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  • 『ドラがたり――10年代ドラえもん論』(稲田豊史)第10回 鋭い社会批評、説教臭いエコロジー【毎月第1水曜日配信】☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.581 ☆

    2016-05-04 07:00  
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    『ドラがたり――10年代ドラえもん論』(稲田豊史)第10回 鋭い社会批評、説教臭いエコロジー【毎月第1水曜日配信】
    ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
    2016.5.4 vol.581
    http://wakusei2nd.com


    本日は稲田豊史さんの連載『ドラがたり』をお届けします。初期の『ドラえもん』で既存の価値観へ疑問を投げかけるSFセンスを発揮していた藤子・F・不二雄ですが、80年代に入ると、当時流行のエコロジー思想へと急接近していきました。『ドラえもん』はいかにして環境保護の旗印となり、現在へと至ったのか、その変遷の歴史をたどります。
    ▼執筆者プロフィール
    稲田豊史(いなだ・とよし)
    編集者/ライター。キネマ旬報社でDVD業界誌編集長、書籍編集者を経て2013年にフリーランス。『セーラームーン世代の社会論』(単著)、『ヤンキーマンガガイドブック』(企画・編集)、『パリピ経済 パーティーピープルが市場を動かす』(構成/原田曜平・著)、『ヤンキー経済 消費の主役・新保守層の正体』(構成/原田曜平・著)、評論誌『PLANETS』『あまちゃんメモリーズ』(共同編集)。その他の編集担当書籍は、『団地団~ベランダから見渡す映画論~』(大山顕、佐藤大、速水健朗・著)、『成熟という檻「魔法少女まどか☆マギカ」論』(山川賢一・著)、『全方位型お笑いマガジン「コメ旬」』など。「サイゾー」「アニメビジエンス」などで執筆中。
    http://inadatoyoshi.com
    PLANETSメルマガで連載中の『ドラがたり――10年代ドラえもん論』配信記事一覧はこちらのリンクから。
    前回:『ドラがたり――10年代ドラえもん論』(稲田豊史)第9回 大長編考・後編 リメイク問題とオリジナル問題
    ●落語とSFショートショート
     幼い頃に読んだ『ドラえもん』を、ふと大人になってから読み返すと、そのモチーフやセリフにドキッとすることはないだろうか。それは『ドラえもん』という作品が単に「夢いっぱい」なだけでなく、普遍性の高いアイロニーや警句を多く含み、社会批評的な側面も有していたからだ。こちらの連載を大幅に加筆修正した書籍が発売中です!
    『ドラがたり のび太系男子と藤子・F・不二雄の時代』☆★Amazonで詳しく見る★☆ 
  • 『ドラがたり――10年代ドラえもん論』(稲田豊史)第9回 大長編考・後編 リメイク問題とオリジナル問題【毎月第1水曜日配信】 ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.557 ☆

    2016-04-06 07:00  
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    『ドラがたり――10年代ドラえもん論』(稲田豊史)第9回 大長編考・後編リメイク問題とオリジナル問題【毎月第1水曜日配信】
    ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
    2016.4.6 vol.557
    http://wakusei2nd.com


    今朝は稲田豊史さんの連載『ドラがたり』をお届けします。藤子Fの死後も、大人の事情から製作され続けた大長編ドラえもん。目を覆いたくなるオリジナル脚本の駄作が連なる中、唯一輝きを放った『のび太のひみつ道具博物館(ミュージアム)』に秘められた、ドラえもんらしからぬ批評性とは?
    ▼執筆者プロフィール
    稲田豊史(いなだ・とよし)
    編集者/ライター。キネマ旬報社でDVD業界誌編集長、書籍編集者を経て2013年にフリーランス。『セーラームーン世代の社会論』(単著)、『ヤンキーマンガガイドブック』(企画・編集)、『押井言論 2012-2015』(編集)、『ヤンキー経済 消費の主役・新保守層の正体』(構成/原田曜平・著)、評論誌『PLANETS』『あまちゃんメモリーズ』(共同編集)。その他の編集担当書籍は、『団地団~ベランダから見渡す映画論~』(大山顕、佐藤大、速水健朗・著)、『成熟という檻「魔法少女まどか☆マギカ」論』(山川賢一・著)、『全方位型お笑いマガジン「コメ旬」』など。「サイゾー」「アニメビジエンス」などで執筆中。
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    前回:『ドラがたり――10年代ドラえもん論』(稲田豊史)第8回 大長編考・前編 ふたつの「ドラえもんコード」
    ●新ドラの迷走・リメイク問題
     
     声優リニューアル後のドラえもん(新ドラ)まわりでよく話題にのぼるのが、映画版のリメイク問題である。前回(第8回参照)でも触れたが、2006年以降の映画ドラえもんは、11本中6本が過去作品のセルフリメイクだ。

    2006年『のび太の恐竜2006』
    *『のび太の恐竜』(80)のリメイク
     
    2007年『のび太の新魔界大冒険  〜7人の魔法使い〜』
    *『のび太の魔界大冒険』(84)のリメイク
     
    2008年『のび太と緑の巨人伝』
    *オリジナル。原案はてんコミ26巻「森は生きている」とてんコミ33巻「さらばキー坊」
     
    2009年『新・のび太の宇宙開拓史』
    *『のび太の宇宙開拓史』(81)のリメイク
     
    2010年『のび太の人魚大海戦』
    *オリジナル。原案はてんコミ41巻「深夜の町は海の底」
     
    2011年『新・のび太と鉄人兵団  〜はばたけ 天使たち〜』
    *『のび太と鉄人兵団』(86)のリメイク
     
    2012年『のび太と奇跡の島  〜アニマル アドベンチャー〜』
    *オリジナル。原案はてんコミ17巻「モアよ、ドードーよ、永遠に」
     
    2013年『のび太のひみつ道具博物館(ミュージアム)』
    *オリジナル
     
    2014年『新・のび太の大魔境 〜ペコと5人の探検隊〜』
    *『のび太の大魔境』(82)のリメイク
     
    2015年『のび太の宇宙英雄記(スペースヒーローズ)』 
    *オリジナル
     
    2016年『新・のび太の日本誕生』
    *『のび太の日本誕生』(89)のリメイク

     こちらの連載を大幅に加筆修正した書籍が発売中です!
    『ドラがたり のび太系男子と藤子・F・不二雄の時代』☆★Amazonで詳しく見る★☆ 
  • 『ドラがたり――10年代ドラえもん論』(稲田豊史)第8回 大長編考・前編 ふたつの「ドラえもんコード」【毎月第1水曜日配信】 ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.532 ☆

    2016-03-02 07:00  
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    『ドラがたり――10年代ドラえもん論』 (稲田豊史) 第8回 大長編考・前編ふたつの「ドラえもんコード」【毎月第1水曜日配信】
    ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
    2016.3.2 vol.532
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    本日は稲田豊史さんの連載『ドラがたり』をお届けします。今回からは「大長編考」として、毎春公開される「映画版ドラえもん」についての考察です。大長編初期の傑作群「神7(セブン)」、そして映画ドラの必要条件ともいえる「大長編ドラえもんコード」について論じます。
    ▼執筆者プロフィール
    稲田豊史(いなだ・とよし)
    編集者/ライター。キネマ旬報社でDVD業界誌編集長、書籍編集者を経て2013年にフリーランス。『セーラームーン世代の社会論』(単著)、『ヤンキーマンガガイドブック』(企画・編集)、『ヤンキー経済 消費の主役・新保守層の正体』(構成/原田曜平・著)、評論誌『PLANETS』『あまちゃんメモリーズ』(共同編集)。その他の編集担当書籍は、『団地団~ベランダから見渡す映画論~』(大山顕、佐藤大、速水健朗・著)、『成熟という檻「魔法少女まどか☆マギカ」論』(山川賢一・著)、『全方位型お笑いマガジン「コメ旬」』など。「サイゾー」「アニメビジエンス」などで執筆中。
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    前回:『ドラがたり――10年代ドラえもん論』(稲田豊史)第7回 「世界」を改変する道具たち
    ●大長編ドラえもんの歴史
     3月と言えば映画ドラえもん(映画ドラ、春ドラ)の公開月である。毎年、子供たちの春休みを狙って公開される映画ドラは、第1作の『のび太の恐竜』(80年公開)から今月公開の最新作『新・のび太の日本誕生』まで、合計36作が制作されており(*1)、もはや日本人にとって「春の風物詩」と化していると言ってよい。

    (出典)
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  • 『ドラがたり――10年代ドラえもん論』(稲田豊史)第7回 「世界」を改変する道具たち【毎月第1水曜配信】 ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.510 ☆

    2016-02-03 07:00  
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    『ドラがたり――10年代ドラえもん論』(稲田豊史)第7回  「世界」を改変する道具たち【毎月第1水曜配信】
    ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
    2016.2.3 vol.510
    http://wakusei2nd.com


    今朝のメルマガは稲田豊史さんによるドラえもん論『ドラがたり』の第7回です。今回は「「世界」を改変する道具たち」。ドラえもんが四次元ポケットから取り出す数々の道具の、今だから分かる驚くべき先見性。そして、道具に込められた重要なモチーフ〈世界の改変〉について論じます。
    ▼執筆者プロフィール
    稲田豊史(いなだ・とよし)
    編集者/ライター。キネマ旬報社でDVD業界誌編集長、書籍編集者を経て2013年にフリーランス。『セーラームーン世代の社会論』(単著)、『ヤンキーマンガガイドブック』(企画・編集)、『ヤンキー経済 消費の主役・新保守層の正体』(構成/原田曜平・著)、評論誌『PLANETS』『あまちゃんメモリーズ』(共同編集)。その他の編集担当書籍は、『団地団~ベランダから見渡す映画論~』(大山顕、佐藤大、速水健朗・著)、『成熟という檻「魔法少女まどか☆マギカ」論』(山川賢一・著)、『全方位型お笑いマガジン「コメ旬」』など。「サイゾー」「アニメビジエンス」などで執筆中。
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    前回:『ドラがたり――10年代ドラえもん論』(稲田豊史)第6回 ふたりのファム・ファタール 後編
    ●一番好きな道具はなんですか?
     2008年に小学館から刊行された『ドラえもん最新ひみつ道具大事典』によれば、ドラえもんが四次元ポケットから出す道具の数は約1600にものぼる(「ひみつ道具」はアニメ版ほか原作以外のメディア展開において使用される呼称なので、本稿では単に「道具」として記述する)。卓越したドラえもんファン同士であれば、道具の名称だけでしりとりも可能だ。こちらの連載を大幅に加筆修正した書籍が発売中です!
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  • 『ドラがたり――10年代ドラえもん論』(稲田豊史)第6回 ふたりのファム・ファタール 後編【毎月第1水曜配信】 ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.488 ☆

    2016-01-06 07:00  
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    『ドラがたり――10年代ドラえもん論』(稲田豊史)第6回 ふたりのファム・ファタール 後編【毎月第1水曜配信】
    ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
    2016.1.6 vol.488
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    本日は稲田豊史さんの連載『ドラがたり』をお届けします。2回にわたってお届けしている「しずか・ジャイ子」編ですが、今回は篠原ともえ・光浦靖子・前田敦子という「ジャイ子系女子」の系譜を辿りつつ、「なぜしずかは出木杉ではなくのび太を選んだのか」というドラえもんシリーズ全体を貫く謎について考察します。
    ▼執筆者プロフィール
    稲田豊史(いなだ・とよし)
    編集者/ライター。キネマ旬報社でDVD業界誌編集長、書籍編集者を経て2013年にフリーランス。『セーラームーン世代の社会論』(単著)、『ヤンキーマンガガイドブック』(企画・編集)、『ヤンキー経済 消費の主役・新保守層の正体』(構成/原田曜平・著)、評論誌『PLANETS』『あまちゃんメモリーズ』(共同編集)。その他の編集担当書籍は、『団地団~ベランダから見渡す映画論~』(大山顕、佐藤大、速水健朗・著)、『成熟という檻「魔法少女まどか☆マギカ」論』(山川賢一・著)、『全方位型お笑いマガジン「コメ旬」』など。「サイゾー」「アニメビジエンス」などで執筆中。
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    前回:『ドラがたり――10年代ドラえもん論』(稲田豊史)第5回 ふたりのファム・ファタール 前編
    ●サブカル女子のプロトタイプ:ジャイ子系女子
     
     前回【第5回】は、『ドラえもん』の作中で唯一「セクシャリティ」を託されたしずかと、唯一「成長」を託されたジャイ子が、作中でどのように描かれていたかを例証した。こちらの連載を大幅に加筆修正した書籍が発売中です!
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  • 『ドラがたり――10年代ドラえもん論』(稲田豊史)第5回 ふたりのファム・ファタール 前編【毎月第1水曜配信】 ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.463 ☆

    2015-12-02 07:00  
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    『ドラがたり――10年代ドラえもん論』(稲田豊史)第5回 ふたりのファム・ファタール 前編【毎月第1水曜配信】
    ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
    2015.12.02 vol.463
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    本日お届けするのは『ドラがたり――10年代ドラえもん論』(稲田豊史)の第5回。今回からは「しずか」と「ジャイ子」という、ドラえもん作品内でも特異な立ち位置にいる2人の女性キャラクターに焦点を当てます。しずかに託されたセクシャリティ、そしてジャイ子だけが持つ「非『ドラえもん的』」な要素とは?
    ▼執筆者プロフィール
    稲田豊史(いなだ・とよし)
    編集者/ライター。キネマ旬報社でDVD業界誌編集長、書籍編集者を経て2013年にフリーランス。『セーラームーン世代の社会論』(単著)、『ヤンキーマンガガイドブック』(企画・編集)、『ヤンキー経済 消費の主役・新保守層の正体』(構成/原田曜平・著)、評論誌『PLANETS』『あまちゃんメモリーズ』(共同編集)。その他の編集担当書籍は、『団地団~ベランダから見渡す映画論~』(大山顕、佐藤大、速水健朗・著)、『成熟という檻「魔法少女まどか☆マギカ」論』(山川賢一・著)、『全方位型お笑いマガジン「コメ旬」』など。「サイゾー」「アニメビジエンス」などで執筆中。
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     前回までは、3回分を費やしてのび太というキャラクター、および「のび太系男子」と呼ばれる3〜40代男性の精神構造上の難儀(生きづらさ)について述べた。今回は、『ドラえもん』に登場する代表的な2人の女子、しずかとジャイ子について考察してみたい。
     なお、ファム・ファタール(仏:Femme fatale)の直訳は「運命の女」。宿命的な恋愛対象の女、もしくは男を破滅・堕落させる魔性の女のことを指す。新約聖書に登場するサロメ、キューブリック映画でおなじみのロリータ、谷崎潤一郎『痴人の愛』のナオミ、連合赤軍幹部の永田洋子、『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』のクェス・パラヤなどが代表的なタマである。
     
    ●しずかに託されたセクシャリティ
     
     まずは、言わずと知れたのび太の将来の結婚相手にして『ドラえもん』世界のヒロイン、しずちゃんこと源静香(しずか)について考えよう。しずかはピアノ、バイオリン、テニスなどをたしなみ、ぬいぐるみが大好き。学校の成績は上々で、優等生の部類に入る。典型的な昭和マンガのアイコン的美少女であり、教室のマドンナ(死語)。のび太が惚れるのは無理もない。こちらの連載を大幅に加筆修正した書籍が発売中です!
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  • 稲田豊史『ドラがたり――10年代ドラえもん論』第4回 のび太系男子の闇・後編 ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.444 ☆

    2015-11-05 07:00  
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    稲田豊史『ドラがたり――10年代ドラえもん論』第4回のび太系男子の闇・後編
    ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
    2015.11.05 vol.444
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    今朝のメルマガは稲田豊史さんによるドラえもん論『ドラがたり』の第4回です。今回は3回連続シリーズとなった「のび太系男子の闇」最終回をお届けします。
    のび太とドラえもんの関係を「ホモソーシャルの典型」と捉え、「さようなら、ドラえもん」「帰ってきたドラえもん」「ションボリ、ドラえもん」といった有名エピソードの例を挙げつつ、「のび太系男子の闇」がどのようにして発生するのかを考察します。

    稲田豊史『ドラがたり――10年代ドラえもん論』これまでの配信記事一覧はこちらのリンクから。
     前回(第3回)、のび太の欠陥人格は藤子・F・不二雄の独善的な自己肯定の結果であると述べた。ダメでも、残念でも、変わらなくていい。弱さをさらけ出し、無邪気に欲求を表明すれば、いつか誰か(ドラえもん)が助けてくれる。美少女(しずか)をモノにできる。そんな大甘な受け身思考が骨の髄まで染み付いてしまったのが、『ドラえもん』を読み、見て育った30〜40代男性を中心とした「のび太系男子」というわけだ。
     さて、そんなのび太系男子が多感なティーンエイジャー〜大学生だった頃、その後20年以上にもわたってジャパニーズサブカルチャーに大きな影響を及ぼすTVアニメが放映された。ご存知『新世紀エヴァンゲリオン』(1995〜96年TV放映)である。
     「大甘な受け身思考」というOSがインストール済みののび太系男子予備軍は、おそらく高確率で『エヴァ』にハマり、「逃げちゃダメだ野郎」こと14歳の主人公・碇シンジに自己を投影した。まるで、のび太に自己投影した藤子・F・不二雄のように。自分の弱さを素直にさらけ出し、女性全般に母性を求め、本能に基づいて甘えるシンジは、言わば精神的成長を経ないまま中学生になった野比のび太。のび太系男子予備軍が親近感を抱くに値するキャラクターだ。
     そのシンジには、自分を救ってくれると確信した精神的パートナーにして、超のつくホモソー的バディが存在する。第17使徒タブリスこと、渚カヲル少年だ。
     「ホモソー」すなわち「ホモソーシャル」とは俗に、「異性愛者である男性同士に発生する強い連帯関係」のことを指す。仲が良すぎて女性が入っていけない男子同士の友情関係、といえば聞こえはいいが、ネット界隈でもよく見かけよう。『スター・ウォーズ』や『ガンダム』や『仮面ライダー』や『ダークナイト』や女性グループアイドルを喜々として語り合う男性たちの間に漂う、「女人禁制」の空気を。彼ら全員の顔には「女には、我々が愛でるものの素晴らしさの本質を絶対に理解できない」と書いてある。その強い排他性と閉鎖性が、男だけで満たされた空間の快適性に直結しているのは明らかだ。
     『エヴァ』でカヲルはシンジを導き、シンジはカヲルに絶対的な信頼を寄せた。……この構図には既視感がある。そう、シンジにとってのカヲルと、のび太にとってのドラえもんは、立ち位置が似ているのだ。のび太にとってドラえもんはもちろん「親友」だが、単なる友情を超えた絶対的な信頼と図抜けた精神的依存が、そこにあるからだ。
     のびドラのホモソーエピソードとしてもっとも有名なのは、「小学三年生」1974年3月号の最終回として描かれた「さようなら、ドラえもん」(てんコミ6巻)と、同じ読者が進学して翌月に読むことになる「帰ってきたドラえもん」(「小学四年生」1974年4月号に掲載/てんコミ7巻)である。どちらもドラファンには説明不要の名編だ。
     「さようなら、ドラえもん」では、ドラえもんが未来に帰らなければならなくなる。野比家のお別れ会を済ませた最後の夜、普段は別々に寝ているふたりは、今夜だけ“同じ布団で”床に就く(端的に、ここは萌えである)。しかしなかなか眠れない。そこでふたりは夜の散歩に出かける。

    ドラえもん「できることなら……、帰りたくないんだ。きみのことが心配で心配で……」
    のび太「ばかにすんな! ひとりでちゃんとやれるよ。やくそくする」

     感極まるドラえもんが涙を見せまいと姿を隠した隙に、ねぼけて徘徊するジャイアンに見つかってしまうのび太。いつもどおり絡まれ、ドラえもんを呼ぼうとするも、すんでのところで声を抑える。「けんかなら、ドラえもんぬきでやろう」。あんのじょうボコボコにされるのび太だが、いつもと違ってひるまない。何度殴られても、立ち上がる。

    「ぼくだけの力で、きみに勝たないと……。ドラえもんが安心して……、帰れないんだ!」

     ボロきれのようになりながらも、ジャイアンに爪を立てて粘り勝ちするのび太。そこにドラえもんが現れる。「勝ったよ、ぼく」と誇らしげに報告するのび太に、無言で滂沱の涙を流すドラえもん。その表情は安堵に満ちている。『ドラえもん』全エピソード中、ベスト・オブ・ベストと呼ぶにふさわしい名シーンだ。
     一方の「帰ってきたドラえもん」は、ドラえもんが未来に帰ったあと、部屋でアンニュイに佇むのび太のコマからはじまる。気晴らしに外へ出た折、ジャイアンに「ドラえもんに会った」と聞かされ、狂喜乱舞するのび太。貯金をはたいてどら焼きを買い込もうとする姿には、もうこの時点で涙を禁じ得ない。しかし、それはエイプリルフールの嘘だということが判明する。
     怒ったのび太はドラえもんの置き土産である「ウソ800(エイトオーオー)」という薬を飲み、ジャイアンとスネ夫に仕返しする。飲めば言ったことが「嘘」になるという道具だ。しかしやっぱり心は晴れない。ドラえもんはもういないからだ。泣きながらのび太が言う。

    「ドラえもんは帰ってこないんだから。もう、二度とあえないんだから」

     そう言って勉強部屋のドアを開けると、なんとドラえもんがいる。「ウソ800」の効能によって、「二度とあえない」が「嘘」になったのだ。抱き合って喜ぶドラえもんとのび太。ほとんど恋人同士のように強い絆を感じさせるエピソードだ。
    ●“お姫様”はしずかではない
     ここで、ひとつの問いを立てたい。果たしてのび太は、ドラえもんとしずかちゃん、どちらのほうが大事なのだろうか?こちらの連載を大幅に加筆修正した書籍が発売中です!
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    稲田豊史『ドラがたり――10年代ドラえもん論』第3回のび太系男子の闇・中編
    ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
    2015.10.21 vol.434
    http://wakusei2nd.com


    本日は大好評の稲田豊史さんによるドラえもん論『ドラがたり』の第3回をお届けします! 今回は前回に続いての「のび太系男子の闇」の中編です。「のび太」というキャラクターの本質をディープに解き明かし、現在の30〜40代の「のび太系男子」に与えた影響を考察します。
    稲田豊史『ドラがたり――10年代ドラえもん論』これまでの配信記事一覧はこちらのリンクから。
     前回(第2回)の結びでは、90年代中盤以降に発生した「のび太再評価」ムーブメントの影響によって、「のび太のように生きてもいいんだ」というマインドを持つ「のび太系男子」が生まれたことを述べた。
     のび太系男子を主に構成するのは、30〜40代の“勝ち組になれなかった”男性たちだ。世代区分で言えば団塊ジュニアからポスト団塊ジュニア。日本の人口ボリュームゾーンである。学生時代は受験戦争と超偏差値社会に、就職してからは超格差・実力社会に投じられたが、一握りの勝ち組以外は辛酸を嘗めまくった世代だ。
     四大を出ても貧困とは縁が切れない。新卒の就職活動は激戦を極め、やっと会社に入ったものの、歳を重ねて何かと物入りになってきたゼロ年代後半に入ると、今度は不景気で給料が上がらない。結婚は遠く、仮に結婚できたとしても、親世代のような「シングルインカム+専業主婦+子供ふたり+持ち家」なんぞ夢のまた夢。馬車馬のように働いても都内にマンションひとつ、車一台満足に買えない。ファストファッションとファストフードが命綱。団塊世代である親たちの裕福さには一生手が届かないと臍を噛む。
     彼らのアイデンティティを染めているのが、自分たちは割りを食った世代だという被害者意識だ。その鬱屈はおおむね富裕層や政治権力に向けられ、「社会正義」の旗印をエクスキューズに私怨を爆発させるのが常套。押し寄せる劣等感と吐き出すルサンチマンの出納業務で、毎日が忙殺されている。
     のび太系男子の特徴は、彼らの上下世代との比較で、より一層明確になる。
     たとえば、のび太系男子の下の世代である20代の「さとり世代」。彼らは厳しい現実を“悟って”っているので、はなから自分の人生について過剰な期待を抱かない。「好景気」を肌で感じたことが一度もないため、「成り上がり」「一攫千金」といった経済的な成功を夢見たりもしない。他人を蹴落として序列を駆け上るよりは、出る杭として打たれないよう注意深く空気を読み、悪目立ちを避けようとする。そもそも、競争というものに参加する意義を感じていないのだ。
     いっぽう、のび太系男子は競争に強制参加させられた上に負けが続き、ほとほと嫌気が差し尽くしてしまった。0点が続いてすべてにやる気をなくしたのび太の如し。ゆえに一部の勝ち組を除き、ヒエラルキー内での序列争いには極端なアレルギー反応を示す。集団内におけるハングリーな向上心にも欠ける傾向にある。
     のび太系男子の上の世代であるバブル世代(40代後半〜アラフィフ)は、バブル景気(80年代末〜90年代初頭)を背景として、働けば働くほど、欲望を剥き出しにすればするほど、経済的な「結果」を手にできた最後の世代だ。彼らはヒエラルキー内での序列争いに耐性がついている。「頑張れば、上に行ける」ことが身近で実証されているからだ。
     しかし、のび太系男子は先輩たちが享受したバブル世代の華やかさを目にしながらも、自分たちが会社のメインプレーヤーになった時には、時既に遅く、その恩恵には預かれなかった。同期がやたら多いため無意味に増加した「名ばかり管理職」に任命されたはいいが、給料は特に変わらず責任だけが増大。被害者意識がむくむく膨れ上がったのも無理もない。
     それゆえ、のび太系男子は社会で戦うのをやめ、精神的な隠居に入った。マイペースで快適な個人であることに絶対善を置き、いい年こいてノスタルジックなサブカル趣味にすがりつく。のび太同様、“いま、この瞬間を楽に生きる”を信条としているのだ。ゼロ年代初頭に流行した「スローライフ」や、現在の「サードウェーブ男子」的なまったり感も嫌いじゃない。実際、上記2ムーブメントを主に担っているのは団塊ジュニアとポスト団塊ジュニアである。
     また、のび太系男子はリスクをとってチャンスをものにするトライアルスピリットに欠ける。危ない橋は渡りたくないし、できれば社会的責任も負いたくない。婚期は遅れがち、もしくは結婚願望も総じて低めだが、結婚ほど「リスク」と「責任」の産物はないので、当然である。
     自分の弱さを素直にさらけ出すことに、他世代ほど躊躇がないのものび太系男子の特徴だ。彼らは自己をさらけ出すことが「誠実」だと思っている。そのため、女性にはあからさまに母性を求め、本能に基づいて甘える。
     そう、のび太系男子は、いい大人のくせにみっともない。しかし、それこそが彼にとっての「誠実」だ。前回(第2回)で紹介した痛エピソード――お姉さん型いたわりロボットの膝に顔をうずめるのび太(ドラえもんプラス5巻)――が思い出されよう。
     さらに、のび太系男子は「普段はダメでも、いざというときには“持ち前の誠実さ”を発揮すれば、大丈夫」と自分に言い聞かせている。大長編で突然ヒーロー化するのび太の気分だ。彼らからすれば、普段のうだつの上がらない状態は「俺はまだ本気出してないだけ」なのである。
    ● 藤子・F・不二雄による「業の肯定」
     前回(第2回)で明らかになったように、のび太は、作中で一時的にしっぺ返しを食らったり痛い目に遭ったりはしても、人格の根本的な欠陥(盗み見、結婚相手以外の女性に唾をつける、自分よりダメな人間への優位性に浸る等)については、決定的なおとがめを受けない。次回も、そのまた次回も、同じようにクソ人間ぶりを披露しているからだ。こちらの連載を大幅に加筆修正した書籍が発売中です!
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  • 稲田豊史『ドラがたり――10年代ドラえもん論』第2回 のび太系男子の闇・前編 ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.403 ☆

    2015-09-04 07:00  
    220pt
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    【新連載】稲田豊史『ドラがたり――10年代ドラえもん論』第2回のび太系男子の闇・前編
    ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
    2015.9.4 vol.403
    http://wakusei2nd.com


    本日は大好評の稲田豊史さんによるドラえもん論『ドラがたり』の第2回をお届けします! 今回のテーマは「のび太系男子の闇」。元々「人格的にもアウト」ですらあったのび太というキャラクターが、「残念だけど優しくていい奴」というイメージへと変わっていったのはなぜなのか? 今回配信の前編では、時系列を追いながらのび太イメージの成立過程を読み解きます。
    ▼執筆者プロフィール
    稲田豊史(いなだ・とよし)
    編集者/ライター。キネマ旬報社でDVD業界誌編集長、書籍編集者を経て2013年にフリーランス。『セーラームーン世代の社会論』(単著)、『ヤンキーマンガガイドブック』(企画・編集)、『ヤンキー経済 消費の主役・新保守層の正体』(構成/原田曜平・著)、評論誌『PLANETS』『あまちゃんメモリーズ』(共同編集)。その他の編集担当書籍は、『団地団~ベランダから見渡す映画論~』(大山顕、佐藤大、速水健朗・著)、『成熟という檻「魔法少女まどか☆マギカ」論』(山川賢一・著)、『全方位型お笑いマガジン「コメ旬」』など。「サイゾー」「アニメビジエンス」などで執筆中。http://inadatoyoshi.com
    ▼関連記事
    セーラームーン世代の女子を考えるための2本の映画(稲田豊史)
    四十路男の『セーラームーン』(稲田豊史『セーラームーン世代の社会論』発刊記念コラム)
    前回記事:稲田豊史『ドラがたり――10年代ドラえもん論』第1回 作風とっちらかってる問題
    ● のび太は人格的にもアウト
     
     『ドラえもん』の準主役、否、考え方によっては主役と呼んでも差し支えないのが、野比のび太である。勉強も運動も苦手な、怠け者で弱虫の小学生。意志が弱く、すぐ人に頼ろうとする。残念な子供の典型だ。こちらの連載を大幅に加筆修正した書籍が発売中です!
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  • 【新連載】稲田豊史『ドラがたり――10年代ドラえもん論』第1回 作風とっちらかってる問題 ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.380 ☆

    2015-08-04 07:00  
    220pt
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    【新連載】稲田豊史『ドラがたり――10年代ドラえもん論』第1回作風とっちらかってる問題
    ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
    2015.8.4 vol.380
    http://wakusei2nd.com



    PLANETSの書籍『あまちゃんメモリーズ』や『PLANETS Vol.9』の編集スタッフであり、先日刊行された初の単著『セーラムーン世代の社会論』も好調の編集者・稲田豊史さん。
    今月よりPLANETSメルマガでは、その稲田さんが敬愛する藤子・F・不二雄先生の代表作『ドラえもん』を考える月イチ連載を開始します! 初回は「世代によって違う『ドラえもん』イメージ、それがなぜ生まれるのか?」について解説します。

    ▼執筆者プロフィール
    稲田豊史(いなだ・とよし)
    編集者/ライター。キネマ旬報社でDVD業界誌編集長、書籍編集者を経て2013年にフリーランス。『セーラームーン世代の社会論』(単著)、『ヤンキーマンガガイドブック』(企画・編集)、『ヤンキー経済 消費の主役・新保守層の正体』(構成/原田曜平・著)、評論誌『PLANETS』『あまちゃんメモリーズ』(共同編集)。その他の編集担当書籍は、『団地団~ベランダから見渡す映画論~』(大山顕、佐藤大、速水健朗・著)、『成熟という檻「魔法少女まどか☆マギカ」論』(山川賢一・著)、『全方位型お笑いマガジン「コメ旬」』など。「サイゾー」「アニメビジエンス」などで執筆中。http://inadatoyoshi.com
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    セーラームーン世代の女子を考えるための2本の映画(稲田豊史)
    四十路男の『セーラームーン』(稲田豊史『セーラームーン世代の社会論』発刊記念コラム)
    ■ 前書きに代えて
     1969年に連載が開始され、作者の藤子・F・不二雄が逝去する直前の1996年まで続いた『ドラえもん』は、日本を代表する国民的マンガである。これに異を唱える者はいないだろう。こちらの連載を大幅に加筆修正した書籍が発売中です!
    『ドラがたり のび太系男子と藤子・F・不二雄の時代』☆★Amazonで詳しく見る★☆