イーストウッドとオプティマス」【不定期配信】

    2017-11-14 07:00  
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    デザイナーの池田明季哉さんによる連載『"kakkoii"の誕生ーー世紀末ボーイズトイ列伝』。ラジー賞を受賞し「最低の映画」とまで言われる映画版『トランスフォーマー』シリーズ。しかしある視点から見ると、アカデミー賞も受賞したクリント・イーストウッドが監督・主演した名作『グラン・トリノ』と驚くほどの類似点があると言います。ふたつの映画の比較から、21世紀にトランスフォーマーの陥ってしまった困難について語ります。
     ここまで、20世紀を代表する成熟した男性の理想像は、アメリカのアクションフィギュア「G.I.ジョー」が描き出したような、最強の肉体と最強の知性を併せ持つ「軍人」であったことを確認してきた。そしてそのイメージを更新した20世紀末のボーイズトイにおいて、「G.I.ジョー」の仕様変更品として生まれた「変身サイボーグ」は、自身の身体にテクノロジーを組み込むことで成熟を目指す「サイボーグ」というイメージを、そしてさらにその関連商品として発売された「サイボーグライダー」は、自らが乗り物になってしまうことで「魂を持つ乗り物」というべきイメージを提出した。
     そして前回にあたる「第一章(1)「トランスフォーマー──ヒトではなくモノが導く成熟のイメージ」では、1984年の誕生当時のトランスフォーマーを、「魂を持つ乗り物」の最も先鋭化した姿として、理想の成熟のイメージとして憧れの器となりながら同時に成熟することを断念させる矛盾を孕んだ存在として、そしてそれゆえに描くことのできた新しい成熟のイメージについて論じた。
     その後トランスフォーマーは、誕生から30年以上に渡ってさまざまなバリエーションを生み出し続けており、そのそれぞれがユニークな想像力を提案し続けてきた。ひとつひとつのシリーズを理想の男性性や成熟のイメージといった観点から詳細に分析していきたいところだが、それは重厚な歴史に伴ってあまりにも膨大な分量になってしまうことから残念ながら断念せざるを得ない。そのためその重要性を認識しつつも、本稿では2007年からスタートし現在も進行中の、トランスフォーマー史上ある意味で最もポピュラリティを獲得したシリーズであるハリウッド映画版、およびそのおもちゃについて取り扱いたい。
     前回でもわずかに触れたが、結論から述べると、このハリウッド映画版はアメリカ主導で製作されることでアメリカン・マスキュリニティが中心的なテーマに据えられ、そして結果としてその挫折と更新の難しさを露呈してしまっている、というのが本連載の立場である。まずは映画の物語に注目しながら分析を加え、おもちゃのデザインがどのようにそれを引き受けたかという順で論じていきたい。その後ここまでの議論と合わせて考えることで、21世紀にトランスフォーマーが辿り着いてしまった限界と、20世紀末に置いてきてしまった可能性が明らかになるだろう。
    ▲タカラトミー『TLK-15 キャリバーオプティマスプライム』
    『トランスフォーマー』は「最低」の映画か?
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  • 池田明季哉 "kakkoii"の誕生──世紀末ボーイズトイ列伝 第一章 トランスフォーマー(1)「1984年:ヒトではなくモノが導く成熟のイメージ」【不定期配信】

    2017-10-11 07:00  
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    デザイナーの池田明季哉さんによる連載『"kakkoii"の誕生ーー世紀末ボーイズトイ列伝』。序章で紹介したG.I.ジョーと変身サイボーグが描いた理想の男性性にまつわる想像力を引き継いで、トランスフォーマー誕生の経緯とそこに描かれた新しい成熟のイメージについて語ります。
     序章では、アメリカにおける理想の男性像はG.I.ジョーというおもちゃが描いた「軍人」であり、その先に現れた「スーパーヒーロー」と共にマッチョイズムが基調となったこと、そしてG.I.ジョーの仕様変更として生まれた変身サイボーグが強化パーツを身にまとうことで丸ごとバイクになった「サイボーグライダー」が、乗り手と乗り物がコミュニケーションを取りながら主体と客体を往復する「魂を持つ乗り物」というユニークな想像力を提案したことを整理した。
     今回からは、実際の20世紀末のボーイズトイのデザインに触れながら、この想像力の発展と、それによって導かれる「kakkoii」という美学の可能性について考えていく。今回からの第一章では、変身サイボーグの直系の後継者であり、「魂を持った乗り物」の中でも最もグローバルに活躍するに至った洗練されたおもちゃシリーズ「トランスフォーマー」について論じていきたい。
     前編にあたる今回は、変身サイボーグがどのようにしてトランスフォーマーというかたちへと辿り着いたのか、その成立の経緯を分析しながら、20世紀末に誕生したトランスフォーマーというおもちゃの本質と、そのユニークな想像力について論じていく。トランスフォーマーは長い歴史の中で実にさまざまなバリエーションを生んできた。それぞれが興味深いため、本来であればそのデザインと想像力の関係をつぶさに追っていきたいところだが、今回はあえてその歴史を丁寧に振り返ることはせず、トランスフォーマーというコンセプトが最もピュアな状態だった誕生の瞬間に焦点を絞ることによって、その本質に迫りたい。
     その上で次回の後編では、21世紀に入ってから制作され現在に至るまで続いているハリウッドによる映画シリーズについて考えていく。結論からいえば、トランスフォーマーの映画シリーズは男性性、特にアメリカン・マスキュリニティを主題にしていながらも、その可能性を捉えているというよりはむしろ限界を露呈してしまっているというのが本連載の立場だ。20世紀のトランスフォーマーを論じた上で21世紀のトランスフォーマーの陥った状況について考えることで、トランスフォーマーが20世紀に置いてきてしまったものがなんなのかが明らかになるだろう。
    トランスフォーマーという「グッドデザイン」
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  • 池田明季哉 "kakkoii"の誕生──世紀末ボーイズトイ列伝 序章(後編)「変身サイボーグ──戦後日本という母から生まれた新たな可能性」【不定期配信】

    2017-09-12 07:00  
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    デザイナーの池田明季哉さんによる連載『"kakkoii"の誕生──世紀末ボーイズトイ列伝』。G.I.ジョーが描いた理想の男性性について論じた前回に引き続き、20世紀末に花開いたボーイズトイ文化の原点とも言える変身サイボーグと、そのデザインがもたらしたユニークな身体性について語ります。

     序章の前編では、20世紀におけるアメリカ的な男性性の変遷をまとめた。G.I.ジョーというおもちゃを通じて浮かび上がってきた20世紀アメリカにおける理想の男性像とは、最強の肉体と最強の知性を持つ「軍人」であった。そしてそのイメージは、20世紀後半においてフィクションのスーパーヒーローに引き継がれた。スーパーヒーローは悩み苦しむ弱い心をさらけ出し、それまでのハードボイルドな男性像を更新したことで人気を博したものの、身体性においては軍人的マッチョイズムから逃れることはできず、アクションフィギュアの体型はむしろ筋肉が極端に強調されたものへと変化していく。  時を同じくして、日本にもG.I.ジョーの遺伝子を受け継ぐおもちゃが登場する。それがタカラ社(現タカラトミー社)による、日本ボーイズトイ文化の原点とも言える傑作、「変身サイボーグ」である。後編においては、戦後まもない40年代半ばから70年代に至って変身サイボーグが誕生するまでを振り返り、これから語ろうとしている「世紀末ボーイズトイ」の位置付けを明確にしたい。
    おもちゃ大国と軍国主義の挫折
     戦前から戦中においては、アメリカと同じように、日本における理想の男性性もまた概ね軍人と結びついていた。  日本は昭和に入った1920年代の段階ですでにおもちゃ産業が大きく発展しており、世界恐慌による不況への対応として、おもちゃの輸出が真剣に評価されていたほどだった。おもちゃの領域においては、クールジャパン的な発想はこの時点で既に生まれていたと言える。  このとき流行していたのは、やはり戦争おもちゃだった。日清戦争から日露戦争、そして第一次世界大戦に勝利することによって列強に並んだ日本において、少年たちは兵士や兵器に憧れ、おもちゃもそれに応えるものが作られていった。戦争によってメディアとなるおもちゃこそ作られなくなったものの、この流れは第二次世界大戦に至ってピークを迎える。そして敗戦と同時に、大日本帝国軍が理想としたような名誉を重んじ国家に殉じていくような男性性は、一旦徹底的に否定されることとなるのである。  こうした戦前から戦中の日本における理想の男性性の問題は、男性学的には極めて重要である。しかし他の多くの文化と同じように、おもちゃ文化もまた戦前〜戦中から分断されることによって戦後の文化が発展していった。そのためここではあまり詳細に分析することはせず、代わりに戦後のおもちゃ文化について論を進めていきたい。

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  • 【特別再配信】根津孝太(znug design)×宇野常寛「レゴとは、現実よりもリアルなブロックである」

    2017-08-16 07:00  
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    誰もが知っているブロック玩具のレゴ。しかし、身近だからこそ、改めてその魅力について考える機会は少ないものです。昔からレゴが大好きだというカーデザイナーの根津孝太さんにお話を伺いながら、レゴの歴史から批評性、現実と虚構の繋ぎ方、そしてものづくりの未来まで、これからの日本を考える上で重要な想像力に迫りました。 (構成:池田明季哉/本記事は2014年6月11日に配信した記事の再配信です)

    小さいときからレゴ大好き!――根津孝太とレゴ 
    宇野 僕がレゴを買いはじめたのって、実はここ1年くらいなんですよ。ずっと買おうと思っていたんですが、手を出したら泥沼にハマることがわかっていてなかなか買えなかった(笑)。でもとうとう我慢できなくなって「レゴ・アーキテクチャー」シリーズに手を出してしまい、それから「レゴ・クリエイター」の大型商品を買ったりとか、あとは「レゴ・テクニック」の3つのモデルに組み替えられる小型商品とか、あとはヒーローものが好きなので、バットマン・シリーズを買ったりとかしています。
     根津さんは昔からのレゴファンという風に聞いています。今日はレゴについて、いろいろなお話を伺えればと思います。
    根津 僕はレゴが小さいときから好きなんです。ただ最初に買ってもらったのがレゴってだけだったんですけど、子供ながらに発色の良さとかカチッと組み合わさる感じとかにクオリティを感じていて。レゴ新聞に載ったこともあるんですよ!

    ▲楽しそうに話してくれる根津さん。「CAST YOUR IDEAS INTO SHAPE」と書かれたレゴのTシャツが素敵
    宇野 レゴ新聞! そんなものが……。やはり後に根津孝太になる人間は、小さい頃から根津孝太だったということですね(笑)。
    根津 街づくりのコンテストに妹と一緒に出したら入賞しちゃって。そしたら依頼が来て、小学校6年生くらいのときにF1を作ったんです。同じF1の、ひとつすごい大きいのを作って、もうひとつすごい小さいのを作って、ブロックの差こんだけです! みたいなことをやったんですね。
     例えば、これは僕のデザインしたリバーストライク「ウロボロス」をレゴにしたやつなんです。アメリカに自分がデザインしたモデルをパッケージに入れて届けてくれるサービスがあって、それで作ったんです。これも大きいものと小さいもの、両方作っています。

    ▲異なる解釈のふたつのウロボロス。資料の右上が大きいもの、左下が小さいもの。レゴファン諸氏は、ウィンドシールド部分の大きさから全体のサイズを推し量っていただきたい。
     ウロボロスのレゴも実物の写真を見ながら作るわけですけど、小さく作るとよりディフォルメしないといけない。だったらやっぱりこのフェンダーの丸いところと、タイヤの表情がウロボロスらしさだよね、それ以外は大胆に省略しよう、ということで、自分の解釈を出してるんです。 
    解像度と見立ての美学ーーディフォルメだけが持つ批評性
    宇野 根津さんはずっと小さいときからレゴをほとんど途切れなく作ってきてるわけですよね。それなりに長いレゴの歴史をずっと追ってきたと思うんですけど、レゴの歴史のターニングポイントみたいなものってありますか?
    根津 一時期、解像度を上げるために、専用パーツが一気に増えたことがあったんですよ。絶対にそのモデルでしか使えないような。
     でもレゴがさすがだなと思うのは、必ずそうじゃない使い方も用意して提案してくるんですよ! 「これ他に何に使えるんだよ……」みたいなパーツでも、後で必ずなるほどと思うような使い方をしてくる。それは最初からそれがあってパーツを作っているのか、それとも後からレゴの優れたビルダーが使い方を考えているのかはわからないんですけど。
     例えば僕が作ったこの装甲消防車も、このコックピットの横の板の部分は、チッパー貨車っていう列車のすごく特徴的な部品を使ってるんですが、パッと見わからないと思うんですよね。あとは有名なビルダーさんには、ミニフィグだけで何かを作ってしまう人とかもいますし、このオウムが人間の鼻に見えるんですとか、いろんな見立てができるんです。
    宇野 レゴってある時期から、どんどん模型化しているじゃないですか。組み替えを楽しむ玩具というよりは、独特のディフォルメと解像度を持つ模型の方向に舵を切っていて、この転向に批判的なファンもすごく多い。でもここ10年くらいのレゴの変化って、もっとポジティブに捉えていいんじゃないか。レゴの美学がもたらす快楽に世界中が気付き始めている、そう考えていいんじゃないかと思っているんですね。

    ▲根津さんが持ち上げているのが、開閉式のコックピット。

    ▲同じパーツを使った別モデルのコックピット内部。このアングルになって初めて、バケット状のパーツを使っていることに気付かされた。

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  • 【新連載】池田明季哉 "kakkoii"の誕生──世紀末ボーイズトイ列伝 序章(前編)「G.I.JOEとスーパーヒーロー──20世紀を戦った偉大な父とその子供たち」【不定期配信】

    2017-08-09 07:00  
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    今回から、デザイナーの池田明季哉さんによる新連載『"kakkoii"の誕生──世紀末ボーイズトイ列伝』が始まります。20世紀末に登場したボーイズトイの歴史をめぐりながら、21世紀における男性の「かっこよさ」について考えます。今回は、G.I.ジョーの描いた理想の男性性の変遷をまとめ、日本のボーイズトイへ与えた影響を考えていきます。

     子供の頃のおもちゃのことを、覚えているだろうか。
     そう言われて、全く何も思い出せないという人は稀だろう。買ってもらえたもの、買ってもらえなかったもの、大切にしていたもの、捨ててしまったもの、なくしてしまったもの、今でも大切に持っているもの……さまざまなおもちゃの思い出が、誰の心にもきっとあることと思う。
     この連載では、そんなおもちゃのデザインを通じて、21世紀における男性の「かっこよさ」について考えていく。
     主に登場するのは、80年代から90年代ーー20世紀末に流行した、主に幼稚園から小学生までの男子をターゲットにしたいわゆる「ボーイズトイ」と呼ばれる日本のおもちゃ群だ。
     トランスフォーマー、ミニ四駆、SDガンダム、ゾイド、ビーダマン、ミクロマン、勇者シリーズ……20世紀末に子供時代を過ごした現在30歳前後の世代ならひょっとすると懐かしさを感じるかもしれないし、有名なおもちゃも含まれてはいるが、このリストの全てで遊んだことがあるという人はそれほどいないだろう。

    ▲トランスフォーマーより「コンボイ」(画像出典)

    ▲ミニ四駆「シャイニングスコーピオン」 (画像出典)
     私は多くの人と同じように幼少期におもちゃに慣れ親しみ、そして多くの人とは違って大人になった今もおもちゃで遊び続ける、おもちゃファンのひとりだ。そろそろ2歳になる娘の父親でもある。だからこの20世紀末のボーイズトイという世界が、一般的に「おもちゃ」という言葉からイメージされるものとは大きく異なる、著しく狭い領域であることもよくわかっているつもりだ。
     この連載で紹介するおもちゃの多くは、教育を目的とした積み木のような知育玩具ではなく、あるいはアンパンマンや仮面ライダーのような、映像メディア上の存在を写し取ったキャラクター玩具でもない。メディアミックスされつつもプロダクトを中心として展開し、それゆえに独自の表現を発展させていたユニークなデザインのおもちゃ群である。男の子たちの欲望に徹底して応えていった結果、これまでになかった新しいデザイン文化がおもちゃの世界を舞台に花開いたのが、20世紀末というタイミングだった。
     こうしたおもちゃのデザインについて考えることで、私はひとつの「やり残した宿題」を解くヒントを見出したいと思っている。20世紀の男性が解くべきだった、そして未だ解かれていない難問。それは「21世紀の男性にとって、『かっこいい』とは何か」ということだ。もし「かっこいい」という言葉が曖昧すぎるなら、「成熟のイメージ」と言い換えてもいい。どのように大人になり、社会と関係していくべきなのか。21世紀になって曖昧になってしまったそのイメージをよりはっきりしたものにするヒントを、20世紀末のボーイズトイを振り返ることで改めて発掘していきたい。
     序章では、まずは前提として本連載で扱うおもちゃの範囲と位置付けを確認しておきたい。この前編では、おもちゃ自体の社会的位置付けと、20世紀までのおもちゃが担ってきた男性性について確認する。次回の後編では、世紀末ボーイズトイの原点となったエポックメイキングなおもちゃを紹介しつつ、この連載で扱うおもちゃを定義づけていく。
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  • 近代都市・東京を再現する拡張型都市開発フィギュア「ジオクレイパー」とは? 製作者・内山田昇平インタビュー ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.458 ☆

    2015-11-25 07:00  
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    【お詫び】本日配信の記事「近代都市・東京を再現する拡張型都市開発フィギュア「ジオクレイパ―」とは? 製作者・内山田昇平インタビュー」において、編集部のミスで一部画像が抜けておりましたので、完全版を再配信いたします。 ご購読いただいている読者の皆さまには、大変申し訳ございませんでした。スタッフ一同、再発防止に努めてまいります。今後ともPLANETSのメルマガ「ほぼ日刊惑星開発委員会」を楽しみにしていただけますと幸いです。
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    (3)ニコ生放送のメール通知を停止する方法について
    を解説していますので、新たに入会された方はぜひご覧ください。


    近代都市・東京を再現する拡張型都市開発フィギュア「ジオクレイパー」とは?
    製作者・内山田昇平インタビュー

    ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
    2015.11.25 vol.458
    http://wakusei2nd.com


    今朝のメルマガは「ジオクレイパー」の製作者・内山田昇平さんへのインタビューです。「都市開発トレーディングフィギュア」というユニークな発想の原点や、都市を8つのパーツに抽象化する中で見えてきたもの、そして「食玩ブーム」を基点とする日本ホビー文化の過去と現在について、宇野常寛がお話を伺ってきました。

    ▼プロフィール
    内山田昇平(うちやまだ・しょうへい)
    株式会社カフェレオ、株式会社アルジャーノンプロダクト、日本卓上開発の代表取締役。ジオクレイパーのためにつくった日本卓上開発にて、拡張型都市開発トレーディングフィギュア「ジオクレイパー」を企画。2014年9月22日に第一弾である「東京シーナリー」を発売し、2015年10月にコンビナートをはじめとした拡張ユニットを発売している。

    ▲「ジオクレイパー」プロモーション動画
    https://www.youtube.com/watch?v=4Un0rQkw88k
    ジオクレイパーHP
    https://geocraper.localinfo.jp/
    Facebook
    https://www.facebook.com/geocraper/
    ◎聞き手:宇野常寛
    ◎構成:中野慧/構成協力:真辺昂
    ■ Instagramの「#建物萌え」的な感覚から生まれた「ジオクレイパー」
    宇野 もともと僕はフィギュア全般が好きで、特に仮面ライダー関連の製品をよく集めているんです。メディコム・トイの「東映レトロソフビコレクション」や、竹谷隆之さんのS.I.Cシリーズにもハマっていて、このメルマガでメディコム・トイの赤司竜彦さんや竹谷さんにもインタビューしたりしています(笑)。
    (関連記事)
    日本の町工場から鮮やかに蘇る東映怪人たち――「メディコム・トイ」代表・赤司竜彦インタビュー
    "もし現実にいたら"を具現化する力――造形師・竹谷隆之に聞く三次元の〈美学〉と可能性
    内山田 なるほど、僕もその感覚はよくわかります(笑)。「東映レトロソフビ」は赤司さんの製品化のセンスがまたとてもいいですよね。
    宇野 僕は特撮フィギュアに限らず模型も含めたホビー全体が好きなのですが、秋葉原のホビー系の店を散策していたときに、たまたま店内に展示されていた「ジオクレイパー」を見て大変な衝撃を受けたんです。まず立体フィギュアとしての完成度がとても高いですし、6cm角でデザインされた建物のパターンを自由に組み合わせて遊べる「建築トレーディングフィギュア」というコンセプトも斬新ですよね。まずはこの発想の原点についてお伺いしたいのですが、内山田さんご自身はもともと建築がお好きだったんですか?
    内山田 うーん、「この建築家の作品が好き」という感覚は実はないですね。僕はキャラクター商品などの玩具・フィギュア業界でずっと仕事をしてきたんですが、もともと「建物萌え」というか、現代のビル群や高速道路のような東京の都市景観がすごく好きなんです。たとえば出張で大阪から新幹線で帰ってくると、新橋や品川あたりから急に建物がわあーっと立ち上がってきて、「あ、東京に帰ってきたな」と感じたりしますよね。高度成長以降に作られていったそういう「モダン」というか、近代都市としての東京の魅力を形にしたいという思いがありました。


    宇野 「ジオクレイパー」はどういうお客さんを想定して製作を始められたんでしょうか?
    内山田 当初想定していたのはInstagramを使っているような若い層ですね。僕はInstagramを初期の2010年頃からやっていたんですが、ビルの写真ばかり撮ってアップしたりしていました。「#高速道路」「#鉄塔」とか、あとは「#工場」というハッシュタグもあったりして、そういった様子を見ていて「建物のファンってたくさんいるんだ」ということに気付いて、その感覚を立体にしたら面白がってもらえるんじゃないかと思っていましたね。
    宇野 「ジオクレイパー」はうちの事務所にも置いているんですが、別に建築が好きというわけではないスタッフも「おしゃれでいいですね!」と言ってくれたりして、インテリアとしても優れた製品ですよね。
    内山田 やっぱりホテルとかに置いて、海外のお客様にお土産としてアピールしていきたいということは思っています。「都市」ってキャラクターフィギュアと違って文脈の理解がいらないですし、非常にわかりやすいコンセプトだとは思うので。
    宇野 これまで販売してきて、反響はいかがでしたか?
    内山田 やっぱり好き嫌いではなく、「理解してもらえるかもらえないか」ではっきりと分かれる、という感じですかね(笑)。
    宇野 単におもちゃ売り場で箱の中に1ピース置いてあるだけだと理解されにくいかもしれないですね。僕が秋葉原で見たときは実際に都市の景観としてディスプレイされていて、その問答無用の説得力にやられてしまったんです。
    内山田 僕も本当にそうだと思います(笑)。今年のワンダーフェスティバルでは3600個の巨大ジオラマを展示したんですが、そしたらやっぱり大反響でしたね。



    ▲ワンフェスでの展示写真
    宇野 具体的に、ユーザーはこの「ジオクレイパー」をどんなふうに楽しんでいるのでしょうか?
    内山田 モデラーの方が水没ジオラマを作ってくれてTwitterでバズったりしていましたね。あとは他のフィギュアと組み合わせて写真を撮っていらっしゃる方が多いです。特撮オタクの方など、比較的濃い人たちが買ってくれている印象ですね。

    ▲ジオクレイパーの水没ジオラマ(出典)
     


    (出典)
    宇野 実は僕も秋葉原で見かけたときにすぐに箱買いして、うちの事務所にあったウルトラマンとベムラーと組み合わせて写真を撮ったんです。それがこれなんですけど……。

    ▲ジオクレイパーと合わせたウルトラマンとベムラー(宇野撮影)
    内山田 おお、かなりよく撮れていますね! こんなふうに別のフィギュアと組み合わせて写真を撮ってアップしてくれている人が多いんですよ。楽しんでもらえて嬉しいです。
    ■「モダン」の結晶である東京のビル群・高速道路を再現したい
    宇野 「ジオクレイパー」の第1弾「東京シーナリー」は8つのパーツに限定して出されていましたよね。その「8つのパーツに限定する、それだけで街ができる」という発想もひとつのブレイクスルーだと思うんですが、なぜこういう形態で販売しようと考えたんでしょうか?

    ▲ジオクレイパー 東京シーナリー Vol.1 BOX
    内山田 発想の大元は食玩やトレーディングフィギュアですね。昔からトレーディングフィギュアって8個ぐらいの商品の定番セットでだいたい5000円〜6000円ぐらいの感覚なのですが、ジオクレイパーの第1弾として出した「東京シーナリー」もそのイメージで8つのパーツにしています。
    そもそも僕は今の会社を30歳で立ち上げて15年やってきたんですが、最初は『ファイナルファンタジー』のアクセサリーの販売代行からスタートしたんですね。そうこうしているうちに2000年代初めに「食玩ブーム」というものが起こって、ライト層を取り込むことにも成功してすごく盛り上がったんです。
    宇野 なるほど。実は食玩ブーム当時、僕は大学生だったのですが、「チョコエッグ」(海洋堂)の動物フィギュア、「名鑑シリーズ」(バンダイ)のウルトラマンや仮面ライダーのフィギュア、他にも「王立科学博物館」(タカラ)の宇宙ものとか、「タイムスリップグリコ」(海洋堂+グリコ)のレトロフィギュアを集めたりしていました(笑)。「ジオクレイパー」にはその食玩ブームの遺伝子が宿っているわけですね。
    内山田 ええ、「都市をフィギュアにしよう」という発想も食玩やトレーディングフィギュアから来ています。食玩のミニチュアには色んなものがあったわけですが、建物をモチーフにしたものもありました。そういった建物が並んだ「都市」の景観をフィギュアにしたいなあ、ということは昔からぼんやりと考えていたんですね。
    あとは、2009年にオリンピック誘致を目的に森ビルさんが作った1000分の1スケールの東京のジオラマをテレビで見たことも大きかったですね。「すごい」と思うと同時に「このジオラマ、欲しい」と思ってしまったんです(笑)。

    ▲森ビルが作った東京のジオラマ
    https://www.youtube.com/watch?v=4iGNTegpLZI
    宇野 その気持ち、ものすごくよくわかります(笑)。
    内山田 ただ、森ビルさんが作ったこのジオラマって5億円以上かかっているらしいんです。予算的に自分たちでは作ることはできないから、さすがに無理だよなぁとそのときは思っていました。でもテレビで都市の空撮の映像とかを見かけるたびに、「あの風景をジオラマにしたいなぁ……」という気持ちが蘇ってきて、その感情が抑えられなくなって、採算度外視でこの「ジオクレイパー」の開発を決意してしまいました。
    宇野 素晴らしいですね(笑)。他にも何かヒントになったものはあるんでしょうか?
    内山田 当然ながら『シムシティ』(注1)も発想の原点にありましたね。
    宇野 なるほど。『シムシティ』はゲーム内で建物や公共交通機関を作って自分の街を大きくしていくわけですが、「ジオクレイパー」は実際に立体のフィギュアで街を拡張できますからね。

    (注1)シムシティ:米マクシス社が販売するゲームソフト。交通と公共施設を作って街の発展を目指す。1989年に米国で発売され、その後日本でも初期PCゲームの定番ソフトとなり、その後はコンシューマー機でも展開されて都市経営シミュレーションゲームの雛形となった。


    ▲シムシティのプレイ画面(出典)
    内山田 ただ、モノづくりできる仲間にこの構想を話しても、最初は誰も理解してくれなかったんですよ(笑)。そもそも僕らは1/144の戦闘機のフィギュアを作ったり、もともと「シンメトリーな商品を作る」ということをやっていたんです。
    宇野 いまお話を伺っていて思ったんですが、昔700円くらいで売っていたブルーインパルス(航空自衛隊の戦闘機)ってもしかして……。
    内山田 あ、それはウチで出したやつですね。「J-wing」という雑誌とコラボさせてもらって出した商品なんですけど。
    宇野 やっぱり! 僕、これ買っています。そんなにミリタリー系に詳しいわけではないんですが、僕みたいなライトな模型ファンにとって、半彩色で接着剤無しで組み立てられるのってすごくちょうどよかったんです。

    ▲「Jウイング監修 MillitaryAircraftSeries vol.5 -航空自衛隊の戦闘機-」この号にブルーインパルスが付属していた 
    内山田 本当ですか! 嬉しいですね。この「ブルーインパルス」を作ったときに経験したことなんですが、戦闘機模型のユーザーって本当に目が肥えているんですよ。1/144スケールって当時としては先駆的なサイズだったんですけど、このスケールになってくるとリアル感がすごく問われてしまいます。当時うちの技術力はまだそこに追いついていなくて、ユーザーさんからは厳しい評価をいただいてしまいましたね。日本の濃いユーザーさんに満足してもらうためには本当にモールドの数ミリが生命線で、ちょっと太いだけでもうダメなんです。
    宇野 なるほど。普段から技MIX(注2)を愛好しているようなガチ勢のお客さんからしたらそうかもしれないですが、でも僕ぐらいのライトファンからしたらとても良い製品に思えたんですけどね。

    (注2)技MIX(ギミックス):トミーテックが販売する彩色済み戦闘機プラモデルのシリーズ。

    内山田 もちろん、そう言ってくださる方もたくさんいて、それは嬉しかったですよ。一方で、厳しいユーザーさんのリクエストに必死に応えていく過程で僕らの技術力が鍛えられたという部分もあったんです。そうして技術力が向上した結果として、「ジオクレイパー」の構想がだんだん具体化できるようになっていきました。仲間のCGデザイナーの人にラフを出してもらったらドンズバなものが上がってきたりとかですね。それで2012年ぐらいに仮試作を作り始めて、2014年の9月にようやく発売することができました。
    宇野 食玩のフォーマットでガチ勢と戦ってきた結果、技術が鍛えられていったんですね。
    内山田 「ジオクレイパー」の製作過程でも、東京タワーの方とライセンスの関係でお話しをしたときに「ここまで作りこまなくてもいいんじゃないですか?」って言われたんです(笑)。もちろん担当の方も大変理解のある方で、「ホビーメーカーさんってここまで作り込みますよね」という前提で冗談を言ってくれたんですけど、やっぱり「ここまでやる」のが日本のホビー文化なんです。タワーの中を通るエレベーターの支柱とか、省略してもいいんじゃないかという箇所はいくつかあったんですが、「そこで妥協したら文化じゃない」という思いでやりきってしまいましたね(笑)。
    ■ 「東京中の建物をサンプリングする」という発想
    宇野 「ジオクレイパー」は6cm角というこのサイズ感も絶妙だと思うんです。どういった経緯でこのサイズに決めていったんでしょうか?
    内山田 もともと「単にビルだけを作っても売れないだろうな」ということは思っていて、東京のランドマークといえば東京タワーなのでこれは絶対に入れようと決めていました。東京タワーの高さ333mを手頃なサイズにしようとすると高さ13cmがちょうどいい。そのまま縮尺していくとだいたい平面が6cm角に収まるんですが、そのスケールがちょうど2500分の1だった。「ジオクレイパー」が2500分の1サイズなのは東京タワーが基準になっているからなんです。
    宇野 なるほど。「ジオクレイパー」は東京タワー以外にも色々なビルをモデルに、ある種の類型化・抽象化を行ったキットになっていますが、その「パターン化」という視点が面白いですよね。この発想がどのようにして生まれたのかが気になっていたんです。

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  • 【後編】〈デザイン〉としての立体玩具――レゴ、プラモデル、ミニカー、鉄道模型(浅子佳英×門脇耕三×宇野常寛「これからのカッコよさの話をしよう」vol.5) ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.373 ☆

    2015-07-24 07:00  
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    【後編】〈デザイン〉としての立体玩具――レゴ、プラモデル、ミニカー、鉄道模型(浅子佳英×門脇耕三×宇野常寛「これからのカッコよさの話をしよう」vol.5)
    ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
    2015.7.24 vol.373
    http://wakusei2nd.com


    本日は、好評の鼎談シリーズ「これからのカッコよさの話をしよう」第5弾の後編をお届けします(前編はこちらから)。今回は、奇形的な進化を遂げた立体玩具の「フィクショナルなデザイン」をヒントに、ドローンや車など「リアルのデザイン」の未来を考えていきます。
    ▼「これからのカッコよさの話をしよう」これまでの記事
    (vol.1)これからの「カッコよさ」の話をしよう――ファッション、インテリア、プロダクト、そしてカルチャーの未来
    (vol.2)無印良品、ユニクロから考える「ライフデザイン・プラットフォーム」の可能性
    (vol.3)住宅建築で巡る東京の旅――「ラビリンス」「森山邸」「調布の家」から考える
    (vol.4)インテリアデザインの現在形――〈内装〉はモノとヒトとの間をいかに設計してきたか
    ▼プロフィール
    門脇耕三(かどわき・こうぞう)
    1977年生。建築学者・明治大学専任講師。専門は建築構法、建築設計、設計方法論。効率的にデザインされた近代都市と近代建築が、人口減少期を迎えて変わりゆく姿を、建築思想の領域から考察。著書に『シェアをデザインする』〔共編著〕(学芸出版社、2013年)ほか。
    浅子佳英(あさこ・よしひで)
    1972年生。インテリアデザイン、建築設計、ブックデザインを手がける。論文に『コムデギャルソンのインテリアデザイン』など。
    ◎構成:有田シュン、中野慧
    ■ 80年代以降、日本のサブカルチャーは「ベースデザイン」を生んでいない
    宇野 僕が今日考えたい3つの論点を振り返ると、まず一つ目は「20世紀には現実の縮小を欲望していた人類が、21世紀にそれらを欲望しなくなっていったのはなぜか」。二つ目は、こうした戦後日本の、特にキャラクター文化のベースデザインが60年代から80年代に集中しているのはなぜか。そして最後の三つ目が、「戦後的な男性性の問題が解消された結果として、奇形的な進化を遂げたデザインをどう評価するか」です。
    浅子 一つ目と二つ目については、やっぱり「未来に対する明るい希望を信じられた時代だった」という部分が大きいんじゃないですか?
    宇野 例えば、成田亨により60年代に生み出されたウルトラ怪獣って、ストレートに明るい未来を信じるフューチャリズムの感覚とつながっているとは思えないわけですよ。ウルトラマンの方の造形はフューチャリズムと結びついていると思うけれど、怪獣には当てはまらない。むしろ戦後復興から高度成長への狂騒の中で発生したひずみや余剰が、サブカルチャーの片隅に集中していたと考えた方がいい。もっと大きな、社会と暴力のイメージや男性性の関係の問題があると思うんですよね。それも、かなり日本ローカルな問題がある。戦後的ネオテニー・ジャパンの表現が幼児的な文化を発展させた、といった教科書的な解説には収まらないものが、ゼットンにもキングジョーにもジャミラにも恐竜戦車にもあると思う。
    浅子 僕がもうひとつ気になるのは、三つ目の「奇形的な進化」が、なぜ現実におけるプロダクトデザインも含めた「デザイン」全体の本流にはならなかったののか、という問題です。
     70年代末の『ガンダム』がベースデザインとなりえたのは、後になってフォロワーがどんどん出てきたからですよね。同じように、ウルトラマンで言えば成田亨がウルトラマンをスケッチブックに描いた瞬間にベースデザインになったのではなく、その後のフォロワーが生まれていく過程で、徐々にベースデザインとなっていったのだと思います。
     話を少し迂回しますが、建築デザインの世界では、ここ50年くらいのあいだ、「建築家から新しい都市のヴィジョンが提案されて盛り上がる」ということがほぼなくなりました。キャラクターデザインも同じで、蛸壺化された社会では、誰かが提示した新しいヴィジョンを、みなで広く共有することができなくなったいうことでもあるんじゃないですか。
    門脇 ベースデザインという意味で示唆的なのは、アノマロカリス(古生代カンブリア紀前半に繁栄した捕食性動物)に代表されるバージェス動物群です。バージェス動物群には、口がカメラのシャッターのような機構をした動物など、それ以降の時代には見られないデザインをした変な生物がたくさんいるんですね。そのベースデザインの多様さは圧倒的なのですが、その後、たまたま脊椎動物に連なる生物が生き残って、両生類や爬虫類、哺乳類のベースデザインになりました。

    ▲バージェス動物群の代表格のひとつ「アノマロカリス」(【最強最大の捕食者】アノマロカリスという大スター【カンブリア紀の覇王】 より)
     脊椎動物が5本指をしているというのは、最初に両生類の指が5本になって、それ以降は基本的にまったく変化していないんです。1回ベースデザインができてしまうと、そのベースのなかで進化していくわけです。しかしベースデザインができる前は、バージェス動物群のようにそもそものベースデザインのバリエーションがたくさん出てきていた。さらに言えば、脊椎動物系が生き残ったのはあくまでも偶然であって、合理的な選択の結果ではないんです。
     こうして考えていくと、「60~70年代はベースデザインのない時代だった」と言えるかもしれません。だからこそたくさんの実験的なデザインが花開いたのではないか、と。たとえば『ウルトラマン』なら、隊員が巨大化して怪獣と戦うという新しいベースデザインがここで生み出されたということではないでしょうか。
    浅子 ベースデザインとして残ったものが、必ずしもプラットフォームとして優れていたわけではないということですよね。
    宇野 たしかに、ジャンルの勃興とともにベースデザインは生まれるものなんですよ。特撮が生まれたから成田亨のベースデザインが生まれ、乗り物としてのロボットが発明されたからこそガンダムがベースデザインになった。要するに「近年はジャンルを作ることができていない」ということに収斂されていくんじゃないですか。
     60~70年代にアメリカのサブカルチャーの受容とそのローカライズに基本作業は完了してしまっていて、それ以降サブカルチャーはベースデザインの枠内での進化を遂げていったわけです。80年代以降にジャンルそのものとして新たに生み出されたものは「テレビゲーム」ぐらいしかない。
    浅子 しかし、そう考えると、特撮はこれまで人間が怪獣の着ぐるみに入っていたものが、CG全盛に変化したんだから、全く違うものが生み出されていてもおかしくないですよね。にも関わらず、新しいものが出てきていないのはなぜなのでしょう?
    宇野 技術の進歩とジャンルの創出は、それほど相関していないんじゃないかと思います。円谷英二が『ウルトラマン』を撮影したときの特撮の技術はほぼ戦中に開発されていて、その技術を「テレビ番組として毎週一本作る」というフォーマットに合わせてはじめて『ウルトラマン』が生まれた。ジャンルの創出には技術の進歩よりもむしろ、メディア的な要請のほうが要因として大きい。
    浅子 海外の映像業界で言えば、特に『24』以降、「テレビドラマ」がこれまでとは違う意味で勃興してきたと言えるとは思います。だけどテレビドラマという形式自体は昔からあるものなので、現代のテレビドラマの特徴は、予算や時間など様々な制約のために映画ではできないことを、テレビドラマという旧いフォーマットを再利用して新しい表現形式でやっている点にある。ただ、これだけでは「ジャンルを生み出した」とまでは言えないですよね。
    門脇 ベースデザインを変えるのはものすごくエネルギーが必要ですが、今あるベースを開発側が改変し、二重三重にひねくれたストーリーを考えて、各世代の好みに合わせていく「コンテンツデザイン」は比較的エネルギーが少なくて済むというのはあるんじゃないですか。ハリウッドの映画と海外ドラマの関係もそうですし、もともとのロボットアニメである『ガンダム』シリーズと、その奇形的進化であるSDガンダムの関係などもそうなんじゃないかな、と思います。
    ■ キャラクターを現実の風景と対決させることによってベースデザインが生まれる
    門脇 初期の『ガンダム』のモビルスーツは兵器であるという側面が強くあったと思うのですが、SDガンダムはそのエッセンス自体もなくなっていて、ベースとして残っているのは人型のロボットということくらいですよね。
    宇野 ガンダムってそもそも基本的には重火力型ではなくて、高機動型でスマートなんですよ。つまりストレートにマッチョで力強いものではなく、むしろスピード重視の高機動なもので、これって日本人の文化的でインテリ寄りの男性の自意識に結びついていたと思うんです。
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  • 【前編】〈デザイン〉としての立体玩具――レゴ、プラモデル、ミニカー、鉄道模型(浅子佳英×門脇耕三×宇野常寛「これからのカッコよさの話をしよう」vol.5) ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.358 ☆

    2015-07-03 07:00  
    220pt

    【前編】〈デザイン〉としての立体玩具――レゴ、プラモデル、ミニカー、鉄道模型(浅子佳英×門脇耕三×宇野常寛「これからのカッコよさの話をしよう」vol.5)
    ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
    2015.7.3 vol.358
    http://wakusei2nd.com


    本日は、好評の鼎談シリーズ「これからのカッコよさの話をしよう」第5弾です。今回は、宇野常寛プレゼンツのスケールモデル/キャラクターモデル論。模型やレゴ、キャラクターモデルなどの立体製作物から、現代における「モノ」=コンテンツを考えていきます。(今回は前編を配信します。後編は近日中に公開予定!)
    ▼「これからのカッコよさの話をしよう」これまでの記事
    (vol.1)これからの「カッコよさ」の話をしよう――ファッション、インテリア、プロダクト、そしてカルチャーの未来
    (vol.2)無印良品、ユニクロから考える「ライフデザイン・プラットフォーム」の可能性
    (vol.3)住宅建築で巡る東京の旅――「ラビリンス」「森山邸」「調布の家」から考える
    (vol.4)インテリアデザインの現在形――〈内装〉はモノとヒトとの間をいかに設計してきたか 
    ▼プロフィール
    門脇耕三(かどわき・こうぞう)
    1977年生。建築学者・明治大学専任講師。専門は建築構法、建築設計、設計方法論。効率的にデザインされた近代都市と近代建築が、人口減少期を迎えて変わりゆく姿を、建築思想の領域から考察。著書に『シェアをデザインする』〔共編著〕(学芸出版社、2013年)ほか。
     
    浅子佳英(あさこ・よしひで)
    1972年生。インテリアデザイン、建築設計、ブックデザインを手がける。論文に『コムデギャルソンのインテリアデザイン』など。
     
    ◎構成:有田シュン、中野慧
    ◎撮影:編集部
     
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  • SDガンダムが生まれた日――「かっこいい」と「かわいい」の間にある80年代の批評精神(イラストレーター・横井孝二インタビュー) ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.303 ☆

    2015-04-14 07:00  
    220pt
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    SDガンダムが生まれた日――「かっこいい」と「かわいい」の間にある80年代の批評精神(イラストレーター・横井孝二インタビュー)
    ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
    2015.4.14 vol.303
    http://wakusei2nd.com



    2015年で30周年を迎える「SDガンダム」。二頭身にぎゅっと縮められた独特のディフォルメで、本家ガンダムとは全く異なる発展を遂げた大人気シリーズは、なぜ生まれたのか?
    その不思議なフォルムが生まれた背景と意義について、SDガンダム生みの親「横井画伯」として知られるイラストレーター、横井孝二氏にインタビューを行いました。


     
    ▼プロフィール
    横井孝二(よこい・こうじ)
    1968年生。学生時代に「模型情報」誌への投稿が注目され、10代からイラストレーターとして活躍。「SDガンダム」を生み出したキャラクターデザイナーとして知られる。
    twitter:@nisegundam
     
    ◎構成:池田明季哉
     
     
    ■ イラストレーター横井孝二の原点
     
    宇野 「SDガンダム」は今年で30周年を迎えますよね。僕は今年で37歳なのですが、僕らの世代にとってSDガンダムは基礎教養のようなもので、小学生くらいまではSDガンダムに人生を費やしたと言っても過言ではありません(笑)。そこで今日は、そのSDガンダムの生みの親である横井さんにお話を伺いたいと思ってやってきました。よろしくお願いします。
    横井 ありがとうございます。節目のいいタイミングでお話をいただけてよかったなと思っています。よろしくお願いします。
    宇野 もちろんSDガンダムのお話も伺いたいのですが、今日はどちらかと言うとキャラクターデザイナー、あるいはイラストレーター横井孝二にフォーカスしたいと思っています。
     横井さんが雑誌の投稿から10代でデビューしたということはファンの間では有名な話ですが、絵描きとしてのルーツはどのあたりにあるのでしょう?
    横井 本当に昔からSDのような縮んだ絵ばかり描いていたんです。美術系の学校に行ったわけでもなく、我流です。
     幼い頃(70年代)はもうテレビやマンガが溢れていましたからね。その頃には手塚治虫や石ノ森章太郎も出てきていましたし、ディズニーも全盛でしたし。だから子供の目の前に出てくるのは、ディフォルメされて丸みを帯びたものが多かったんです。家にあった「のらくろ」なんかも、一画面に犬の軍隊と豚の軍隊が集合している絵が気に入ってよく読んでいました。その影響なのかな、縮んだ飛行機とか、縮んだロボットとか、そういうちまちました絵をいっぱい描きたくて、B5くらいのノートに10個とか20個とか描いてました。
     もう少し時代は後になりますが、一番好きだったのは鳥山明さんです。鳥山さんは宇宙船を描くとき、ロケットを持ってくるのではなくて、ヤカンとか炊飯器とかそういうものを宇宙船にしてしまうんですよ。そういった身近な変わったスタイルとSFをくっつけてしまうところや、丸いカーブやぎゅっと縮んだシルエットがとにかく好きで、ずっと鳥山さんの絵を写していましたね。
     
     
    ■ 雑誌からスタートしたキャリア
     
    宇野 横井さんは学生のときに雑誌「模型情報」に投稿したことがデビューのきっかけだったとお聞きしているのですが、その頃からもうイラストレーターになろうと思っていたんですか?
    横井 中学生くらいのとき、もう絵にハマりすぎていて学業が疎かで受験の準備も一切していなかったので、教育熱心な母親が、描いた絵を全部破るんですよ。「こんなもん描いてる暇があったら勉強しろ!」って。そうなると子供だから余計腹が立って続けたくなるじゃないですか。言われても言われてもずっと絵ばかり描いていて、もう絵が描きたいのか親に反抗したいのかわからなくなってました(笑)。
     そうやって隠れて絵を描いてたんですが、ある日雑誌を見ていたときに「模型情報」はイラストが少ないな、という事に気付いたんですよね。プラモデルについての意見が多かったわけです。だから「ここなら描いたら載るかも?」と思ったのが投稿したきっかけですね。
    宇野 これは平成生まれの若者に声を大にして言いたいのだけれど、雑誌の投稿欄がイラストレーターの登竜門だった時代があったんですよ! pixivの投稿を見て出版社から連絡が来たり、コミティアに編集者がうろついていて、向こうから名刺を渡してきて仕事をくれる時代じゃなかった、と。
    横井 当時のアニメ雑誌は、「俺を見ろ!」という感じの自己主張の強い投稿が多かったですね。投稿欄に今のアニメ界のビッグネームが本名で出ていたりしていました。
     それで雑誌に投稿していたら編集長さんが気に入ってくれて「四コマ漫画を描いてみないか?」と言われたんです。それでバンダイさんの広報誌に、当時のガンダムのプラモデルを批判するような四コマを描いちゃって(笑)。
    宇野 ちなみに何のキットですか?(笑)
    横井 1/100のガンダムのお腹って、変形の都合なのかコアファイターが丸見えなんですよね。それをガンダムが「これどうなの?」って指差している漫画。そういう嫌味めいた漫画を何ヶ月か描いていました。学生ですから、言っていいことと悪いこともわかっていないんで、嫌味の言い放題ですよ(笑)。今思えば編集長さんの度量が広かったんでしょうね。
     

    ▲実際の「模型情報」に掲載された四コマの一部。
     
    宇野 これは当時の雑誌文化を物語るいい話ですね。
    横井 そういうことをやっているうちに「玩具の企画を手伝ってくれないか」という話が来て、ガシャポンの「SDガンダム」の企画が本格的にスタートして、お手伝いすることになったんです。それが18歳ぐらいのことですね。
     
     
    ■ なぜ「ガンダム」を縮めたのか
     
    宇野 横井さんはなぜガンダムという題材を選んだんですか? 投稿されるときには既にガンダムの絵を選んで描いていたわけですよね。
    横井 小学生のとき、まわりの男子は戦車とか飛行機とかミリタリー模型が好きだったんです。それで当時、同級生の女の子がガンダムにハマっていたんですが、「ちぇっ、なんだよいい年こいてガンダムガンダムだのアニメだの」って思ったりしていました。いや小学生なんですけどね(笑)。
    宇野 「ガンダムは最初女性ファンが多かった」というのはよく言われていますよね。
    横井 その女の子の誕生日にプレゼントを買おうということになって、ガンダムの載っているアニメ雑誌を見てみたんです。そうしたら、そこにモビルスーツがたくさん出ていた。ガンダム自体はあまりにアニメヒーローロボットっぽくてそれほど好きではなかったんですが、ザク、グフ、ドム、ズゴック、そうしたモビルスーツの丸みを帯びたフォルムと、量産型などの設定も含めたメカニカルなところが気に入って、そこから一気にハマったんです。そうやっているうちに、世の中はガンダム一色になっていって、結局クラスの男子もみんなガンダムにハマっていったという感じでした。
    宇野 ちなみに「ウルトラマン倶楽部」とか「仮面ライダー倶楽部」も手がけていたと思うのですが、特撮もお好きでしたか?
    横井 仮面ライダーは新一号世代ですね。以後は特撮ヒーロー漬けの日々です。「倶楽部」の企画が始まるやいなや、嬉しくて怪人の絵をひたすら描いていました。
    宇野 僕は、当時バンダイやバンプレストが出していた「ヒーロー総決戦」や「ザ・グレイトバトル」のようなゲームにハマっていました。ガンダムとウルトラマンと仮面ライダーは頭身も大きさもテイストも全く違うけれど、SDにすることで違和感がなくなるという感覚はとてもユニークだったように思います。
    横井 同じタッチで一画面の同じところにバラバラな個性のやつがたくさん並べられると、すごく嬉しかったのを覚えています。
    宇野 もしかしたら、そうした感覚が「スーパーロボット大戦」シリーズに繋がっていったのかもしれないですね。
     
     
    ■「RX-78-2」のディフォルメに隠された意外な苦労
     
    宇野 横井さんは80年代から90年代にこうしたディフォルメキャラクターをたくさん描かれているわけですが、その中で書きやすかったものや書きにくかったものってありますか?
    横井 実は「RX-78-2」のガンダムが苦労しました。あのガンダムって、目の下に赤い隈取りみたいな部分があるじゃないですか。あの部分の処理が難しくて、いっそなくしてしまおう、と思うまでかなり時間がかかりましたね。
    宇野 自分のデザインの中で、これは傑作だというものは?
    横井 やっぱり「にせガンダム」ですかね。もともとはガンダムとザクを合わせてみたくて描いたキャラクターだったんです。連載していた漫画にも出したんですけど、連邦陣営にもジオン陣営にも入れない不遇のキャラクターでした。SDガンダムには、戦国時代風の「武者ガンダム」、中世RPG世界の「騎士ガンダム」、ミリタリー色の強い「SDコマンド戦記
    G-ARMS」などいろいろありますが、「にせガンダム」はそのどの世界にも似合わない、かわいそうなキャラクターなんです。どこにも属さないからこそ、自分のキャラクターとして愛着があります。
    宇野 でも「G-ARMS」の「マスクコマンダー」に、「にせガンダムmk2」へのコンパチがあったじゃないですか。
    横井 ああいうかっこいい役目はにせガンダムには向いていないんですよ(笑)。
    宇野 そうか、あれはにせガンダムmk2だからこそできることなんですね(笑)。
     

    ▲「SDX マスクコマンダー」。ガンダム風の黒いマスクの下には、にせガンダムmk2の顔が隠されている。
     
    横井 あとは「騎士ガンダム」は気に入っています。甲冑の丸いフォルムがうまくマッチしたなと思っています。
     にせガンダムも騎士ガンダムも、どちらも苦労して描いたというわけではないんです。でもどちらも力を入れずに、ユルいところがいいのかもしれないと思うんですね。経験上、気合を入れて描いたものは、根強く好きになってくれる人はいるんですが、広くは受けない。意外とユルいものの方が受け入れられるのかもしれません。
     

    ▲「騎士ガンダム」。丸みを帯びた独特のフォルム。
     
     
    ■「かっこいい」と「かわいい」の間で
     
    宇野 横井さんのディフォルメって、本当に「かっこいい」と「かわいい」の中間ですよね。でも僕は当時、SDガンダムを自然と「かっこいいもの」として買っていた。普通はキャラクターをディフォルメすると、本当にかわいくしてしまうと思うんです。こいつ絶対に戦わないだろう、絶対に自己主張しないだろうというものになってしまう。でも横井さんのデザインは、かわいくてギャグ漫画もできるのに、同時に戦える存在でもある。
     少し変な話をしますけど、僕の友人に萌え系のアニメに出てくるキャラクターが好きなアーティストがいるんですが、彼は「人間じゃないけどセックスできるのが最大の魅力なんだ」と言うんですね。僕は萌え系アニメはあまり好きではないのですが、同じように「リアルな身体じゃないんだけどちゃんと戦うことができる」「かっこよさを主張することができる」ということが、80年代にレイアップと横井さんが体現していた、SDキャラクターの魅力の本質だったと思うんです。このテイストは世界中探しても日本にしかないんじゃないかと思うんですよね。

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